古雪椿は勇者である   作:メレク

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勇者の章で個人的に一番微笑ましかったシーン「アタックチャンス」は無しに。アニメ本編の方でお楽しみください。

下から本編です。


四十四話 悩んだら相談

東郷さんが帰ってきた。椿先輩も帰ってきた。

 

せっかくこれから楽しくなるのに、生け贄のお役目は私に引き継がれた。

 

でも言えない。東郷さんの悲しむ顔も見たくないし、みんなに心配かけさせるわけにもいかないから。

 

私が、生かされている存在だとしても。

 

 

 

 

 

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「授業おつかれー、ついに放課後だけ登校だぜ」

 

つっきー以外がいた勇者部の部室に、いきなりつっきーが現れた。

 

「......」

「おい待て、落ち着け。今抱きついてきたら俺の腹が割けるからな。気持ちは嬉しいけど落ち着いてくれ。頼むから」

「つっきー...!」

「椿!!」

 

わっしーもすぐに退院してクリスマスの話なんかができたから、後はつっきーだけだと思っていた皆が喜ぶ。

 

勉強していたふーみん先輩は眼鏡を捨てて、にぼっしーは食べていた煮干しを飲み込んで喜んだ。

 

「古雪先輩」

「東郷...おかえり」

「ごめんなさい。私を助けるために怪我を」

「いや、これは割りとお前関係ないから...いやあるっちゃあるんだけど。気にしないでくれ」

「あぁ、どうしたら...陳謝!」

「いや死のうとするな!ノー切腹!!」

 

突っ走るわっしー、止めるつっきー。

 

(勇者部は楽しいな~)

 

入ってから、二年間祀られていたことすら忘れるように楽しい日々。

 

「放課後来てくれてたみたいだな。ありがとう」

「あったり前でしょ!」

「そっか...風は勉強してるか?」

「してるわよ!来週は樹のショーもあるからその分もね!!」

「お姉ちゃん!私のショーじゃなくて町のクリスマスイベント!学生コーラス!!」

「マジか席取っといてくれ」

「椿さんまで!?」

「いっつんのグッズ展開していい!?」

「ダメです!!」

「風邪をひかないように、ベストコンディションでいかないとね」

「「健康健康健康」」

 

必殺α波をいっつんに流しながら、ちらりとゆーゆを覗く。

 

最近、少し元気がない気がする。

 

「友奈、考え事?」

「え、何も考えてないです」

「それはそれでどうかな...ほんとはどっか悪いんじゃない?」

「......あの、実は.......!!」

「どうした友奈?」

「...な、なんでもないです。おかえりなさい椿先輩」

「あぁ、ただいま」

 

そう言うつっきーの様子も、少し変だった。

 

 

 

 

 

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クリスマスをモミの木祭りに改名しようとした東郷が総バッシングを受けている頃、電話をかけた。相手は二人。

 

「もしもーし」

「あ、出た。さっきぶり」

「さっきぶりです~」

「あら、そのっちも?」

「わっしー?」

「実は、二人に話がある。聞いて欲しい」

 

悩んだら相談。信じてもらえるかわからなくても言うしかない。

 

「明日の放課後、壁の外に出る。協力してくれないか?」

「...古雪先輩、なにをおっしゃっているのですか?」

「あの、人みたいなバーテックスに会いに行くんだね?」

 

こういうときの園子の察しの良さは異常なほどに高い。

 

「あぁ」

「人みたいな...先輩が銀と言っていた!?」

「そうだ」

 

要点をかいつまんで話した。あの存在をなぜ銀と思ったか、なぜ俺が勇者になれなくなったのか。

 

「ほんとは部室で話そうかと思ったんだけどさ...友奈も何か悩んでそうだったから。まず二人に聞いて貰おうと思って」

「つっきーの次にミノさんと関係あるもんね~」

「友奈ちゃん...やっぱり何か悩んでるのかしら」

「理由はわからないけどな...それで、どうだ?」

 

正直、少なくともこの二人の力を借りなければあいつとは会えない。完全にバーテックスに取り込まれていた場合、一方的に殺される。

 

(それすら望みのかけた感じだけど...)

 

「私はいいよ。ミノさんなら助けたい」

「どちらにせよ、バーテックスは倒さなければならないですしね」

「...ありがとう、二人とも」

「このこと、他のみんなには?この前の一件があった手前、私は言わないと少し...」

「でも、話したら止められるだろうしなー...病み上がりだし。俺」

「壁の外に出かけるけど、危険はないって言ったらどうかな?」

「危険しかないだろあそこ」

「じゃあこう________」

 

 

 

 

 

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「こんにちはー」

「樹ちゃん!」

 

四人目が入ってきて、今日はこれで全員。

 

「じゃあ部活始めるわよー」

「あれ?椿さんや東郷先輩は...」

「あいつらは今日休み。昔の友達に会いに行くんだって」

 

なんとなく胸騒ぎがしたけど、今の私はそれを気にできるほど余裕ではなかった。

 

(樹ちゃんと風先輩は家の鍵をなくした...夏凜ちゃんは体育でケガ、東郷さんは擦り傷、園ちゃんは火傷...椿先輩は紙で手を切った。私の、せい?)

 

昨日、胸の紋章のことを話そうとしたとき、みんなにも同じものが映った。そして、私以外の皆が不幸なことに巻き込まれている。

 

(でも...)

 

悩んだら相談、勇者部五箇条の一つが私の視界に重く見えた。

 

「...風先輩」

「ん、どうしたの?」

「ちょっと、いいですか?」

 

 

 

 

 

人気のない場所へ移動して、どう話そうか悩む。

 

「どうしたの?悩み事?」

「えっと...」

「なーにー?乃木に椿が取られて心配?」

「えぇ!?」

「冗談よ冗談。あいつがそんな簡単なことでころっといくわけないしね。で、なに、言ってみ?」

 

優しく風先輩が聞いてきてくれる。

 

「......あの、実は、この前東郷さんを...!!」

 

口を開いた時、見えてしまった。

 

風先輩の胸元にはびこるように、紋章が、昨日よりくっきりと。

 

「東郷がどうしたって?」

「いえ...東郷さんとの写真とか、色々消えちゃって」

「あーそりゃ東郷にバレたら倒されるかもね。でも...そんな危ない写真とってたの?」

「ないですよー!」

 

皆に痛みも不幸も移って欲しくない。私が黙っているだけですむなら__________

 

 

 

 

 

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「どうしたのかしら。友奈」

 

風と部室から出ていってしまってから、私は落ち着かなかった。

 

「悩み事でしょうか...」

「全く。せっかく全員揃ったと思ったらまた消えて...」

「みんなのこと、考えてるんですね」

「ま、まぁね!完成型勇者だし!」

 

風から次期部長候補と言われている身として、しっかりしなければならない。

 

(...こんなこと思うのも、前じゃあり得なかったな)

 

ここに来たばかりの半年前、バーテックスを倒すことを目標に来た私は随分変わった。間違いなく、友奈をはじめとした勇者部のお陰。

 

「ありがと」

「え?」

「な、何でもないわよ!それより、今日は依頼きてないの樹!」

「無さそうですねー...あ、でも面白そうなのが。今外でヒーローショーやってる見たいですよ」

「私達関係ないじゃない!」

 

二人でも、勇者部は楽しい。でも、早く七人で楽しくなればいいなと思った。

 

 

 

 

 

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絶対勝てない相手。まともにやりあえば待っているのは死ぬこと。

 

でも、俺は一人じゃない。

 

勝たなきゃいけないわけでもない。

 

「決着をつけよう」

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