『嫌なんだ。誰かが傷つく事、辛い思いをする事。皆がそんな思いをするくらいなら...私が頑張る!私が勇者になる!!』
そう言って、友奈ちゃんは勇者になった。桃色の勇者服に、髪色まで変わった友奈ちゃんはまさにヒーローの様な見た目だ。
「行ってくるね!」
「友奈ちゃん!」
今もそう。皆の為に勇者として戦いに行く。
(それなのに、私は...)
「っ...だ、ダメ......」
私にも勇者の適正はある。でも、怖がって変身も出来ない。
「一番出遅れた!なんでこんな出撃位置に違いが出るんだ!」
「古雪先輩...」
後ろから跳んできたのは悪態をつく古雪先輩。
「東郷か、ここじゃ危ないだろ」
「だ、大丈夫です。それより友奈ちゃんを」
「今一番危ないのはお前なんだよ。怪我でもしたら、それこそ守ろうとしてる結城が悲しむぞ」
「っ...」
「後は...風のこと、許してやってくれ。悪気があった訳じゃないんだ」
「それは...わかってます」
「ならよし。下がってろよ!」
古雪先輩はいつも周りを見ている。一つの取りこぼしも無いようにするその姿勢はやろうと思って出来るようなことじゃない。
今回だって、私達のことをよく見ているからこそ話してくれている。
「東郷、またな」
「ぁ...」
『またね』
いつか、誰かから聞いた気がした言葉と、古雪先輩の言葉が被る。その姿も__________
(いやいや、今はそんなことより...)
「キャーー!!」
「友奈ちゃん!?」
前に出た友奈ちゃんが近くまで吹き飛ばされる。後を追うようについてくるサソリの様なバーテックスが尻尾を向けた。
「結城に手をだすなぁぁ!」
斧を振り上げて突貫する古雪先輩も、どこからか飛んできた攻撃に吹き飛ばされた。
「友奈ちゃん!!古雪先輩!!」
「くぅ...」
友奈ちゃんは起き上がることは出来ず、バーテックスの尻尾が刺さる手前で精霊が受け止めている。
(でもあんなの、長くは...!)
「やめ...て」
『私は結城友奈。よろしくね!』
引っ越したばかり、隣の家に住んでいた友奈ちゃんの笑顔と、握手を求めてきた手を思い出す。
「...やめろ」
その手は不安だった私を、いつも笑顔で助けてくれた。
「友奈ちゃんがいたから、私はこうして皆に出会えた...」
恐いけど、だから。
「友奈ちゃんをいじめるな!!」
「東郷さん...逃げて...」
「逃げない!友奈ちゃんをいじめる奴は...私が許さない!!」
サソリ型バーテックスの尻尾がこっちに向き、貫かんと勢い良く迫る。
それを、私の精霊が受け止めた。
「私はいつも友奈ちゃんに守ってもらってた...だから次は私が勇者になって、友奈ちゃんを守る!」
次の瞬間には勇者の格好に変わり、武器である銃を撃ち込んだ。
(変身したら落ち着いた...武器を持ってるから?)
的確に尻尾を撃ち抜ち、二丁銃に素早く切り替えてバーテックスの胴体に撃ち尽くす。
「す、凄い。東郷さん...これなら」
「うぉぉぉらぁ!!」
別方向からも斧が飛んできて、バーテックスの胴体に深々と突き刺さった。
「結城!東郷!無事かって...東郷、お前」
「古雪先輩...ご心配、ご迷惑をおかけしました」
「心配はしたが迷惑はかかってないからな。じゃあ勇者部全員、勇者になったことだし...いきますか!」
「「はい!」」
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「あーもーしつこい男は嫌いなのよ!」
「お姉ちゃんモテる人みたく避けてないで何とかしようよ」
後ろにいるバーテックスの口の様な場所から放たれる幾千の光の矢を避け続ける。
「なかなか隙が...ってえ!?」
どうしたものかと悩んでいると、近くにサソリ型バーテックスが降ってきた。
「そのエビ連れてきたよー!」
「どうみてもサソリでしょ」
「どっちでもいいから潰すぞ!」
友奈と椿が戦線に戻ってきて、その後ろから__________
「東郷先輩!」
「東郷、戦ってくれるの...?」
「......」
こくりと頷いてくれる東郷に、あたしは涙が出そうだった。
「風先輩、部室では言い過ぎました。ごめんなさい。精一杯援護します」
「東郷...心強いわ!あたしの方こそごめんね」
「はいはい。湿っぽい話は後にしてくれよ。目の前に敵は残ってるんだからさ」
「そうね」
「遠くの敵は私が狙撃します」
「じゃああたしたち四人で手前の二体、さっさとやっちゃうわよ!」
「「OK!」」
「樹は俺に、結城は風に!二人で一体ずつやるぞ!」
「皆、不意の攻撃には気をつけて!」
「「はい!」」
「あたしのより返事がいい!?」
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「うぉりゃぁ!!」
『そいつの攻撃は尻尾ばっかりだ!やっちまえ!』
尻尾の先がなくなったサソリ型バーテックスを相手どる俺と樹は、全く苦労していなかった。最大の武器である尻尾の針は東郷が潰している。
「樹!」
「封印の儀、準備出来ました!」
「よし!とっとと死にさらせ!!」
正式には祝詞(のりと)を唱えなければならないらしいが、魂を込めた言葉ならなんでもいいらしい。本気の殺意を込めて斧を振るうと、ベロっと御霊を吐き出した。
「よし...じゃねぇな」
飛び出た御霊は分裂し、どれが本物か分からなくなる。
「先輩、任せてください!」
樹の普段より大きな声と共に、そこかしこに糸が張り巡らされる。
「これ樹の武器か...!」
「これで...えぇい!」
糸は全ての御霊を囲んで縛り上げ、一声と共に切り刻まれた。
一つだけ、糸に縛られているものの無事な御霊が残る。
「先輩!」
「よしきた」
目標が分かれば、斧で切り裂くことも簡単すぎた。御霊は何事もなく叩き潰される。
「やったぁ!」
「樹はそのまま姉ちゃんのカバーしてくれ。俺は奥のやつをやる!」
「わかりました!」
矢を放つバーテックスは、東郷の狙撃にやられっぱなしだった。
『無理しないでくれよ。椿』
「大丈夫。さっきの矢のお返ししなくちゃなぁ!」
こちらに気づいたバーテックスが大きな矢を撃つ。避けきれない程の矢を撃たれた方が辛かったのでやりやすい。
「それは見たよさっき!」
斧に炎が灯る。赤く赤く燃え上がった斧は、大きな矢を弾いてみせた。
「はぁぁぁぁ!!」
そのまま斧の乱舞を浴びせると、御霊が出た。高速で動き回ろうとしたそれは、東郷の狙撃で一撃だった。
「あの距離から...凄いな」
すぐに三体目も撃破され__________勇者部は誰一人犠牲になることなく、バーテックス三体を打ち倒した。
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「戻るのは一緒なんだな...」
讃州中学の屋上に戻ってきた俺達は、興奮覚めぬ様子で話始める。
「東郷さんかっこよかったよー!」
「そんな...私」
「本当、助かったわ東郷」
「風先輩。覚悟はできました。私も勇者として頑張ります」
「...ありがとう!一緒に国防に励もう!」
「国防...はいっ!」
「東郷先輩の目が輝いてるよ~...」
部室で東郷は国についてよく語っていた。目が輝いてるのはその時からだが、その時から本当にろくな目にあってない気がする(三時間近く話を聞かされたりとか)
(...ま、いっか)
今は全員無事に生き残れたことに感謝すべきだろう。
「よし、うどん食いにいくぞ!俺と風の奢りだ!」
「やったー!うどん!!」
「え、椿!何勝手にあたしも奢る側にしてるのよ!」
「お前の分を奢ったら俺は払いきれないからだよ!分かったら食べる量減らせ!」
「うどんは女子力を上げるのよ!食べないわけないでしょう!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎながら、うどんを食べに向かう。
『皆無事でよかったよ』
「そうだな...」
そこには確かに全員の笑顔があった。