古雪椿は勇者である   作:メレク

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メレク「さて、まだ時間経ってないけど感想見るか...増えてるといいなぁ」
感想「日間ランキングおめでとう!」
メレク「へ?」

確認したらホントに乗ってました。しかも自分が見た時はトップ10入り。二度見してスクショして一言。「嘘だろ」

ランキングとか見たことなかったんですが、評価の仕方合ってるんですかね...なんかもうびっくり(語彙力散華)

ともあれ皆様のお陰です。ありがとうございます!これからも頑張ります!

前回の終わりから想像できる『不幸』とか『事故』とかじゃなかったサブタイの意味はいかに。

後半、若干気分が悪くなる描写が入るかもしれません。基本は大丈夫だと思いますが...お気をつけください。

下から本編です。


四十八話 ほっぺた

「僕も、この事実を知ったのはさっきのことだ」

 

大赦本部が近くにあるレストランで、俺は春信さんの話を聞いていた。

 

「黙っていたわけじゃない。三ノ輪銀への準備や君の装備の手配で忙しかったからね」

 

そこを言われるとこちらも黙るしかない。

 

「...それで、天の神から友奈を解放する方法はないんですか」

 

神に好かれる御姿をやめる、もしくは元凶である天の神を殺す。頭に浮かぶ方法は二つだ。

 

「無理だね」

 

だがそれを、春信さんは真っ向から否定した。

 

「御姿はやめれるもんじゃない。そして神を倒せるのは、同じ神だけだ。少なくとも天の神の使いであるバーテックスと戦う力程度しか持たない、地の神の使いである勇者じゃ勝ち目はない」

「そんな...勇者システムの強化は?」

「神世紀が始まって以来、勇者システムはずっと続けてきた研究だ。いくらデータがあってもすぐパワーアップできるわけじゃない。来年の春までなんて到底...」

「......」

「それに、神樹様自身の問題もある」

「?」

 

首を傾げる俺に、春信さんは説明してくれた。

 

「......神樹様の結界を保つ力、それが弱まってきているんだよ」

「!!」

「寿命、というべきなのかな。このままだとそう遠くない未来にこの世界は壁の外と同じになる」

「そんな...打つ手は!?」

「現在調査中...ほとんど手詰まりだね」

「友奈に死ねって言うんですか!!!」

 

机を叩いて大声を上げる。レストランの客がこちらを見てくるのを気にして、静かに座り直した。

 

「そうは言ってない。最善は尽くす。こちらとしても犠牲はあってほしくないし、神樹様の寿命が近い以上、全人類が滅ぶ危険性もある」

「......」

「ひとまずはこちらで結論を出すまで、なにもしないで欲しい」

「戦衣を返してもらえるか?」

「外へ出ても無駄だし、君のあれは直すのに時間がかかる」

「改修は時間かからなかったじゃないか...!」

「ほとんどの武器が壊れた上に、戦衣自体のダメージも大きかった。あんなボロボロの装備でどうやってバーテックスと戦うつもりだ?少し頭を冷やせ」

「っ......」

「それに、今バーテックスと戦ったところでどうしようもないからね」

 

運ばれてきた料理には一切手をつけないままレストランを出た。勿体ないとは思ったが、喉を通る筈がない。

 

「...これしか言えないこと。年上として申し訳なく思っている」

「いえ...貴方が謝ることじゃないです」

 

友奈になにも出来ないのは俺が無力だからだ。春信さんを罵倒したところで友奈も勇者部の皆も喜ばないし、世界は変わらない。

 

「寧ろすいません。感情的になりすぎました」

「まだ中学生、そんなもんだよ。君もここから気をつけて。直接話を聞いた君は、犬吠埼風以上に危険な目に遭うだろうから」

「あ...」

 

完全に失念していた。全治数週間の怪我を越える不幸が、俺を襲う可能性がある。

 

慌てて周りを見たが、突っ込んでくる車はなかった。

 

「完全に自分のことを棚に上げてたな?」

「...はい」

「君が怪我をすれば、それこそみんなが心配する。君自身のせいで泣かせないでね。特に夏凜を泣かせたらただじゃおかない」

「はい...」

 

帰り道の足取りは重かった。

 

(今の俺は、弱って苦しそうにする友奈を見ていることしかできない...世界が滅ぶかもしれない中それを待つことしかできない。それどころか明日を迎えられるか......)

 

「ちくしょう...」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「ふーみん先輩どうもです~」

「あぁ乃木、いらっしゃい」

 

明日は大晦日だという今日の夕方、乃木が病室に来てくれた。

 

「調子はどうですか?」

「昨日の今日でそんな調子良くならないわよ」

「勉強の方は?」

「...聞かないで」

「わかりました~」

 

理解できてるできてないはともかく勉強の方は頑張っている。一応志望校の過去問はそれなりの成績を出せた。

 

「椿も頑張っている以上、あたしも頑張らないと」

 

『入試まで本気出す。なにかあればメールくれ』とだけ送られてきたメールを境に、椿は病室にも来なくなった。

 

「そうそう、つっきーのことなんですけど...」

「どしたん?」

「昨日、第二回、つっきー密着24時やったんですよ」

「あんたも大概暇ねぇ...」

「愛の成せる技です~」

 

にべもなく語る乃木に、あたしの方が顔を赤くしてしまった。

 

「そしたらつっきー、昨日は部屋から出てないみたいなんですよね...」

「流石にそれはないでしょ?トイレとかあるし」

「それはそうなんですけど、数分で部屋の明かりがまたついて...心配だな~って」

「むぅ...椿らしいとは思うけどね」

 

わざわざメールまでして受験モードに入った椿が集中するのは当たり前のように思える。

 

「なので、突入作戦を許可して欲しいんです。勇者部の中で一番付き合いの長いふーみん先輩から許可もらえればいいかなって」

「なによそれ...大体突入って何するつもり?」

「ぼた餅の配給をします」

「うわびっくりした!?」

 

いきなり部屋に入ってきたのはぼた餅を持った東郷。

 

「糖分補給は必須です。風先輩もどうぞ」

「あ、ありがと。んー...」

 

数日前に見た椿の顔を思い出す。

 

『ごめん、ありがとう』

 

銀を助けたと言って、謝りながらも笑顔だったあの顔。

 

「...行ってきなさい。きっと椿も喜ぶから」

「ありがとうございます」

「というか、あんた達も銀と戦ってたんでしょ!?勝手に突っ走って!」

「まぁまぁ、全部終わったことですから」

 

(この子達椿より強情だわ!!)

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「すいませーん」

 

ミノさんの隣の家。ごく普通の一軒家がつっきーのお家。

 

つっきーのお母さんがお家に通してくれた。

 

「この前の子達ね。どっちが椿の彼女~?」

「私です~」

「違いますよ」

 

わっしーに否定されて、早速ぼた餅を届けに部屋へ向かう。

 

「なんか椿暗いから、励ましてあげて」

 

つっきーのお母さんから言われた言葉の意味をあまり理解できてないまま、部屋をノックする。

 

「古雪先輩、いらっしゃいますか?」

「っ!東郷!?!?」

「園子もいるんだぜ~」

「え、なんで、ちょっと待て!!」

 

鍵をかけられる部屋なのか、突入しようにも出来ない。どたばた音がして部屋の外まで衝撃が伝わってくる。

 

「何やってるんだろ?」

「教材をしまってるとか?」

「んー、なんだろね」

 

数分して。

 

「...なんで来たんだ」

「ぼた餅の配給です。受験勉強に糖分は必須ですから」

「......急に来るから驚いたよ」

 

やっとつっきーが部屋に入れてくれた。

 

「っ!」

 

顔に出ないよう確かめる。

 

「わざわざありがとな」

「いえ」

「...つっきー問題集出して~折角だから一問一答出してあげよう!」

「園子、もう三年の内容まで出来るようになってるんだったな...って、一問一答出すだけならあんま関係ないか。頼む」

 

それから一時間くらい、楽しくおしゃべりしたり勉強したりした。流石にわっしーも三年生の勉強は出来ないみたい。

 

「もうこんな時間か...そろそろ帰りな。日もくれるから」

「送ってくれないの~?」

「そんなことしてるなら勉強しろって言うだろ?」

「ふふっ...その通りですね」

「わっしー先行ってて」

「......私もいるわ」

「?なんかあるのか?」

 

しらを切っているつっきー。でもその目が泳いでいるのを見逃さなかった。

 

 

 

 

 

「つっきー。何を隠してるの?」

 

自分の部屋なのに厚着、そわそわした仕草、そして_______鼻につく鉄の匂い。

 

「......ごめん」

 

つっきーは謝るだけだった。その手も頭も震えている。

 

「何が...」

 

家に引き込もって、私達を避けようとしなくちゃいけない事情が何かある。

 

「きっと俺が話しても問題ない。でも、まだわからない以上お前らを巻き込みたくない」

「古雪先輩、話してくれませんか?先輩のこと...」

「ダメなんだ!!」

「っ...」

「あ...ごめん......今内容は絶対明かせない。でも、そのうち、安全になったら話す。だから...俺を信じて待っててくれないか?」

 

何か怯えるように、潤んだ瞳を向けてくるつっきー。

 

「......そんな風に言ったらずるいよ」

「そのっち?」

「だって...聞けなくなっちゃうもん」

 

大切な人が困ってる。何かに恐怖している。出来ることなら助けてあげたい。

 

「わっしー、今日は帰ろう」

「え、えぇ」

「園子...東郷...ごめん」

「いいよ」

 

ミノさんの時はちゃんと話をしてくれた。その人が、待ってくれと言ったから。

 

「__________っ」

「っ!?!?」

「そのっち!?」

「ちゃんと話すよう約束。破ったら口いくからね?」

 

だから、今はこれだけでいい。

 

「早く元気になってね~」

 

足早に部屋を出て、一言断ってから家も出る。

 

「...わっしー!恥ずかしいよー!!」

「あ、あんな破廉恥な!!」

 

(実質一回してるのにー!!顔が真っ赤だよー!)

 

私達は、バカみたく騒いでいた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「はぁ...はぁ...」

 

園子と東郷が帰って静まりかえった部屋の中で、俺の荒い息づかいだけが反響する。

 

「やっと、脱げる...」

 

厚手の服を脱いだ中のシャツは、血がへばりついていた。元は白の筈なのに、今は真っ赤。

 

「もうこれ、着れねぇなぁ...うっ」

 

急な吐き気を抑え込んだ。口の中が胃液の味に変わる。

 

天の神によって引き起こされる不幸を避けるため、俺は部屋に引きこもった。ここなら少なくとも車が突っ込んでくることはない。春信さんと会った帰りで事故に遭わなくてよかった。

 

昔は空を飛ぶ飛行機なる鉄の塊があったらしいが、いまこの四国にそんなものは存在しない。飛行機で飛ぶほど広い世界じゃないからだ。

 

「おぇう...ふぅ...」

 

胃液を体に戻して机に置いてあるノートを開き、傷を書き込んでいく。

 

恐らく友奈が全員にたたりを告げようとしてやめた次の日には、俺は紙で手を切り、それ以外のみんなもケガをした。

 

風の事故は、運転者のよそ見運転が原因となっているらしい。

 

本人、他人問わず注意力が下がっている。とすれば、天の神の呪いは大まかに言えば人の意識を左右させる物だと予想できる。

 

だから人に会わなければ他人が巻き込まれることはなく、引きこもってれば俺の被害も事故みたいな大きなものじゃなくてすむ__________そう考えていた俺の予想は当たっていた。

 

気づいたら傷があった。擦り傷、切り傷、打撲、火傷、刺し傷。

 

いつつけたかわからない。気づいたら部屋にある鋭利な物を体に刺したりしていた。

 

細かくこのくらいですむ方が恵まれていると感じる。本来なら風の事故を越える傷だから即死もありえるのだ。

 

が、無意識に自分で傷を増やしていくことに精神が病んでいくのを感じた。

 

精神的な傷を話すなら、頭痛、吐き気、寒気、感覚の麻痺。

 

それが続いて数日。まともでいれたのは二人に心配かけさせないよう頑張ったさっきくらいだろう。あの二人が来なければ狂っていたかもしれない。

 

「はぁ...ぐはぁ!!」

 

いつの間にか鉛筆で腕を刺していて、あわてて引っこ抜く。血がこぽっとわきだした。

 

「はぁ...はぁ!」

 

体がガタガタ震える。脂汗も止まらない。部屋は赤く染まりつつあり、血の臭いが鼻を麻痺させる。

 

次気づいた時には死んでいる。というのが冗談ですまされないレベルの現実として存在する。その事実が俺を極度の緊迫状態へ持っていく。

 

もしかしたらもうヤバい薬を飲んでいて死ぬだけなのかもしれない。次は首筋を切り裂くかもしれない。川まで歩いて飛び込むかもしれない。現せない不安で押し潰されそうになる。

 

怖い恐いこわいコワイコワイコワイコワイコワイ__________

 

「らあっ!!うるせぇ!!!!だまれ!!!!」

 

必死で恐怖を振り払う。手で頭をガリガリかく。

 

「耐えろ...なんとしてでも」

 

友奈を助けたい。彼女を助けるには、まず俺の膿を出しきる必要がある。

 

もし俺に呪いの残りがあったまま皆に会えば、話をすれば、伝播するかもしれない。もう春信さんと、出会うだけでダメなら園子、東郷は手遅れだけど__________

 

「俺以外に被害を出したら許さねぇ...」

 

この事態に自ら首を突っ込んだのは俺だ。やるなら俺だけでいい。

 

「それから...ここを傷つけるのもな」

 

二人がくる前はただただ恐怖しかなかった。銀とは違う、異物が体に入り込んで暴れている感覚に何度も血と胃液を吐いた。

 

でも、まだこの頬は湿ってて、温かい。

 

今天の神と戦っているのは俺だけ。だが、俺は一人なんかじゃない。

 

(安全だと分かれば...それまで、待っていてくれ...)

 

きっと生きてみせる_______また刺していたシャーペンを抜いて、俺の年末は過ぎていく。

 

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