古雪椿は勇者である   作:メレク

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密かな夢だった一ページ丸々新規感想が叶って最近驚いたり感謝したりしてばっかだなと感じました。ありがたい......本当にありがとうございます(n回目)

感想、似たような返事かもしれませんがすいません。ボキャ貧な自分を許してください...

下から本編です。


四十九話 結果

綺麗な顔だね。

 

そうね。早く起きないかしら。

 

...行こうか。

 

......えぇ。

 

またね。銀(ミノさん)。

 

 

 

 

 

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「......」

 

気づいたら、白い世界に漂っていた。上下感覚もなく、ただただ漂う。

 

なんだかふわふわして気持ちいい。

 

(俺は、年末越えて、それで...あれ、年越えたっけ?)

 

曖昧な記憶、かけ落ちた感情。これは_______なんだ。

 

「ここは...」

「やっと起きた!」

 

光が集まって、赤い姿が形作られる。

 

その姿を俺が見間違う筈もない。

 

「え、あ、ぎ...銀!!」

「おう!久々...でもないか」

 

頭に両手を置いて笑う銀に、俺は思い切り抱きついた。

 

 

 

 

 

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「はぁ、はぁ!」

 

体が熱い。胸の刻印は徐々に広がっている。

 

「はぁ...私は...勇者だ!」

 

天の神の呪いは治まることを知らないみたいで、私の体を苦しめる。

 

生け贄は私だけがやらなきゃならない。誰にも渡しちゃいけない。巻き込みたくなんかない。

 

「勇者は、挫けない!!」

 

 

 

 

 

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「お前...というかここは」

「んー、アタシも説明しにくいんだけどな...この世界は神もない、地獄も天国もない狭間。精神の世界かな。アタシは椿を助けに来たんだ」

 

銀の言葉に理解が追いつかず思考が止まった。

 

「なにそれ」

「簡単に言うと、幽体離脱した魂が残る場所かな?椿は体の痛みに耐えられなくてここへ来たんだよ」

「!!」

 

成長したらこんな感じだろうなといった容姿の銀から飛び出たのは、俺が天の神との戦いに勝てなかったということに等しい。

 

つまり、痛みに耐えられなくて、死んだのだ。

 

「そ、そっか...ダメだったんだな。俺は......ははは...」

「いーや、諦めるな!」

「は?」

「言ったろ?助けに来たって。アタシがここであの体に慣れるため居続けてるように、椿もここならまだ戻れる。まだ助かる」

「!!」

「椿はすぐ自分の体に戻ればいける。あとは本人の意思次第」

「...ありがとう、銀」

 

銀が来てくれなかったら、きっと俺は諦めて本当の意味で死んでいたかもしれない。この空間を気づくこともなく消えていたかもしれない。

 

でもまだいける。彼女がそうだと言うなら、信じられる。

 

(そうだ。俺のやることは...)

 

かつて俺を助けてくれた少女(友奈)を、救うことだ。

 

「銀も、早く戻ってこいよ」

「あぁ!頑張るさ!」

「...また」

「うん。また!」

 

俺は白い世界の中、強く光輝く方へ泳いでいった。

 

遠い遠い光の先。どこまでも手を伸ばして__________

 

 

 

 

 

「ちょっと無理言い過ぎたかな...ま、いいか。でも園子もいーよなー、アタシもキ、キスくらいしとけばよかった...いやいや、戻ってすればいいんだ。根性見せろアタシ!!」

 

きっとそっちにいくから、もう少し待ってて__________

 

 

 

 

 

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「ん...」

 

気づいた時には年が明け、更に三日過ぎていた。

 

「俺は...?っ!!!?」

 

ズタズタの体のキズが擦れて叫びたくなる。だが、それが生きているんだと思わせてくれる。

 

 

 

 

 

そう、まだ生きていた。体は血まみれ、顔は死人みたく白くて、頭は痛くて、衰弱した指は細くなってまだ震えている。でも、生きていた。

 

無意識の自傷行為も吐き気もぱたりと止んだ。傷を書いていたノートに炭と血がつくこともない。それから既に二日。

 

『お姉ちゃんが明後日退院になりました。皆で初詣行きませんか?』

 

樹の提案で七日は初詣へ行くことに。

 

「...よし!」

 

俺は、春信さんへ電話をかけた。

『もしもし、どうかしましたか?』

「あけましておめでとうございます...話がしたいです。明日にでもどうですか?」

 

 

 

 

 

いつものファミレスで、俺はドリンクバーだけ頼んだ。

 

(思ったより体が弱ってる...)

 

家からここまで歩くのに普段あがらない息があがった。

 

「お待たせしました...!」

 

指定された時間の二分前に春信さんは到着。俺の顔を見て目を丸くしてから、同じくドリンクバーを頼むのを確認し、俺は口を開いた。

 

「ここ数日、俺は天の神の呪いを受けていました」

「っ...」

 

少しだけ袖を捲る。かさぶたやまだ出血していて絆創膏で隠された傷だらけの腕が外気に触れた。暖房が入っていても傷口が寒さで震える。

 

(っ...このくらいがなんだって)

 

腕だけじゃなく体全体に傷は入っているが、顔と首に傷がないのは何故なのかわからない。

 

(元から殺すつもりはなかったのか、試すつもりだったのか、神樹様が助けてくれたのか...銀が手伝ってくれたが一番嬉しいな)

 

「風みたく事故に遭わないよう外出しないで引きこもってたら、無意識にコンパスだったり鉛筆だったりを刺してました」

「それは...首もとに刺されなくてよかったね」

「ホントですね。あと知らないうちに家から出て事故とか」

「...無事でよかった」

「ありがとうございます」

「......落ち着きすぎですよ。こっちが動揺する」

「あはは...色々凄いのがあると、大抵のことが小さく見えますよね」

「中学生の発言じゃない...はぁ。気にしても仕方ないか。そういうことなら、これを持ってきて正解でした」

 

渡されたのは端末。シンプルな物だが、俺にはよく見覚えがあった。

 

「あの、もう俺は勇者には...」

「えぇ。これは戦衣です。改修が済んだので。今回のは凄いですよ。勇者に近い治癒能力向上もしこまれています」

「!助かります。でも、時間がかかるんじゃ...」

「僕だけならあと半月はかかったかな...それから、これを」

 

渡されたのは一枚の手紙だった。

 

「これは?」

「中を読んでみるといい」

 

言われた通り開けると、『古雪椿様へ』から始まっていた。

 

初めまして。楠芽吹といいます。防人の隊長を勤めている者です。

 

あなた様のお陰で、防人の装備は次々バージョンアップされ、星屑、バーテックスとの戦いで私達は任務を達成することができ、かつ全員がここまで生きています。

 

私達は感謝していました。そして恩返ししたいと。そんなとき、防人の装備の件を聞き、力及ばずながら協力させていただきました。

 

お役に立てたなら嬉しいです。私達のお役目は一旦終わっていますが、また互いに離れた場所から協力できることを祈っています。

 

「今回君の戦衣は防人それぞれから装備の一部を貰って作り、僕が強化したものだ。まだ勇者には劣るけど通常の戦衣の三倍近い能力と、治癒向上能力もつけている。レイルクスも改修済み。武器は刀だけになってしまったけどね」

「......」

 

春信さんの言葉を聞きながら手紙をしまおうとしたが、もう一枚こぼれ落ちた。

 

「?」

 

隠しとけば大赦の閲覧を間逃れるだろうと踏んで書いてます。一枚目を読んでくださった前提で話しますね。

 

私は始め、貴方のことを快く思っていませんでした。防人は勇者になれなかった者達で構成されています。私も、自分が勇者の癖に私達に干渉してくるなんて...と思っていました。

 

実際、初めて改修された武器を私が使うことはありませんでした。

 

ですが、私は任務を繰り返すうち、仲間の大切さを学びました。一人じゃない、皆と、仲間と共に生き抜くこと。誰も犠牲にならない道を目指そうと隊長の責務を全うしました。

 

そして、勝手ですが、貴方も、他の勇者の方も、共に戦う仲間だと思えるようになりました。今回のは、貴方が仲間を助ける為だと聞いて私達から協力を打診しました。

 

この力が、貴方の大切な仲間を守れるものになることを願っています。楠芽吹。

 

追記!

 

メブはとっても硬い性格だからこんな先輩に対して上からな文しかかけなくてすいません!加賀城雀。

 

「ふっ...」

「どうやら、大赦は杜撰だったみたいですね。検閲は済んだと言われていたけどなぁ...」

「あの、防人の人に会うことがあったら伝えてください。今度はこちらから直接お礼を言わせて頂きます。と」

「わかりました」

 

長めの手紙を今度こそしまう。

 

(...俺は、会ったこともない人にも助けられてるんだな)

 

「春信さんは怪我とかしてませんか?」

「特には。夏凜が帰ってきたことに喜びすぎて小指をぶつけたくらいです」

「やっぱシスコンだなあんた!けほっけほっ」

「無理しないで。君もいつも通り、敬語を無理に使われると逆に違和感がありますよ。そんな感じでいい」

「...はぁ」

 

自然と笑みがこぼれた。俺はまだやれる。一人で戦うことなんてない。

 

(あとは...!)

 

たった一人で、今なお苦しんでいる少女がいる。やっと彼女に、天の神に向き合う準備がすんだ。

 

「じゃあ本題に...新しく友奈を天の神から解放する手段や、弱った神樹様を復活させる方法は?」

「何もなし。僕達に出来ることはまだ何もないよ」

「ここはある流れだろ!?おい!」

「いつもより強気ですね!?」

 

一月六日は、こうして簡単に過ぎていった。

 


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