古雪椿は勇者である   作:メレク

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五十一話 御記

まだ寝てるんですね。

 

初めまして。名前は...どうでもいいですね。貴女に渡したいものがあってきました。

 

今、使える可能性があるのは貴女だけなので。

 

君の幼なじみは、友達は、絶望的な状況をまだ諦めてません。もし手助けがしたいというとき、これは必要でしょう?

 

望むことをできるように。目覚められるように。僕からも祈っています。

 

 

 

 

 

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「で、なんで呼び出したの」

 

園子の家で揃った友奈以外の勇者部の中で、風が口を開いた。

 

「多分、呼んだ理由は園子と東郷と同じだよ」

「つっきー、話してくれなかったね」

「確認取れたのお前と同じ今日なんだから仕方ないだろ」

「むー」

「口をこっちに向けないで」

「そっちだけで話を進めないでくれる?」

 

思ったよりきつめの声が出てしまって、二人が黙ってしまった。

 

「あ、いや...ごめん」

「...まぁ、仕方ない。それで誰から話す?」

「なら私から」

 

東郷が取り出したのは、青が基調の『勇者御記』とかかれたもの。

 

「それは...」

「友奈ちゃんの部屋から拝借しました」

「は!?」

「これは友奈が書いたってこと?」

「不法侵にゅ...」

「なにか?」

「いや、なにもないです。すいません」

「最近友奈ちゃんの様子がおかしかった。その原因がここに書かれてると思うんです」

 

さっきまで会っていた友奈、『なんでもない』と話していた友奈のおかしかった原因が、勇者と書かれたものに乗ってるかもしれない。

 

「私もゆーゆが心配で調べてみたんよ。最近、私大赦に行ってたんだ」

「俺も大赦から話を聞いてた。ついでにいえばそれの中身をそれなりに知ってる」

 

私の方をちらりと見た椿は、そのまま説明を続ける。

 

「結論から先に言うと、友奈は天の神のたたりに苦しんでいる。誰かに話したり書いたりするとたたりが移るとんでもないのにな」

「っ!!!」

「だから、この本は凄く危険なものなんだ」

「まずは俺が話すよ。幸い友奈以外の人が話すぶんにたたりはないからな。よく聞けよ?」

「その必要はないです。私はこれを読みたい」

「東郷...」

「友奈ちゃんが心配なんです」

「...他は?」

「聞く必要、あると思う?」

「......わかった。なら開けよう。書かれたものならまだ被害が少ないって結果も出てるしな...ただし、全員命の覚悟をしろよ」

「そんなもの、友奈ちゃんの部屋へ向かった時点でできてます」

 

そして、椿は御記を開いた。

 

 

 

 

 

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全員友奈のことを知りたいというのはわかっていたから、御記を開いた。ここで皆の怪我を気にして開かないのは逆に皆の思いを踏みにじることになるだろうから。

 

以前読んだ日記の初日。その時点で全員の顔は青ざめた。ある程度の事情は分かっていた園子さえ苦虫を潰したような顔をしている。

 

そして、日記は続いていた。

 

『一月七日、風先輩が退院して皆で初詣に行った。皆といると元気が出るけど、移さないよう気をつけなきゃ。食欲はなかったけど、甘酒が美味しかった。椿先輩が背中をさすってくれてたお陰で、体に染み込んでいくみたいで、吐き気も止まってくれた』

 

『一月九日、吐き気は酷かったけど、部室にいる間は楽しい。また明日って言えるのが本当に嬉しかった。ただ、温泉に行けば皆にバレちゃう...とてもいけない。ごめんなさい』

 

『一月十一日、今日は体が元気だった!しっかり休んだのが効いたのかも!もっと体に良いことやってみよう!』

 

『一月十三日、胸が痛くて頭がくらくらする。皆とちゃんと会話できてなかったかも...椿先輩が家まで送ってくれて嬉しかった。年が明けてから、椿先輩は夢で見たときより優しい気がする。嬉しいな...でも、甘えちゃいけないな』

 

『一月十四日、いっぱい寝て、体調戻さなきゃ。でも、電気を消すのが怖い。暗いとそのまま取り込まれてしまいそうで』

 

『一月十五日、今日は夏凜ちゃんを傷つけてしまった。でも絶対言えない。ごめんなさい。帰り道も覚えてないくらい意識はもうろうとしてる。とても苦しい。体も心も痛くて痛くてぐちゃぐちゃになりそう!私はただ皆とすごしたいだけなのに!!!どうして______

 

ページがここで切り替わっている。

 

_______ふっー。弱音を吐いたらダメだ。私は勇者だから。頑張れ自分!勇者は挫けない!とにかく夏凜ちゃんに謝りたい。でも話せない...もうここでいっぱい書く。夏凜ちゃん、ごめんね。私夏凜ちゃんのこと大好きだよ。本当にごめんね...』

 

 

 

 

 

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「なによ、これ」

「どういうこと...ですか」

「春を、迎えられない...?」

 

涙が、止まらなかった。

 

「東郷!どこいくつもりだ!」

「離してください!全て私のせいなんです!!」

「わっしー落ち着いて!!」

「だってそうじゃない!天の神の怒りは収まっていなかった!!私が受けるべきたたりなのよ!!」

「移っても友奈自身はダメなままなんだ!これ見てみろ!!」

 

ばっと腕を捲る椿、その腕は傷痕だらけだった。

 

「っ!」

「友奈から俺は直接話を聞いた!夢だと信じこんだあいつは全部話したよ!そしたらこれだ...風みたく大きな怪我にはならなかったが、血を流しすぎて死にかけてんだよ。それでも、友奈は治らない」

「つっきー...」

「古雪先輩......」

 

椿の声で東郷が止まっても、まだ震えている奴もいる。

 

「大赦はまた、あたしたちに黙って!」

「たたりが伝染する以上、うかつに話せなかったんだよ。俺もな...黙ってて悪かった」

「椿...」

「言われなくてもわかってる。また黙ってたからな...許してくれとは思わない」

「ふーみん先輩...言っても大丈夫って確認取れたのは、今日なんだ」

「......わかってるわよ。あたし達を心配してくれたから、言わなかったんでしょ。それを無理して言えってゆうほどあたしは強くないわ...同じ状況なら、黙ってそうだしね」

「...ごめん」

「...た」

 

私は、もう耐えられなかった。

 

『私、友達の力になりたかった...!!!』

 

「友奈が...友達がこんなに苦しんでるのに私、酷いこと言っちゃった...酷いこと言っちゃったよぉ...!!」

「夏凜さん...」

 

樹が背中をさすってくれるけど、涙も嗚咽も止まらなかった。さっき友奈といた自分を殴りたい。あんたは友達のことなにもわかってないって否定したい。

 

「友奈...友奈ぁ......」

「......先輩、そのっち、友奈ちゃんを助ける方法はないんですか?」

「...」

「......現在調査中。大赦の中はてんやわんやだろうよ」

 

 

 

 

 

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結局、あの日はそのまま解散となった。誰からともなく『今日は帰ろう』と言ったのだ。

 

次の日友奈ちゃんを起こしに行ったら、私のことをすぐ心配してくれた。本当は自分のことでいっぱいいっぱいな筈なのに。

 

私は友奈ちゃんに救われた。今度は私が助ける。

 

意気込んでも友奈ちゃんを助ける方法は未だ見つからず__________

 

「東郷さん」

「うん」

「私ね」

「うん」

「結婚します」

「うん...うん!?」

 

ある朝、登校中に言われたのは、信じられない一言だった。

 

「けけけ結婚!?」

「うん。突然ですが、結城友奈は結婚します」

「な、何を言ってるの友奈ちゃん!まだ中学生なのに!大体古雪先輩も中学生でしょ!!」

 

友奈ちゃんが今結婚するなら古雪先輩しかいない。でもそんなお付き合いを越えていきなりなんて_______

 

「私が結婚するのは神樹様だよ」

「......ぇ」

 




風先輩や皆が椿の傷を見て大して言わなかったのは、強化型の戦衣でほとんど傷が治ってたからでもあります。春信さんに助けられた。
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