古雪椿は勇者である   作:メレク

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五十四話 最終決戦 前編

私の命がもうだめなら、それで、皆が助かるなら。

 

「怖くない」

 

『でも、これだけは教えてくれ。友奈はどうしたい?』

 

「怖くない」

 

『お前の本心、望むことを、聞かせてくれないか?』

 

「怖くない...っ!」

 

 

 

 

 

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決戦の開幕を告げたのは、天の神の一撃だった。

 

以前止めたことのある太陽の様な攻撃を全員で回避する。喰らった時なんて考えたくもない。

 

「あいつを食い止める。か...」

「風!あんた達は友奈の所へ!ここは私が抑えるから!」

「夏凜!?」

「大丈夫。私にはまだ満開がある!!」

 

離れていく夏凜を見て、風と顔を見合わせる。

 

「風、行ってくれ。俺も残る」

「椿...あんたの装備じゃ」

「装備とかそんなの関係ない」

 

勇者より性能が劣る戦衣。だが、そんなもの関係ない。

 

(俺は前衛だからな。それに...あいつがもしこれを望んでなければ...聞かなければ、俺の思うことができる。全力で助けるために抗うことが)

 

だから、俺が会うのは最後でいい。最後に友奈の本心が聞ければいい。

 

(......それに)

 

最初に彼女の心を取り戻すのは、満開をした彼女だと思うから。

 

「アタッカーの仕事奪うなよ。やらせてくれ」

「...あーもー分かったわよ!我が儘なんだから!!友奈に伝言ある?」

「んなもんねぇよ。あいつに直接会って言うからな。あと頼む!!」

 

満開しようとしている夏凜の後を追って、俺はレイルクスの翼を広げた。

 

落ち着いて話すのは全部終わってからでいい。 そう思って。

 

 

 

 

 

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「椿...」

 

飛んでいく椿はどうしても心配になる。この前お腹が切り裂かれてるのを見たら嫌でもそうなるだろう。

 

「お姉ちゃん...私」

「樹、ここお願いできる?」

「...うん!!お姉ちゃんは友奈さんの所へ!」

「えぇ!無事でいるのよ!」

 

樹は勢いよく頷いてくれた。

 

(もうこの子は守られるだけの存在じゃなくなったのね...姉として嬉しいけど寂しいな)

 

感傷に浸りたいけどそんな暇はない。あたしは神樹様の方へ、樹は椿達の方へ走り出した。

 

「風先輩!乗ってください!!」

「東郷...よし、友奈のところまで行くわよ!!」

「最大艦速で向かいます!!」

 

満開した東郷の船に乗って、あたしたちは駆け抜ける。

 

私がこの争いに、勇者に巻き込んでしまった。だから命を張って助けたい。

 

(間に合って...神婚を止める!)

 

 

 

 

 

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目の前には敵。圧倒的な威圧感を感じる。

 

(でも、やらなきゃ...友奈に謝らなきゃ。一緒に帰るんだ!!!)

 

「当代無双!三好夏凜!!!一世一代の大暴れをとくと見よー!!!」

 

満開して、天の神まで飛んでいく。勿論相手も何もしないなんてことはなく、何度か見たことある光の矢を放ってきた。

 

「っく!!」

 

直撃コースを弾いても、頬が赤く染まる。

 

「こいつ、バリアを!?」

 

(こいつが風を...!!)

 

精霊バリアがあったはずの風が事故で怪我した理由も、きっと__________

 

(椿の傷も!!!)

 

「ふざけるなぁぁぁぁ!!!!」

 

矢が雨の様に降ってくるけど、満開した腕で防いで強引に突き進む。

 

やがて止んだ雨から突っ込もうとして__________何かぶつかった音が、背中から聞こえた。

 

振り向くと、さっきかわした筈の矢が沢山。

 

「ぇっ!?」

 

もう避けられない________

 

「前に出過ぎちゃダメだよ。にぼっしー」

 

その矢は園子の盾に防がれた。

 

「園子...」

「私この前満開しちゃったし支援だけしてるねー?」

「...背中、任せるわよ」

「はーい!」

「てぇぇぇやぁぁぁぁ!!!」

 

矢を反射していた反射板を、椿が破壊する。

 

「おいおい一発でひび入るのかよ...園子!掴まれ!」

「うん!」

 

空を飛べる椿が飛べない園子の手を掴む。

 

「夏凜!俺達で援護する。派手にぶちかませ!!」

「椿...えぇ!!」

 

気合いを入れるのもつかの間、次はどこからともなく何十本という針が向かってきた。

 

「守りましょう。友奈さんが帰ってくるこの場所を」

 

私達に届くことなく、満開した樹のワイヤーが針を全て切り刻んだ。

 

「樹!」

「俺達で意地でも止める!!」

「...やるわよ!!続けぇ!!!!」

 

 

 

 

 

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「......」

 

後ろの爆音が伝わってきて、振り向きたくなる気持ちを一生懸命抑える。

 

(早く...もっと早く!!)

 

神樹様への道はもう少しかかる。何かが引きずられた跡があるから友奈がいるのはわかってる。猶予なんかないのに________

 

「...なに、あれ」

 

突然空に入った亀裂に思わず声を出してしまった。炎のような線が入って、二つに割け、そこから炎を纏った星屑が飛んでくる。

 

「くそっ、時間がないってのに!」

「迎撃します!!」

 

東郷の戦艦がフル稼働しても、蛇行運転にするしかない。

 

「風先輩」

「っ!」

「総員退艦!」

 

すぐに東郷の意図が分かったあたしは飛び降りる。東郷の戦艦は炎の中へ突貫し、爆発した。

 

「大丈夫、東郷?」

「はい。それより友奈ちゃんを...」

 

満開の疲れを見せずに走り続ける東郷とあたしに、今度は樹海が攻撃してきた。

 

「神樹様に妨害されてる!?」

「そりゃ自分の結婚邪魔されたくないのは分かるけどね...今回ばかりは神樹様でも許さない!!」

 

前は神樹様、後ろは天の神。妨害されてもあたしたちには進むしかない。

 

 

 

 

 

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「吹っ飛ばすぞ!」

「いいよー!」

 

私と夏凜さんが大きな針、矢を対処、椿さんと園子さんが炎を纏う星屑を倒し、細かい攻撃を防いでいく。

 

全員が全力で動いているけれど、天の神の猛攻はちっとも休まらなかった。

 

「樹危ない!」

 

後ろから迫っていた攻撃を椿さんが刀で弾いてくれた。

 

「すみません!」

「気にすんな。前だけ見て夏凜の支援を頼む!雑魚は俺達が!」

 

一人で前に進んでいく夏凜さんを援護しながら、まだまだ続く戦いに気合いを入れ直した。

 

(私の満開が終われば一気に戦況が壊れる...もっと、もっと!!!)

 

手を握る力を強めて、らしくなく叫んだ。

 

「たぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

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「これ...」

 

私と風先輩は足を止めざるをえなかった。道の先は樹海の壁で覆われて、満開し終わった私とゲージが減ってて使えない風先輩は飛んでいけない。

 

「ここまで来て...」

「......東郷」

「?」

「やれる?」

 

何のことかなど聞くまでもない。

 

「必ず」

「なら、道は...」

 

自身の大剣を構える風先輩。

 

「あたしが」

 

残った満開ゲージを使って、大剣が何十倍にも膨れ上がる。地面にめり込んだ足を一歩出す。

 

「切り開く!!!!」

 

降りおろされた剣は、樹海の壁を破壊した。

 

お礼を言う時間すら惜しく、その剣の上を私は全力で駆けた。

 

 

 

 

 

「え?」

 

気づくと、真っ暗な空間にいた。重力がなくて、どこまでも泳いでいけそうな空間。

 

見回すと、眼下に白い糸と、それに捕らえられた彼女がいた。

 

「友奈ちゃん!!」

 

 

 

 

 

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「夏凜!!」

 

満開が終わったにぼっしーをつっきーが抱えて戦場から離れる。

 

「まだ私は...」

「地面で戦ってたんじゃ焼かれて終わりだぞ」

「でもここままじゃ天の神が!」

 

いっつんの満開も終わっていて、このまま戦い続ければ私達が死ぬ可能性もある。

 

「......俺がいく」

 

(そう言うと思ったよ)

 

たった一人になっても、きっとそう言うよね。だって貴方だもの。

 

「あんただって、空飛べるだけでしょ!?」

「そうです!もし死んだら友奈さんも私も皆も許しませんよ!!」

「大体あんたの刀も折れてるじゃない!!」

「でも、まだ天の神を止めなきゃいけない...せめて、注意を向かせるくらいは......」

 

つっきーらしい言葉。出来ることなら私も行かせたくなんてない。ずっと隣にいてほしい。

 

「...つっきー」

「?」

「私達は、一緒にいっちゃダメなんだよね?」

「......」

 

無言は肯定。満開した二人はその疲れが溜まってるから絶対行かせられないし、かといって私も右手をやられてるから行かせてくれない。

 

「......ちゃんと、帰ってこれる?」

「...約束となると、破ってること多いからしにくいけど......必ず戻ってくるよ。やらせてくれ」

 

私を見つめるつっきー。

 

「園子、あんたまさか」

「園子さん...」

「ゆーゆが戻ってくるまでまだ時間がかかる...ちゃんと、戻ってきてね」

 

私は、自分の使ってる槍をつっきーに渡した。

 

「少しは使えるでしょ?」

「ありがとう、園子...」

「あー!勝手に決めて!椿!!」

「ごめん...」

「そんな言葉聞きたくないわ!ほら!やるからにはさっさと殲滅してきなさい!!」

「私でも、椿さんの力になるなら...」

 

にぼっしーの刀、いっつんの花飾りみたいな武器もつっきーは受けとる。

 

「...ありがとう。行ってくる!」

「帰ってきたらハグしてあげるからねー!」

「「なっ!?」」

 

(お願いつっきー。ゆーゆが助かるまで...貴方も無事でいて)

 

ミノさんも、力を貸して__________

 

 

 

 

 

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(皆ごめん。ありがとう)

 

「随分進んでくれたなぁ。そんなに世界を壊したいか」

 

汗が止まらない熱さの中。俺は天をあおぐ。

 

戦場でたった一人。相手は人が戦う次元を遥かに越えた神そのもの。

 

呪いは人を苦しめ、その残り香でさえ人の意識を弄ぶ。放って置けば世界を消す文字通りの天災。

 

対して俺は、勇者ではない。無垢な少女でもない。ただのおまけ。勇者の魂を一時的に保管した入れ物。

 

でも、果たすべき約束と、守りたい思いは変わらないから。その魂は勇者でありたいから。

 

右手にはさっきより細めの刀。左手には使ったことない槍と花飾り。

 

「だが」

 

それが力をくれる。一人じゃないと教えてくれる。

 

怖くても、弱くても_______最後まで。

 

最初に武器を握った時は、復讐のため。自分の心を満たすためだった。今は彼女のため、彼女達のために、この力を使い尽くそう。

 

 

 

 

 

「こっから先は、通さない」

 

俺達が、貴様の相手だ。

 

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