私の命がもうだめなら、それで、皆が助かるなら。
「怖くない」
『でも、これだけは教えてくれ。友奈はどうしたい?』
「怖くない」
『お前の本心、望むことを、聞かせてくれないか?』
「怖くない...っ!」
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決戦の開幕を告げたのは、天の神の一撃だった。
以前止めたことのある太陽の様な攻撃を全員で回避する。喰らった時なんて考えたくもない。
「あいつを食い止める。か...」
「風!あんた達は友奈の所へ!ここは私が抑えるから!」
「夏凜!?」
「大丈夫。私にはまだ満開がある!!」
離れていく夏凜を見て、風と顔を見合わせる。
「風、行ってくれ。俺も残る」
「椿...あんたの装備じゃ」
「装備とかそんなの関係ない」
勇者より性能が劣る戦衣。だが、そんなもの関係ない。
(俺は前衛だからな。それに...あいつがもしこれを望んでなければ...聞かなければ、俺の思うことができる。全力で助けるために抗うことが)
だから、俺が会うのは最後でいい。最後に友奈の本心が聞ければいい。
(......それに)
最初に彼女の心を取り戻すのは、満開をした彼女だと思うから。
「アタッカーの仕事奪うなよ。やらせてくれ」
「...あーもー分かったわよ!我が儘なんだから!!友奈に伝言ある?」
「んなもんねぇよ。あいつに直接会って言うからな。あと頼む!!」
満開しようとしている夏凜の後を追って、俺はレイルクスの翼を広げた。
落ち着いて話すのは全部終わってからでいい。 そう思って。
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「椿...」
飛んでいく椿はどうしても心配になる。この前お腹が切り裂かれてるのを見たら嫌でもそうなるだろう。
「お姉ちゃん...私」
「樹、ここお願いできる?」
「...うん!!お姉ちゃんは友奈さんの所へ!」
「えぇ!無事でいるのよ!」
樹は勢いよく頷いてくれた。
(もうこの子は守られるだけの存在じゃなくなったのね...姉として嬉しいけど寂しいな)
感傷に浸りたいけどそんな暇はない。あたしは神樹様の方へ、樹は椿達の方へ走り出した。
「風先輩!乗ってください!!」
「東郷...よし、友奈のところまで行くわよ!!」
「最大艦速で向かいます!!」
満開した東郷の船に乗って、あたしたちは駆け抜ける。
私がこの争いに、勇者に巻き込んでしまった。だから命を張って助けたい。
(間に合って...神婚を止める!)
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目の前には敵。圧倒的な威圧感を感じる。
(でも、やらなきゃ...友奈に謝らなきゃ。一緒に帰るんだ!!!)
「当代無双!三好夏凜!!!一世一代の大暴れをとくと見よー!!!」
満開して、天の神まで飛んでいく。勿論相手も何もしないなんてことはなく、何度か見たことある光の矢を放ってきた。
「っく!!」
直撃コースを弾いても、頬が赤く染まる。
「こいつ、バリアを!?」
(こいつが風を...!!)
精霊バリアがあったはずの風が事故で怪我した理由も、きっと__________
(椿の傷も!!!)
「ふざけるなぁぁぁぁ!!!!」
矢が雨の様に降ってくるけど、満開した腕で防いで強引に突き進む。
やがて止んだ雨から突っ込もうとして__________何かぶつかった音が、背中から聞こえた。
振り向くと、さっきかわした筈の矢が沢山。
「ぇっ!?」
もう避けられない________
「前に出過ぎちゃダメだよ。にぼっしー」
その矢は園子の盾に防がれた。
「園子...」
「私この前満開しちゃったし支援だけしてるねー?」
「...背中、任せるわよ」
「はーい!」
「てぇぇぇやぁぁぁぁ!!!」
矢を反射していた反射板を、椿が破壊する。
「おいおい一発でひび入るのかよ...園子!掴まれ!」
「うん!」
空を飛べる椿が飛べない園子の手を掴む。
「夏凜!俺達で援護する。派手にぶちかませ!!」
「椿...えぇ!!」
気合いを入れるのもつかの間、次はどこからともなく何十本という針が向かってきた。
「守りましょう。友奈さんが帰ってくるこの場所を」
私達に届くことなく、満開した樹のワイヤーが針を全て切り刻んだ。
「樹!」
「俺達で意地でも止める!!」
「...やるわよ!!続けぇ!!!!」
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「......」
後ろの爆音が伝わってきて、振り向きたくなる気持ちを一生懸命抑える。
(早く...もっと早く!!)
神樹様への道はもう少しかかる。何かが引きずられた跡があるから友奈がいるのはわかってる。猶予なんかないのに________
「...なに、あれ」
突然空に入った亀裂に思わず声を出してしまった。炎のような線が入って、二つに割け、そこから炎を纏った星屑が飛んでくる。
「くそっ、時間がないってのに!」
「迎撃します!!」
東郷の戦艦がフル稼働しても、蛇行運転にするしかない。
「風先輩」
「っ!」
「総員退艦!」
すぐに東郷の意図が分かったあたしは飛び降りる。東郷の戦艦は炎の中へ突貫し、爆発した。
「大丈夫、東郷?」
「はい。それより友奈ちゃんを...」
満開の疲れを見せずに走り続ける東郷とあたしに、今度は樹海が攻撃してきた。
「神樹様に妨害されてる!?」
「そりゃ自分の結婚邪魔されたくないのは分かるけどね...今回ばかりは神樹様でも許さない!!」
前は神樹様、後ろは天の神。妨害されてもあたしたちには進むしかない。
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「吹っ飛ばすぞ!」
「いいよー!」
私と夏凜さんが大きな針、矢を対処、椿さんと園子さんが炎を纏う星屑を倒し、細かい攻撃を防いでいく。
全員が全力で動いているけれど、天の神の猛攻はちっとも休まらなかった。
「樹危ない!」
後ろから迫っていた攻撃を椿さんが刀で弾いてくれた。
「すみません!」
「気にすんな。前だけ見て夏凜の支援を頼む!雑魚は俺達が!」
一人で前に進んでいく夏凜さんを援護しながら、まだまだ続く戦いに気合いを入れ直した。
(私の満開が終われば一気に戦況が壊れる...もっと、もっと!!!)
手を握る力を強めて、らしくなく叫んだ。
「たぁぁぁぁぁぁ!!!!」
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「これ...」
私と風先輩は足を止めざるをえなかった。道の先は樹海の壁で覆われて、満開し終わった私とゲージが減ってて使えない風先輩は飛んでいけない。
「ここまで来て...」
「......東郷」
「?」
「やれる?」
何のことかなど聞くまでもない。
「必ず」
「なら、道は...」
自身の大剣を構える風先輩。
「あたしが」
残った満開ゲージを使って、大剣が何十倍にも膨れ上がる。地面にめり込んだ足を一歩出す。
「切り開く!!!!」
降りおろされた剣は、樹海の壁を破壊した。
お礼を言う時間すら惜しく、その剣の上を私は全力で駆けた。
「え?」
気づくと、真っ暗な空間にいた。重力がなくて、どこまでも泳いでいけそうな空間。
見回すと、眼下に白い糸と、それに捕らえられた彼女がいた。
「友奈ちゃん!!」
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「夏凜!!」
満開が終わったにぼっしーをつっきーが抱えて戦場から離れる。
「まだ私は...」
「地面で戦ってたんじゃ焼かれて終わりだぞ」
「でもここままじゃ天の神が!」
いっつんの満開も終わっていて、このまま戦い続ければ私達が死ぬ可能性もある。
「......俺がいく」
(そう言うと思ったよ)
たった一人になっても、きっとそう言うよね。だって貴方だもの。
「あんただって、空飛べるだけでしょ!?」
「そうです!もし死んだら友奈さんも私も皆も許しませんよ!!」
「大体あんたの刀も折れてるじゃない!!」
「でも、まだ天の神を止めなきゃいけない...せめて、注意を向かせるくらいは......」
つっきーらしい言葉。出来ることなら私も行かせたくなんてない。ずっと隣にいてほしい。
「...つっきー」
「?」
「私達は、一緒にいっちゃダメなんだよね?」
「......」
無言は肯定。満開した二人はその疲れが溜まってるから絶対行かせられないし、かといって私も右手をやられてるから行かせてくれない。
「......ちゃんと、帰ってこれる?」
「...約束となると、破ってること多いからしにくいけど......必ず戻ってくるよ。やらせてくれ」
私を見つめるつっきー。
「園子、あんたまさか」
「園子さん...」
「ゆーゆが戻ってくるまでまだ時間がかかる...ちゃんと、戻ってきてね」
私は、自分の使ってる槍をつっきーに渡した。
「少しは使えるでしょ?」
「ありがとう、園子...」
「あー!勝手に決めて!椿!!」
「ごめん...」
「そんな言葉聞きたくないわ!ほら!やるからにはさっさと殲滅してきなさい!!」
「私でも、椿さんの力になるなら...」
にぼっしーの刀、いっつんの花飾りみたいな武器もつっきーは受けとる。
「...ありがとう。行ってくる!」
「帰ってきたらハグしてあげるからねー!」
「「なっ!?」」
(お願いつっきー。ゆーゆが助かるまで...貴方も無事でいて)
ミノさんも、力を貸して__________
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(皆ごめん。ありがとう)
「随分進んでくれたなぁ。そんなに世界を壊したいか」
汗が止まらない熱さの中。俺は天をあおぐ。
戦場でたった一人。相手は人が戦う次元を遥かに越えた神そのもの。
呪いは人を苦しめ、その残り香でさえ人の意識を弄ぶ。放って置けば世界を消す文字通りの天災。
対して俺は、勇者ではない。無垢な少女でもない。ただのおまけ。勇者の魂を一時的に保管した入れ物。
でも、果たすべき約束と、守りたい思いは変わらないから。その魂は勇者でありたいから。
右手にはさっきより細めの刀。左手には使ったことない槍と花飾り。
「だが」
それが力をくれる。一人じゃないと教えてくれる。
怖くても、弱くても_______最後まで。
最初に武器を握った時は、復讐のため。自分の心を満たすためだった。今は彼女のため、彼女達のために、この力を使い尽くそう。
「こっから先は、通さない」
俺達が、貴様の相手だ。