いやマジでびびった。なにこれ。なにこれ。ありがとうございます。日間ランキング見たら8位でした。ありがとうございます。
本日は本編と設定没案なんかの公表and今後についての二話構成です。二話目はいつもの時間に。
「せっかくの高校なのに...皆と差をつけるチャンスなのに...」
「風?」
「...なんでもないわ。じゃあ、樹のこと頼むわよ」
「あぁ」
讃州高校入学式が終わった日。無事同じクラスになった風に別れを告げ、駐車場へ。
現在俺は、バイク通学をしている。昔の時代はもう少し年齢が上じゃないと免許が取れないらしいが、今は平気だ。
最も、乗ってるやつなんてほとんどいないけど。
「さーてと...」
スマホを嵌め込みエンジンを起動させ、ヘルメットを被り勢い良く飛び出した。
電気で動くこいつは、誰も通らない道を走り抜ける。
(やっぱりいないなぁ...)
限られた資源を節約するため、バイクも車も緊急以外は基本使われない。道はがらがらだ。
なら何で高校にあがったばかりの俺がバイク通学なんて出来るかといえば、ひとえにこのバイクとスマホのお陰だった。
勇者システムは地の神、神樹様がいなくなった時点で使用できなくなっている。逆に、ある程度人の努力で作り上げた戦衣は壊れてない。
勿論ただの戦衣は耐熱に優れたちょっと頑丈な服でしかないが、俺のは改造されかつての勇者の劣化版ではあるものの治癒能力向上が付与されている。
それを、春信さんがバイク含めてとんでも改造。治癒能力を電力に変え、その力で動くバイクを作り上げてしまったのだ。
三徹で作った本人は『僕は天才だぁ!!!』とマッドサイテンティスト染みた発言をして寝た。実際化け物だと思う。
こうして、入学祝いに資源に優しく現状一つしか作れないバイクを頂いた俺はそれを動かすため、必死で免許を取り、今に至る。
目指すのは三年間通っていた馴染みの場所。
数分で校門まで到着。既に樹が待っていた。
「椿さーん!」
「到着。ヘルメットな」
「してもらえますか?」
「そろそろ出来るようにしろよ...」
「へへ...ありがとうございます」
ヘルメットを着けるとき、頭は動かさない癖にやたら体だけもじもじするのはやめてほしい。かといって指摘するのも恥ずかしくて、さっさとつけた。
(なんせこれからもっと恥ずかしいもんな...)
「ほら、しっかり捕まれよ?」
「お願いしまーす」
バイクに二人で跨がる。さっきより安全運転でアクセルを踏んだ。
ぎゅっと腰に回された手と、後ろの暖かさを意識しないようにしてるとあっという間に目的地につく。
「ありがとうございます。椿さん」
「気にせず行ってこい」
「はい!」
とある建物へ入っていく樹と交代で出てくる人が声をかけてきた。
「古雪さん。いつもありがとうございます」
「そちらも気にしないでください。個人としても樹の方に予算回してほしいし」
「分かっています」
この方は樹のレッスンプロ。この建物は音楽会社。
樹は去年の夏前応募したオーディションに見事合格し、現在歌手として育成中だった。
勿論世界が混乱した打撃は受けていて、燃料の高騰化から送迎不可、歌を歌ってる場合かと予算もガリガリ削れているのだとか。
俺の仕事は放課後樹をこの会社まで送り届けること。燃料要らずのバイクが最大活用できるところであり、樹は徒歩で来る他の学生より多く練習時間を取れる。
本人から聞いた話だとCDが出せる時期もあと少しらしい。これを聞いた風はボロ泣きしていた。
「それじゃあ、俺はこれで。樹をよろしくお願いします」
「はい」
バイクをまた走らせて、讃州中学へ。目的地なんてたったひとつ。
「部長届けましたー」
「おつかれぇい!」
「ありがとね椿」
「相変わらず早いな風...歩きだとそこそこ遠いだろ?」
「そんなことないわよ」
勇者部部室には、六人がいた。全員学年が上がって、友奈、東郷、夏凜、園子、そして銀は中三。俺と風は高一、今いない樹は中二。
これも、世界が続いたお陰である。
「銀、大丈夫だったか?」
「おう!平気だぜ!」
「ボール投げ以外わね」
「うっ...」
「やっぱり...」
一足早く始業式、入学式が済んでいた中学では、今日は体力テストと学力テストがあったらしい。
俺と授業を受けてた時期はあるものの、あまり真面目に受けてなかった銀は、園子の指導の元勉強面はかなりよくなった。
問題は体力テスト。
「ミノさん凄いんだよ。ボールをぶわーって!」
「校庭の外まで出したんです!」
「アホ...加減はしてないのか」
「他は平気だったのよね...頑張ってたのに」
三ノ輪銀、今は乃木銀だが、そんな彼女は生物学的にいえば人間ではない。神に近い存在である。
今の彼女の体は神の使いバーテックスであり、その運動神経は人間の比ではない。事前にやらせた時は50mを三秒で駆け抜け、走り幅跳びなんかは二桁までいった。握力計はぶっ壊した。
だから怪しまれないよう注意していたのだが_______調子に乗ったのか、このアホはやらかした。
「強風が吹いたお陰だと全員納得させたので問題はないですけど」
「東郷、それ催眠とかじゃないよな?大丈夫だよな?」
「まぁ誰も信じないって!!」
ため息をつくものの、俺は笑顔だったと思う。
望んだ世界が、ここにあるから。