今日は銀です。下から本文です。
「......アタシさ。今までで今が一番幸せだ」
「...俺もだよ。銀」
銀が成人式を迎えた時、俺達は結婚した。
俺の気持ちが恋だと気づけたのは、三ノ輪兄弟のお陰だった。
銀は全てが終わって戻ってきてからあの二人と遊んでいて、二人も第二の姉のように仲良く過ごしていた。もしかしたら俺が知らないだけで、銀は真実を話していたのかもしれない。
『兄貴は全然わかってない!!よく考えろよ!!』
『銀おねぇちゃんの時みたいに、何も言わずに終わるなんてダメだよ!!』
高校生になった鉄男と中学生になった金太郎に怒鳴られ、俺は皆との関係を見つめ直すことにした。後から聞いた話だが、この時点であいつらは俺と銀をくっつけようとしていたらしい。
見つめ直した俺は________銀に告白することにした。気づいた時には感情が溢れていた。
『......遅いんだよ』
告白したときの彼女は、涙を溢しながら笑顔だった。
それから、付き合って、プロポーズして、式をあげて。それ以上のことをして。
彼女の体は年月が経つにつれて、普通の人間に近くなっていた。理由は不明。後遺症なんかも特になし。わけがわからなかったが、安芸さんが献身的に調べを進めてくださり、一つの仮説が立てられた。
曰く、銀の体は天の神との戦いが終わった時点で人間のもので、超人的な活動を可能としていた細いながらも異常についていた筋肉が衰えていった。それが、一番可能性としては高いと言われた。
まぁ_______俺達が一番喜んだのは、自分達の手で子供を成せることだった。なによりそれが嬉しい。二人の空間も幸せだったが、三人に増える瞬間はきっともっと幸せなのだ。
そして、約半年と少しが過ぎる。
「頑張れ...銀」
今目の前では、出産のため苦しんでいる銀がいた。マジックミラーでこちらの姿は見れないが、俺の方からは呻いている彼女が見える。
『お嫁さんになる夢を叶えてくれたのが、椿でよかった』
そう言ってくれた彼女が、新しい家族を迎え入れようとしている。俺は祈ることしか出来ない。
(頼む...頼む!!)
神がいないのに神頼みをして、数時間が経過した。
「......」
涙が溢れた。
銀が、無事赤ちゃんを産んだのだ。防音のため産声は聞こえないが、銀の顔が涙で濡れている。
「よかった...よかった...」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます!!」
授かったのは女の子。きっと銀みたく可愛く、芯の入ったまっすぐな子に育つだろう。
だが、育てるのは俺達親の責任だ。
「...椿」
「どうした?」
数日後、崩してしまった体調を治した銀に林檎をあげてる時。
窓が開いていてそよ風が小学生時の髪型に戻した銀の後ろ髪を揺らしてる時。彼女が口を開いた。
「ありがとう。アタシの夢を叶えてくれて。アタシをこんなに幸せにしてくれて」
「...なに言ってんだ。これからもっと幸せになるんだよ...一緒に頑張ろう」
繋いだ手を絡める。確かな暖かみがここにある。
この手を二度と離さないと誓おう。
「...そうだな。二人で......いや、アタシ達三人で」
「...あぁ」
きっと、俺達家族ならなんだって乗り越えられる。
「じゃあ...まずはあの子の名前どうしようか?パパ?」
「パパって...間違ってないのか。候補は考えてきたぞ。まずな_________」
そよ風は、俺達を祝福しているようだった。