今時の結婚式は、神社で行われる和風な物と、大昔の別の国から取り入れたと言われる洋風なものと、二つある。
片方は着物。片方はドレス。花嫁を飾る装束はどちらも美しく、見るものを魅了する。
ならなぜ、俺がタキシードを着て、教会の一室で待機しているかと言えば__________
『椿先輩...私、ウェディングドレスが良いです』
友奈がそう言ったから。ただそれだけだ。
恋人になった俺と友奈は平和過ぎるほど順調に交際を続けた。遊園地デート、カラオケデート、バイクでドライブデート。
そんな俺が指輪と婚姻届を渡したのは、そう昔のことじゃない。
『結城友奈さん。俺と結婚してください』
『先輩...本当に、私でいいんですか?』
『...友奈以外、選べない』
『...嬉しいですっ!!喜んで!!』
花開くような笑顔を、これからもっと増やしたい__________俺の隣を歩んで欲しい。
「準備、できましたでしょうか?」
「あ、はい」
物思いに耽っていると、扉が叩かれたので外に出た。
「似合ってるじゃないか!」
「ありがとうございます」
少し大柄なこの方は友奈のお父さん。俺達が結婚することにすぐ賛成し、『友奈を守るしっかりした子じゃなきゃならん!』と武術も教えてくれた。
「友奈から聞かされ続けていたからねぇ...まだ嫁に出すのは早いと思っていたけど、君なら信じられる」
「...ありがとうございます」
俺は頭を下げることしか出来ない。大切な娘を貰う立場なのだから。
「お父さん。椿先輩」
「友奈...っ!」
「おぉ...」
声をかけてきたのは、純白のドレスに身を包んだ友奈だった。
「...どうですか?」
「......綺麗だ」
「んっ...ありがとうございます」
(あぁ。本当に...)
試着の時も見せて貰えなかったため、このドレスを着ることしか分かってなかった。綺麗だとは思っていた。でも__________想像を遥かに越え、俺は魅了される。
「友奈、いつまで椿君に敬語を使っているんだ?」
「へ?だって先輩だもの」
「もう家族になるんだから、先輩も後輩もないだろう」
「あ...」
「気づいてなかったのか...友奈らしいけど」
「あははー...椿さん?」
「っ」
いつからだろう。友奈の顔一つ一つに心が動くようになったのは。
「そろそろお時間です」
「私と友奈が先にいくからね」
「...はい」
いつからだろう。友奈の声で体が反応するようになったのは。
「古雪椿さん。貴方は、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、これを愛し、これを敬い、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
「結城友奈さん。貴女は健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、これを愛し、これを敬い、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
(あぁ。そうだ)
誓いの言葉を終え、指輪を交換し、彼女のベールを捲る。薄化粧した友奈の顔が間近にある。
「友奈...」
「椿さん...」
誓いのキスの場所は、予め話して決めていた。愛情の意を現す__________
(俺は初めから、彼女が好きだったのだ)
『......』
彼女の唇と俺の唇が繋がって、俺達の影は一つになった。