古雪椿は勇者である   作:メレク

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アフターストーリー 園子

「所長。資料の作成終了しました」

「お疲れ様。これで今日はいいよ。土日はゆっくりしてね」

「ありがとうございます!」

「乃木様。そろそろ」

「時間だね。じゃあ行こうか」

 

 

 

 

 

「いやー最高だよな!あの可愛さ!優しさ!胸!」

「おい新入り。酒飲みすぎだ」

「いいじゃないっすか!若くして所長なんて最強ですよ!先輩方だって可愛いと思うでしょ!?」

「......まぁそうだけど」

「ほら!皆さんが狙わないなら俺アタックしてみますよ!」

「「それだけはやめろ!!」」

「へ?何でです?あの人は結婚指輪つけてないっすよ?」

「はー...いいか。あの方は結婚してるしそんなことやろうもんなら命がないと思えよ」

「前やらかした奴は当時の新入りの中では一番仕事出来てたのに消された。俺達もヒヤヒヤしたぞ...」

「...も、もしかしてお相手ってレスラーか何か?」

「......いつも所長の隣に立っている秘書さんだ」

「え?あんなのもやしっこじゃないですか!」

「...はぁ。頼むから余計なことだけはしないでくれよ。所長や椿さんに聞かれたら...」

「俺、お前が暴れそうになったらお前が書いたことにして辞職届け渡すから」

「ひどいっすね!?」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「乃木さん」

「ややこしいから古雪でいいって」

 

後ろの席で集中している彼女を気にせず、車を運転する彼女のもう一人の秘書、俺の同僚に指摘する。相手は何故か知らないが俺にもいつも敬語だ。

 

「...古雪さん。乃木様だけ後ろで良かったのですか?」

「家に帰るまで集中モードだろうからそのままで。あの状態だとほっぺつついてもキスしても気づかないから」

「はぁ...」

 

四国外調査部隊。神から取り戻した四国以外の世界の調査は、大赦をはじめとした多くの組織が着手した。

 

その最前線の事務支部。主に隊と隊の連絡を中継したり、持って帰ってきた土壌サンプルの具体的調査、報告を纏めたりというのが、この会社『snow』の仕事だ。

 

類似の仕事とは一線を別つ対応力は現地で調査をする者達にも好評で、それは士気の向上、作業効率の向上に直結する。

その会社を管理するのが大赦から独立した所長である園子の役目であり、サポートが婿養子として乃木の名を受け取った俺の役目だ。

 

「着きましたよ」

 

経済的余裕からそれなりに使えるようになった電気自動車が停まる。

 

「ありがと。俺が運転してもいいんだぞ...?」

「乃木様に怒られてしまいます」

「やってることは他の奴等と変わらないのに、園子が無理矢理秘書にするんだもんな...あんたがいて本当によかった」

「乃木様のモチベーションに関わるので、これで良いと思いますよ」

「はは...ありがと」

 

拠点としている支部から少し離れた場所には、バーテックスに襲われたとは思えないくらい綺麗な建物が残っていた。今はそれが俺達の家だ。

 

「さーお姫様。帰りますよ」

「......おーつっきー。お家ついたの?」

 

お姫様抱っこして運ぶと、ようやく園子が戻ってきたらしい。

 

「お仕事お疲れ様。明日は休みだがどうする?もう寝る?」

「んー...お風呂~」

「いってらっしゃい」

「つっきーも入ろうよ~?」

「いや、今日寝れなくなるんで勘弁...我慢できない」

 

ここ一週間は少し慌ただしかったので、気力がかなり削られている。今そんなことをすれば理性を保てない。

 

「残念」

「...一緒に寝るから」

「ほんと!?やったぜフォー!!!」

 

(最近は毎日そうでしょうが...まぁいいか)

 

園子とは公私をはっきりしようということで、仕事中は一切甘えてこない。それでも側にいるよう仕向けるのがなんだか可愛くて仕方がないのだが。

 

それに、反動として家ではベタベタ甘えるのか日常だった。何をするにも大体一緒。

 

「...ま、悪くないんだけど」

 

園子もだが、俺だって好きな人からそう思われているのは嬉しい。

 

「......な」

 

見つめる先には、二つの結婚指輪が並んで飾られていた。俺が買ったシンプルな物だ。

 

意外と外に出ての作業も多く、汚したくないから二人して並べている。

 

(...)

 

今の世界は、昔ほど豊かではない。

 

でも、俺達は幸せな世界を__________

 

「つっきーお風呂あがったよ~」

「ほーいって服着ろよお前!?タオルだけとか!?」

「...襲っていいんだぜ?」

「っ!?!?」

 

言葉とは裏腹に、赤面してる彼女の息遣いとここまで届く甘い香りに。タオルが取られ、火照ってまだ水がついている体に。

 

感傷に浸っていた俺の理性は砕け散った。

 

「ぇへ...おいで。つっきー...いっしょに......気持ち良くなろ?」

 

 

 

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

週末が終わり、秘書の運転で出社中の時、園子の顔はつやつやで、俺の顔はやつれてるのを気にして声をかけてくれた。かけてほしくなかったけど。

 

「はは...気にしないでくれ。俺が負けたってだけの話さ......」

「ふふーん♪」

 

園子BGMを聞きながら、また一週間が始まる。

 

俺は、彼女に一生勝てないと思った。

 

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