古雪椿は勇者である   作:メレク

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自分、『アフターシリーズは七話構成です』とは言ってませんよね?多分。


アフターストーリー もう一つの__

「つっきー。なんで呼ばれたか分かる?」

「......」

「...そっか。じゃあやり易いね」

 

皆が、俺の方を向いた。

 

ここは俺達の思い出が詰まった部室。

 

「下手な小細工は無しよ」

「わかってます。負けません!」

「わ、わたしは...」

「やめるの?」

「...やめないわよ!」

 

勇者の時、皆で声を合わせたように。

 

『古雪椿さん。私と付き合ってください!!!』

 

息を揃えて、頭を下げた。

 

「......顔。あげてくれ」

 

彼女達の言葉に答えるのは、俺の責務だ。

 

途絶えそうな口を何度か開閉して、声を出す。

 

「...何から話そう。俺は、こうやって告白されるまで全然皆の本当の気持ちを分かってなかった。精々仲の良い友達くらいだと思ってた」

 

頭をあげた皆は、真剣に聞いてくれている。

 

「ある意味、良かったと思う。こうやって突然言われないと、皆から離れたかもしれなかったから。情けない奴で申し訳ない...」

 

その全員の瞳を見つめる。

 

「告白してくれて嬉しい...て、長すぎだな。返事をしないと...」

 

息がつまる。それは俺か、他の誰かか。

 

「......俺は」

 

頭を下げた。

 

「ごめん!!!!」

「...え?」

「俺は誰かなんて選べない!!!必死に考えた!でも今の俺が誰かの気持ちを断ることなんてできない!!!こんな気づいてすぐじゃ出せない!!!!皆が好きで、皆が大切なんだ!!!」

 

俺の返事は。

 

「だから時間をくれ!!それでもいいと言うなら...俺に、高校卒業まで返事を先伸ばしにさせてくれ!!!頼む!!!!」

 

彼女達の気持ちを理解した上で、それでも待てと。最低な言葉だった。

 

銀との付き合いの長さも。

 

友奈との明るい日々も。

 

東郷との大切な思い出も。

 

風との騒がしい日常も。

 

樹との穏やかな一時も。

 

夏凜との楽しい世界も。

 

園子とのドキドキする毎日も。

 

区別なんて、差別なんて、優劣なんてつけられない。

 

「......ぷっ」

「...あはは!!」

「くすっ」

「椿さんらしいですね」

「あたしの言ったとおりでしょ?」

「さすがつっきー」

「ま、こうなるわよね」

「...え?」

 

なんか嘲笑というかバカにされてるというか変な空気に俺が困惑してると、風が口を開いた。

 

「あたしたち皆ね。こうなるんじゃないか予想はしてたのよ。椿だし」

「...それって」

「そう。それでもあたし達全員告白した。意味は分かるわね?」

 

彼女達は、俺がこんな答えを出すのを承知の上で告白してくれたのだ。

 

「それでもいいと思って...?」

「椿先輩。私達、待ってますから!」

「っ!」

「さ、そうと決まればこの話はおしまい!犬吠埼家のパーティー会場向かうわよ!!」

『おー!』

 

(...敵わないなぁ)

 

「椿さん腕組みましょう?」

「いっつんが左なら私は右かな~」

「高校卒業までに弁当を使って胃袋を落とす...」

「ぼた餅に敵いますか?」

「...料理、始めようかしら」

「さ、椿先輩!」

「椿!行くぞ!」

「...あぁ」

 

 

 

 

 

振り返れば遥か遠く。高校時に、俺は七人から告白された。あまりの事態に慌てふためいたが、周りから見た俺達の関係はあまり変わらなかったらしい。

 

変わったことは皆が積極的になり直接的なスキンシップが増えたことと、俺がそれにちゃんと返しだしたことか。(勿論恥ずかしいことは恥ずかしいけど)

 

皆が好きだから。俺が選んでいいのかという気持ちもあるけど。答えを出すためにも、思いを受け止めていく。

 

そして、五年__________

 

「...受け止めたんだけどなぁ」

 

二階建ての一軒家。そのリビングでポツリと呟く。

 

真剣に受け止め日々を重ねた結果、俺はもっと誰かだけを選ぶなんて出来なくなった。

 

「ぁー...」

 

日射しがポカポカして気持ちいい。

 

四国で重婚は基本ない。大昔からこの国は一夫一妻制。

 

『でも、ダメとは言われてないよね』

 

それを言ったのは誰だったか。

 

『アタシ達はそれでもいいけど...椿はどうする?』

 

(これはお前だったな。銀)

 

答えをわかっていながら聞くのはずるいと思う。

 

「パパーママ達まだー?」

「お腹すいたー!」

「おはよー...」

「...どれからツッコミを入れればいいのか...ママ達はもうすぐ帰ってくるから我慢しなさい。ご馳走だからお菓子食べるなよ?楓(かえで)は着替え!」

『はーい』

 

誰が何を言おうと構わない。だが、俺達の幸せの形を拒むなら許さない。そうして俺は、春信さんを、大きな家である園子を含めた全ての両親を説得した。

 

最高の今を過去にして、思いでとして。

 

「翔(しょう)は皿並べんの手伝って」

「わかった!」

「たっだいまー!」

「ママだー!!」

「大丈夫?」

「須美は心配しすぎ」

「そんなことないですよ?私達の新しい家族がいるんですから!」

「そうだよミノさん」

 

一人一人がかけがえのない色を纏って、この生活を染め上げる。

 

「椿ー」

「こら夏凜、パパでしょ!」

「べ、別にアタシのパパじゃないんだからいいでしょ!」

「皆が真似しちゃうよ?」

「椿ー!椿ー!」

「ちゅばきぃー!」

「...夏凜」

「ご、ごめんなさい...」

「はぁ...おかえり」

『ただいま!』

 

 

 

 

 

 




というわけで、ルートハーレムでした。

リクエストでハーレム書いて。とあり、今日にはアフターストーリーでハーレムを書いてほしいとも来ていました。自分でも元から書いてたので...喜んで頂ければ幸いです。

明日から(の予定)のものはリクエストです。結構な数がきて、のわゆの件もあることで全て捌ききれてないのが現状ですが...なせば大抵なんとかなる!の精神で頑張ります

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