当時はこれを書くつもりはなかったので、後付けに近くなります。矛盾とかはないと思いますけど...どんな内容だったか忘れたぞって方は、是非本編四十話を見てから読みはじめてみてください。
下から本文です。
つけていた腕時計を確認すると、深夜二時を回っていた。
(思ったより時間かかったな...)
レイルクスの翼を広げ、壁の外の真実と戦い続ける。勇者部として終わった戦いは、人類としての戦いという意味では、何も変わってなかった。
いや、俺達が相手していたのはあくまで使いのバーテックスなのだから、なにも始まっていないまでもある。
「...今考えても仕方ないか」
既に両親も寝ているため、家には明かり一つない。事前に窓の鍵を開けているため、そこから直接自分の部屋に入る。週一の行動は慣れたものだ。
「...」
一応静かに窓を開け、部屋に入って勇者服の変身を解いた。
「......」
なんだが人の気配を感じて、電気をつける。
俺はこの時ほど自分の行動を悔いたことはない。電気をつけなければそれはそれで考えたくない地獄があったのだろうが。
「あ」
「おかえり。椿?」
風が声をあげたが、俺以外の勇者部全員がいた。
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時が止まったような気分になった。
(え、なんでこいつらが、え?)
同時に、本能が逃げろと告げていた。この空間は感じたことのないものに包まれている。
入ってきた窓から飛び出ようとして_______背中から何かが当たった。
「椿...椿ー!!!」
「風!?」
腕が回され、完全に抱き締められる。加減が一切ないのでウエストが普段よりだいぶしめられた。
「そうやってあんたは!!離れないで!」
「椿先輩!!ずっと一緒にいてください!もうこんなことしないで!!もう、どこにも...」
前に回った友奈も抱きついてきて、上目遣いで見つめてきた。涙をぼろぼろ溢して、小さな子供のように呟く。
(...俺は)
よかれと思ってやっていることだ。でも、二人の暖かさと友奈の顔が、動揺していた俺の心をかきみだす。
「と、とりあえず落ち着いてくれ...いや、俺が黙っていたのは悪かった。だから...」
どうしたらいいのかわからなくなる。俺の為にこんな子達を泣かせてしまった。
「古雪先輩」
「ぇ」
「今、貴方は自らの非を認めましたね?」
「ぁ...」
よく聞いていた筈なのに、初めてのように錯覚するドスの聞いた声。
「私にはやめさせといて、貴方は友奈ちゃんを、風先輩を、私を...皆を泣かせて!!!」
身も心も動けなかった俺は、何も構えることが出来なかった。
「ぐほっ...」
車椅子生活で鍛え上げられた東郷(元国防仮面)の怒りの鉄拳が、俺の顔面に叩き込まれた。壁に叩きつけられ、今日も傷を負わずに帰ったのになーなんて場違いなことを考えていた。
「樹ちゃん」
「はい!」
一瞬失っていた意識が戻った頃には、右手とベットを支える柱が手錠で繋がっていた。手が床から離せない________
「...手錠!?」
「安心してください。本物じゃないので...鍵がないと取れないのは、同じですけど」
笑顔で語る樹だが、その目は一切笑ってなかった。
「友奈ちゃんや風先輩は願うだけですが、私達は古雪先輩がそんなことでは止まらないと思いました。実力行使させていただきます」
(これ死ねる)
バーテックスなんかより遥かに怖い存在が目の前にいる。その事実が俺を震え上がらせる。
「まぁまぁ。椿、これでも飲みなさい」
そんな中、コップに入った飲み物を差し出してくれたのは夏凜。
(...そうだよな。ここまできたら全部話すしかないよな)
諦めて、全てを打ち明けよう。それが俺のするべき贖罪だ。
「ありがとう。夏凜...ひっ!」
水を飲んで、夏凜の方を向くと______声はいつも通りなのに、見たことのない顔をした夏凜がいて思わず悲鳴が漏れた。
「いいのよ。ちゃんと反省してくれれば。動かなければ...」
「お、お前...!!!何をいれやがったこれ!?」
いきなり腹にきた激痛を抑えながら聞くと、顔色一つ動かさない夏凜が答えてくれた。
「栄養サプリよ。入れすぎると即効性の高い激薬になるけど」
「なんつーもんを...!!!」
いきなり限界がきた。トイレに行こうにも手錠が外せない。
「おい!これ外してくれ!頼む!俺が悪かったから!!!」
「仕方ないじゃない。椿がまたどこかへ行こうとするんだから。私達が栄養管理も生活管理もしっかりしてあげないとね」
「さ、そのっち」
皆の影で見えてなかったそいつは、姿を現すなり俺を床に押し付けた。そのまま自分の体を上に、腕立て伏せのような状態になる。
凄く近くて、ドキドキ_______は全くしなかった。寧ろ心臓を鷲掴みされたように、凍った。
「こんばんは。つっきー」
「そ、そ、園子...」
腹の痛みで既に涙目だが、その涙目越しでも彼女が見えて、ひたすら怖かった。逸らそうとしても叶わない。彼女が動いてるのか、俺が動けないのか。もうなにも分からない。
「最近つっきーがおかしかったからね。皆できたんだー。そしたらつっきーこんな夜遅くに帰ってくるし、なにしてたのかな?」
「あ、あの...」
体が小刻みに揺れてくる。もう限界なのだ。
なにより_______園子が、ぽわぽわした顔でもなく、真剣な顔でもない。あらゆる感情を削ぎ落としたようなものだったから。
「全部話してくれるよね?」
「話すからどいてくれ園子!頼む!ホントに俺が悪かった!全部謝るから!!辞める!だから!」
もう体裁を保ってる暇も彼女達を気遣う余裕もない。手錠がガチャガチャ音をたてても外れないし、園子はどいてくれない。
「ダメだよ~。今、ここで、全部話してもらうんだから~」
「その...」
「ね?」
「は、はいぃ...」
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「____君。椿君」
「はっ!」
「大丈夫かい?」
「あ、あの、えぇ...」
飛んでいた意識が戻ってきた。今俺は自分の部屋じゃないし、勇者部の皆はいない。春信さんに現在の情勢を話にきたのだ。
「どうかした?」
「...皆に壁の外に出向いていたことがバレたのを思い出して...ちょっと寒気が」
「僕に端末を返そうとしたときはいつも通りに見えたけど?今さら怖がるのかい?」
「......」
あの時普段寄りでいられたのは、体と記憶が思い出すことを拒絶していて、『ただひたすら怒られた』としか認識していなかったからだ。
「なんで今さら思い出したんだろ...」
「状況が似てるからじゃないかな?僕と君の二人、あの時のファミレスだからね」
「...あんたのせいで。夏凜に悪口吹き込んどいてやる」
「凄い責任転嫁だね!?」
それでも流れるような仕草でテーブルに頭をつける春信さんに、俺は震えた体をなんとか普通にした。
そうでなければ、また思い出しそうで怖かった。
(...ホント、気を付けよう)