皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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急にクローズアップするとやべーのは古今東西昔からそうだけど、ファフナーはもうお察しレベルで数え役満だったりする。


皆城総士になってしまった…15

 

 蓬莱島にフェストゥムが現れた。狩谷先生の配下の部隊が、島のコアに擬態したヤツを目覚めさせた。

 

 アルヘノテルス型と、そこから産まれるグレンデル型。調査隊の避難の為、トルーパーを急行させる。

 

 だがそこにいる敵はその二種だけではなかった。

 

『皆城くん!』

 

「新手だと!? こちらの機体特性に合わせてきたか…っ」

 

 そこには本来いない敵までが居た。戦闘機の様な姿を持つ小型種――シーモータル型を産み出すウーシア型が居た。

 

 本来存在しないはずのマークゼクスを抑える為の個体か。敵が此方の手を読み、その対抗する種を送った。未来を変えた弊害だとでもいうのか。

 

『あいつは私がやるから、皆城くんは一騎くんたちを』

 

「わかった。無理はするな、羽佐間」

 

『大丈夫。倒し方はわかるから』

 

 レールガンで正確にシーモータル型を撃ち落としていくマークゼクスの姿に心配は要らないだろうが、それでも、だからこそ油断なく対処して欲しい。

 

「空の敵はマークゼクスが対処する。マークフィアー、マークエルフはグレンデル型を排除しつつ調査隊の撤退まで揚陸艇と輸送機を守れ!」

 

『マークフィアー、了解!』

 

『総士! 逃げ遅れた人は居ないのか?』

 

「今調べている。命令を復唱しろ一騎」

 

『…マークエルフ、了解』

 

 命令の復唱よりも先に人命を気にするのは人として良いことだが、今は戦闘中だ。命令の復唱はその命令を聞いているかどうかの判断には欠かせないのだ。

 

 地表作業員は未だ撤退中。これにはファフナー2機に加えてトルーパーも配備出来ているお陰か目立った被害はない。ただ地下の作業員は絶望的だ。……地表作業員の中に遠見の姿はなかった。

 

 やはり救護班として地下に降りているらしい。

 

 溝口さんが地下に降りている事は復旧させたセンサー類で確認している。僕がデータを取りながらした事は蓬莱島のシステムの復旧だ。

 

 CDCのシステムにアクセスし、センサー類の復旧は済ませた。隔壁のシステムも掌握したかったが、それはブリュンヒルデシステムに絡む為手を出せなかった。敵になるべく気づかれずに出来たのはそれくらいだった。

 

「溝口さん、聞こえますか?」

 

『おう、聞こえてるぞ。なにかあったか?』

 

「こちらで逃げ遅れた作業員へ誘導します。救助を頼みます」

 

『よしきた。ちゃんとエスコートは頼むぜ?』

 

「了解。300m先、七つ目の十字路を右に曲がってください。そこから階段で地下に向かいます」

 

『うへぇ。おじさんに階段はキツいぜ』

 

 軽口の溝口さんだが、その頼もしさは僕もよく知っている。溝口さんに救えなかったら誰も遠見は救えない。僕が出来るのは可及的速やかに遠見のもとへ溝口さんを辿り着かせることだ。しかし何時までも溝口さんに掛かりきりにはなれない。分割思考はこういうときには便利だ。最大24機のファフナーを運用予定だった竜宮島でシステムに乗る僕はこの程度の分割思考は苦でもない。

 

 本隊が攻めてこない。ウーシア型もアルヘノテルス型も動かずにシーモータル型とグレンデル型による物量戦。ファフナーの脅威ではないから助かってはいるが。

 

 海岸は防衛線を構築できている。退避状況も順調だ。たった2機だがトルーパーを投入している甲斐がある。その小回りの良さで作業員を守りながら敵を排除出来ている。空も、マークゼクスは順調にシーモータル型を迎撃出来ている。戦場は膠着状態といったところか。

 

 思考のひとつ、マークドライに意識を向ける。

 

「リンドブルムの操縦は今回僕が担当する。発進後、最大戦速で現場に急行する。コックピットブロックの対Gシステムを上回るスピードでGが掛かる。舌を噛まないよう注意しろ」

 

『何でも良いわ。敵を倒せるならそれで良いから速くして!』

 

 島で留守番をさせて敵が竜宮島でなく蓬莱島に出た所為か、今の要は酷く気が立っている。

 

「リンドブルム、発進!」

 

『くぅっ、ぐぅぅぅぅっっ』

 

 カタパルトから射出されるリンドブルム。空に飛び上がると上昇する時間も惜しむようにエンジンの推力は前進に注ぎ込む。エンジン臨界手前まで出力を上げる。帰ったらオーバーホールものだろうがそれで間に合うのなら始末書の山なんぞいくらでも戦ってやる。

 

 意識を蓬莱島のマークエルフに向ける。

 

「竜宮島からマークドライがリンドブルムで急行する。それまでなんとしても守り通せ!」

 

『わかった』

 

 ゲーグナーで着実にグレンデル型の数を減らしていくマークエルフ、そしてマークフィアー。この調子なら地表作業員の避難は大丈夫だろう。

 

『総士君』

 

「真壁司令?」

 

『やってもらいたいことがある』

 

 狩谷先生から蓬莱島のフェンリルを作動させる提案が出された。それに溝口さんを向かわせる。そして海から溝口さんと遠見を救出する作戦を任された。

 

『皆城くん! どうして私は待機のままなの?』

 

 ブルクから通信。相手は蔵前だった。

 

「今島のファフナーすべてを出撃させるわけにはいかない。万が一竜宮島にも敵が現れた場合どう対処するつもりだ」

 

『わかってるけど…っ。でも!』

 

「わかっているなら待機だ。いいな」

 

 蔵前には悪いが今島にはティターン・モデルしかファフナーが残っていない。蓬莱島を囮に竜宮島を手薄にさせて本丸を襲ってこない理由は何処にもないのだ。今ある戦力で島を守らなければならないのだ。未来を変えた所為で何かが変わるかなんてわからない。だから未来では大丈夫だからという考えのもとに動く事は危険過ぎる。その為の保険がティターン・モデルだ。

 

 通信を切り、溝口さんに通信を繋ぐ。

 

「聞こえますか、溝口さん」

 

『聞こえてるよぉ。作動コードはめっかったかい?』

 

「既に入手しています。最短ルートを案内します」

 

『あいよ。それと嬢ちゃんも無事だから安心しな』

 

 意識は向けられなかったが、溝口さんは無事遠見と合流出来たのは確認できている。今はなるべくグレンデル型と接触しないルートを案内しているが絶対いないわけじゃない。ライフルでグレンデル型を倒しながら進む溝口さんのあとを遠見も必死に走っているのだろう。

 

 遠見が無事であることに安堵しつつ溝口さんに最短ルートを伝える。

 

「フェンリルの設定は45分で設定してください」

 

『45分ね。それだけありゃ充分だ』

 

「マークフィアーを海中からの回収に向かわせます。狩谷先生が45分よりも早い時間を指定しても無視してください」

 

『戦闘指揮官さまの命令ってやつか。りょーかい』

 

 溝口さんの方から意識を切り替えて甲洋のマークフィアーと一騎のマークエルフに向ける。

 

「地下に残っている要救助者をマークフィアー、お前に任せる」

 

『な、待ってくれ総士! それなら俺が行く』

 

「機体適正上、マークフィアーの方が水中行動に向いている。だから甲洋、僕は君に命令する」

 

『わかった。どうすればいい』

 

「海に潜って非常用脱出ポートに潜水艇を接続し要救助者を回収する」

 

 一騎なら行きたがると思ったが、僕はそれを無視して海に潜る役目を甲洋に任せる。ここでマークエルフを海に向かわせれば確実だが、それでは防衛線を維持できない。今はまだ一騎の方が戦闘に関して一日の長がある。だから皆城総士も一騎には地上に残って貰ったのだろう。トルーパーがいるからマシかとも思うがそれでもグレンデル型の侵攻は続いている。

 

『総士! せめて敵がいないことを確認してくれ。海の中で戦ったことなんてないんだぞ。もし敵に襲われたら…』

 

「その為の陽動として僕は一騎、お前に命令する」

 

 システムを通して僕はコックピットのウィンドウに次々と映像を映す。

 

「敵の本隊に攻撃する。敵の注意をこちらに向かせるんだ」

 

『これを全部……』

 

 出来るのか。一瞬一騎の感情が揺らいだが、直ぐに持ち直した。

 

「やれるか? 一騎」

 

『ああ。わかった』

 

 ゲーグナーを構え、まずはグレンデル型の排除に専念させる。そして意識をマークフィアーに向ける。

 

「援護はない。お前一人だ。万が一ファフナーを失う危険があれば救助は中止する」

 

 予定を繰り上げられるだけ繰り上げ、最善を尽くしているが、ウーシア型が現れた事で未来も確定されたものではなく変化するものだと改めて実感した。羽佐間を救っておいて今更だろうが、変化は僕たちだけでフェストゥムまで及ぶとは思わなかった。だからこそ僕は最大限の注意を払わなければならない。

 

『俺の腕しだいってことだろ?』

 

「ああ。そういうことになる」

 

 こういう時、仲間に頼るしかない。信じるしかない。皆城総士もきっと同じだったんだろう。

 

『必ず助ける。俺が必ず』

 

「頼む」

 

 マークフィアーが戦列から離れ、火線が甘くなった所からグレンデル型が浸透しようとしてきたが、トルーパーにカバーさせる。退避ももう終わる。そうすれば最悪浜辺を駆けずり回って機動防御に変えることも出来る。一騎はその方が良い。

 

『あうううっっ』

 

「っあ゛、くっ、マークゼクスにダメージ? 内部に侵食、ペインブロック不能だと!?」

 

 マークゼクスの右腕。そこに数体のシーモータル型が取り付き、マークゼクスの腕が結晶に包まれていく。

 

 すまない羽佐間――!

 

「強制崩壊、右腕部ネクローシス!」

 

『い゛っ、あ゛ぅ゛ぅっっ』

 

 ファフナーの機体の強制崩壊機能。ペインブロックが作動しない事例から生まれた緊急処置機能。このときのファフナーにはまだ実装されていないのだが、備えておいて正解だった。ただ強制崩壊機能はパイロットへの痛みが強い機能だ。

 

「大丈夫か羽佐間!?」

 

『っ、はぁ…はぁ…はぁ……、だ、大丈、夫っ。まだ、左手が、あるからっ』

 

 痛みが強くて精神グラフが乱れている。腕を引きちぎられる痛みを受けて平気な人間がいるものか。

 

「無理はするな。武器もない。一度さがれ」

 

『ダメっ。そんなことしたら、一騎くんに迷惑がかかっちゃう』

 

 デュランダルを装備し、シーモータル型を撃ち落とし始めるマークゼクス。

 

「命令だ。まともな武器もないのに戦えるものじゃない」

 

『そんなのイヤ。一騎くんに負担はかけたくないの!』

 

 会話のドッジボールだ。羽佐間は僕の話に耳を傾けていない。

 

「君を喪えば、一騎は悲しむ。一騎にそんな思いをさせるつもりか羽佐間」

 

『っ、みなしろ、くん……』

 

 羽佐間も知っているはずだ。羽佐間がいなくなって皆が悲しむことを。

 

「マークゼクス、ポイント更新。いいな」

 

『わかったわ。……ごめんなさい皆城くん』

 

「わかればそれで良い」

 

 そうだ。無理に戦うこともない。それでファフナーを失うくらいなら、態勢を立て直す時間のリスクを僕は選ぶ。

 

 予備の武器も幾つか持ってきているが片手で扱える武器ともなれば、弾倉交換の必要ないゲーグナーくらいか。

 

「っ、……この程度の痛み、耐えてみせろ」

 

 同じ痛みをパイロットたちは戦う度にその身に受けるのだ。戦うことの出来ない僕に出来る唯一の事はこの痛みを共に背負うことだけだ。

 

 泣きそうな程の痛み、逃げ出したくなる程の痛み、それに耐えて皆は戦っているんだ。僕が痛みに負けるわけにはいかない。それでもやはり痛いものは痛い。

 

『痛みは総士の祝福。総士だから耐えられた。でもあなたは違う。だから無理しないで、痛みをすべてを受け止めなくて良いの』

 

「……ダメだ。それでは僕は皆城総士にはなれない。僕は皆城総士だ。皆城総士でいなければならない」

 

『総士……』

 

 クロッシングで乙姫の思いが伝わってくる。僕を思い心配してくれるのは有り難いが、僕が皆城総士でいるために痛みは必要な絶対的なファクターだ。

 

 痛みは生きていることの証だ。それを捨てたとき、僕は僕でいる意味がなくなってしまう。

 

「乙姫っ!」

 

『それでも人は、痛みばかりじゃないよ』

 

 痛みが消えていく。ダメだ乙姫、僕から痛み(いみ)を奪うなっ。

 

『痛みは癒えて、それが生命だよ。それを忘れないで、総士』

 

「乙姫…」

 

 乙姫の意識が薄れていく。いや、僕の意識が違う方に向くからだ。…結局僕は乙姫に甘えてばかりだ。

 

『これを持って潜ればいいんだな?』

 

「そうだ。タイムリミットは10分だ。今一度確認するが、ファフナーを失う危険があると判断すれば、作戦は中止する」

 

『――必ず、助ける。そこに助けを待つ命があるなら、必ず守るっ』

 

「甲洋……。急げ、マークフィアー」

 

『わかった』

 

 マークフィアーが潜水艇を持って海に潜る。あとは甲洋に託すしかない。

 

『総士! マークゼクスがっ』

 

 マークゼクスが輸送機に戻って武器を装備してまた飛び立ったのを見たのだろう。一騎から不安が伝わってくる。

 

「マークゼクスなら心配ない。今は自分のことを考えるんだ」

 

『でもマークゼクスの腕がっ』

 

「羽佐間の戦闘力なら心配はない。それよりお前の方が状況は不利なんだぞ」

 

『くっ、…俺は、平気だ…っ』

 

 一番形勢が不利なのは一騎だ。揚陸艇と輸送機を守る防衛線だ。トルーパーがイージスで敵の侵攻を食い止めているが、マークエルフだけで複数のアルヘノテルス型と戦う負担は相当なもののはずだ。

 

 それでも自分が傷つくことなど平気だと一騎は受け入れてしまう。

 

 それに一騎が心配するほどファフナーに乗る彼女は弱くはない。

 

 彼女もまた自分の病から日常的に自己否定を繰り返し、一騎と同レベルのファフナーとの一体化を可能としている。そして僕の所為で強くなることに貪欲だ。そんな羽佐間が弱いはずがない。

 

『やああああああ!!!!』

 

 ゲーグナーで弾幕を張り、シーモータル型を撃ち落とし、レージングカッターを振り回し断ち切り打ち払い、ウーシア型へ突撃するマークゼクス。ウーシア型の放つワームスフィアもすべて僕が見切っている。だからマークゼクスには当たらない。

 

『あなたはここから消えて!!』

 

 マインブレードを装備し、ウーシア型の胸に突き立て、刃が折れた瞬間に爆発する。その時間は0.2秒。姿が見えるコア。

 

「羽佐間、敵のコアを撃ち抜け!!」

 

『狙い…、撃つ!!』

 

 ゲーグナーの一撃でコアを破壊する羽佐間。その動きも熟練した鮮やかさを見るものに感じさせるだろう。

 

 今の竜宮島のエースは一騎だと皆が口にするが、僕は羽佐間こそが今の竜宮島のエースだと思っている。確かに周りが見えなくなる時もあるが、それでもこうしてクロッシングでの意志疎通において一番安心して戦闘を任せられるのは羽佐間だった。

 

『総士…』

 

「前を向け、マークエルフ。戦いはまだ終わっていない」

 

『ああ』

 

 一番頼れるのが羽佐間でも、最後まで信じられるのは一騎である事に代わりはない。どんなことでも一騎は僕の事を裏切らない。だから安心して信じられる。

 

 マークフィアーが遠見と溝口さんを救出した。揚陸艇も輸送機に入った。

 

 異常はない。あとはみんなで帰るだけだ。

 

「救助者2名の搭乗を確認した。頼んだぞ、マークフィアー」 

 

『っ、ふぅ…。マークフィアー、帰還します。』

 

 甲洋から安堵が伝わってくる。機体のセンサーにも動体反応はない。油断は出来ないが無事に甲洋も帰れそうだ。

 

「帰るまでが作戦だ。気を抜くな、甲洋」

 

『あ、ああ。……なぁ、総士』

 

「なんだ?」

 

『俺でも、役に立てたよな?』

 

 甲洋から伝わる不安。それは誰もが持つ不安だった。

 

『俺、ファフナーに乗れて、役に立てたよな?』

 

「ああ。お前のお陰で遠見と溝口さんを救えた。胸を張れ、それでもお前を罵るものが居るなら言え。自分は仲間を救ったんだと」

 

『っ、……あぁ。ありがとう、総士』

 

「……いや」

 

 男の涙など見てやるものじゃないだろう。島に帰ったら夕食に甲洋も誘ってやろう。テクニカルな助言は出来ないが、場を整えてやることくらいなら僕にも出来る。あとは甲洋の努力しだいだ。

 

 浮上するマークフィアー。各種センサーに依然反応はない。もうすぐ浮上だ。甲洋も無事に島に返せる。

 

 そう思って肩の力を幾分か緩めた時だった。

 

『うわっ!!』

 

「どうした甲洋!」

 

 地下構造物外壁から触手が伸び、マークフィアーを絡め取っていた。

 

『フェ、フェストゥム!?』

 

「コアギュラ型!?」

 

 今の今になって襲ってきたコアギュラ型。まさか此方の気の緩んだ瞬間に襲って来るとはなんてやつだ。

 

「振りほどけ、マークフィアー!」

 

『くそっ、身動きが!』

 

 真後ろを取られてマークフィアーはコアギュラ型を振りほどけないでいる。

 

『総士!』

 

『皆城くん!』

 

 一騎と羽佐間の二人からも意識を向けられる。

 

 アルヘノテルス型とグレンデル型がファフナーを無視し始めた。輸送機を狙う気か。

 

「マークエルフはポイント更新! 輸送機機上から敵を攻撃。マークゼクスは上空援護! 離陸を邪魔させるな。攻撃はトルーパーで防ぐ!」

 

 フェストゥムが攻勢に出始めた。何故だ、何が起こっている。

 

『ぐあ゛あっ』

 

「ぐっ、甲洋っ」

 

 背中を突き抜ける痛み。マークフィアーに同化警報。クソッ、あれほど警戒していたのにっ。

 

 アルヘノテルス型がワームスフィアを次々に輸送機に向けて放つ。その対処にトルーパーは掛かりっきりだ。

 

 マークエルフもグレンデル型を輸送機に近付けまいと迎撃中。マークゼクスもアルヘノテルス型を減らすために奮闘している。マークドライもまだ間に合わない。

 

 輸送機が発進した。マークフィアーが浮上し、潜水艇を掴んだ左手を掲げている。

 

『甲洋!!』

 

 マークフィアーの腕を掴むマークエルフ。だがその背にはコアギュラ型の姿。胸から生える結晶。

 

『たしかに…、たすけたぞ……。一…騎――』

 

 宿主が居ないと存在が出来ないコアギュラ型が、マークフィアーの左腕を切り離した。この器はもう自分のものだと言わんばかりに。

 

『甲洋っ、甲洋ぉぉおおお!!!!』

 

 海に落ちるマークフィアー。一騎の叫びが響く。

 

 輸送機と擦れ違う様にマークドライが現場に到着する。

 

『待ってな甲洋! いま助けるからっ』

 

 マインブレードを装備するマークドライ。不味い、要はコアギュラ型の特性を知らないで攻撃しようとしている。

 

「よせマークドライ! 迂闊に手を出すな」

 

『なっ、甲洋を見捨てろっての!?』

 

「違う! コアギュラ型は同化能力に特化した個体だ。同化をしかけてきても、手を出さなければ攻撃はしてこない」

 

『そんなことどうでも良いから早く甲洋を助ける方法を教えな!』

 

 フェストゥムへの憎しみよりも仲間を優先する。変性意識で扱い難いが甲洋を助ける事には協力して貰えそうだ。

 

「マークフィアーの腹部を開き、コックピットを回収する」

 

『なっ…腹部って』

 

「急げ! 間に合わなくなるぞ!!」

 

 ファフナーという機体特性上、ダメージが痛みとしてパイロットを襲う。そんな助け方をすればどうなるか考えてしまった要を怒鳴るように急かす。

 

 僕はマークフィアーに意識を向けた。

 

「甲洋!! 今から救出する、もう少しの辛抱だ!」

 

『おれは…、なにを…したんだ?』

 

「っ!?」

 

 甲洋の心が……きえていく。クロッシングをしているのに、感情がつたわって……こない。

 

「自分を見失うなっ。心を保て甲洋!!」

 

『おしえてくれ……、おれは…、なにを…したんだ……?』

 

「遠見と溝口さんを助けたんだ…っ」

 

『とお、み……だれ、だっ、け……』

 

「甲洋っっ」

 

『なにも……おもいだせない…。……うれしいことが、あったはず…なの、に……』

 

「っ、甲洋おおお!!」

 

『…………おれ……、役に立てたよな? 総士――』

 

 マークフィアーのステータス表示が強制的にログアウトする。ファフナーを通してシステムを奪われない為のセーフティーだ。それがなにを意味するのか。システムに座る僕には充分だった。

 

「―――――――――!!!!」

 

 誰も聞く相手のいないシステムの中で、僕は仲間の名を叫んだ。でもその声は誰にも届かない。その名は、もう、奪われてしまったから。

 

 救いたい命があった。救わなければならない命があった。彼ならきっと、両方を救えただろう。だが僕にはそれが出来なかった。救いたい命と救わなければならない命を天秤にかけ、僕は救わなければならない命を選んだ。それが僕の、ふたつ目の罪だった。

 

 

 

 

to be continued…

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