皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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やっと第三のヒロインを書けることに筆がノリノリです。なおこっちの来主も総士病を患っているもよう。

今回のイメージBGMは「禁忌」って所ですかね。あの曲癖になってついリピートで聴いちゃうんですよね。


皆城総士になってしまった…17

 

 今日は二度も立て続けに警報が鳴った。なのに――。

 

「出撃しなくて良いって、どういうことなんだ父さん!」

 

『……総士君が倒れてシステムに乗れる者がいない。システムとのクロッシングがなければフェストゥムの読心能力に対抗出来ん。よってお前たちの出撃は見送る』

 

「じゃあ誰が島を守るんだ!」

 

 総士が倒れたなんて聞いてない。今すぐにでも様子を見に行きたい。甲洋の事もあって昨日はまともに話せなかったし顔も見てない。なにかケガでもしたのか? 体調が良くないのか? 甲洋の事で気が滅入って倒れたのか? 今すぐ総士の所に行きたい。でも敵が来てるなら戦わないと、総士の代わりに俺が戦わないと。

 

『みんなはそのままでいて』

 

 頭の中に声が響く。総士の妹――乙姫の声だ。

 

「そのままって、どうして」

 

『わたしが代わりに行くからだよ、一騎』

 

 モニターに映る黒い機体。何度か一緒に戦ったファフナーだ。

 

「なんで、マークツヴァイが!?」

 

 そうだ。マークツヴァイのパイロットは蔵前だ。でもその蔵前も今ここにいる。なら誰が動かしているんだ?

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 果林には悪いけど今私が使える器はこれしかない。

 

 シナジェティック・スーツはないから結構痛かった。しかも総士に選んで貰った下着もダメになって少し不機嫌。でも流石に脱いだりして接続するのは違う気がするし、見せるのは総士と芹ちゃんくらいって決めてるもん。

 

 わたしのマークツヴァイの隣に降りてくる強い力を感じる存在。赤いフェストゥム。

 

「あなたスフィンクス型だったはずよね?」

 

 わたしの記憶が間違っていなければスフィンクス型の個体だったはず。わたしは総士の又聞きの様な感じで未来を知っている様なものだから総士程物事を細かく覚えているわけじゃない。

 

『そうだよ。でも器が弱いと総士を守れない。だから新しく生まれたんだ』

 

 エウロス型。強力な同化能力と人類のものを模倣した武器を使うフェストゥム。ディアブロ型とは違う方向性に進化したフェストゥム側のザルヴァートル・モデルに近い存在。複数で集まればアザゼル型にすら対抗し、リミッターが着いていて一騎がハンデを抱えていたといっても、マークザインと互角に戦える個体。

 

「総士を守るのはわたしの役目よ。勝手にでしゃばらないで」

 

『でも君じゃ痛みを癒せても痛みからは守れない。でしょ?』

 

 現れた敵はスフィンクス型。顔はないけれど太い四肢を持つその特徴のある個体は知っている。

 

「力押しで来る気?」

 

『彼らも試しているんだ。どうすれば島を同化できるのか』

 

「そんなことはさせない。わたしたちの島に手は出させない!」

 

 ルガーランスと同化する。自分の腕が武器であることを受け入れる。人には出来ないけどわたしなら出来る。総士の為にどうありたいのか、わたしにはそんなこと簡単すぎる。

 

『あなたは、そこにいますか――?』

 

 スフィンクス型の問い。その声に答える人間はいない。

 

『いるよ。おれはここにいる!』

 

「見ればわかるでしょ!!」

 

 だから答える。自分は確かにここにいるのだと。

 

 彼の姿が消える。ゼロ次元移動。

 

「跳びなさい、マークツヴァイ!」

 

 ファフナーはミールの欠片をコアとして使っている。人の造ったフェストゥムとも言える存在。人が扱うために力をかなり制限されてしまっているけれど、人でないものが使えば絶大な力を発揮できる。

 

 わたしのような人でありながらフェストゥムでもある存在が乗ることでどの様になるかは目の前にいた存在が証明している。そしてわたしの力なら超次元現象を扱うことさえ出来る。ただその為には同化を繰り返しながら個体であることを保てる存在でなければここまでの力は発揮できない。

 

 シールド圏外でスフィンクス型を迎え撃つ。彼が腕をライフルに変えて攻撃している。

 

『無駄にすばしっこい…っ』

 

「その程度で本当に総士が守れるの?」

 

 ルガーランスが展開する。プラズマが銃身の中を荒れ狂いエネルギーが剣となる。

 

「やあああああっ」

 

 巨大なプラズマ刃を形成したルガーランスを降り下ろした。スフィンクス型はその図太い体躯に見会わない早さでこちらの攻撃を避けた。でも右腕は貰った。

 

『消えた?』

 

「隠れただけよ。でも見つけかたは知ってる。構わないからミサイルを撃って!」

 

『……あまりコレは撃ちたくないんだけどなぁ』

 

「総士を守るって言ったならずべこべ言わずにやりなさい!」

 

『君、なんだか感じが恐いよ……』

 

 彼がミサイルをあらゆる方向に放つ。核ミサイル程じゃなくても大きな爆発が至るところで起こる。もしこのスフィンクス型がわたしの知る存在ならこの方法で見つけられるはず。

 

「光学…熱…、電子、電波、音波探査……反応なし。なら気圧変化、見つけた!」

 

 ルガーランスを投げ槍の要領で投げる。パワーもみんなが乗っているときの数倍はある。投げつけたルガーランスがスフィンクス型の胸に突き刺さる。でもコアは外した。

 

「今よ、撃ちなさい!」

 

『彼の記憶だと、こうだね!』

 

 腕をライフルに変化させるのではなく態々両手で構えてスナイパーの様に銃口を彼は向けた。

 

『狙い撃つよ!!』

 

 放たれた弾丸がスフィンクス型の胸。コアのある部分を撃ち抜いた。それでもまだコアを破壊できていない。

 

『撃ち抜けなかった!?』

 

「問題ないわ…」

 

 傷口は作った。マークツヴァイを疾走らせる。ほぼ飛んでいる様な速さで。

 

「そう言えば、芹ちゃんがお世話になったね」

 

 スフィンクス型の傷口に向けて右手を捩じ込む。

 

 もがき苦しむ様に暴れるスフィンクス型がその図太い腕で殴ってきた。でもその攻撃を余っている左手で受け止め、踵落としをスフィンクス型の腕にキメ、その腕を引き千切る。

 

「痛い? でも芹ちゃんはもっと痛かったよきっと」

 

 ニーベルングに接続している右手が結晶に包まれていく。

 

「わたしがやる。総士が出来ないなら、わたしが命を保つ。だから――」

 

 コアを鷲掴み、スフィンクス型の胸から引き抜く。

 

「貰うよ。あなたの生命(そんざい)を!」

 

 スフィンクス型のコアが砕け散る。生命を得る感覚……総士と一緒。あぁ…、こんなに気持ちいいんだ。

 

『敵はいなくなったよ。とりあえずは』

 

「そう。なら帰るわよ」

 

『君ってそんな感じだったっけ?』

 

「わたしはわたしよ。あなたこそもっと子供みたいでよく喋る存在だった」

 

『おれはおれだよ…』

 

 互いに噛み合わない会話をしながらマークツヴァイを帰還させた。乗るときは人目を盗んで行ったけど、帰りはそうもいかない…か。

 

 人の姿に戻った彼を連れて地上エレベーターからブルクに機体を戻せば大人たちが集合していた。

 

「本当に皆城乙姫が乗っていたのか」

 

 保がわたしの姿を見て信じられないといった顔をしていた。といっても前例がないわけじゃない。

 

「コアが自ら戦場に立つ様になるとはな」

 

「戦える人が戦う。この島はいつもそうやって来た。今回はわたしの番だっただけ」

 

 史彦の言葉にわたしはそう返した。甲洋の事で一騎も元気がない。翔子も隠しているけど元気はないし総士とクロッシングしているからあの強さがある。総士が大まかなイメージを翔子に送ってそれをもとに翔子は戦っている。だから今はまだ翔子一人で戦わせることもできない。一騎と翔子を戦わせられないなら他のみんなが戦ってどうにかなるものでもない。だから少しでも未来を知っているわたしたちが戦う方が犠牲を出さずに済む。

 

 この島はいつだってそうだった。誰かのために誰かが戦って平和を勝ち取ってきた。

 

 わたしだって総士を痛みから守ることくらい出来る。

 

「彼に会わせて。まだ彼がいなくなる前に」

 

「着いてきて」

 

 大人たちがあけた道をわたしは彼を連れて歩き出す。医療ブロックのカプセルの中で総士は眠っている。

 

 カプセルを開けると彼は総士の身体に触れた。そして二人の身体が結晶に包まれていく。

 

「なにをしているの」

 

「総士を眠らせているんだ。総士は彼の心の隙間を突いて彼を同化しようとした。だから今彼を起こしてもまた同化が始まってしまう」

 

「どうにか出来ないの?」

 

「これは彼と総士の問題だからおれたちにはどうにも出来ない。総士を消してしまったら彼も消えてしまう。そんなの嫌でしょ? おれだって嫌だ。やっと彼と話せるんだから、話さないで消えて欲しくない」

 

「無に還りたがるフェストゥムの言葉とは思えないわね」

 

「産まれる嬉しさを知っているからね」

 

 日野美羽によって産まれる事を学んだミール。存在することの苦悩を知るフェストゥム。

 

 わたしでも観測仕切れない未来が訪れ始めている。

 

 その未来が希望に満ちている事をわたしは祈るしかない。

 

「だから守ってみせる。総士の分まで総士の未来はわたしが守る」

 

 それがわたしがここにいる理由だから。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 総士がどうしておれたちの側にやって来たのかはわからなかった。でも総士が無の中に消えてしまいそうだった。それが嫌で、おれは総士を助けたいと思った。一騎と一緒に空を見ていて欲しかったから。そして総士や一騎が少しだけでも痛みを感じない様に贈り物を送った。痛みを消したいわけじゃない。痛みは生命の証しだから。でも痛みを感じなくて済むのならそれは一騎たちにとってもいいことだと思った。

 

 総士を無の中から助けたのに総士は総士じゃなかった。総士がおれたちの側にやって来た理由がわかった。総士がおれたちの側の存在になってしまったから、一騎を同化するくらいなら自分の存在が消える事を選んだ。でもおれは総士に消えて欲しくなかったから、心を消した総士に心を与えた。その結果彼という存在が生まれた。

 

 総士だけど総士じゃない総士が生まれた。そんな総士におれは痛みを背負わせた。その所為でたくさんの痛みをさらに背負わせた。

 

 彼は総士として存在しながらおれをどう思うんだろう。逃げたい、恐い、でもこれはおれが負うべき痛みだから。

 

「こんにちは、一騎」

 

「なんで、俺の名前を」

 

「総士に聞いたんだ。一番仲の良い友達だって」

 

「…そうか」

 

 一騎から伝わってくるのは喜びだった。総士が一番仲の良い友達っていうのはおれが思っただけだけど、多分間違いはないと思う。

 

「ねぇ、聞いても良い?」

 

「あ、あぁ…」

 

「空が綺麗だって、思ったことある?」

 

「空? ああ。あるよ。空って、綺麗なところなんだ」

 

「そっか。空が綺麗だって、思ってくれて嬉しい」

 

 前は短い時間しか話せなかったけど、でも今はたくさん話す時間がある。

 

「お前も思うのか? フェストゥムなのに空が綺麗だって」

 

「うん。空は綺麗なんだ。でもおれの仲間はそんなこと誰も思わない。だから空が綺麗だって思う仲間を探した。そうしたら総士が居たんだ」

 

「総士が…?」

 

 彼も空が綺麗だって思う存在だった。総士の人としての存在をもとに生まれた存在だから総士と同じ様に空を綺麗だって思ってくれるとは思ったけど、彼は総士だけど総士じゃない。おれがおれだけど新しく生まれたように。皆城乙姫が皆城乙姫だけど皆城織姫として生まれたように。

 

「お前、変わったやつなのか?」

 

「人の言葉で表現するならたぶんそうなる」

 

「どうして総士を守るんだ?」

 

「彼に消えて欲しくないからだよ」

 

「消えるって、総士に何かあったのか?」

 

 今の一騎になにをどう伝えたら良いかおれにはわからない。それを伝えるのは総士の役目だから。

 

「それはおれには話せない。それは総士が一騎に伝えることだから」

 

「総士が、俺に?」

 

 目が見える一騎と話せて嬉しい。でもまだ存在の力を手にしていない一騎は目を離したら消えてしまいそうな感じだった。

 

「君は、そこにいる? 一騎」

 

「俺は……」

 

 おれの知っている一騎ならそこにいると答える。でも今の一騎は自分の存在に悩んでいる。消えてしまいたいと思っている。でも総士の為に存在したいと思っている。だからいるだけ。どこにもいないのにそこにいる。誰かが一騎の存在を繋ぎ止めないと一騎は平気でいなくなろうとする。

 

「どうして総士だったんだ? 他にもたくさん人間はいるのに」

 

「彼がおれたちを理解した人間だからだよ」

 

 おれが背負わせた痛み。でも彼はその痛みを喜んだ。喜んで、その痛みからおれたちを理解した人間。この島のミールにさえも影響を及ぼす程の存在になった。

 

「お前たちを、総士が?」

 

「そうだよ」

 

 一騎の母親。真壁紅音もおれたちを理解した最初の人間だった。でもそれも今は伝えることじゃない。

 

「どうして総士なんだ。総士はなにをして、なにを知ったんだ」

 

 一騎は総士の事を知りたがっている。でも言葉で伝えても総士の事は理解できない。島にいるだけじゃわからない。どうして総士がこの島を楽園だといったことを。

 

「総士は外の世界を知ってる。総士を理解したいのなら、先ずはそこからだよ。一騎」

 

「外の世界……」

 

 総士みたいに痛みを背負わせることをおれには出来ない。それは総士が決めたことだから。でも一騎が総士を理解したい気持ちもわかる。おれも皆城総士を理解したかったから。そして彼を理解したいから。

 

 だから一騎も知る必要がある。島以外の世界を。なにをもってこの島は特別なのかを。それは今のままの一騎じゃ出来ないことだから。

 

 行く先が闇でも、光を追い求めた。ただ前を見て歩き続けた。人を理解したくて、傷つけて、傷を負わせて、痛みを広げて。だから生まれてきた意味を少し理解できた。生きることの苦しさと産まれることの嬉しさをしった。だから進むことを止めない。だってそれが生命になることだから。

 

 

 

 

to be continued…




来主「ねぇねぇ、総士。どうだった? 上手くできた?」

総士()「極めて平凡だ」

来主「えー……、皆城総士の知識を使って頑張って考えたのに…」

総士()「仕方がない。ポエムの書き方を教えよう」

乙姫「皆城総士のテクニカルなポエム。毎月11日に竜宮島書店にて500円で発売中だよ♪ あ、でもかなり人気があるから買うには整理券を受け取ってね」

来主「おれも買ってこようかな?」





スパロボ中断メッセ時空だとこんな感じかな。
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