皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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もう乙姫ちゃん手遅れ過ぎて結晶しか生えませんわ(パリーン

なんでヒロイン書くと私はこういう重い愛になるんだろうへんだなーふしぎだなー(シャイニー☆

そんな事を理解するか同化するか存在を調和出来る方は前に進め!身体が無事でも、心が保たない!


皆城総士になってしまった…19

 

 会議室に各部署の主要人物が集まっていた。今回来主 操からもたらされたデータだ。

 

「まさかフェストゥムからこんな事を教わることになるとはな」

 

 フェストゥムの攻撃から機体を守る方法。ファフナーの対フェストゥム機構は長年研究され、ミールの欠片たるコアの力で通常兵器とは比べ物にならない程の対抗力を持つに至ったが、しかし未だフェストゥムのゼロ次元歪曲現象に対抗するには足りない部分も多かった。

 

「ひとりでも多くの兵士を生き残らせる。日野洋治の設計思想そのままだ」

 

「加えて同化現象の治療薬についても、あの島で手に入れたデータと合わせてこれから研究段階のものばかりです」

 

 チーフメカニックの保の言葉から懐かしい名を聞き、遠見先生からも希望のある言葉が漏れる。

 

 ファフナーを運用する上で彼女が一番頭を悩ませていた肉体の同化現象を抑える特効薬。これが我々になく、総士君が欲しがっていたものの正体という事か。

 

「一番症状の重い蔵前果林さんに投与したところ、短時間で効果が現れました。他のパイロットに関しても順次投与。確実に彼らの生命を守ってくれるでしょう」

 

 そうである事を願うまでだ。来主操。彼の言葉には嘘も欺瞞もない。己の思った事をそのまま言葉にしている。我々を騙そうとする魂胆はないようだ。

 

「しかしそれを春日井君と皆城君に使うなというのが解せません」

 

 近藤先生が二つのモニターを開きながら言葉を口にする。

 

 モニターに映るのは医療カプセルに入っている甲洋君。そしてキールブロックのウルドの泉に結晶に包まれて安置されている総士君の姿がある。あの人類の兵器を使うエウロス型という個体が総士君を守るように佇んでいる。

 

「それに関しては皆城乙姫からも提言がありました。時が来るまで決して手は触れてはいけないと」

 

 大人の仲では皆城乙姫と親交が深い遠見先生が彼女の言葉を伝える。

 

「春日井の息子はともかく、皆城総士に関しては彼女の言いつけを守るしかないね」

 

 オブザーバーとして参加して貰った西尾博士の言葉に我々は異見を挟めなかった。ミールの研究に関する第一人者である博士が、キールブロックに総士君が安置された意味を考えその言葉を出したのだろう。あの場所が皆城家にとって深い意味のある場所である事を知っての推察だろう。

 

「ファフナーの改良については今すぐ始められるものから順次各機体に実装予定です」

 

「最優先はマークツヴァイとマークゼクス、というリクエストを皆城乙姫直々にオーダーされたがどうする?」

 

「加えてマークノイン、マークツェーン、マークツヴォルフの建造とフュンフタイプの2号機の建造まで要望がありました」

 

 保と羽佐間先生からも皆城乙姫の言葉を聞かされる。来主操の到来で事態が動こうとしている。何より島のコアが力を求めたがっている発言をしている。

 

 ならば何故、マークエルフの名前が上がらない。なにかあるのか? 機体か……或いはパイロットか。

 

「島のコアが力を求めたがっている。それほどの敵が島を襲うというのでしょうか」

 

 要先生の言葉が皆が考えている不安を浮き彫りにさせる。たとえそうだとしても、その為に行動するのが我々の責務だ。

 

「皆城乙姫の提言に関してはすべて実行を。人員に関しては他部署からも引き抜いて貰って構わない。我々のコアの導きが。その言葉がこの島の未来を作る事を願おう」

 

 その言葉で本日の会議は解散となった。

 

「あの、真壁さん」

 

「なんでしょう遠見先生」

 

 退出する面々を見送っていると遠見先生に声を掛けられた。

 

「少し、ご相談があって。乙姫ちゃんのことで」

 

 ここでは話し難い話題なのだろう。なにより皆城乙姫個人の事なのだろう。彼女が皆城乙姫を名前で呼ぶことはそういう事なのだ。

 

「わかりました。メディカルルームでよろしいですか?」

 

「あ、はい」

 

 ついでに一騎の容態についても聞いておこう。同化現象の治療薬。子供たちを犠牲にしなければならない時間が増えた事を嘆くべきが、より長い時間彼等が生きれる事を喜ぶべきか。

 

 場所をメディカルルームに移し、遠見先生から一騎の容態を聞いたあとに遠見先生からの相談の話を切り出す。

 

「真壁さんも薄々気づいているとは思いますが。乙姫ちゃんの皆城くんへの執着のことで」

 

「ふむ」

 

 それに関しては難しい問題だった。皆城乙姫と総士君の関係はただの兄妹という表現では収まりがつかないものを抱えている。

 

 島のコアと、そのコアを守るために存在する人生。

 

 そんな存在を歩まなければならない二人が普通の兄妹でいられるとは思えない。あれはうちの一騎と総士君の関係に近い。相互存在を補填しあっている様にも見える。だがそれだけならば遠見先生もそこまでの危惧を抱かないはずだ。

 

「乙姫ちゃんの中にいるもう一人の乙姫ちゃん。彼女が乙姫ちゃん以上に皆城くんを求めています。その言動は先の戦闘にも表れていました」

 

「二重人格……ということですか?」

 

「いいえ。彼女たちはひとつの器の中にふたつの存在を持っていると言っています。互いに同化しながらも存在を調和し、皆城くんの為に生きる存在だと」

 

 互いが互いに互のために存在している。並々ならぬ事情になりつつあるようだ。

 

 しかしひとつの身体にふたつの人格。二重人格とは言えない存在。互いが互いを認識している特殊なケースもなくはないが、その言葉のままに皆城乙姫の中にはもう一人の皆城乙姫が居るのだろう。

 

「もう一人の乙姫ちゃんの皆城くんへの執着は異常とも言えます。兄妹愛と表すにはあまりにも」

 

 皆城兄妹の姿は食堂を中心にアルヴィス内で周知されている。仲の良い兄妹に見えるが、それでも何処へ行くにも皆城乙姫は総士君の腕を抱いて離さない。必ず左側に立っている。唯一一騎が総士君の左側に居るときは右側に移るらしいが。

 

「遠見先生はその事を?」

 

「ええ。ですがもう一人の乙姫ちゃんだけでなく乙姫ちゃんにも言われました。皆城くんが自分達の存在を望んでくれた。そんな彼とひとつになりたいと思う事がいけないことなのかと」

 

「難しいことですね」

 

 普通の子供なら遠見先生も接し方を心得ている。遠見先生はこの島唯一の診療所を構え、島のすべての子供たちの日常の健康を守ってきた人だ。

 

 だが皆城乙姫はそんな普通の子供とは違う。彼女のその言葉がいったいどちらの側の存在として放たれた言葉か。

 

「きっと、大丈夫でしょう」

 

「え?」

 

 こういう問題は下手に大人が介入するべきではない。大人の世界にルールがあるように、子供たちは自分達の世界のルールがあるように、皆城乙姫と総士君にも互のなにかがあるのだろう。そこに他者が踏み込んでも良い結果になるとも限らない。

 

「身近な存在と会えなくて落ち着かないのでしょう」

 

 うちの一騎もこの頃は妙に落ち着きがなく集中力のないことが多い。総士君の事が気になって仕方がないのだろうが、今の総士君の状態は我々にも理解出来ないものだ。そんな状態の事を一騎に話して余計不安にさせることもないだろう。

 

「今はまだ、見守ってあげてください」

 

「……はい」

 

 皆城乙姫が自己の肯定に総士君を必要としている様に、母親として遠見先生を必要としている。我々の知らない皆城乙姫のことを遠見先生が知っていることはそういうことだ。

 

 人とフェストゥムの融合存在。そんな彼女が心を持ち、人を想う。フェストゥムである存在が心を持ち、人を想う。

 

 人と変わらず他者を想える存在になりつつあろうとしている。その先に人とフェストゥムの両者が共存できる未来がある。そうなのだろう、紅音。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「総士……」

 

 総士の部屋。総士の布団にくるまって、サイズの合わない総士の服を着て自分を慰める。

 

 でも1日が過ぎる度に、半日が過ぎる度に、一時間が過ぎる度に、一分一秒が過ぎる度に、総士がいないことに気が狂いそうになる。

 

 総士の部屋で総士の布団の中で総士の服を着ているのに、総士の温もりが感じられない。

 

 わたしが、わたしたちが甘える度に、しかたない。困ったやつだと、苦笑いを浮かべたり呆れた溜め息も時々吐きながら、それでもわたしたちを受け入れてくれた総士がいない。

 

 大丈夫。必ず帰ってくると自分に言い聞かせても平常心を取り戻せない。こんなわたしじゃ、芹ちゃんにも会えない。

 

「あいたいよぉ……総士ぃ…」

 

 会いたい。今すぐに総士に会いたい。

 

 コン、コン――。

 

 総士の部屋でゴロゴロしていたわたしの耳にノック音が聞こえた。

 

「乙姫、居るか?」

 

 珍しい。一騎がわたしを訪ねてきた。……なんで総士じゃないんだろうって、つい思いながらドアを開けながら部屋の電気を点ける。

 

「よかった。いた」

 

「珍しいね。一騎がわたしを訪ねてくるなんて」

 

 たぶん初めてのことだと思う。一騎とはまだわたしが岩戸の中に居た時に呼んだけど、まだあのときは話せなかったから。

 

「乙姫が居るなら総士の部屋だろうって、来主が言ってたから」

 

「そっか」

 

 ちょっと苦手。わたしとは別でハッキリと未来を知っている存在だから。総士に存在が近いから。

 

「総士も乙姫もアルヴィスの中に住んでたんだな」

 

「出撃には便利だからね。さ、入って。立ち話も疲れるよ」

 

「あ、えっと、お邪魔します」

 

 総士じゃなくてわたしが総士の部屋に一騎を入れる事になるなんて思わなかった。総士の不器用なお部屋紹介。わたしも好きなんだけどなぁ。だから総士がどうやって一騎にお部屋紹介するのか興味があったのに。総士のバカ。

 

「着替えなくていいのか?」

 

「あ、そうだね。着替えてくるからちょっと待ってて」

 

 あまりに一騎がなにも言わないから忘れていたけど、今のわたしは総士のシャツを一枚着ているだけだった。でも恥ずかしいとは思わないのはきっと一騎だからかな。

 

 手早く着替えて一騎の所に戻る。

 

「それで、一騎はわたしに何か用があって来たんでしょ?」

 

「あ、ああ。まぁ…」

 

「総士のことでしょ?」

 

「……うん」

 

 この頃の一騎はすべてが総士の為にあった。総士の左目になろうとして、総士の言うままに戦っていた。でも一騎は総士の知らないことが増えすぎて総士がわからなくなって擦れ違いが生まれた。それは総士も悪いけどね。言葉にしないと相手には伝わらない。対話は人にとって大切なことだから。

 

「頼む。総士に会わせて欲しい」

 

 居場所を教えて欲しいじゃなくて会わせて欲しい。彼は一騎になにか余計なことを言ったのか。

 

「今の一騎じゃ、総士になにもしてあげられないよ」

 

 存在の力を手にしているのなら総士に語りかけることも出来たけど、今の一騎にその力はない。だから会ってもなにも出来ない。

 

「それでも構わない。なにも出来ないかもしれないけど、でも会いたいんだ」

 

 ただ会いたいから会いに行く。自分になにも出来ないとしても傍にいることは出来る。か……。敵わないなぁ、一騎には。

 

「いいよ。特別に会わせてあげる」

 

「ありがとう、乙姫」

 

 会いたいから会いに行く。そんなこともわたしは気づかなかったんだ。ただ総士の邪魔をしたくないからわたしは総士から距離を置いた。

 

 そうだよね。会いたいなら会えばいいんだ。

 

 一騎を連れてわたしはキールブロックに降りた。

 

「これは……!?」

 

 キールブロックの様子に驚く一騎からわたしは前に出て振り返った。

 

「ようこそ。島の未来が生まれる場所へ」

 

 コアが産まれては浮いている。そのすべてがコアギュラの結晶の中で眠る総士の周りに集まっては漂って、互いに同化しながらも調和し存在を増やしていく。

 

「なにが起こってるんだ……? 総士はなにをしているんだ!」

 

「それはわたしにもわからない」

 

 そう。なんでこんな事になっているのかわたしにもわからない。ただ起こっている事実だけしかわたしにはわからない。

 

 ただ未来でシステムが置かれる場所を包む結晶の山。そこにコアが集まっては結晶となって結晶を大きく育てていく。そしてウルドの泉、その通路の上。システムに入るためのエレベーターの前に総士の眠る結晶は安置されていて、そこの背からまるで木の様な結晶が生えていて、実を作る様にそこでもコアが産まれている。

 

 このウルドの泉が生命で溢れていた。

 

「総士を通してミールは命を学んだ。来主操を通してミールは命が生まれる喜びを知った。わたしを通して命の育み方を理解した」

 

「乙姫…?」

 

 コアのひとつがわたしの身体に触れ、わたしの身体とひとつになった。感じる。生命の鼓動を。

 

「選んだんだね、総士。自分の未来を」

 

 また総士に会える時も近い。だから帰ろう。邪魔をしてしまうから。

 

「帰るよ一騎」

 

「えっ、で、でも」

 

「わたしがいるからいいけど、ここにいたらあなたの身体は瞬く間に砕け散る。だから今は帰るの。心配しないで、総士はそこにいるから」

 

「総士……」

 

 一騎の手を引いて強引に連れていく。一騎がいなくなったら総士に嫌われちゃう。だから一騎を連れてわたしはキールブロックをあとにした。

 

 生命が産まれたとき、何故泣くのだろう。だってそれは守られていた場所からの離別だから。だから生命は産まれて泣くの。でもわたしは知っている。産まれてきて良かったと。だからわたしは知っている。生命が理解できなくて無の道を選んだものたちを。

 

 あなたは知る事になる。すべての生命にとって生まれる事が喜びになるとは限らないことを。だからわたしたちは彼らに伝えなければならない。生命が奪われることの悲しさを。

 

 

 

 

 

to be continued…




乙姫「むふーん♪ どう総士?」

総士()「流石だな。僕よりセンスがある」

乙姫「えへへー、だってわたしは総士の妹だもん」

来主「うわーんっ、総士のばかぁぁあ!!もっと褒めてよぉ! ポエムの書き方教えてよぉぉ!!」

総士()「…仕方がない。今夜は寝れると思うな」

来主「ホント!? 総士とたくさん勉強出来るの!? 嬉しい!」

乙姫「泣き落とし……そういうのもあるのね…」





中断メッセその3。少し来主が二代目に?

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