皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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なーんかホントにスラスラ書けるときに一気に書いてます。このスラスラ感がなくなると恐いんだよなぁ。


皆城総士になってしまった…20

 

「今日はここまでにしましょう。焦って強くなろうとしても空回りするだけだわ」

 

『了解』

 

『…了解』

 

『っ、了解…っ』

 

 翔子に一騎君に咲良ちゃん、今実践配備されている3人のパイロットの連携はバラバラ。咲良ちゃんはとにかく前に出たがって、一騎君もスタンドプレーが目立つし、そんな二人を援護しようとしてどっち付かずの距離を保つからマークゼクスの機動力が殺されてしまう。

 

 良くバラバラな戦いかたをする皆を纏めあげられると皆城君には感心してしまう。

 

 翔子も咲良ちゃんも焦っていて上手く動けていない。一騎君は集中力が散漫としている。敵は倒せるけど明らかに動きが鈍い。皆城君の存在がみんなにとってどれ程大きな存在だったのかが改めてわかる。昔からみんなの中心に居た子だものね。だからみんな皆城君を信じて戦えるのかもしれない。

 

「お疲れ様。みんな今日は上がって大丈夫よ。明日に備えてゆっくり休んで」

 

「…はい」

 

「わかりました…」

 

「それじゃあお母さん、またあとでね」

 

 元気のない一騎君と疲れもあってシミュレーション時とはうって変わって大人しい咲良ちゃんを翔子が引っ張っていく。翔子が元気になって嬉しいけれど、それがファフナーに乗るようになってからというのを考えると、素直に喜べない。

 

 技術スタッフの頑張りもあって、ファフナーの改良は順調。マークツヴァイとマークゼクスに関して最優先と言われていた理由がこうして皆城君が居ない子供たちを見るとわかる。

 

 あんな調子で戦場に出せるわけがないわよね。

 

 引っ込み思案だった翔子が引っ張る側にまわらなければならないほどに今の子供たちの精神面は危うい。だから皆城君。出来ることなら早く帰ってきてあげて。

 

「こんばんわ、容子」

 

「乙姫ちゃん?」

 

 乙姫ちゃんがこんなところまで来るのも珍しい。なにかあったのかしら。

 

「マークツヴァイのこと、容子にも感謝しておこうって思って」

 

「ああ、マークツヴァイのことね」

 

 マークツヴァイには乙姫ちゃんのリクエストで独自改良が施されている。追加の大型スラスターを私が、追加武装のショットガン・ホーンを小楯さんが製作してマークツヴァイに装備されている。ファフナーで頭突きをする戦い方なんてどう考えたらそういう発想になるのか不思議だけど、怖いのはそういうことも想定していた皆城君ね。ショットガン・ホーンの基礎設計案は皆城君の武装開発部門で試作型が作られていたものを小楯さんが手直ししたものだった。他にもファフナーの武装はすべて皆城君が取り持って設計開発を進めていた。バスターソード・ライフルなんていう大剣の中にプラズマ砲を備えた武器もあった。ルガーランスやガンドレイク系統の武器だけど、子供ってホントに考え方が柔軟で時々恐いわ。

 

 ルガーランスもマークツヴァイ用に新調され、内蔵火器がレールガンから核融合プラズマ砲に変更されて強度が落ちた代わりに射撃が可能になった新武装も配備されている。

 

「無理しなくて良いのよ? 乙姫ちゃん、あなただけが戦っているんじゃないのよ?」

 

 マークツヴァイに乗るようになった乙姫ちゃん。島のコアが戦うことの危険性もあるけれど、こんな小さな子にまで戦いを背負わせなければならない大人として出来ることは完璧な状態の機体と武器を用意して無理しないように声をかけて、帰りを信じて送り出すしかない。

 

「うん。ありがとう。でも今はわたしが戦わないとならないの。総士が帰る場所をわたしが守るの」

 

 とても穏やかで、優しく愛情に溢れた顔で乙姫ちゃんがそう言った。初めてファフナーに乗って出撃した時の翔子も同じ顔をしていた。こういう顔をしている女の子ってなにを言っても止まらないのよね。特に好きな男の子の事が絡んでいるときは。

 

 この島が平和という文化を守って、そのお陰で子供たちは平和という文化を受け継いでくれて。そしてその平和を守ろうとコアまでが戦ってくれる。

 

 手探りで始めた私たちの行いも無駄なことではなかった事が嬉しかった。まさか放送室に立て籠るとまでは思わなかったけど。そんな今日は平和という文化が島で大切にされている事を実感する日だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 一騎のいう通り、わたしはキールブロックに通う様になった。生命が生まれ、生命に溢れている場所。そして総士が選んだことで新たな存在が生まれようとしている場所。

 

「狩谷由紀恵の仕業ね」

 

 キールブロックの入り口。そこに飛び散る結晶の欠片。エレベーターホールからひとつ扉を潜れば、そこはもう普通の人間が踏み込める場所ではなくなっている。総士が目覚めれば大丈夫だとは思う。今はミールが総士を悪意から守っているから。

 

「んっ……」

 

 もうひとつわたしがここに来る理由がある。わたしに宿る生命がここに来たがるから。

 

 近いうちに1度岩戸に入らないとならないかもしれない。なるべく総士が目覚めたあとに岩戸に入りたいけど、わたしが先か総士が先かはわからない。出来れば総士が先に目覚めて欲しい。そうすれば少しの間だけは岩戸に入っていても大丈夫だと思うから。

 

「早く起きて総士。またわたしたちを抱き締めて、わたしたちを見て、わたしたちを感じて」

 

 わたしが入るのは入り口まで。そこから先は総士の邪魔をしたくないから。

 

「今日はね、芹ちゃんと海に行く約束をしたんだよ? 最近暑いし、フェストゥムも大人しいから」

 

 でも近いうちにまたフェストゥムがやって来そうな気がする。でもわたしとマークツヴァイがいるからみんなに手は出させない。わたしが総士の帰るこの島を守るから。

 

「っ、噂をすれば影……か。折角芹ちゃんと出掛けられると思ったのに」

 

 こういうときは空気が読めてないっていうんだよね。

 

「いってくるね、総士」

 

 わたしはそう言い残して走り出した。今戦えるのはわたしたちしかいないから。

 

「乙姫ちゃん!」

 

 ロッカーに行くと翔子と果林が居た。

 

「私たちも行くわ」

 

「ダメ。総士がいないからみんなには戦わせてあげられない」

 

 システムの援護がない今のみんなじゃ、フェストゥムの力に対抗できない。その為にマークツヴァイを強くして貰ったのだから。

 

「でも、私だって島を守りたいの」

 

「総士がいないのに、あの動きが出来るの? 翔子」

 

「それは…」

 

 今のみんなは総士という柱が抜けて瓦解寸前の状態。せめてシステムを分割状態でファフナーに乗せた改良が終わるまでは出させられない。

 

「でも乙姫ちゃんはそれでも戦う気なんでしょ? だったら私も」

 

「わたしとあなたたちは違うんだよ果林。わたしにはフェストゥムの力は働かない」

 

 わたしは二人に背を向けて歩き出す。

 

 服を脱いで殺菌灯の光を浴びて、シナジェティック・スーツを身に纏う。改良が施され、よりファフナーとの一体化が出来る新しいシナジェティック・スーツ。

 

 来主操が島にやって来てだいたい2年の技術のブレイクスルーが起きている。わたしの戦い方は5年程先の戦い方になっているけど、これが生命を学んだ島の力だから。総士が育てた力。わたしだから出来る戦い方。

 

「やっぱりひとりで出るのね」

 

「それが生命を守ることに繋がるから、わたしは行くんだよ。容子」

 

「無事に帰ってきて。私たちみんな、あなたの無事を願っているわ」

 

「うん」

 

 コックピットブロックに乗り込み、わたしはファフナーの中に送還させられる。わたしという生命を宿してファフナーは目覚める。

 

「ニーベリング接続、対数スパイラル形成。コア同期確認。ジークフリード・システム、対フェストゥム機構接続、オールクリア。ファフナー・マークツヴァイ、起動!」

 

 マークツヴァイの目に光が点る。外で大人たちがわたしを見上げていた。

 

『固定軸解除。右舷整備塔移動!』

 

『同じく左舷整備塔移動!』

 

『一番から五番までの安全装置解除! ナイトヘーレ開門まであと5秒!』

 

 ファフナーを出撃させるために大勢の大人たちが動いている。わかっているよ容子。みんなそれぞれの場所で戦っていることを。

 

「マークツヴァイ、発進!」

 

 マークツヴァイが射出される。海中へ飛び出し海面へそのまま躍り出る。機体を覆っていた衝撃吸収剤をルガーランスで切り裂くように振り払う。

 

 敵の迎撃は彦島で行われる。マークツヴァイに新たに装備された大型スラスターは、わたしに空を飛ぶ為の翼をくれる。メインスラスターと合わせれば低高度であれば飛行が出来る。

 

 彦島には既にバトルフィールドが設定されている。

 

 シールドが一部解除され、マークツヴァイが彦島に降り立つ。

 

 既に彼もエウロス型となって戦い始めている。

 

 やって来た敵はスフィンクス型B型種とC型種。どちらもパワータイプ。普通なら少し厄介だと思う。

 

『でもあまり早く倒すと意味がないよ』

 

「わかってる」

 

 敵はわたしたちの島の力を量って、それを攻略するための存在を送ってくる。だからあまり強く圧倒的に倒すと、その圧倒的な力に対抗できる存在を送り込む。

 

 わたしたちなら平気だけど、その分敵を強くするとみんなが戦うときに危ない。みんなが対処できない存在を呼び込むつもりはない。

 

『あなたは、そこにいますか――?』

 

「前はどこにもいなかった」

 

 そう。総士と出逢うまで、わたしは何処にもいなかった。自分の存在が何処にもなかった。

 

「でも今は、ここにいる!」

 

 総士が毎日わたしのところに来て、何があったのか話してくれた。最初は自分の存在に戸惑っていた。でも次第に落ち着いて、みんなを守るためにファフナーの事を勉強し始めたこと、果林の為にお菓子作りを始めたこと、一騎に声を掛けられなくてもやもやすること。中学校に上がって生徒会に入ったこと。ラブレターが増えて困っていること。遼たちになにもしてあげられなかったこと……。いろんな事を話してくれた。

 

 そして総士がわたしたちの存在を望んでくれたからわたしたちはここにいられる。

 

 スフィンクスC型種のワームスフィアを肩のイージスで防ぐ。ルガーランスの射撃で反撃する。……手加減してもこの程度だと倒さないで攻撃するのが難しい。元々強くなったのに強化したからマークツヴァイが強くなりすぎて敵が弱すぎて困る。

 

 しなる鞭の腕もルガーランスで難なく切り払う。

 

『うわっ、また消えた!』

 

「探せば見つかるよ、操」

 

『探せばって。ワームで隠れてるならこれで!』

 

 ライフルから黒い弾丸をデタラメに放つ彼。こっちにも飛んできて危ないんだけど。

 

 デタラメに撃った弾が空中のなにかに当たって黒い球体を作る。スフィンクスB型種の片腕がなくなっていた。ワームを弾丸にして撃ったの?

 

『これでえええっ』

 

 左腕からルガーランスを生み出してスフィンクスB型種に突っ込む彼。その刃でスフィンクスB型種の分厚い身体を切り裂く。薙ぎ払い、突き刺し、そしてライフルを被せている右手を向けた。

 

『ここからいなくなれ!』

 

 ワームスフィアを次々と放ってスフィンクスB型種の身体を削り取っていく。

 

『貰うよ。きみの生命』

 

 そして残ったコアを掴んで同化した。

 

 次はわたしの番だ。

 

「一緒に行くよ、芹ちゃん」

 

 まだファフナーには乗っていない芹ちゃんを思いながらショットガン・ホーンを展開する。

 

 スフィンクスC型種が触手を突き刺そうとするけれど、突撃の為に身を低くしたマークツヴァイの両肩のイージスと頭部のショットガン・ホーンのエネルギーフィールドは、その程度の攻撃を通さない。今度マークツヴォルフも同じ様にしてもらおう。

 

「っ、はあああああ!!」

 

 芹ちゃんみたいに叫びながら、ショットガン・ホーンをスフィンクスC型種の胸に突き刺し、内蔵されているプラズマ砲を撃つ。

 

「超必殺、ゴウスパーク!!」

 

 プラズマ砲を撃ち込んだ反動で離れた所に、イージスのエネルギーフィールドの端でスフィンクスC型種の胴体を切り裂く。

 

「ゴウバインプログラム、コンプリート…!」

 

 スフィンクスC型種に背中を向けて地面に降り立ち、展開していたショットガン・ホーンとイージスを格納する。そんなマークツヴァイの背中でスフィンクスC型種はワームスフィアに呑まれて消えた。

 

『なに? そのゴーバインプログラムって』

 

 コアを同化する前にコアごと破壊してしまった。次はもっと手加減出来る方法を考えないと。

 

「ゴウバインを極めた者にだけ使える特殊攻撃コマンドだよ」

 

 TVアニメ機動侍ゴウバイン。来月水曜日夜6時30分から放送開始!

 

 全26話。制作・作画監督大粒あんこ。原作・月刊少年冒険キング機動侍ゴウバイン。脚本・一士カレー、大粒あんこ。美術監督・一士カレー。

 

「敵は……。もういないみたいかな」

 

『うん。彼らの存在はもう感じないよ』

 

 彼が人の姿に戻ったと言うことは、もう大丈夫だということだ。

 

 気を付けないと、足元を掬われちゃうかもね。

 

 ファフナーが強くなった。その影響でパイロットのみんなの空気が緩まないか、それだけが心配だった。

 

 そして次の日の朝、一騎が島から出ていった。

 

 力を手にした時。人はその力に縋るしかなかった。たとえ存在が無くなってしまうとしても、その力を使うしかなかった。

 

 あなたは知る事になる。その力は誰かの犠牲によって生まれた事を。その事を忘れた時、その力が牙を剥く事を。

 

 

 

 

 

to be continued…




 
乙姫「ゴーーーバインッ」

来主「ねぇ、総士。ゴーバインプログラムってなに?」

総士()「そんなプログラムはない……」

衛「元祖ゴウバイン、参上!」

広登「二代目ゴウバイン、見参!!」

美三香「三代目ゴウバイン、推参ッ!」

三人「「「ゴウバインプログラム、起動!!」」」

剣司「だからねぇって、そんなプログラム……」



中断メッセ風3。こんな中断メッセいつか実現しませんかね?
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