皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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マークザインはまだか!!ごめんまだだったよ。まだ辿り着けないのにもうHAEの構想とプロットが出来始めてるよ!!

この小説がHAEまで続くようにみんなじゃんじゃん感想送って私を祝福して!(露骨な物乞い

ちなみに気づいているかもだが、時間はバラバラでも○時11分は意識してやっているので、感想返しされた次の11分には新しい投稿があると思って♪(露骨な宣伝


皆城総士になってしまった…21

 

 一騎が島から出ていった。親として監督不届きだな。

 

 狩谷由紀恵の手引きか。彼女も今朝から行方知れず。リンドブルムのモニターにはコックピットに生体反応が確認された。IDは狩谷由紀恵。状況から見て一騎と狩谷由紀恵が共にいる事は明白だろう。

 

 島を出ていくほどのなにかがあった。あるいは言葉巧みに狩谷由紀恵が一騎を唆したか。――ありえん、とも言い難いが、それが総士君の話題だったらなんとも言えん。

 

 子の様子を計りきれなかった。親失格だな。春日井を笑えん。

 

「……島の怒りか」

 

 春日井夫妻はマークフィアーの責任を取らせる為に島外追放という事になっているが、実は違う。

 

 甲洋君の医療カプセルの生命維持処置が切られそうになる事態があった。犯人は春日井夫妻だろう。アルベリヒド機関への申請も甲洋君が存命と判断されて棄却されている。だから甲洋君を亡きものにして新しい里子を預かるつもりだったのだろう。すべては憶測だが外れてはいないだろう。あの親からあんな心優しい少年が育ち、優秀なパイロットへと成長した。まだ一騎が幼い頃に春日井の店に通っていた為に甲洋君も総士君の様に親しい子だ。自分が言えたものではないが、それでも甲洋君を自分達が島に居るための道具とくらいしか思っていなかった扱いは腹立たしいものだった。

 

 昔、甲洋君に聞いたこともあるのだ。家で辛いことはないかと。だが彼は首を横に振った。この家にいたいと。両親といたいと。あんな親でも甲洋君にとっては大切な親だったのだろう。それなのにこの仕打ちだ。だからスパイ行為の罪状も含めて島外追放という処置をとろうとしたわけだが。

 

「あるいは甲洋君を守ったか。それは考えすぎか」

 

 春日井夫妻は結晶を残して消えた。来主操は、生命の大切さを理解していないから消えたといった。島のミールが甲洋君を守った様にも聞こえるが、やはり少しばかり気にはなった。

 

 新国連のスパイと目されるものたちも日に日に姿を消す様になった。溝口もそれは関与を否定している。

 

 皆城乙姫が言った。ミールが総士君を悪意から守っていると。島のミールが人の悪意を感じるほどに学習しているということか。

 

 この1年でフェストゥムは急激な変化を遂げ始めた。1年前は海にも入れなかった彼ら。それが30年間の常識だったものが海中でも存在し活動する存在となり、そして今、人の心を理解しようとしている。近いうちになにかが起こるのだろう。そう予感がしてならない。

 

「今は、島の心配をしなければな」

 

 一騎が島の外で何を見て、何を学んで来るかはわからない。ただあいつの帰る場所を守るため、自分に出来ることをするまでだ。

 

 マークフュンフとマークアハトの実戦配備が可能となった。フェストゥムの読心能力に対抗する為、分割したジークフリード・システムをファフナーに内蔵。相互クロッシングによる思考防壁でフェストゥムに対抗する。ティターン・モデルで使われた技術を再び使うことになった。しかし同化現象の緩和薬のお陰でパイロットの負荷は過去にないほどに最小限度に抑えられている。

 

 敵の読心能力に対抗する術。分割式ジークフリード・システムの内蔵案も総士君が技術開発をしていたものだった。

 

 彼は予測していたというのか。自分がシステムに乗れなくなる可能性を。そして皆城乙姫もまた、一騎が島を出ていく事を予見していたかの様にマークエルフに改良を加えなかった。

 

 無事に帰ってくる事を祈るしかない。島の外は戦いばかりだろう。違う世界を見て、そして思うのだろう。この島だけが人類に残された唯一の楽園(へいわ)であることを。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「海で泳ぐのって、楽しいの?」

 

「なに? 突然」

 

 今日、前回流れてしまった芹ちゃんとの約束を果たそうと良い気分だったのに彼にそんな事を言われて少し気分が削がれた。

 

「あなたの仲間も海にいるでしょう」

 

 リヴァイアサン型やプレアデス型が水の中でも適正が高い個体だったはず。

 

「おれたちがそこにいるのはそこにいられるようになっただけ。そこにいることが楽しいなんて誰も思わない」

 

 心を持つフェストゥムの悩み。彼は以前のわたしの様に伝えようとしている。美羽の様に彼らの言葉で、わたし以上に伝えられる存在がフェストゥムに伝えている。人がどういうものかを。

 

 あなたは、そこにいますか――?

 

 フェストゥムたちが他者を同化する為に問うその言葉。でも彼は違う。

 

 空は綺麗だって、思ったことある?

 

 相手の感性に訴えるようなその言葉で、彼はフェストゥムに問う。でも心がないフェストゥムにはまだその言葉の意味さえわかっていない。だから今は存在を同化する事しか出来ない。

 

「なら、あなたが伝えればいい」

 

「伝える? なにを」

 

「海で泳ぐことがどれだけ楽しいのかを」

 

 本当は芹ちゃんとの二人っきりが良かったけど、総士も一騎もいないからわたしが代わりに彼を変えてあげなければならない。代金は総士のハグが良いかな。

 

 だから操を連れて芹ちゃんと待ち合わせの海岸に行った。僚と祐未が泳いでいた場所。

 

「お待たせ、芹ちゃん」

 

「乙姫ちゃん! っと、あなたは……」

 

「こんにちは」

 

「大丈夫だよ芹ちゃん。彼はこの島のみんなを同化する事を嫌っているから」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 やっぱりいきなり連れてくるのは急すぎたかな?

 

「ねぇねぇ、早く泳ごうよ~」

 

「だ、ダメだよ! 準備運動してからじゃないと危ないよ!」

 

 もう待ちきれないと服を脱いで海に入ろうとする操を芹ちゃんが呼び止める。……フェストゥムの作った身体が吊るとかいう症状がでるのかな。

 

「準備運動?」

 

「そ、そうそう。準備運動しないと固いままの身体で入ったら身体がびっくりしちゃって足とか腕を吊っちゃったりして危ないんだよ?」

 

「足と腕がつる? それって痛いの?」

 

「け、結構痛いけど……」

 

 知識はあるけど経験がない操は、頭だけが良い子供みたいなもの。だからいろんなものを吸収していろんなことを経験して、そしてそれをフェストゥムに伝えようとしている。心を伝える事が限界だったわたし以上に生命を彼らにも伝えようとしている。

 

「痛いのはイヤだな。ねぇ、準備運動を教えて!」

 

「あ、う、うん…」

 

 芹ちゃんならわたしを育ててくれたから、こういう事にも向いていると思う。もっと芹ちゃんと仲良くなりたいけど今日は仕方がない。代金は総士と芹ちゃんのサンドウィッチで我慢しよう。

 

 総士の知識があるから操の呑み込みは早かった。準備体操をして服を脱いで水着に着替える。

 

「な、なに? 乙姫ちゃん」

 

「じー…………」

 

 ないわけじゃない。ないわけじゃないけど、芹ちゃんを見ると物凄く惨めになる。総士も芹ちゃんみたいな子が良いのかな。総士は総士じゃないから総士が好きだった真矢に総士は友達以上の感情を向けていない。その分の弱味をわたしに向けている。その分の甘えをわたしと果林に向けている。最近は翔子の方に甘えているけど、翔子は特別だからそこは仕方がない。でも翔子が一騎の事を好きなのを知っているから総士の翔子に向ける気持ちは頼れる仲間以上のものはない。

 

 総士は誰が好きなのか。そこはわたしたちにもわからない。特定の誰かが好きなこともない。一騎は特別枠だから考えないものとする。総士が総士でなくても総士だから一騎には勝てない。だから二番目でも全然構わないくらいの気持ちを持てないとやっていけない。真矢も翔子もカノンも、きっとそれはわかっていて、でも一騎が好きなんだろうなぁ。

 

 そういう意味で、一騎にも総士にも甘えられてた真矢はふたりの心の支えだったのかもしれない。

 

 総士が未来を変えようとして変わった人の繋がり。この現在(いま)もかなり総士と一騎を取り巻く人間模様は複雑。なのに本人たちは両思いなのがちょっと不満。たとえどんな姿になってもあのふたりは何度も出逢い続ける。それが世界の祝福だから。

 

「よーし、これで海に入れる!」

 

「乙姫ちゃん、アレ…」

 

「放っておいて。なにを言っても聞かないの」

 

 水着でいるわたしと芹ちゃん、でも普通に学校のスクール水着なのに操だけがダイバースーツだった。タンクとマスクに足ヘラまで用意する徹底振り。

 

「なにかおかしい? 皆城総士の知識を使って用意してもらったのに」

 

 総士の知識がテクニカル過ぎて頭が痛い。でも海に潜るならこれでも良いのかな。代金は総士にお風呂で身体を洗ってもらおう。

 

「うん。取り合えず海に入ろう」

 

「そ、そうだね……」

 

 もう芹ちゃんも言葉がなくて操を気にしない様にしたらしい。

 

 わたしたちが普通に海に入るのに対して、操はやっぱりテクニカルにズレた事をしてくれた。

 

「よーし、エントリーーー!!」

 

 高い岩の上から飛び込んだ。……大丈夫かな、あの子。

 

「ぶはっっ、や、やだ!! な、なにこれ!? やだ、恐いよ総士! 助けてっ」

 

 泳ぎ方を知らないとかいうまさかの展開だった。そもそも海が冷たいという感覚すら知らなかった? そんなバカな……。

 

「ごめん芹ちゃん、手伝って」

 

「う、うん。って、早く助けなきゃ! 溺れちゃう」

 

 多分フェストゥムだから溺れても大丈夫じゃないかな?

 

「なんなのアレ!? 身体が痛いよ! なんだったのアレ!」

 

「あ、あのぉ……」

 

 もう涙を流して芹ちゃんにしがみついている操。芹ちゃんの母性に包まれて羨ましい。わたしだってそんなに芹ちゃんに甘えたことなかったのに。

 

「あなた冷たいって感覚を知らないの?」

 

「つめたい? つめたいってなに? 痛みの仲間?」

 

 お願い総士、早く帰ってきて。わたしにはこの子の面倒は荷が重すぎる。

 

「えっと、海は冷たくて、確かに痛い時もあるかなぁ…?」

 

「あんな痛み、はじめてだった。あんな所にいるのが楽しいの?」

 

「人は特別な力なんてないから。だから普段出来ないことをするのが楽しいの。空を飛んだり、海で泳いだり」

 

「人の心って、本当に難しい……。今も痛いのに痛みが消えていく」

 

 それは芹ちゃんに抱き着いていたら暖かくなって冷たさが抜けていくのは当たり前だけど、操には暖かいも冷たいもまだわからないのか。

 

 何れは核の炎や海を凍てつかせる冷気すら操るフェストゥムが、ね。

 

「今は、多分暖かいって事かな。人の身体は暖かくて、自分の体温で冷たい熱を和らげるの」

 

 見た目は自分達とあまり歳は変わらないのに中身が本当に子供みたいな存在だと芹ちゃんもわかったんだろう。最初は操に恥ずかしがってたのに、今の芹ちゃんはわたしの知る優しい芹ちゃんだった。

 

 真壁紅音、そして一騎に次ぐ島でフェストゥムの事を理解しようとした存在。芹ちゃんだから、わたしも感情を手に入れられた。わたしたちにとって、芹ちゃんは大切な友達で、千鶴とはまた違ったわたしたちのお母さん。

 

「もう一度入ってみよう? 今度はゆっくり入って、身体を冷たさに慣らすの」

 

「恐いよ。少しずつ痛い」

 

「大丈夫。私が着いてるから」

 

 操の手を握りながら少しずつ海に入っていく芹ちゃん。そんな優しい芹ちゃんだからわたしも芹ちゃんが大好きなんだ。総士と同じくらい大切で、だから守りたいんだ。総士と芹ちゃんがいるこの島を。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 狩谷先生に騙されて、俺は人類軍に捕まった。

 

 島を出た事に後悔はない。俺も総士が見たものを見たかった。そうすれば総士の事がもっとわかるんじゃないかと思った。

 

 でも外の世界は何処にも人が住んでいなくて、あの島みたいに滅んでいた。総士が言っていた、世界中の国が滅んだって言葉は本当だった。

 

 なのに人間同士で戦わなくちゃならないのか? 同じファフナーであるはずなのに襲われて、でもファフナーなら攻撃したら痛いんじゃないかって思ったら、攻撃する事なんて出来なかった。

 

 腕を斬られた痛み。今まで感じた事のない激痛に気絶してしまった。総士がいないだけでこんなに痛いのか。なら総士は今まで俺たちの痛みを背負っていたのか。

 

「総士……っ」

 

 総士に会いたい。今までなにもわかっていなくて、ただ総士の言葉通りに戦っていた自分がバカみたいだ。

 

「総士…」

 

 総士が欲しかったのは左目の代わりじゃなかった。

 

「総士っ」

 

 本当に欲しかったのは、この痛みを一緒に背負ってくれる相手だったんじゃないか。

 

「総士!」

 

 必ず逃げ出して島に帰る。だから今はまだ大人しくしているしかない。早く島に帰る為に何でもしよう。島に帰る為ならどんな敵でも倒してやるっ。

 

「総士っ!!」

 

 だから今はお前の名前を呼んで、少しでもお前の存在を近くに感じていたかった。

 

 痛みを知ること。それは生きることの第一歩だ。人は痛みがあるから生きていける。己の生命を実感できる。互いに傷つけあう事すら、互いがそこにいる証だった。

 

 君は知るだろう。世界に痛みが満ちていようとも、そこには確かに生命があり、想いやる心があることを。だがその心が時に、世界を破滅に導く鍵になることを。

 

 

 

 

 

to be continued…




総士()「まぁ、こんなものか」

来主「絶望ばかりなのに希望があって絶望がある。これがデスポエム?」

総士()「僕もはじめは出来なかった。だから経験を積み重ねるしかない。経験から学ぶことが生命の特権だ」

乙姫「月刊少年冒険キング、機動侍ゴウバインアニメ放送特別別冊附録は皆城総士の特別ポエム集と大粒あんこ先生のメカニック設定原画! たとえ勝てる可能性が0%でも、明日の勝利を信じて戦う。それが、機動侍!!」

総士()「妹がロボットアニメに目覚めて兄としては喜ばしくも不安な今日この頃」

乙姫「明日をその手に掴んでみせろ! 超必殺、ゴウフラッシャー・スペシャル!!」

総士()「そんな技はない!!」

来主「ゴウバイン……これがこの島の強さの源?」

総士()「変なことを学ぶな! 思考を侵食されるぞっ」




中断メッセ4。苦労人総士()。なお本人が保さんより一番浪漫を理解している模様。
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