だからもっと私を祝福()して!!
新しく剣司と衛がファフナーの正式パイロットに任命された。
咲良、剣司、衛のトリプルドッグを組むことになった。
訓練時からの適正と、そして普段から一緒にいる三人なら自然な連携がとれるだろうという総士のレポート付きで。
わたしと操は大体ツインドッグという名のローンドッグで好きに動く派。果林と翔子はやっぱり総士がいないと恐いから出してあげられない。ブレーキ役が居ないとあのふたりは危なっかしすぎるから。
敵がやって来た。今回、わたしたちは基本見学。新しいファフナーの性能テスト。今のうちならまだ大丈夫。未来でも強化されていないファフナーでみんな戦ってきた。改良された今のファフナーならきっと大丈夫。
迎撃は島の外にある小島ですることになった。遠距離型のスフィンクスD型種。ジークフリード・システムを内蔵したファフナーなら相手の読心能力を防げる。
ただ問題なのは総士がいないから指揮を執る人がいないこと。
「ジークフリード・システム、起動」
総士の代わりにわたしがシステムの中にいるみんなを守る。
『そ、総士の妹?』
『なんだっていい。早く戦わせてっ』
『行くぞ、ゴウバイン!!』
怯えて恐がっている剣司がマシなくらい変性意識で性格が変わっている。
怯え、憎しみ、使命。こんなバラバラなイメージを総士は統括していたんだね。
「総士の代わりにわたしがシステムでみんなを守るよ。だからわたしのいうことはちゃんと聞いて」
って言っても聞かないのはわかっている。
『剣司、咲良、聞いてくれ。俺に考えがある』
だから未来の通りに進めるしかない。同じ道筋を辿るなら、ファフナーが強くなっている今ならきっと勝てるはず。
マークフュンフをフォワード。フォローをマークアハト。インターセプターをマークドライに勤めてもらう。
『行くぞっ。ワン!!』
スフィンクスD型種の砲撃を完璧に防ぎ切るマークフュンフ。
『ツ、ツー!』
レールガンでスフィンクスD型種を撃ち、注意を引き付けるマークアハト。ワームスフィアで反撃されてしまっても、マークアハトは無傷だった。
『スリィー!!』
ピラムをスフィンクスD型種の背中に突き刺して電撃を流しながら空から地表に引きずり落とす。
『はああああああ!!』
エネルギーフィンガーの貫手でスフィンクスD型種の胸を貫いて引き抜くマークドライ。
マークドライが飛び退いた所にマークフュンフが割って入る。ジークフリード・システムを内蔵しているからみんな互いの動きの先がわかって上手く連携が出来ている。
『ゴウバイン、スマーーッシュ!!』
スフィンクスD型種の身体を掴み、回転を加えて投げ飛ばす元祖ゴウバインスマッシュでスフィンクスD型種は一人悲しくワームスフィアに呑まれて消えた。
「……作戦終了。全機帰投せよ」
『マークツヴァイへ! 新たな敵の出現を確認!』
『敵!?』
『ど、何処からくるんだよぉ…』
『上等だ! やってやるっ』
CDCから報告が来る。それより早くわたしは彼らが近づいて来るのがわかっていた。
「ダメよ。あなたたちは撤退しなさい。操!」
『わかってる。ワームで跳ぶよ!』
システム側から3人のファフナーに自動操縦で撤退させる。そして海を割って現れる巨大な存在。巡洋艦を容易く飲み込む大きさのフェストゥム。
イージスを展開。「壁」の力でリヴァイアサン型の口を閉じない様に防ぐ。
「っ、撤退まで30秒。操!」
『コッチも大変なんだよ!』
もう1体現れたリヴァイアサン型。スフィンクスD型種を囮に2体のリヴァイアサン型でファフナー部隊を呑み込むつもりだったらしい。本当に原始的でもフェストゥムが戦う方法を身に付け始めた。
情報戦という戦略を学び、消耗戦という戦術を学び、真壁紅音から数多くの戦い方を学んだフェストゥム。
そのまた異なる兆しが現れているのかもしれない。わたしたちが総士を通して変わった様に。
操が相手をしているリヴァイアサン型が同化されて砕け散った。エウロス型はザイン並みの個体。そんな存在を体内に入れたら逆に同化されて当たり前だ。
「今日は貰うよ…、あなたの生命」
ショットガン・ホーンを展開する。その銃口にワームが形成される。
「だからもう、消えていいよ!」
リヴァイアサン型、その身体に向かってワームの砲撃を放つ。身体に大きな穴の空いたそこにマークツヴァイを突入させる。
砲撃を外したコアに向けて貫手を放つ。触れた右腕が結晶に包まれる。でも結晶に包まれるのはコアが先だった。
「んっ……、ごちそうさま…」
結晶が砕け散り、生命を同化する。生命をいただいたらごちそうさま。人の持つ他者の存在を取り込む事の感謝の気持ち。
生命が取り込まれていくこの心地よさがクセになりそう。総士に怒られそうだから我慢してるけど、今は総士に見られてないからセーフ。
操が戻ってきて人の姿に戻ったことで戦闘は終わりを告げた。いくらなんでもいきなりリヴァイアサン型2体は荷が重いだろうから未来の通りにスフィンクスD型種の相手は任せた。それ以外は予定外。だから予定外のわたしたちが相手をしないとならない。それが生き残る為の最善の方法。
初めての実戦でケガもなく帰ってきた。それが3人の自信に繋がれば良いけど。ちなみにリヴァイアサン型の相手をさせなかったのはわたしの指示に従わなかった罰という事にした。
今日もまた、わたしは総士の所に足を運ぶ。
「きっと、今日、世界の運命が動き出すと思う」
大きく育った結晶の樹。今も生命を産んで、そして新しい存在になろうとしている。
「一騎が選んだ時、あなたが目覚めることを祈っているよ。総士」
遥か彼方の場所で存在が目覚めようとしている。島のミールの一部でもあるから、わたしには感じる。
「人がたくさん来るけど、彼らを同化してはダメ。それは総士が望むことじゃないから」
この島のミールは、生命の循環を学び、生命の大切さを学んだ。だから生命を奪おうとする存在が赦せない。でも無差別に悪意が来るからといって同化してはならない。それは憎しみを覚えたフェストゥムと変わりはないから。
未来と違ってわたしの存在が既に外に出ていることは知られている。
「芹ちゃんを迎えにいかなくちゃ」
逃げ遅れた時、迷子になっていた芹ちゃん。だから取り敢えず迎えに行こう。芹ちゃんを人質にとられないとも限らないから。
「いってくるね、総士」
いつもの様に総士に言葉を残して、ミールを通して芹ちゃんの居場所を探し始めた。
◇◇◇◇◇
もう身体の隅から隅まで調べつくされた感覚だ。モルドヴァ基地。道生さんと島の外で再会するとは思わなかった。島の話をたくさんした。道生さんからも話を聞いた。そしてマークエルフの腕を斬ったカノンってやつとも少ない言葉だけど話した。
そして俺は日野のおじさんからある言葉を貰った。
「戦う以外の道……」
今まで戦うくらいしか考えてなかった。でも来主が島にやって来て、あいつと話して、フェストゥムでも言葉が通じれば分かりあえると思った自分もいた。
戦う以外の道。戦うこと以外でなにか道が開けるのなら、それもいいかもしれないと思った。
それでも外の世界は戦いばかりだ。
日野のおじさんは言った。戦うか、戦うやつを助けるか、諦めて敵に襲われるか。
それが外の世界の日常。竜宮島とは違う世界。そんな世界にしないために、お前はずっと戦っていたんだな、総士。
人類軍のファフナーに乗って戦う。マークエルフがあればもっと戦えた。それでも今はこれしかない。これでもひとりでも人を助けたい。
『下がってくれマカベ! 突出し過ぎだっ』
「敵が入り込んでるんだ! 早く倒さないと、基地の中にいる人たちが危ない」
相手は1度戦ったことがある。アルヘノテルス型、そいつから生まれるグレンデル型。グレンデル型はこのグノーシス・モデルというファフナーでも簡単に倒せる。でもアルヘノテルス型相手だとそうはいかない。
「右は任せる。俺は左をやる!」
『了解! 全機、マカベに続けぇ!!』
道生さんが乗っていたやつと同じファフナーに乗って戦う仲間。他は同じグノーシス・モデルの中でその機体だけが存在感を放っていた。パイロットはジョナサン・ミツヒロ・バートランド。
たしか遠見の父さんの名前だったっけ? でもミツヒロのことを俺は知らない。なのにミツヒロは俺のことを何故か心配してくれる。そして周りのやつを指揮しながら戦っている。まるで総士みたいだ。
ミツヒロのファフナーがその手に握る剣をフェストゥムに突き刺すと、刃が展開して弾丸が撃ち込まれる。ルガーランスやガンドレイクみたいな武器か。
「っ、危ない! 散れっ」
天井が抉れて、今まで見たことのないフェストゥムが降ってきた。2機のグノーシス・モデルが下敷きになった。
「脱出しろ!!」
『……ダメだ。もういない…』
「っ!?」
同化。日野のおじさんに映像で見せて貰った。敵に同化されたら、敵の一部になるか、結晶になって砕け散る。そこにいた証しがなくなる。でもフェストゥムはそれが祝福なのだと日野のおじさんは言った。
存在を消すことが祝福なんてバカげてる。俺たちみんな、ここにいるんだ!!
「顔!?」
天井から降ってきたやつの頭の部分に歪な配置の目と口があった。人間のことがちゃんとわかってないのに、なのにその生命を奪うことが祝福なのか。
『あなたは、そこにいますか――?』
「ああ、いるさ。ここにな!!」
そうだ。俺たちは生きているんだ。生きているから嬉しかったり悲しかったりするんだ。それを奪われることがどんなに辛いことか、お前たちに教えてやる!
『避けろマカベ!!』
ミツヒロの声が響く。でもマークエルフより動きが鈍い機体に咄嗟の動きが鈍い。
フェストゥムの口から伸びた触手に機体が貫かれ、両腕まで貫かれて切り離された。
「くそっ、動かない!!」
『全機マカベを支援! 絶対に死なせるな!!』
死ぬもんか。俺は島に帰るんだ。総士の所に帰るんだ!
地面を突き破って光が触手を断ち切った。
「あれは……」
『ザルヴァートル・モデルッ!?』
土煙を割って現れる白いファフナー。マークゼクスかと思ったが違う。翼の生えた天使みたいな機体。背中から赤い光を何本も放ってフェストゥムを倒した。
白いファフナーが俺の前に降りると、モニターが消えて衝撃が襲う。外が見えた。
白いファフナーを見上げる。その影から人が浮いてきた。
「そん…な……」
顔はほとんど覚えていない。でもその顔はいつも見ていた。
「母、さん……」
なんで、母さんが。死んだって、ウソだったのか……?
「私は、日野洋治によってこのマークザインをお前に渡す」
「マーク…ザイン…」
「私はお前というアルヴィスの子にミールの器を渡す。乗れ。私はいなくなる」
「待ってくれ母さん!! 母さんなんだろ!?」
今までどこにいたのか。なんでここにいるのか。なんで島にいなかったのか。聞きたいことは山ほどあるのに母さんはそんなことを一言も話してくれない。
「真壁紅音はもういない。私はお前たちがフェストゥムと呼ぶ存在だ」
「っ!?」
やっぱり、母さんはもういないのか。目の前にいるのに、もう。母さんが…。
母さんが消えた。母さんと会えたのに母さんは母さんじゃなかった。もう何を信じたらいいんだ。教えてくれっ、総士。
『マークザインに乗るのか? マカベ』
近くに来たミツヒロが俺に問う。
確かに母さんじゃなのかもしれない。でも母さんが持ってきてくれたファフナーだ。誰にも渡したくないと思う。
乗り方はマークエルフと同じだった。だけど身体の感覚が全然違う。マークエルフの感覚が補助輪が着いていた自転車の様に思えてしまう程、身体が軽い。
さっき母さんが倒したフェストゥムと母さんが向かいあっていた。フェストゥムが結晶を歯の様に並び立てて口を開けていた。
「やっ、やめろーーーーー!!!!」
身体が動くのは間に合わず、言葉だけしか飛び出せなかった。
母さんを呑み込み、咀嚼する様に口を動かすフェストゥム。
「喰った……、母さんをっ、喰った…っ」
頭の中が真っ白になった。
ようやく会えたのに、もっと話したかったのに、母さんでなくったって、言葉が話せるなら母さんのことが聞けると思った。なのに……っ。
「うわああああああああ!!!!」
『マカベ迂闊だ!!』
フェストゥムを押し倒す。
「母さんを、よくも母さんを喰ったなああああ!!」
怒りに任せてフェストゥムを殴る。他のことなんて考えられなかった。
人にとって初めての他人。母親。ひとつだった存在から別れて生命になる。
生まれる生命は何を思うのだろうか。暁の空に、存在は何を思うのか。それを今は、誰も知らない。それでも思うのだろう。茜色に染まる空も、綺麗だと思うのだろう。
to be continued…
総士()「今日はキレが悪いな」
一騎「お疲れ様、総士」
総士()「一騎か。お疲れ」
一騎「新しく配合を変えてみたんだ。良かったら食べないか?」
総士()「ほう、新商品か…!」
一騎「相変わらずカレーに目がないな、お前」
総士()「…僕好みの味だ。お前も僕の好みを熟知しているな」
一騎「そりゃ、いつも一緒にいたから。カレーばっかり食べてたし」
乙姫「喫茶楽園新装開店記念! 一騎カレーが一杯580円で食べられる! 限定20食だからお早めに♪」
総士()「極めて美味だ」