今回ご都合主義注意報。そんなご都合という世界の祝福を受け入れられる珪素人間の方はそのまま永遠の戦士の祝福を受けてね♪
頭の中で乙姫ちゃん→総士はもう連日寝る前とかもんもんしちゃうんだけど、織姫→総士もわかる。ただ乙姫(織姫)×芹ちゃん、まだわかる。なのに芹ちゃん→総士の妄想が止まらないのなんで!? 総士病は何処まで感染すれば気が済むん? あ、ちなみに一騎×総士は総士攻めより一騎攻めの方が竜宮島即売会で人気の様です。総士×来主は総士が攻めの様です。総士×ジョナミツとか生まれそうなこの竜宮島は魔境すぎてコワイ。
はじめてのファフナーでの実戦。あたしなんかに戦えるのかなって、思っていた。
「当たれっ」
大剣が割れて砲身が露出する。プラズマの弾丸が発射される。小さなフェストゥムは狙いにくいけど、3発の弾丸の内2発は当てられた。
砲身を閉じて大剣で残った一匹を切り裂く。
「はぁ、はぁ、はぁっ、乙姫ちゃんは!?」
『やあああああ!!』
大剣を振り回し、返す刀でさえ切り裂き、小さな台風の様に寄ってくるフェストゥムを蹴散らしていた。
『わたしの心配より、自分の心配をして芹ちゃん』
なにかあってもイージスを展開してちゃんと攻撃を防ぐように乙姫ちゃんは言った。
向島から移って今は竜宮山頂で戦っている。たくさんの群れが襲ってきても乙姫ちゃんひとりでなんとかなっている。あたしはただ、稀に乙姫ちゃんの攻撃から逃れているフェストゥムを倒すくらいで、もう息が上がっている。
「あたしは、大丈夫っ」
乙姫ちゃんに心配させないように強がりでも大丈夫だと伝える。
緊張が抜けきらなくて余計に身体を疲れさせているのはわかってる。でも乙姫ちゃんがあたしをファフナーに乗せた意味はきっとあると思うから。
「はああああっ」
またこっちに向かってきたフェストゥムを切り裂く。遠心力に逆らわないで第二撃で迫ってきた3匹を切り裂く。
『やっぱり子を倒してもキリがない。頭を倒さないと』
「でも敵の本体なんて何処にも見えないよ?」
竜宮島で一番高い場所から島の様子を見ているのに、それらしい敵の姿が見えない。
『海の中に隠れているんだよ。だからみつけられないの』
「海の中……」
確かに群れは海の中から現れている。三つ目の群れが島の南西に現れた。
「乙姫ちゃん!」
『防ぎきってみせる!』
イージスを展開する乙姫ちゃんのマークツヴァイ。そこから青い壁が一面に広がる。小さなフェストゥムの群れが次々とあたしたちの居るこの場所に向かってくる。
『島に痛みは与えない! 総士はわたしが守るっ』
壁にぶつかって次々と消えていくフェストゥム。
乙姫ちゃんはスゴいんだなぁ。あたしにはあんなこと出来ない。
頭の角? マークツヴォルフにもあるショットガン・ホーンを展開して、その先に黒い球体が生まれる。
『総士を傷つけさせない。消えて!!』
黒い球体が発射されて新しい群れを呑み込んだ。今のフェストゥムの攻撃……?
乙姫ちゃんが頑張っているけど、群れは途切れる事を知らないで竜宮島山頂に集まって尖った山を造った。
『うがぅっ』
「ぅぅ゛っ、つ、乙姫、ちゃん……!」
集まったフェストゥムたちが自爆した時。胸を突き抜ける激痛。乙姫ちゃんの呻き声とタイミングは一緒だった。
『ご、ごめんね、芹ちゃん。クロッシング切れば良かった…』
機体間の相互クロッシングの唯一の弱点は痛みを共有してしまうこと。なら今の痛みは乙姫ちゃんの痛み? 島のコアだから島が傷ついたら乙姫ちゃんも傷つくの?
「良いのっ、このままで良い」
『芹ちゃん…?』
乙姫ちゃんだけに痛みは背負わせない。だってあたしは乙姫ちゃんの友達だもの。戦いで大して役に立てないならせめて乙姫ちゃんの痛みを一緒に背負いたい。
「あたしも守る。乙姫ちゃんの島をっ」
『芹ちゃん……』
バスターソード・ライフルでまた集まってくる敵を切り裂き、撃ち抜いて、薙ぎ払う。
「あたしが守る! 乙姫ちゃんを守るんだあああ!!」
ショットガン・ホーンからプラズマ弾を撃つ。まだ手数が足りない。レージングカッターを振り回してフェストゥムを切り裂く。
乙姫ちゃんに比べたら何も出来ていないかも知れないけど、それでも一緒に傍で戦うことは出来るから。
「一緒に戦わせて、乙姫ちゃん」
『……うん。ありがとう、芹ちゃん』
システムを通して乙姫ちゃんと心が繋がっていくことがわかる。……乙姫ちゃんの親友か。嬉しいな、そんな風に思っていてくれるなんて。
◇◇◇◇◇
機械を使って人の心を覗いて、それで人を理解したことになるのか。わたしたちが未来と呼ぶ可能性の中で真矢が総士に言った言葉。
でもクロッシングもバカには出来ないよ、真矢。
システムを通して芹ちゃんの心が伝わってくる。本気で一緒に戦ってくれようとしている。それを感じるだけでわたしは嬉しいと思う。
それにしても敵の群れが多すぎる。いくらプレアデス型でも増殖出来る数もスピードも限りがあるのにまるで勢いが収まらない。
『乙姫ちゃん!』
「くっ」
「壁」の力で敵を食い止めるけど、漏れは生まれてしまう。ノートゥング・モデルじゃ限界がある。これがザルヴァートル・モデルやエインヘリアル・モデルならもっと強力な壁が作れるのに。
『きゃあっ』
「芹ちゃん!」
プレアデス型の子がマークツヴォルフに衝突して自爆した。五体満足だけど機体にダメージが残っている。
「芹ちゃん逃げて!」
わたしひとりならまだなんとかなる。でもまだ芹ちゃんにはまだ荷が重い。やっぱりシェルターに避難させておくべきだったかな。
ううん。違う。そうじゃないよね。多分わたしも恐かったから芹ちゃんと一緒にいてほしかったんだ。総士がいないから、総士がいない分の穴を芹ちゃんに埋めてほしくてわたしがワガママでファフナーに乗せた。
「芹ちゃんは、わたしが守る!」
強固な壁。「壁」の力を強く意識する。壁を打ち出してプレアデス型の子を押し潰す。
『乙姫ちゃん右!!』
「くっ」
だけどプレアデス型の子の数が多すぎて対処が仕切れない。右から足と身体にプレアデス型の子が取り付いた。まずい、今自爆されて擱座したら芹ちゃんを守れない。
「総士っ」
お願い。助けて、総士!
『乙姫ちゃん!』
足と身体に取り付いたプレアデス型の子が撃ち抜かれた。ワームスフィアに呑み込まれるプレアデス型の子。新たに加わるクロッシング。
「翔子?」
マークゼクスがわたしたちの前に降り立った。装備したレールガンが展開されている。今のは翔子がやったの?
『ごめんね、待たせちゃって。ファフナーに乗るのに時間掛かっちゃって』
戦いながら島のみんなをわたしは導いていた。みんなが欲しいものを与えるのがわたしの役目。でも本当にそれが欲しいのかを選ぶのはみんなの選択。
総士が選び続けて今がある。一騎が選んで明日がある。存在と虚無の祝福が、世界を祝福する。そんな未来に繋がった。
◇◇◇◇◇
翔子ちゃんを、私は見送るしか出来なかった。ティターン・モデルの中で、私は動けずにいた。
「なんで……なんでよっ」
ファフナーが起動しない。セーフティが掛かる。ティターン・モデルを起動する為のシナジェティック・コードの形成数値が足りない……。
「今まで、皆城くんが居たから動いていたっていうの…っ」
ニーベルングが指に食い込んで痛い程手を握り締める。
やっと同化現象のリスクが解消されたのに、これでもっと長くファフナーに乗って戦えると思ったのに。
先輩の代わりに、島を守れると思ったのにっ。
なのに私は、ひとりじゃもうファフナーを動かせない。私は、なんのためにここにいるの?
ティターン・モデルで戦っていると、いつも先輩を感じられた。先輩が私に戦い方を教えてくれた。メモリージングされた知識を呼び起こす様に意識しないで声に身を任せて戦えた。
でももう、何も聞こえない。ファフナーに乗れないなら先輩の声を聞く資格さえないの?
このままじゃ島が危ないのに。先輩たちが生命を捨ててまで守ってくれた島を私が守らなくちゃならないのにっ。
「動いてよ…っ。今やらなきゃ、みんないなくなるのよ」
ニーベルングに接続してもファフナーは応えてくれない。
「今動かなきゃなんにもならないのよ…っ。先輩たちが戦った意味がなくなっちゃう」
呼び掛けても、ファフナーは応えてくれない。
「もう、あんな思いはしたくない。先輩たちを助けられなかった。だからせめて先輩たちの守った島を守りたいの」
手の届く場所にいたのに、その手を掴めなかった。大切な人がいなくなる。もうあんな思いだけはしたくない。させたくない。だから――。
「だから、動いてよ!!」
ピーッと、システムが再起動する。
ニーベルング再接続。シナジェティック・コード形成値規定値を突破。対数スパイラル形成、コア同期確認。
「いったい……なんで…」
そんな火事場のバカ力が通用する様な簡単な兵器じゃない。私のシナジェティック・コード形成数値じゃもう起動しないのはわかってるのに。
「よっ、後輩!」
「っ!?」
背中から聞こえた声。おかしいな。私、とうとうバカになっちゃったのかな?
「そんな背負い込むなよ。お前ひとりで戦っているんじゃないんだからさ」
恐る恐る、顔を背中に向ける。これは夢? 非常事態でどうにもならない私の頭が見せてる夢なの?
「今まで良く頑張ったな、蔵前」
「っっ、先…輩……っ」
勝手に涙が溢れてくる。いなくなったはずの先輩が、ここにいる。お願い神様。これがもし夢だというなら覚まさせないで。
「席、代わってくれるか? どうにもこっちは座り心地悪くてさ」
「っ、はいっ!」
泣くのはあとだ。先輩に腕を引いてもらって、……わかってはいるけど、だけど今少しだけ、先輩に甘えても良いよね? 皆城くん。
「お、おい、蔵前…?」
「5秒だけ、5秒だけ…っ、こうさせてください…」
暖かい。ちゃんと先輩はここにいる。
「仕方ない。5秒だけだぞ?」
「はい…」
長くて短い5秒という時間だけで、一生分の幸せを貰った気がした。もう、何も恐くない。だって先輩がいてくれるんだもの。
「ティターン・モデル、またこいつの席に座ることになるなんてな」
「あの、将陵先輩」
「なんだ? 蔵前」
これが夢じゃないなら、私は先輩に聞きたいことがあった。
「L計画のこと、もっと教えてください。何があったのか、どんな戦いがあったのか、どんな痛さと恐さ先輩たちが感じていたのか」
私たちは、その事をもっと知らないとならない。これからの戦い、その事を背負って行ける様に。
「ああ。この戦いが終わったらな。いくらでも聞かせてやるよ。俺たちの戦いを」
ティターン・モデルがケージアウト、エレベーターで地表に上がっていく。
地表のエレベーターの入り口が開き、レールが伸びてエレベーターパレットが止まる。安全装置が解除され、ティターン・モデルが1歩を踏み出す。
「竜宮島……。帰ってきたぞ、祐未」
to be continued…
真矢「帰る生命。目覚めの鼓動。そして無の力」
「おはよう、総士」
「アザゼル型並みか、大した個体能力だ」
真矢「無の道を選んだ者と、虚無の中でも存在を選ぶ力がぶつかりあう。わかりあえないのなら、互いに奪い合うしかない」
「一騎! 敵のコアを滅ぼせ!!」
真矢「次回、蒼穹のファフナー。第3746話、暗闇の中の光。あなたは、そこにいますか…?」