僚の立ち位置が決まったんだけどさ。なんで総士のヒーローポジに落ち着きそうなんだろう。いやまぁ先輩だから、道生さんよりも歳近いからかもしんないけどさ。この竜宮島即売会に僚×総士僚攻め総士受けが生まれそうでヤバい。
そして乙姫ちゃんの総士病がLv5(雛見沢的な末期)になる。
あの日、ティターン・モデルに乗って初めて敵と戦った日。
あの時も、こんな夜だった。
たくさんの仲間が居た。40人にも満たない全員が島の為に戦った。
俺が今、ここにいるのは仲間たちの戦いを伝えるためだ。
「俺は……、俺たちは、ここにいるぞ!!」
ガンドレイクを振るい、迫ってきた小型のフェストゥムを切り裂く。小さいからやりにくいが、一撃で倒れてくれるのはありがたい。
「先輩! 敵の本体が見つかりました。島の西側です!」
「西なら東側だな」
偽装鏡面で光を反射して姿を隠していた竜宮島は、方角が真逆になっている。戦闘時で西と言われたら頭の地図で東を目指さないと見当違いのところに行ってしまう。まぁ、システムのコンパスに従えば良いから迷わないけどな。
「俺たちは海からいく。その方が速い」
「了解!」
システム担当者をわけてパイロットは操縦に専念させる。うまく考えたシステムだ。これなら負担は軽いし、システム担当者とパイロットとのクロッシングがあるからフェストゥムの読心能力に単機でも対抗できる。
俺たちの時にこういうシステムがあれば良かったと思うのは総士には酷な話か。
もうティターン・モデルは島に必要ないだろうに、こうしてティターン・モデルで島の土を踏んで駆けられるのが、不謹慎だと祐未に言われるだろうが嬉しかった。
ただこのシステムも欠点がある。パイロットとシステム担当者のクロッシングが上手くいかないと成立しない。つまりティターン・モデルのパイロット同士のクロッシングで敵に対抗していたのを単機に完結させたシステムであるらしい。
蔵前とは付き合いがあったからこういきなりでも上手くいっている。……俺には祐未がいるんだけどな。それもわかっていて、蔵前は強いよほんと。
「将陵先輩!」
「ああ。海の中にも居やがったか…!」
システムからの情報。プレアデス型。群れを作るタイプ。俺たちの戦ったウーシア型と同じタイプか。
「アイツは俺たちでやるぞ」
「はい! スレイプニール・システム接続、トルーパー出撃!」
別方向から海の中を進む機体があった。ティターン・モデルの二回り近く小さい機体だった。噂のトルーパー・モデルってやつか。
4機のトルーパーがプレアデス型の親に襲い掛かっていた。海の中にも適した個体か。動きが速すぎる。
「蔵前! アイツを陸地に揚げるぞ」
「最寄りは慶樹島です。トルーパーで追い込みます!」
「任せる」
ファフナーで戦うことが恐かった。敵よりも、武器であるはずのファフナーが。
だがファフナーでなければ敵と戦えない。だから恐くても乗るしかなかった。恐くても、祐未がいてくれたから最後まで戦えた。
「先輩……」
「島に帰れないかも知れないって、何処かで覚悟はあった」
祐未の父さんの立てたL計画は、参加者全員が生きて帰れることを考えられていた。だから俺も、生きて帰れることを信じていた。だけど海の中にもフェストゥムが居た。約30年、海に入れなかったはずのフェストゥムがだ。
祐未は帰りたがった。最後の最後まで帰る気でいたのは祐未の方だった。……だから止められたんだろうな。万が一に島を守れるブレーキ役が要る。パートナーのバランスは、きっとそう組まれたんだろう。
「すみませんでした。先輩たちを、助けられませんでした」
「そんなことないさ。今、助けてもらってる」
「私は、先輩たちに生きてもう一度島に帰ってきて欲しかったです」
「なら、この戦いに勝たないとな」
ファフナーで島の土を踏み締めた。みんなを島に帰せた。だから今度は自分も島に帰る。存在するものとして、去り行くものたちの代表として、島に帰る。……こういうのは祐未が向いてるんだけどな。
「あのとき、先輩たちだけ海の底に置き去りにして……私はっ」
どいつもこいつも勝手に責任感じて、勝手に重くして、勝手に背負い込んで。もう少し肩の力抜いた方が人生は楽しくなるんだぞ?
「俺たちだけじゃないさ。祐未がいなくなったあと、俺がいなくなるまで総士が一緒に居てくれたんだ」
「皆城くんが…?」
システムを通じてクロッシングしていた。敵に島が見つかるリスクもあるのに、アイツは梃子でも動きそうにない顔で最後まで一緒に居てくれた。
「いなくなるまで、アイツは島のことを聞かせてくれた。みんな平和だって。俺たちの戦いに、目に見える意味をくれたんだ」
「皆城くん…」
「泣きながら感謝して謝られて、あの総士が泣いてるんだぜ? これからいなくなるってのにそんなこと気にしてられなかった」
最後の最後まで、島のやつと話せたことが救いだった。お陰で未練もなかった。……いや、剣司と一騎の勝負が気になるな。剣司は一騎に一本くらい取れてるかなぁ。
バレたら総士が怒られるから黙っているつもりだったけど、まぁ、いいよな?
「トルーパー上陸! 敵を誘き寄せました」
「よし、いくぞ!」
タイムリミットはあと5分を切っていた。3分でコイツを倒さなくちゃならないのか。シビアだな。Lボートなら出撃してすぐに戦えたけど竜宮島じゃ広すぎて移動に時間を使う。
「……このタイマー、もう意味ないよな」
慶樹島に上陸しながらふと思った。島にいるのに時間制限用のタイマーなんて使わないんじゃないかって。
「皆城くんが設定したんです。10分という短い時間で戦うことの難しさと過酷さを知らないとならないって」
ガンドレイクで生まれたばかりのプレアデス型の子を切り裂く。刃を展開してプラズマ弾を放つ。
直撃、プレアデス型の親が吹き飛ぶ。
腕からバルカンとミサイルを放って弾幕を張る。当たったミサイルが爆発してプレアデス型の親の姿を隠した瞬間にジャンプする。ティターン・モデルが居た場所を稲妻が過ぎ去る。
「うぉぉおおおお!!」
プレアデス型の親を踏み潰しながら地面に倒す。身体にある一つ目が怪しく光った。
「先輩!」
蔵前が気づくより前に身体が反射で動いた。ティターン・モデルが仰け反り、胸の前を稲妻が通り去る。
「貫けええ!!」
仰け反った反動を利用しての一つ目に向かってガンドレイクを突き刺す。刃を展開して体内にプラズマ弾を直接撃ち込む。プレアデス型の親の身体が紫に変色する。慌てず素早く飛び退けばプレアデス型の親はワームスフィアに呑まれ消え、子も活動を停止した。残り時間30秒。先ず先ずかな?
◇◇◇◇◇
「僚が帰ってきた……」
今、ティターン・モデルに乗っているのは果林じゃない。
『果林ちゃん!』
『大丈夫、先輩と一緒だから!』
島の記憶が、もう一度僚に生命を与えた? 生命の循環を狂わせる様なことをどうして。
『乙姫ちゃん…?』
「なんでもないよ。芹ちゃんは下がって、わたしはもう大丈夫だから」
芹ちゃんに声を掛けられて我に帰りながら芹ちゃんを後退させる為に言葉を返した。
『あたしも行くよ。島に住んでいるひとりとして…、ううん。乙姫ちゃんの友達だから、一緒に行きたいの』
「芹ちゃん」
芹ちゃんはズルいよ。そうやっていつもわたしの心のなかに入ってくる。
「言ったからにはちゃんと着いてきて、芹」
『乙姫ちゃん…?』
今はわたしも皆城乙姫だから我慢する。だから、ねぇ、早く起きて総士。でないとわたしが生まれる事が出来ないよ。早く総士や芹ちゃんと、ちゃんと触れあいたいの。
「敵の本体を引きずり出す。翔子はわたしと芹を守りなさい」
『わかった。お願い、乙姫ちゃん!』
飛び立つマークゼクス。デュランダルの一発一発がプレアデス型の子をしっかり撃ち抜いている。
そしてレールガンの射線を合わせて複数のプレアデス型の子を一発で撃ち抜いている。真矢みたいな狙撃じゃないけど、真矢みたいに射撃を磨きあげてきている。
「芹!」
『は、はい!』
わたしの雰囲気が変わったから、芹ちゃんの空気も固くなった。でもそれでいい。飴と鞭っていうもの。戦っている間くらいは気を引き締めて貰わないと。
「わたしとマークツヴァイを任せるわ」
『…うん。乙姫ちゃんは絶対守るから』
守るならわたしが一番防御に優れているけれど、これはわたしにしか出来ないから。
「西に移動する。ここじゃ戦い難いから」
『りょ、了解っ』
『道は私が作るから、先に行って!』
マークゼクスがレールガンを撃ち、弾丸が通り抜けたところにいたプレアデス型の子は皆撃たれて消えた。
「イージス展開! 正面から食い破るよ」
『了解!』
ショットガン・ホーンとイージスを展開してエネルギーフィールドを纏って強引に戦場を突き抜ける。
『倒すっ。どんな敵でも倒してみせる!』
『恐いよぉ……母ちゃん…』
『うおおおお!! ゴウバインッ』
皆もファフナーに乗った。システムを通じてみんなに集合する様指示を出す。
皆は迂回したり敵の群れを躱しながら来るから一直線で進んでいる私たちが一番最初に西海岸に到着する。
『でも乙姫ちゃん。敵を引きずり出すって、どうやって…』
「今からあなたがわたしたちを守りなさい。芹」
『あっ、はい!』
意識を集中してミールを通して海に意識を傾ける。
「……わたしは、ここにいるよ」
わたしの存在を感じて海の中からプレアデス型の親が現れた。
プレアデス型の親がゆっくりとわたしの方にやって来る。違う道を行くミールの側の存在に、当て嵌まる言葉を選ぶなら戸惑い。無に還るのではなく存在を選ぶミールがわからなくて、それを理解しようとわたしの方にやって来る。わたしのマークツヴァイの前にマークツヴォルフが割って入る。
「手は出さないで、芹」
『で、でも…』
「いいから」
わたしも知らないとならない。彼らが選んだ道を。わたしたちが変わった様に、彼らもなにかが変わりはじめているかもしれない。
海中からミサイルが飛び出してきた。史彦たちが島を取り戻した。
攻撃されたプレアデス型の親は先程とはまるで違う素早さで海岸を目指す。
『ゴウバインッ、参上!!』
マークフュンフが浜に現れてイージスを展開。プレアデス型の親を食い止める。
『今だ剣司!!』
『お、おうよ!』
レールガンを展開したマークアハトがプレアデス型の親を攻撃するものの、高次元障壁を破れずダメージにならない。反撃でプレアデス型の親が放った稲妻に四肢を貫かれてマークアハトが倒れる。
『剣司!! よくもぉぉっ』
マークドライがピラムを打ち込もうとする。でもプレアデス型の親はその切っ先を避けて、マークドライを稲妻で貫いた。
『え?』
そしてマークフュンフのイージスを貫いて、プレアデス型の親が放った稲妻がマークフュンフの頭部を破壊した。
改良されたファフナーなのに、プレアデス型が圧倒的過ぎる。
そんなファフナーで敵わないのなら、道生のメガセリオンもカノンのベイバロンも敵わず、脚と腕をやられて蹴散らされてしまう。
島を落とす為に彼らが選んだのは圧倒的な力。力ですべてを捩じ伏せようとしている。
「……あなたたちは変わらず選ぶんだね。会話のない、無の道を」
『つ、乙姫ちゃんは、あたしが守る!』
『一騎くんの島は、私が守るっ』
マークツヴォルフとマークゼクスが立ちはだかる。翔子は強い決意があるから平気だけど、芹ちゃんは今日はじめて戦うのにあんな圧倒的な戦いを見て怯えてしまっている。
わたしも恐い。だって改良されたファフナーでも対抗出来ない強さを彼らはぶつけてきた。
わたしは平気でも、翔子と芹ちゃんはSDPを使えない。このまま戦って芹ちゃんがいなくなるんじゃないかって、考えてしまったらあとが終わらない。
『私が敵の注意を引き付けるから、芹ちゃんはトドメをお願い』
『わかりました。羽佐間先輩』
マークゼクスが仕掛ける。レールガンを撃つ。でもプレアデス型の親には効いていない。反撃の稲妻は機動力で避けるマークゼクス。稲妻ではダメだと学んだプレアデス型の親は子を産み出してマークゼクスを襲わせる。
『くっ、こんなに、たくさん…!』
レールガンとゲーグナーでプレアデス型の子を倒すマークゼクス。でも小回りはプレアデス型の子に軍配が上がった。
『きゃああああっっ』
多勢に無勢の状況でプレアデス型の子がマークゼクスの背中と右脚、右肩に取り付いて爆発する。
マークゼクスは森の木々を盛大に薙ぎ倒して墜ちた。
それを目の当たりにした芹ちゃんはバスターソード・ライフルを構えたまま身動きが取れずにいる。
恐い。このままじゃ
システムで繋がっている心が同じことを考えて、その感情を倍増させてしまう。ニーベルング・システムで闘争心を煽られても、それを超える恐怖の前には意味がない。
助けて……。
プレアデス型の親がわたしたちの前に立ち塞がる。その一つ目がわたしたちを捉えて、怪しく光る。
「総士ぃぃぃいいいいいい!!!!」
稲妻が放たれるその瞬間。わたしたちとプレアデス型の親の前にワームスフィアが現れて稲妻を吸収して消えた。
『総、士……せん、ぱい?』
ワームスフィアが消えたあとにはアルヴィスの制服を纏いながら長い髪を靡かせて、わたしたちに背中を向ける総士がいた。
「総士……」
「遅れてすまない。乙姫」
総士の声だ。少しの間だったのに、もうずっと聞けなかったと思うくらい待ち侘びた総士の声だ。
「総士っ、総士っ!!」
総士がいる。総士がいるだけで安心して涙が流れ落ちる。
「僕はここにいる。だから安心しろ、乙姫」
「うん…っ。うん、うん…!」
芹ちゃんには見せられないくらい涙でぐしゃぐしゃになった顔で、総士の言葉に頷く。何度も、何度も。総士がそこにいるのを、総士の言葉を何度も頭に巡らせながら。
「……去れ。でなければ虚無の申し子がお前たちを無に帰すぞっ」
底冷えしそうな程の低い総士の声。思わずびくびくしそうになる身体を抑える。
安心しているのに、その感情はわたしたちに向けられていないのに、近くに居るだけで当てられそうな総士の怒り。
それに身を捩るプレアデス型の親は子を産み出して総士を呑み込み尖った山を作った。
『ふたりとも逃げて!!』
翔子がそれを見て意味を知っているから、わたしたちに叫んだ。
でも大丈夫。だって総士だから。
赤く光る山。その光が内部に向かって消えていく。
『なにをしているの? 皆城くん…』
総士は選んだ。たとえ痛みを伴おうと存在することを。
「なるほど、
プレアデス型の子の山が内側から溢れる結晶に包まれていく。
「ならばお前を無に帰そう……。この虚無の申し子がな!!」
結晶が砕け散り、わたしたちに降り注ぐ。月の光に照らされてきらきらと輝く結晶のなかには、闇を溶かして固めたような色をした荒々しい竜の巨人の姿。
『ファフナー……なの…?』
『そんな。あのファフナーは…』
芹ちゃんも翔子も驚くのも仕方がない。だってその存在は未だ生まれざる存在だから。
それでも総士はその力を求めた。救うために、変える為に、その虚無の力を。
「行くぞ。マークニヒト!!」
両手を広げ、月明かりを浴びる虚無の申し子が産声を上げた。
力がないのが悔しかった。だからすべてを無に帰す力であっても、それを求めた。その力で皆の未来を守れるのならと。たとえ相手のすべてを奪おうとも、守りたいものがそこにあった。
to be continued…
来主「咲良は痛みを感じるの?」
咲良「痛みって……あー、その、あれよ。苦手なだけだっての」
来主「にがて? にがてってなに?」
咲良「苦手っていうのは、その。近づきたくないとか、嫌いっていう意味よ」
来主「咲良はおれがにがて? 嫌い、憎いから」
咲良「あんたは……、まぁ、認めてやらないこともない、かな…?」
来主「ほんと? ありがとう咲良! 好きだよ」
咲良「バッ!? あんたなんてこと言ってんのよ!!」
来主「一緒に居るのが好きなら、一緒に居てもいいっていうのも好きじゃないの?」
咲良「誰よこいつに間違った知識教えたのは!!」
中断メッセ風。苦手ってなに?