推奨BGMは「その時、蒼穹へ」か、「vestigeーヴェスティージー」か、「君は僕に似ている」、「Life Goes On」、「僕たちの行方」、「Reason」あたりか。なんか飛鳥先輩のところの曲も結構ファフナーに合うな。
総士の一騎病Lvが3に上がった。そして世界を祝福するとき、みんなは「Lv3でコレ!? という」つまりLv5はもうなんかヤバい。
目覚めたばかりでまだ状況が掴みきれていないが。タイミングはよかったらしい。
目の前にはプレアデス型の親。コイツならファフナー部隊を壊滅に追いやっても納得は出来る。
そしてマークツヴァイに乗っているのは乙姫だった。
マークツヴォルフの姿もある。……いったい、僕のいない間に何が島に起こった?
2年寝過ごしたわけではないのは確かだ。
だが剣司たちだけじゃなく、羽佐間までやられ、乙姫とマークツヴォルフの立上まで居て倒せないのは少しおかしい。……いや、理由はある。
「恐いか? いなくなることが恐いか? フェストゥム…!」
マークニヒトが腕を伸ばす。だがプレアデス型の親は子を産み出しながら逃れていく。
「逃がすな、マークニヒト!」
マークニヒトがプレアデス型の子を同化しながら親を追う。中々素早いが。
「追い詰めろ!!」
背中のホーミング・レーザー発振器からレーザーを次々に撃ち出して逃げ場をコントロールする。
「掴まえたぞ」
プレアデス型の親の尻尾を掴み、引き寄せ、胴体に掴みかかる。
「っ、同化する気か…」
胴体を掴むマークニヒトの右手が結晶に包まれようとしているが、マークニヒトの手はなんともない。
「この虚無の申し子がただの憎しみと虚無の塊だと思うな……」
島のミールの記憶。生きたいと願う存在への渇望とフェストゥムへの憎しみで育ったこのマークニヒトは虚無の申し子でありながら存在することを至上とする器だ。
プレアデス型の親がぶくぶくと膨れて気味の悪い蠢きかたをする。
「なんだ!?」
あまりの暴れっぷりに、マークニヒトが手を放してしまう程だった。
不気味な蠢き。腹を裂くように現れた存在を僕は知っている。
「マークニヒトに惹かれたか…、或いは」
『私ハ、認メナイ…』
モルドヴァでマークザインに同化されたはずのマスター型のスフィンクス型だ。
人類軍で開発されていたマークニヒトを同化し、人を滅ぼすためにその術を獲得しようと竜宮島を襲った存在が今目の前にいる。
ちょうどいい。今お前を倒せば生じる可能性はさらに広がる。フェストゥムが憎しみを学ばない可能性すらある。感情は、来主が学ぶだろう。僕が彼と直接話せるのは2年後か或いは5年後か。
『私ハモウヒトツノ我々ヲ認メナイ…』
コイツも個を確立しつつある存在だ。だが真壁紅音を同化した存在と違ってコイツはなにもない。なにもないから無に還りたがる。そこに存在することを選ばない。存在するということを理解できない。
「それはお前自身の拒絶だ…」
『私ハ、我々ダ…!』
個を認めようとするとムキになるのが、もう個として存在しはじめている証拠だ。
マスター型スフィンクスが腕を伸ばして襲い掛かってくるが、マークニヒトはその腕を打ち払う。
「お前はそこにいるだろう…!」
『アノ時ノ我々ト同ジカ……、認メナイ。我々以外ノ我々ヲ、私ハ認メナイ…!』
「くっ、怯むな、マークニヒト!!」
正面から力比べ。手を組み合い、腕の力で押し合う。
腕の神経が軋みをあげる。機体が無事でも身体が保たないか。なるほど、確かにそうだな。
「どうしたマークニヒト。虚無の申し子が無に負けてどうする!!」
マークニヒトの力がマスター型スフィンクスの力を押し込み始める。まだ生まれたばかりで力を充分使えないが、それでもコイツは僕らでなければ相手を出来ない。
わざと力を抜き、前に倒れるマスター型スフィンクスを蹴り飛ばし、距離が開いた所に背中のアンカーケーブルを打ち込む。だが高次元障壁がアンカーケーブルの切っ先を阻む。
「アザゼル型並みか。たいした個体能力だ…」
マスター型すべてがそうなのかはわからないが、少なくとも目の前のマスター型はそれほどの強さがあるのをマークニヒトが教えてくれる。
マークニヒトだけで突破は厳しいか。身体を気にしなければ行けるが、コアギュラにトンボ返りは出来れば勘弁願いたい。
押すか引くかを考えていた時、横合いからなにかがマスター型スフィンクスを蹴り飛ばした。
蹴られた勢いで後退するマスター型スフィンクス。堤防と道を踏み砕いて着地する一機のファフナー。
「マークザイン……。一騎か」
マークニヒトのジークフリード・システムを通してマークザインに接触する。
「そこにいるな。一騎」
『総士!? そのファフナーに乗ってるのか? 左目は良いのか?』
僕がファフナーに乗れなかったのは理由が別にあったが。皆城総士が左目が見える事を受け入れられなくてファフナーに乗れなかったと僕は考えていたが、それは間違いだった。
左目が見える事を恐れ、以前の一騎を同化しようとしたフェストゥムの側の自分を恐れていたわけじゃない。
左目が見えることが、自分が自分でなくなってしまうことを受け入れられなかったからファフナーに乗れなかったのだ。
僕もそうした意味では同じだった。変わってしまう事で僕が皆城総士でなくなってしまう事を恐れていた。だが今は、もう、恐れはしない。
「1度失われ、戻った。もうお前だけを戦わせはしない」
『総士……。俺は、お前を裏切った』
「………………」
『お前がなにを思って、なにを考えて戦っていたのか。俺はただお前に言われた通りに戦っていて、それを知ろうとしなかった』
ベイバロンが落としたルガーランスをマークザインが拾い上げる。
マークニヒトの手の平からもルガーランスが生えて、それを握る。
『でも今は、少しだけ、わかった気がする』
「…なにがわかった」
『お前が、苦しんでいたことが』
クロッシングはしていないのに、一騎の言葉に思い遣りを感じる。その思い遣りを感じて嬉しくなる僕もまた皆城総士なのだろう。
『お前ひとりで痛みを背負っていた。背負わせていた…。俺が逃げたあの日からっ』
あの日のことは今でも覚えている。僕が僕になった日だ。一騎に祝福を受けて、僕は生まれることが出来たんだ。
「僕はお前に感謝している」
『俺はお前に、ただ謝りたかったっ』
マスター型スフィンクスが動き出した。プレアデス型を同化したのだろう。プレアデス型の子を産み出してこちらの様子を見るらしい。
ルガーランスを展開。ワームの刃を形成、毒を持つその刃を震い、プレアデス型の子を一撃で薙ぎ払う。
「ありがとう一騎。お前のお陰で、僕はここにいる」
『ごめん、総士。でももう一度だけ、俺を信じてくれっ』
マークザインにマスター型スフィンクスが腕を伸ばす。絡みつかれて触手に締め上げられるマークザイン。だがびくともしない。
マークザインを縛る触手が結晶化して砕け散る。
「僕はお前と――」
『俺はお前と――』
マークニヒトとマークザインが共に飛び立つ。マスター型スフィンクスの高次元障壁がルガーランスの切っ先を阻む。
「「ここにいる!!」」
システムを接続する。機体コード、マークザイン。
「一騎!」
『総士!』
言葉は要らない。
異なる波長でマスター型スフィンクスの高次元障壁に干渉する。被同化状態。こんな力強い個体相手だと並大抵のパイロットや機体なら同化される危険性は極めて高いが、
高次元障壁に亀裂が走る。1度切っ先が沈めばあとは打ち破るだけだ。
『コレハ、アノ時ノ我々……。マダ存在シテイタカ――!』
『言葉!?』
「コイツもひとつの個になりつつある」
『来主みたいにか?』
「それも可能性のひとつだった。だが選んだのは対話のない無の道だ」
『わかりあえないのか……?』
「無を選び、自らさえミールを否定していることもわかっていない。なにを言おうと無に帰すことに思考が直結している。倒さなければ島が沈む」
『…そうか』
マークザインのパワーが上がる。それに呼応してマークニヒトのパワーも上がる。
『私ハ、我々ダ――!!』
『還りな、自分の居場所に……』
「キサマを無に帰してやるぞっ」
高次元障壁が砕け散り、ルガーランスがマスター型スフィンクスの身体に突き刺さる。
「同化は無理か…! コイツの情報を読む。5秒待て!」
『わかった!』
暴れるマスター型スフィンクスを2機掛かりで抑え込む。
「コアの位置が判明…っ、まずい!」
『私ヲ無へ、戻セェェエエエ!!!!』
マスター型スフィンクスが稲妻とワームスフィアをデタラメに放ち始めた。その波動でマークニヒトもマークザインも吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ、がああっ、っあ゛あ゛」
『総士!!』
島の痛みが伝わってくる。こんな痛みを、乙姫に背負わせるものか!!
『総士!』
「一騎ぃぃぃいい!!」
マークザインがマークニヒトを庇ってワームを吸収する。
その背中から飛び出し、ルガーランスをコアのある胸に向かって突き刺すが、ギリギリで躱されてしまう。マスター型スフィンクスの脇を過ぎながらも、その背中にアンカーケーブルを打ち込む。
『でやああああああ!!!!』
マークニヒトのすぐあとに続いていたマークザインが、マスター型スフィンクスの胸にルガーランスを突き立てた。
マークニヒトをマークザインの後ろに回り込ませて、マークザインの両肩を掴んで同化する。
「一騎、敵のコアを滅ぼせ!!」
『これで、最後だああああ!!』
ルガーランスを同化し、刀身を展開。マークザインとマークニヒトのエネルギーを流し込む。
眩い閃光が放たれた。夜だというのに闇を照らす太陽のような輝きが海を奔り、大気を灼き、大爆発を引き起こす。
マークザインとマークニヒトは無事だ。
『倒したのか……?』
「………………いや」
コアの消滅を感じなかった。間一髪で取り逃がしたらしい。
『それでもまたやって来たら、相手をすればいいだろ?』
そこで倒すという発想が出てこないんだから、一騎はフェストゥムを理解できる人間なんだな。
「…被害は甚大だ。事後処理もファフナーでやる必要があるな」
『手伝うよ』
「いや。お前はまず降りろ。その機体の同化現象は過酷なはずだ」
『お前が降りるなら降りるさ』
「お前というやつは…」
リミッターのついていないマークザインに長時間乗せてはおけない。アクティビオンのない今の島で同化現象に襲われたら助ける術がない。
仕方がない。一度降りてトルーパーを使うか。
しかしティターン・モデルのパイロットIDが蔵前でなく、何故将陵先輩のIDなんだ。
『よ、総士』
「っっ!?」
一騎とのリンクを切っておいてよかった。こんな感情は今の一騎に知られると少し恥ずかしい。
「将陵…、先輩…?」
何故ティターン・モデルとクロッシングしたら将陵先輩の存在を感じるんだ?
忘れるはずもない。僕が将陵先輩と生駒先輩がいなくなるのを最後まで見守ったんだ。先輩の存在を感じ間違うはずがあるものかっ。
『久し振り。髪伸びたな!』
「いえ、これは…」
今の僕は5年後の皆城総士くらい髪が伸びている。少々鬱陶しい。
『にしてもスゴいファフナーだな。これなら島は大丈夫そうだな』
「っ、待ってください!!」
もう失うものか。あんな悔しさはもう真っ平ごめんだ!
『そう怒鳴るなよ。……俺もここにいる』
「先輩…、っ、紛らわしいことを言わないでください」
『お前が早とちりなんだ』
またこうして先輩と話せるなど夢にも思わなかった。訊きたいことは山ほどあるが、先ず何よりも言わなければならないことがある。
「おかえりなさい。先輩」
『ああ。ただいま』
一度は失われたもの。再び戻ったもの。存在を選ぶことが僕たちの祝福だった。たとえ痛みに満ちた世界でも、そこにいることを選べば、そこは何時だって楽園だった。だって、僕たちは生きているのだから。
だから無がすべてを引きずり込もうとも耐えることが出来た。存在することは僕の祝福だから。
to be continued…
そのうちRoL編も書けりゃいいが、原作沿いで総士の描写になると思うから文章が稼げそうにないのがなぁ。
見たい?(パリーン