私は同化現象の末期患者かもしれない。みんなもっと同化してこの祝福に耐えてみせて♪
ミサイルの迎撃は来主と立上に任せた。マークニヒトを駆る僕は島の東から来るフェストゥムを慶樹島で迎え撃つ。
『こいつはっ!?』
『知ってるのか? ミツヒロ』
なにがあったのかはわからないが。ミツヒロが息を呑む理由もわかる。何故このフェストゥムがここにいる。
より人に近い姿。そして右腕は剣状の腕をしている存在。
『何故、ディアブロ型が!?』
「あれは機体のコックピットを狙うタイプです。注意してください」
『わかった。っても、戦ってる間に気を付けられればな!』
『迎撃システムアクセス! 弾幕展開します』
蔵前がジークフリード・システムで迎撃システムにアクセスしたらしい。ミサイルがディアブロ型に飛んでいくが、高次元防壁に防がれている。通常兵器でどうにかなる程、生易しい相手ではないか。
「あれは自分とミツヒロでやります。先輩は下がってください」
『お前たちだけで戦うつもりか?』
「自分達ならアレに対する戦いを知っています。万が一は先輩、あとを頼みます」
最悪、僕かミツヒロが同化されたら、先輩に僕たちを消してもらおう。
「いいなミツヒロ!」
『はい! ディアブロ型、必ず倒しますっ』
ベヨネットを装備するミツヒロのメガセリオン。本人の要望でレヴィンソードも装備している。
3体のディアブロ型。マークニヒトの相手ではないが、今のマークニヒトで相手出来るかはやってみなければわからない。
ルガーランスを装備し、ディアブロ型に向けて突撃する。
ホーミング・レーザーで牽制をかけながら、1体のディアブロ型と接触する。
「やはりディアブロ型。アザゼル型やマスター型程ではないが、大した個体防壁だ」
ルガーランスを受け止めるディアブロ型の高次元障壁。アンカーケーブルも突き刺し、一気に決めようとするが、背中から別のディアブロ型がその腕の剣でコックピット部を突き刺し、衝撃で機体が揺れる。そして正面のディアブロ型もコックピットを貫いてきた。
『ミナシロ!!』
ミツヒロの声が聞こえるが、心配はいらない。ただ、慶樹島の方が心配だな。力は抑える気でいるが。
「やはりお前たちも変わらずにコックピットを狙うのか……」
目の前で切っ先の止まっているディアブロ型の腕。僕を同化するつもりか。だが――。
「で、それだけか……?」
僕たちは変わった。なのにお前たちは変わらずに同じ道を辿るというのか。
「同化能力なら……、こちらにもあるぞ!!」
アンカーケーブルを背中に向けて射出し、背中側のディアブロ型を串刺しにする。
正面のディアブロ型を掴もうとしたら慌てて逃げ出された。……逃げるくらいなら、最初から襲って来るなっ。
「そちらは平気か? ミツヒロ」
『大丈夫です! やってみせます』
レヴィンソードでディアブロ型の剣と打ち合い、切り払ったところでがら空きになった懐にベヨネットを突き刺し、弾丸を撃ち込むミツヒロのメガセリオン。
やはり中々の腕だな。しかしコアを破壊できなかったのだろう。ディアブロ型が追撃から逃げようと飛び退いた所に、そのディアブロ型に突き刺さるガンドレイク。
『ミツヒロ!!』
『っ、これでえええ!!』
ディアブロ型の胸に突き刺さったガンドレイクに手をかけながらベヨネットをさらに突き刺す。
二つの刃に突き刺され、二発の弾丸を受け、ディアブロ型は消滅した。
『マサオカ!!』
『大丈夫だ……』
無手になったティターンモデルを襲おうとするディアブロ型に向けて丸鋸型のワームを放つ。
切り刻まれたディアブロ型が地に落ちる。そこに向かって将陵先輩はミサイルと機関砲を撃ち込んだ。ディアブロ型が消滅する。
「あとはお前だけだ……」
アンカーケーブルで串刺しにしたままのディアブロ型。こいつを同化すればこいつの情報を読める。
『ア・ナ・タ・ハ、ソ・コ・ニ、イ・マ・ス、カ――?』
「何度でも答えよう。僕はここにいる!」
同化しようとした時、ディアブロ型が言葉を発した口がニヤリと厭らしく笑い。ディアブロ型の身体が赤く光を発した。
「なっ!?」
目の前で大爆発。視界が閃光に染まる。……ディアブロ型が自爆した?
『ミナシロ!』
『総士!』
『皆城くん!』
ミツヒロと先輩、蔵前の声が聞こえた。だが僕は別のことを考えていた。
助からないとわかって自爆した? 情報を読まれない為に、人間のように。
僕の考え過ぎか。いや、それほどまでに彼らが学習したというのか?
「更なる警戒が必要だな」
僕たちが変わった影響が彼らにも現れ始めたというのか。だとしたら島の戦力の増強を急がなければならない。今後ディアブロ型が再び、しかも複数あらわれたとしたらノートゥング・モデルではやられてしまう可能性がある。エインヘリアル・モデルですら、ディアブロ型の相手は厳しいものがある。マークザインの研究データが上がったら早急に取り掛かる必要がある。島を守るためなら、僕はなんでもする。それが僕の覚悟だ。
◇◇◇◇◇
「以上が、戦闘結果報告となります」
総士君から渡された戦闘結果報告資料のデータ。新たに出現したディアブロ型という敵の詳細データ。一度の戦闘で3体も現れたにしてはデータが整い過ぎている。
敵を同化して情報を得たとは言われたが。それを信じるには最後の自爆が気になる。こちらに情報を渡さない為の自爆だとしたら、彼らは戦い方を学びつつあるということだ。
「そうか。……君の提案だが、その様な敵が現れたのなら致し方あるまい。だが乗れる者がいるのかね?」
総士君の提案。島を守るためなら致し方がないが、シミュレーションの結果では扱えるパイロットは居なかった。
「来主とミツヒロならば確実に」
だが総士君はなんの疑いもなく、まるで事実として知っているかの様に話した。
「フェストゥムと人類軍の少年を信じろと?」
「彼らは島の為に戦う仲間です。万が一の場合は僕が責任を取ります」
我々は未だにあのフェストゥムの少年を全面的には信じられていない。あのバートランドの名を持つ少年も。
だが総士君の目には二人に対する疑いが一切ない。
フェストゥムの少年とそれほどの繋がりがあるのか。バートランドの名を持つ少年と以前から繋がっていたのか。
「……よかろう。早急に進めてくれ」
「ありがとうございます」
踵を返す総士君を見送り、彼の姿が見えなくなったところで肩の力を抜く。
「お前なら、自分の息子をどう信じる。皆城」
皆城とも懇意だった為、総士君も半分は自分の息子の様なものだと思っている。だが本当の親ではない。そんな彼を何処まで信じられるかが、人のしての器量を試されているようで敵わない。
「フェストゥムを理解しながら、フェストゥムを倒す、か。息子はお前の先を行き始めたぞ」
今は亡き友に告げ、残った仕事に戻ることにした。
今は彼の選択が、島に有益であることを願うまでだ。
◇◇◇◇◇
「まさかディアブロ型が現れるなんて……」
戦い方を知っていたから勝てたが、1体で部隊が壊滅する様な化け物だ。それにまだアイツは他の能力を隠している。
「恐らくマークニヒトと同じで未来の記憶から作ったものだろう。だがまだ力が足りていない」
「憎しみが足りていないと?」
「憶測に過ぎないが、マークニヒトも力が弱くなっている。可能性としては充分にある」
しかしミナシロの言葉には説得力もある。でなければメガセリオンで、あんな簡単に倒せるわけがない。
「もしフェストゥムが憎しみを学んだら」
「その時はその時だな」
投げやりに聞こえるが、ミナシロの言葉は重い。つまりおれの仮説を肯定するものだ。
「だから真壁司令に進言して、力をつけることになった」
「力……」
ディアブロ型とも渡り合える力はそう多くはない。今のファフナー技術でそんなことを出来るとしたら。
「まさか…っ」
おれの言葉に、ミナシロは頷いた。だがアレに乗れるパイロットなどマカベとミナシロくらいしか居ないはずだ。
「僕の目の前にもいるだろう」
「なっ…!?」
ミナシロには驚かされてばかりだが、今回は心底驚かされた。ミナシロはわかっていて言っているのか? 第一島に来たばかりのおれにアレを与える理由もなにも。
「島を守れるなら僕は迷わない。万が一の場合は、僕がお前を消してやる」
「ミナシロ……」
「僕を信じろ。ミツヒロ」
マカベもミナシロも、どうして敵だったおれをそんなに信じられるんだ。確かに呪縛から解放してくれた事に感謝している。だが、それで絶対敵にならない保証はどこにもないのに何故。
「なにも知らないものを信じる事は難しい。だが僕は以前と今のお前を知っている。そして心を取り戻したお前を一騎は信じた。だから信じる。自分が信じられないのなら、お前を信じる僕を信じろ。ミツヒロ」
「おれを信じる、ミナシロを……」
自分を信じられないのなら、自分を信じている相手を信じろと。…むちゃくちゃな考えだが、確かに信じられる言葉だ。自分を信じられなくても、ミナシロの事は信じられる。
「わかった。おれはミナシロを信じる」
「それでいい」
拳を打ち合わせあう。こういう自分の信じかたもあるのか。悪くはないな。
「完成までは現状のまま、メガセリオンで戦って貰う事になる」
「心配要りません。メガセリオンは慣れていますから」
今のおれの技量ならメガセリオンでもディアブロ型と戦える。敵が強くなったらわからないが、余計な労力を割くくらいなら力をつけることに集中して欲しい。
「この話は来主にも伝えておく。あいつもアレには乗れるからな」
「フェストゥムであるが故、ですか?」
自分が言えた義理じゃないが。フェストゥムの彼にあの力を渡すことに不安はないのだろうか?
「信じているからさ。お前のことも来主のことも」
「ミナシロ……」
何故そんなにも他人を信じられるのか。その答えはきっとこの島の生活が育てたものなのだろう。おれたち島の外のものにはわからない心。それをおれは学べるのだろうか。
◇◇◇◇◇
「憎しみと虚無の塊……」
あの憎しみのコアが送り込んできた存在。でもまだ、おれの仲間は……彼らは憎しみを知らない。憎しみがどういうものかわからない。だからまだ力が弱い。
でも彼らが憎しみを学んだとき、その力はとても強いものになる。
「だからお願い。憎しみだけを学ばないで。人は、憎しみだけじゃないんだ。ミール」
世界に痛みが広がっていく。人を同化するだけじゃない。ただ人を殺すことをし始めた。
「そんな痛み、世界に広げないで!」
仲間に頼んで、世界の痛みを減らす。みんな、ごめんな。でも痛みを減らす為に力を貸して。人もきっと、おれたちのことをわかってくれるから。
「うぐっ…!」
みんなの痛みが伝わってくる。今ならわかる。総士の気持ちがわかる。だから仲間の痛みはおれが背負うんだ。
ミールの欠片を乗せて、おれたちの島を作ろう。仲間を増やして、世界の痛みを消すために。
to be continued…