皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

45 / 64
今日中にあと1話くらいは投稿したい。

執筆意欲をオーバーロードさせる為にEXO観ながら書いてたら、最終話だけは作業止まって魅入って泣いた。もう島が沈むところと織姫ちゃんが泣くところで泣ける。何度でも最終話だけは泣ける。早く島に帰りたいよ。


皆城総士になってしまった…37

 

 広登と里奈、暉までが召集された。里奈はCDC勤務だからアルヴィスに入るのは普段からしてるし、広登もファフナーのパイロット候補生として最近はアルヴィスに来てるから慣れてる様子だけど、暉はちょっと不安そうに里奈にくっついてる。……普段のあたしもあんな風に見えるのかな。

 

「今日集まって貰ったのは他でもない。今日はお前たちにファフナーでの実機訓練をしてもらうためだ」

 

「ファフナーに乗れるんスか!?」

 

「ああ。訓練機だが、実際にファフナーに乗る感覚を身につけて貰うためだ。異議ある者は居るか」

 

 総士先輩がみんなの前で今日の説明をしている。その様子に広登は興奮してる。そりゃファフナーはロボットだから広登なら興奮するよね。

 

「今日乗ってもらう機体は量産計画の試作機だ。これで実際のファフナーの動きを一通り確認してもらう」

 

 身体が青、四肢が水色、両肩と膝がオレンジ色に塗られたファフナーが並んでいた。オレンジなのは昔から日本では練習機という意味で塗られていた色だと総士先輩は言ってた。ひとつおりこうさんになりました。

 

「なんか変な色~」

 

「練習機だからな。実際は青と水色に塗装される」

 

「じゃあ、一人前になったら」

 

「その時はノートゥング・モデルに乗ることになるが、実機訓練で使う分には青と水色の機体になる」

 

 確かに変な色だけど里奈キッパリ言い過ぎ。それに怒ることもなく苦笑いで答える総士先輩流石です。そして総士先輩の言葉を聞いた広登は――。

 

「マジっすか!? くぅ~! 専用機だぜ専用機!! 俄然やる気出てきたぜっ」

 

 やっぱり思った通り興奮してる。ファフナーはその機体がパイロット専用機として調整されているから別に興奮することもないのに。

 

「うるさいなぁ、バカ広登。…総士先輩、わたしCDC勤務なんですけど、大丈夫でしょうか?」

 

 確かに里奈はCDC勤務でオペレーターをしている。でも総士先輩のことだから考えていないわけがないわけで。

 

「元々は里奈もパイロット候補生として召集したのだったが。人手不足と機体がなかったからな。CDC勤務は一時的な処置だ。他に質問は」

 

「喋れない暉がファフナーに乗れるとは思えません」

 

 確かに里奈の言うことは気にするよね。暉の喋ってるところ見たことないもん。

 

「本人の意思は確認している。情報伝達もジークフリード・システムのサポートがあれば可能だ」

 

 里奈に総士先輩は的確に反論を潰していく。あたしたちが考えることを総士先輩が考えていないわけがない。言葉で総士先輩に勝てるわけがないよ里奈。

 

「…わかりましたぁ。でも足手纏いだったら容赦なく切り捨ててください」

 

「あぁ。その時はそうしよう」

 

 一応里奈は納得したみたいだけど、多分総士先輩は暉を見捨てたりしないだろうなぁ。だって優しい目で里奈と暉見てるもん。

 

「各自シナジェティック・スーツに着替え、30分後に再集合だ。いいな」

 

「うっす!」

 

「りょーかい」

 

「……コクリ」

 

 三者三様で総士先輩に返す広登たち。でも里奈、もう少し真面目にやろうよ。

 

「立上。彼らを案内してやってくれ」

 

「は、はい…っ」

 

 総士先輩の傍から離れるのは今でもやっぱりダメだけど、今のあたしは総士先輩に頼まれたんだ。だからその言葉にあたしは応えなくちゃ。

 

 3人を連れてロッカールームに辿り着く。広登に暉を任せて、あたしは里奈と一緒に着替え始めた。

 

「芹って、総士先輩と付き合ってるの?」

 

「きゅ、急になに!?」

 

「知らないはずがないでしょ? わたしたちの学年じゃ結構噂になってるの」

 

「そ、それは……」

 

 あまりあたしの耳には入ってこないけど、そういう噂があることは知ってる。

 

「好きなの? 総士先輩のこと」

 

「す、すきって、だからそんなんじゃ…っ」

 

 ……実際、あたしは総士先輩をどう思ってるんだろう。

 

 恐いから、ひとりになることも。この恐い感情が何故なのか、あたしにはわかる。乙姫ちゃんの恐さがあたしに伝わってるから。あたしを通じて、乙姫ちゃんは恐さを耐えてるんだ。

 

 こんなこと、総士先輩には伝えられないよ。

 

 伝えたら、きっと総士先輩はあたしに負い目を感じてずっとその事を気にして背負ってしまうだろうから。

 

「どうなのよぉ、芹~?」

 

 里奈があたしを肘で突いてにやにやしてる。女好きの里奈でもこういう話が気になるところは普通に女の子なんだよなぁ。

 

「そうだね……」

 

 あたしの気持ちはどうなんだろう。

 

 乙姫ちゃんが目覚めたら、総士先輩ともごはん食べたり、一緒に学校行ったり、休み時間に話したり、一緒にお昼ごはん食べたり、一緒に学校から帰ったり、一緒に遊んだり、一緒に戦ったり、一緒に夜ごはん作ったり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりも、出来なくなるのかなぁ。

 

「好きかどうか。わからないや」

 

 今のままで、ずっと一緒に居たい。

 

 乙姫ちゃんと織姫ちゃんが居るなら、あたしがいる必要なんてないよね。乙姫ちゃんは総士先輩のこと大好きだし、織姫ちゃんもきっと総士先輩のこと大好きだし、来主くんだって総士先輩のこと好きだし。

 

 ……あたしが、総士先輩のことを好きなら、一緒にいられるのかな。

 

 でも、どうしてだろうなぁ……。

 

「だって、そんな気持ち――」

 

 乙姫ちゃんの気持ちが伝わってるから。織姫ちゃんの気持ちが伝わってるから。あたしはただ……。

 

 それが乙姫ちゃんの気持ちでも、織姫ちゃんの気持ちでも、あたしの気持ちは。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「全員居るな」

 

「はい!」

 

「うっす!」

 

「……コクリ」

 

 立上、広登、暉から返事が返ってくる。広登はまだともかく、立上と暉は覚悟のある目をしている。……暉の生命を失わせたくはないが、なのに今から僕は暉をファフナーに乗せようとしている。

 

 守るために生命を使わせる。

 

 矛盾しているが、戦えなければ守れないものもある。だから生命を無駄にさせないために僕のやるべきことは全力でやるつもりだ。

 

「何かあったのか? 里奈」

 

「うぇっ!? い、いえ、なんでも!」

 

 少々上の空だった里奈に声を掛けたが、大丈夫だろうか。無理もないか。広登や暉と違って里奈はオペレーターとして戦闘に関わっている。だが実際戦場にこれから立つ立場にならんとしている。緊張するのも無理はない。

 

「心配するな。なにがあろうとジークフリード・システム内の全パイロットの命は僕が守る。だから安心しろ」

 

「総士先輩……。はい!」

 

「良い返事だ」

 

 里奈も顔を引き締めた。誰だって戦うことは恐い。それは生きるために必要な感情だ。だからその恐さをみんなで背負えば良い。

 

「そうひとりで気張るなよ? 総士」

 

「先輩…? ……重いのですが」

 

「いやほら。ひとりで突っ走りそうな後輩を引き止める為にな?」

 

 将陵先輩が僕の肩に肘を掛けて寄り掛かってくる。地味に重い。

 

「みんな恐くて当たり前だ。だからみんなでみんなを守りあえ。最後に生きてりゃ、それで勝ちだ。戦ってみんなを守れても、いなくなちまったら意味がないからな?」

 

「「「はい!」」」

 

「…コクコク」

 

 将陵先輩の言葉に後輩たちは真剣に聞き入り、返事を返した。……将陵先輩は人を導く才がある人だ。だから自然と人が将陵先輩の周りに集まって、先輩の場所を作っていた。皆が先輩を忘れない。人望が厚いとはそういうことなのだろう。僕などより指揮官として向いている。

 

「というわけで、今日は俺たちが面倒見てるからなにも心配すんな」

 

「将陵先輩も来る気ですか?」

 

「おいおい総士。ティターン・モデルは俺たちの機体だぞ? 使うなら俺も行くさ」

 

 還ってきたとはいえ、将陵先輩にもいたずらに時間を使ってほしくはないのだが、ティターン・モデルは確かに将陵先輩の機体だ。そう言われてしまうと僕は反論できない。

 

「将陵先輩……」

 

「将陵先輩だけじゃないよ? 皆城くん」

 

「羽佐間?」

 

 羽佐間までもシナジェティック・スーツを着て現れた。今日のテストがあることはパイロット間に周知されているが、今日の羽佐間は一騎との連携訓練のはずだ。何故ブルクに居る。

 

「いつも皆城くんばかり頑張ってるから、私もたまには皆城くんの役に立ちたいの」

 

「羽佐間…」

 

 一騎の為に島を守りたい。ただそれだけで良かった彼女に余計なものを背負わせてしまったのは僕だ。

 

「こんなことでしか役にはたてないけど、空は任せて」

 

 真っ直ぐ僕を見詰める羽佐間の目は、初めてマークゼクスに乗った時と同じ目をしていた。これはなにをいっても止めない目だ。

 

「おれも行かせてください。ミナシロ」

 

「ミツヒロまでもか」

 

 楽園で働き始め、島でも話題になりつつあるミツヒロの作る料理は、平和を学んでさらに磨きが掛かっている。なのに自ら戦おうとする意思は捨てない。

 

「あなたのお陰で、おれはここにいるんです」

 

 ミツヒロ、羽佐間、将陵先輩の視線が僕に突き刺さる。

 

 羽佐間は僕が救いたかった生命だ。将陵先輩は僕が救えなかった生命だ。ミツヒロは僕が怪物として切り捨てた生命だ。

 

 だがいまは、ここにいる。

 

 ……仲間か。

 

 こんな僕にも、仲間がいてくれるのか。

 

「わかった。メガセリオンなら同化現象の心配はない。羽佐間と空を任せる」

 

「あなたに貰ったこの生命に誓って」

 

「空を頼む。羽佐間」

 

「うん。任せて!」

 

「総員ファフナーに搭乗! テストを始めるぞ」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 僕の掛け声と共に、皆は各々返事を返してファフナーに乗り込む。前線で戦えず、皆を送り出すことしか出来ないと僕は思っていた。

 

「んな? ちょっと歩み寄れば、仲間なんてたくさん居るんだよ。お前には」

 

「僕には過ぎた仲間ですよ」

 

 だが今は違う。僕は自らの意思で皆と共にいる道を選んだ。たとえ自らの生命の時間がなくなっていこうとも、皆といる時間が、僕には掛け替えのない時間だ。

 

 消させない。いかせない。奪わせない。

 

 たとえ僕の生命を使うことになろうとも、必ず守る。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 世界では主力兵器として非力であっても戦いを支え続けた機体が、今、島の戦いを支える存在になろうとしている。

 

 彼等から奪い続けようとした人類軍として、これで少しは役に立てるだろうか。そう願って止まない。 

 

『ジークフリード・システム、起動。スレイプニール・システム、並列起動認証。全ファフナー、クロッシング完了。オールスタンバイ』

 

 ミナシロの存在を感じる。ザルヴァートル・モデルに乗ってからその存在を顕著に感じる。

 

 海神島のコアから解放されたおれは、以前にも増して島のミールの存在を感じるようになった。こんなおれでも島は受け入れてくれる。だからおれはこの島の戦いたい。この島の平和を守るためなら引き金を引くことを躊躇わない。

 

 マヤに背負わせた過ちを誰にも背負わせたりはしない。人を撃つのなら、おれが撃つ。

 

『30分は自由に動け。どうすればどう動くのか身体で覚えろ。ファフナーの操縦は習うより慣れた方が格段に早い』

 

『自由って、急に言われても』

 

『なにしても良いんですか!?』

 

『構わないぞ。歩くも走るも跳ぶもよし。なんだったらじゃんけんしてあっちむいてほいでも構わない』

 

『はは。まぁ、それくらい自由に動けってことさ』

 

 ミナシロとマサオカの乗る赤いファフナーが彦島の岩場を軽快に走っている。生き生きとした動きは正しく人のそれだ。

 

 今の人類軍にここまで滑らかに動く機体はない。

 

『将陵先輩、はしゃいでるのよ』

 

「はしゃぐ? マサオカが…?」

 

 軽くても真面目な感じのあの人がまるで子供が駆けずりまわる様に機体を走らせていた。

 

『私も将陵先輩も病気で、思いっきり運動出来ないの。ファフナーに乗っている時だけ、みんなみたいに走ることが出来るの』

 

「ショウコ……」

 

 病を抱えてまで戦うとは。いや、その気持ちはわかる。同じ立場でも島を守るためならおれも迷わないだろう。

 

『今は元気になったけど、やっぱり体力はなくて。ファフナーに乗っている時だけは、私も走れるから将陵先輩の気持ちがわかるの』

 

 病を抱えていても、戦える者が立ち上がり平和を守る島。

 

 自らの強い意思で戦う竜宮島の戦士たち。おれもなれるだろうか。彼らの様に、使命でもなんでもなく島を守りたいから守るという島への愛の為に立ち上がれる戦士に。

 

『なれるよ…。ミツヒロくんなら、島を守れるよ』

 

「ショウコ…」

 

 島を守るために戦っていなくなるはずだった彼女がここにいる。島を守っていなくなったマサオカがここにいる。島を消そうとしたおれがここにいる。

 

 すべてミナシロが戦った結果だろう。

 

 あの時、ショウコもマサオカもおれと同じくミナシロを見ていた。ミナシロのお陰でここにいるおれと同じく。

 

「ショウコも同じか……。おれのように」

 

『……ミツヒロくんがみんなと戦ったのはあなたの意思じゃないもの。一騎くんが、皆城くんが信じるなら、私もあなたを信じる』

 

「……ありがとう」

 

 おれがここにいる理由をくれた。マカベとミナシロには返しても返し尽くせないものを貰った。

 

「っ!? ミナシロ!!」

 

『……あぁ。どうやら来たらしいな』

 

 奴らの気配を感じた。おれが声を掛けるとミナシロも感じたらしい。

 

 ミナシロにもわかるなら何故おれが先にわかった。いや、その理由を考えるのは後回しだ。

 

「迎撃態勢に移行する! ショウコは上空警戒を厳に。おれが先行する」

 

『任せる。候補者はマークツヴォルフを目印に即時集合!』

 

『空からも敵がくる。海からも!』

 

 海にフィールドが現れ、そこからフェストゥムが出現する。スフィンクスB型種多数に――。

 

「気をつけろみんな! ディアブロ型だ!!」

 

 こいつらが近づいてきた気配を感じたのがおれだった意味がわかった。

 

 あのコアが送り込んだ存在なら、おれが先に感じられても不思議じゃない。

 

『後続のファフナーも直ぐに来る! 無理はするな!!』

 

「了解!」

 

 ミナシロの言葉に答えるが、相手はディアブロ型だ。万が一の場合は1体でも道連れにしてやる。

 

『あなたは、そこに、いますか――?』

 

「ああ、いるぞ。おれはここにいるぞ!!」

 

 スフィンクスB型種の問いに答えながら、ベヨネットを胸に突き刺し、コアを撃ち抜く。

 

「こい! おれは、ジョナサン・ミツヒロ・バートランドだ!!」

 

 ディアブロ型へ向けてベヨネットの射撃を放つ。やらせはしない。島の平和をお前たちにやらせるものか!

 

 皆がここにいる。そんな未来を僕は目指した。

 

 痛みでさえ、通じあえば何処まででも行けると信じた。

 

 互いに助け合うことで、僕らは闇の中でも光を求め続けられるのだと。

 

 

 

 

to be continued… 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。