皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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平和ななかにもやっぱり戦いはあり。

もう芹ちゃん殿の制御は諦めました(パリーン


皆城総士になってしまった…45

 

「がくえんさいってなに?」

 

「なんだ。説明を聞いていなかったのか?」

 

「聞いてたけど、よくわからない」

 

 放課後の廊下。立上と乙姫を迎えに来た僕に来主が訊ねてきた。そういったことはふたりからも教えて貰えると思うんだが。

 

「だって総士に教えてもらいたかったんだもん」

 

 来主はフェストゥムであるが、人としてはまだまだ未成熟なところもあって、時折こうして意固地になることもある。そう言われてもこういうことは立上の方が上手く教えられそうだが。

 

 今日が身体が変化してからの初登校ともあって未だにクラスの女子からは質問攻めにあっているらしい。クラス中の視線を釘付けにしているどころか、他のクラスや学年からも立上の姿を見に来ている生徒も多い。

 

 確かにこれでは立上に質問する以前の問題だな。

 

「学園祭というのは学校で生徒主導で行われる祭りのことだ。発表会や出店、様々な催しが当日は行われる」

 

「まつり? まつりってなに?」

 

 僕の知識を持っているのならば祭もわかっていても不思議ではないのだが、本人のなかでは必要以上に僕の知識を使いたがらないのか、こうして一般教養に関しても質問されることが多々ある。

 

「みんなで集まって神様に祈りを捧げたりするのが一般的だが。この場合は集まって楽しいことをするという認識で良い」

 

「楽しいこと? なら、『かふぇ』って楽しいこと?」

 

「かふぇ? 喫茶店のことか?」

 

 2年生ではもう出し物を決め始めているのか。やはり中学2年生というのはそういう気風が強いらしい。勢い任せと言ってしまえばそれまでだが、ふざけて出し物が決まらない3年生よりもマシだろう。

 

 ちなみにうちのクラスの出し物は……男女逆転喫茶と普通の喫茶店(ミツヒロ&一騎+僕が調理)の激しい投票の結果。1票差で普通の喫茶店になったが、負けた男女逆転喫茶側の激しい猛抗議の結果、一騎や僕等の一部の男女が制服を逆転させて作業することになった。やはり僕が生徒会長をやるべきだったか。剣司がまさか男女逆転喫茶派筆頭の羽佐間に言い包められてしまうとは計算外だった。明日の課題は倍にしてやるぞ剣司。

 

 いや、ここは興奮のし過ぎで貧血になるほどの勢いだった羽佐間に称賛を送るべきか。

 

 とにかくそういった犠牲もありながら当日の出し物は決定してしまったわけだ。

 

「喫茶店って、一騎カレーのある所?」

 

「まぁ。間違ってはいないな」

 

 今はミツヒロが料理長を勤めている喫茶『楽園』ではミツヒロカレーが有名になりつつあるが、一騎カレーの威力を知るが故だろう。ミツヒロが週末に一騎に声をかけて、週末ランチは運が良ければ一騎カレーを食せるのだ。

 

 金曜日の夕食に定期的にカレーを作り一騎カレーも食している僕からすれば無益な争いの場に態々出向く気は起きないが。一騎カレーの売れ行きも凄まじいものらしい。今度差し入れにシチューでも持っていってやるか。

 

「一騎カレーが食べられるの!?」

 

「それは僕たちのクラスでの話だ。このクラスでの出てくる食事に対して口を挟む権利は僕にはない」

 

「学校で食べる一騎カレーも楽しみだなぁ」

 

 一騎カレーの事で頭がいっぱいらしい来主は既に僕の言葉を聞いてはいなかった。仕方がないことだが。フェストゥムに一騎カレーを食べさせたら世界が平和になったりはしないだろうかと思わずにはいられないくらい、来主は一騎カレーが大好物だ。

 

「しかしな来主。君は知るだろう。一騎カレーをも上回る最強のカレーがあることを!」

 

「一騎カレーよりすごいカレー!? なにそれ教えて!!」

 

 一騎カレーの話題になると来主が戻ってきた。仮にもエウロス型にまでなったフェストゥムがそれで良いのかと思いつつ、しかしこれは企業秘密で此処では明かせない。

 

「一騎に今晩聞いてみると良い。あまり知られては特別感がなくなるからな」

 

「片方は知っていて、片方は知らない。これが人の持つ可能性の分岐?」

 

 来主の思考が小難しい事を考えている様だが、人の感情的には簡単な話だ。特別なものは独り占めしたいという当たり前の独占欲だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 みんなに朝から色々と質問されてるけど、身体が変わった理由はファフナーで戦ったからって事で誤魔化してる。島のミールのことやゴルディアス結晶のこと、SDPの事をみんなに話してもわかってもらえないだろうから。

 

 カレーの話題で盛り上がってる総士先輩と来主くん。見た目はそっくりだし、髪型も同じで長いか短いかで背格好も同じだから並ぶと双子の兄弟みたいに見えるんだよねぇ。そんなふたりがカレーの話で盛り上がってる。総士先輩も意外と子供っぽい所があるのは学校では知られていないけど、来主くんが相手だったから気が緩んじゃったのかな?

 

 あたしが席から立ち上がるとみんながサッと道を開けてくれる。なんか恐いよ。

 

「乙姫ちゃん、里奈、広登、行くよ」

 

 アルヴィスに向かう3人に声をかけて、あたしは先に総士先輩と来主くんに近寄る。

 

「お疲れ様です。総士先輩」

 

「立上か。大丈夫そうか?」

 

「はい。まぁ、何日かはしかたがないですね」

 

 あたしだって例えば乙姫ちゃんがいきなりお姉さんみたいな姿になったらビックリするし色々と訊きたくなるからしょうがないよね。ただやっぱりジロジロ見られるのはなんかイヤだなぁ。

 

「アルヴィスで勉強するという手もあるが」

 

 確かにあまりひどいようならそれも良いかな。乙姫ちゃんや里奈とはアルヴィスでも会えるし。ただ乙姫ちゃんと来主くんが心配だら本当によっぽどならって時かな?

 

「その時は総士先輩が勉強みてくれるんですよね?」

 

「……その時は努力しよう」

 

 最近は忙しくて総士先輩に課題を見て貰ってないし、お風呂も乙姫ちゃんや来主くんと入るばかりで、総士先輩と入れてない。その理由を知っているからあたしも我慢してるけどね。

 

 あたしと羽佐間先輩の為に、総士先輩が新しいファフナーを用意してくれている。

 

 マークツヴォルフよりも動かしやすくて強いファフナー。ザルヴァートル・モデル並みに強いSDPも使える機体。あたしの場合は一騎先輩みたいに機体の再生や武器との同化。フェストゥムを同化して吸収出来る。多分やろうと思えば同化された人も助けられると思う。あたしが願った力はそういう力だから。

 

 総士先輩の力と対になれるように。一騎先輩と同じ所に先ず立たないと、総士先輩を支えることは出来ないから。

 

「僕に出来ることは君が無事に帰れるように全力を尽くすだけだ」

 

「はい。だから信じられるんです。総士先輩が造った新しいファフナーも」

 

 いつもみんなの事を考えてくれている総士先輩だから、あたしは総士先輩に身を任せる事が出来る。きっと、一騎先輩もあたしと同じで総士先輩を信じているから、総士先輩の言葉を疑わずに飛び出せるんだろう。

 

「持ち上げすぎた。なにか違和感を感じたら必ず言え。君にいなくなられるわけにはいかない」

 

「それは乙姫ちゃんと織姫ちゃんのためですか?」

 

 だからちょっとだけ意地悪な言い方をして、総士先輩の意識をあたしに向けてもらう。ズルい女の子でごめんなさい。でもあたしは乙姫ちゃんや織姫ちゃんみたいに血の繋がりはないし、一騎先輩みたいに昔から一緒だったわけじゃないから。

 

「僕個人の思いでもある」

 

 こんな風にあたしが欲しい言葉を誘導して口にして貰う。あたしにも来主くんみたいな無邪気さか乙姫ちゃんみたいな素直さがあれば良いのに。

 

「総士先輩?」

 

 総士先輩があたしの頭を撫でてくれた。あたしなにもしていないのに。

 

「僕もそこまで、人の心がわからない人間じゃないさ。だから今はこれで赦して欲しい」

 

 あたしが総士先輩にどんな感情を抱いているのか、薄々はわかっていても、総士先輩は多分全部わかってない。好きだとかそういう物差しで計れないくらいにあたしの想いは強くて。今も昂る自分を抑えるので精一杯で、みんなが居るのにきっと見せられないくらいふやけた顔をしちゃってる自覚がある。

 

 でもそんな風に言われちゃったら、女の子は赦すしかないじゃないですか。

 

 総士先輩の手を取って、頬に当てる。総士先輩の大きくて優しい暖かい手が触れているだけで安心出来て、昂っていた気持ちも落ち着いていく。

 

「行きましょうか。総士先輩」

 

「ああ」

 

 総士先輩の手を充分堪能してゆっくり頬から降ろしながらも、総士先輩の手は離さないで両手で包みながら総士先輩の手を引く。

 

「ん?」

 

「っ」

 

「くる…」

 

「え? なに…?」

 

 来主くん、総士先輩、乙姫ちゃんの声がいやに耳に響いた。あたしも何かが近づいてくるのを感じた。あたしはともかく来主くん、総士先輩、乙姫ちゃんの3人が感じたのならもう答えは出ている。

 

「クラス委員は点呼を取りつつこの場で待機! 指示に従いシェルターへ避難!」

 

 総士先輩の指示で教室が慌ただしくなると同時に警報が鳴り響く。

 

「行くぞ立上!」

 

「はい!!」

 

 総士先輩に手を引かれながら、あたしは駆け出す。

 

「あ、待ってよ総士ー!」

 

 あたしたちの後ろを来主くんが走ってくる。

 

「里奈ちゃんと広登も避難して!」

 

 そして遅れて乙姫ちゃんも教室から飛び出してくる。そのまま先頭を走る総士先輩に追いついて、総士先輩の手を引いて走り出す。

 

「待て乙姫! こっちに地下の入り口は」

 

「ブロックを入れ換えて直通の最短ルートを作ったの」

 

 非常階段から外に出て直ぐにエレベーターが待っていた。カードリーダーを通さずに扉が開く。

 

 あたしたちが乗り込むと直ぐに扉は閉まって、エレベーターは地下に向かう。

 

「立上、行けるか?」

 

 エレベーターに敵の解析結果が映る。敵はスフィンクス型。A型種にD型種が何体か居るらしい。総数は15。

 

 相手が厄介なスフィンクスB型種が居ないのならと、総士先輩はあたしに何をさせたいのかわかる。

 

「はい! やれますっ」

 

「来主はどうする」

 

「空いている器があれば。それでも良いよ」

 

「ならマークツヴォルフを使ってくれ。コアがないが、行けるか?」

 

「うん。器さえあれば大丈夫だから」

 

「乙姫はマークツヴァイだな?」

 

「うん。わたしもみんなを守りたいのは一緒だから」

 

 総士先輩が各々のファフナーを確認する。

 

 総士先輩が造ったアルゴノート・モデルの初陣だ。絶対に無傷で勝ってみせる。

 

 エレベーターが到着して、直ぐ様シナジェティック・スーツに着替える。サイズも新調したから大丈夫。でもやっぱりちょっと胸がキツいからやっぱり再調整かな?

 

『実機での初回起動になる。進行は僕がやろう』

 

「わかりました」

 

 総士先輩がしてくれるならなにも心配なく任せられる。だからあたしはただシートに座ってニーベルングに指を通す。

 

『ニーベルング接続確認。シナジェティック・コード形成数値規定値クリア。対数スパイラル形成確認、コア同期確認。SDPエクストラクター接続問題なし』

 

「ファフナー・マークレルネーア、起動!!」

 

 強い力を感じる。身体の感覚が、マークツヴォルフと全然違う。身体が軽くて、これならどんなやつが相手でも恐くない。

 

 バスターソード・ライフルを装備して、左手のクロー一体型のシールドの感触も確かめる。使い勝手はシミュレーターで確認しているけれど、実際に使えるかどうかはやってみないとわからない。

 

『ナイトヘーレ、開門!』

 

 機体がサーキットに移動して地上に向かってカタパルトレールに沿ってカタパルトパレットに乗ったまま地上に出る。

 

『最終安全装置、解除。ファフナー・マークレルネーア、リフト・オフ!』

 

 最後に肩を固定していた安全装置が解除されて一歩を踏み出す。

 

 そのままスラスターに点火して竜宮島の土を踏み締めて飛び出す。

 

 敵は島の多数の方向から攻めてくる。正面はあたしのレルネーアと総士先輩のマークニヒトが迎撃することになった。

 

 島のミールの欠片からSDPを引き出して増幅させるSDPエクストラクターの所為だろうか、機体の力が上がっていく気がする。この力なら、あたしも一騎先輩みたいに総士先輩と一緒に戦えるよね?

 

『アルゴノート・モデルの初実戦だ。無理はするな、立上』

 

 システムとのクロッシングを通して総士先輩が心配してくれる気持ちが伝わってくる。

 

 それが嬉しくて、あたしは昂る自分を抑えずにバスターソード・ライフルを射撃モードで構えた。

 

「大丈夫ですよ。総士先輩」

 

 敵はもう第一ヴェルシールドを破ってきた。第二ヴェルシールドに接触しているスフィンクスA型種に狙いを定める。

 

「あたしは、乙姫ちゃんの島の」

 

 バスターソード・ライフルの刀身にエネルギーが溜まっていく。

 

「総士先輩の英雄になりますから…!」

 

 溜まったエネルギーを撃ち出して、スフィンクスA型種を撃ち抜きながら腕を振るって他のスフィンクスA型種も纏めて倒す。

 

 今の一撃でスフィンクスA型種5体を倒した。まだD型種が後方に控えているから、島の防空圏よりも外にいる個体を倒しに行かなくちゃならないけど。

 

「跳ぶよ、レルネーア!!」

 

 機体から力を感じる。機体自体から島のミールの力を感じる。ファフナー自体がミールなんだ。まるでザルヴァートル・モデルみたいに。だから出来る。跳べる!!

 

 機体が翠色の光と一緒に空間を跳ぶ。目の前にはスフィンクスD型種の姿がある。

 

「こんのぉぉぉ!!」

 

 左手のクローを展開してスフィンクスD型種に突き刺す。そのまま振り回して投げ飛ばした先にもう一度跳んで、エネルギー刃を形成したバスターソード・ライフルで真っ二つに切り裂く。

 

 やれる。この新しいファフナーでなら、どんな敵が相手でも。

 

「だからちょうだい。あなたの生命を」

 

 そこから近くに居た別のスフィンクスD型種に向かってバスターソード・ライフルを投げて突き刺す。突き刺さったバスターソード・ライフルの柄を握って、一瞬で結晶化したスフィンクスD型種は砕け散った。

 

「んっ……。ごちそうさま」

 

 生命が身体を廻っていく。この時に感じるお腹に熱が溜まる感じも好き。

 

「だからもっと食べさせて。あなたの生命を」

 

 ワームショットを放ってくるスフィンクスD型種の攻撃をイージスで防ぐ。

 

 ワームショットはタイムラグが長い攻撃だ。だから攻撃が終わった瞬間にはもうレルネーアはスフィンクスD型種の懐に飛び込んでいて、ショットガン・ホーンを突き刺し終わっていた。

 

 ショットガン・ホーンを突き刺されたスフィンクスD型種も結晶化して砕け散った。

 

「はぁぁ……きもちいぃ…」

 

 生命を取り込む気持ちよさに酔いながら次の敵を探す。さぁ! 次にあたしの相手をしてくれるのはダレ!?

 

 

 

 

to be continued…

 

 

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