皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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ようやく正当な続きを投下。

そして我々は私によって思うだろう。

もうお前ら結婚しろよ!と。




皆城総士になってしまった…48

 

「何を考えている…」

 

 スフィンクス型を倒し、これで倒した数は30を超えた。だが、これ程の数を倒しても海から新たな敵が現れるものの、積極的な攻勢を相手は掛けてこない。まるでわざと倒されに来ているような節さえ見受けられる不自然さがある。

 

 かといって敵のラインに踏み込もうとすれば嘘のように激しい攻撃に晒される。何かを企んでいるのは明白だとして、その企みがわからないまま時間が過ぎる。

 

 かなりの改善が施されているとはいえ、ファフナーに乗っている間は同化現象のリスクを背負うことに代わりはない。時間が経てば数を限られ、そして人間であるから疲労する此方が不利になっていく。あるいはそれが狙いか?

 

 だがあのウォーカーやアトランティスのコアがそんな消極的な戦い方をするものだろうか。

 

 マークニヒトがいつもよりも攻撃が穏やかに見える。広域に雷撃やワームを放つことなく戦っているが、やはりあのマークニヒトはミナシロでなければ扱い切れないのか?

 

「邪魔だ!」

 

 バスターソード・ライフルでウーシア型を薙ぎ倒し、ワームスラッシャーを放ってシーモータル型の群れを細切れにし、マークニヒトに近付こうとするが、プレアデス型の群れが割って入ってくる。

 

 イージスを展開し、壁の力で群れを受け止め、防御を反転。攻勢防御で群れを呑み込み消滅させる。

 

 マークニヒトへ近付こうとするとこうして足止めされる。まさか敵の狙いはマークニヒトか?

 

「ミナシロ!」

 

『それを僕も考えていたが、それにしてはやはり妙だ』

 

 ジークフリード・システムを介してミナシロに問い掛けるが、ミナシロの言う通り妙に感じる。

 

 マークニヒトもマークレゾンも完全孤立には程遠い包囲網の中だ。ザルヴァートル・モデルの力であれば突破は容易だ。

 

 先程から手応えがない敵。此方から仕掛けなければ手を出してこないまでもある。

 

 マークレゾンをこの場に留めるのが目的か?

 

 その気になれば空間跳躍で離脱も可能だが、その僅かな一瞬を向こうが見逃すかどうか。

 

「なんだ。この気持ちの悪さは…」

 

 明確な悪意、こちらを陥れる罠、厭らしい思惑も感じないこの現状が不安を煽る。

 

 このままなにも起きないわけもないが、なにも起きない事を祈りながらさらにスフィンクス型数体をホーミングレーザーで撃ち貫く。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 マークニヒトの力は強すぎておれに扱える力はそんなに多くはないけど、それでも他の存在を倒すくらいなら大丈夫。

 

 だけどあのコアのやろうとしている事をこのままさせるのもダメだ。なんとかして邪魔したいけど。

 

「どいて。おれを行かせて!」

 

 振るう刃で切り裂く。呼び掛けても応えてはくれないなら、倒すしかない。

 

「きみたちの命、貰うから!」

 

 背中のアンカーケーブルを次々に撃ち込んで同化する。

 

 命を取り込んで力を増していく。

 

 島の力を強くできても、それは向こうもおなじことだった。

 

『来主!』

 

「総士?」

 

 総士がやって来た。でもどうして? 総士は忙しいはずなのに。

 

 次々とフェストゥムを切り裂いて行くマークアイン。

 

 器の力を超えた能力。それを引き出しているのは総士自身の力。

 

「ダメだよ総士!」

 

『相手の狙いが不明瞭だ。このまま停滞するよりも一気に決める必要がある。此方に対応される前にな』

 

 有線回線で直接総士が話に来た理由が来主にはわからなかった。 

 

『出来るな、来主』

 

「……うん」

 

 マークニヒトの力が上がっていく。

 

 おれが乗ったマークニヒトと同じなのに違う。おれが居なくなりそうなくらいにマークニヒトの中は強い力で溢れてる。

 

『力を抑えつける必要はない。指向性を明確にすれば良い』

 

「そうは言っても…っ」

 

 マークニヒトから稲妻が放たれる。

 

 それが次々とフェストゥムを焼いて行く。

 

「やっぱり。おれじゃ扱いきれなくなってる……」

 

 基本的に言うことは聞いてくれる。それでも少しでも力を使おうとすると勝手に動き出そうとする。それが恐くて来主は全力でマークニヒトの力を振るうことが出来なかった。

 

「うわっ」

 

 マークニヒトの腕をスフィンクスB型種が2体掛かりで抑えつける。

 

「な、なに!? ぐっ」

 

 振りほどこうにも、腕を振るって電撃を浴びせる。

 

『ぐっ』

 

「総士!」

 

 クロッシングで伝わってくる総士の痛み。島を傷つけないように戦うのはマークニヒトでは難しい。

 

「総士、やっぱり――」

 

『戦闘中にそれは難しいだろうな』

 

 マークニヒトから降りて総士に乗って貰う事も考えた。それでも総士はそれは出来ないと言う。

 

 マークアインがマークニヒトに取りついたスフィンクスB型種をレヴィンソードで背中から貫き、マインブレードをさらにその傷口に捩じ込み、腕を引き抜いた所で爆発が起き、スフィンクスB型種がワームに呑まれて消滅する。

 

『くっ。孤立させられたか』

 

「総士…」

 

 次々とマークアインとマークニヒトの周りに現れるフェストゥム。

 

 スカラベ型から伸びる触手が2機のファフナーを呑み込もうとする。

 

『ぐあっ、くっぅぅ』

 

「総士!」

 

 アンカーを打ち込み、スカラベ型を同化する。それでも数が多くマークアインがスカラベ型の触手に呑み込まれる。

 

「総士を連れていく気なの!?」

 

 下手に攻撃すれば総士を傷つけてしまう。

 

 そう考えてしまうと来主は下手な事が出来なかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 敵の群れを突破し。来主のもとへやって来たものの。

 

 敵の狙いが不明瞭であるならば動かれる前に諸共に粉砕しようとして、敵に包囲されるという状況に陥った。

 

 スカラベ型の触手がマークアインを拘束する様に突き刺さる。触手で覆われ身動きが出来ない状況。機体が軋みを上げる嫌な音も聞こえてくる。

 

「どうする。ここから」

 

 今の状況から脱する最善の道を模索するものの。機体に侵食も受け始め、コントロールが効かなくなってきている。

 

「君は何故、そこにいるの」

 

「フェストゥムの、侵食か…」

 

 僕の目の前に現れたのは幼い姿の僕だった。

 

 抑えつけていたフェストゥムの側の僕の存在が息を吹き返した。

 

「僕が居るべき場所に、何故君は居るの?」

 

「痛みから逃げたお前に、この場に居る権利はない」

 

 僕という存在は、確かに皆城総士にとって異物だったかもしれない。

 

 それでも僕はここに居ることを選んだ。自分で居る事を選んだ。

 

 たとえそれが、別の痛みを産み出しても。それを背負う覚悟を僕は決めた。

 

 痛みを感じても、一騎を同化する事で痛みを与えた相手を消そうとした皆城総士に。痛みを無くすことに逃げた自分に。ここにいる資格などない。

 

『なら、君の憎しみはボクが貰っていくよ』

 

「なんだと!?」

 

 アトランティスのコアだった存在が、幼い僕を背中から包むように抱き締めた。

 

「すべての悪感情を憎しみとしか感じられない存在が。僕の恐怖を同化出来ると思うな!」

 

 そう。フェストゥムの側の僕は恐かったのだ。

 

 自分がどこにもいてはいけない現実に恐怖し。だから一騎を同化して消えようとした。

 

 自分の存在を一番理解してくれる相手とひとつになることで、恐怖を消そうとしたのだ。

 

『無駄だよ。コレには抗うような力がない』

 

 幼い僕が赤い結晶に包まれて行き、僕の胸にも赤い結晶が生えてくる。そこから流れ込んでくる憎しみという感情。理由もなく、ただ憎いと思う感情だけが溢れてくる。

 

「くっ。憎しみの理由さえ忘れた化け物が!」

 

 マークニヒトであれば力任せに振り払う事もできるのだが、それがマークアインには出来ない。

 

「ぐっ、ぅぅっ」

 

 ニーベルングからも結晶が腕を覆うように生え始める。

 

「機体から僕を同化するつもりか…!」

 

 同化に抗うが、それも何処まで保つか。

 

 内臓から掻き乱される様な嫌な感じだ。

 

 機体システムも半分以上がダウンしている。クロッシングは既にリンクを切ってある。

 

『フェンリル、起動認証。認証には認証コードが必要です――』

 

 残されている手段はフェンリルでの自爆だ。ゼロ次元跳躍で跳べるかどうかという不安もある。

 

 だがこのまま同化されるわけにもいかない。

 

 そう考えれば、迷いはない。

 

『フェンリル、起動認証。解放レベルMAX設定』

 

「この僕の存在を、奪わせて堪るものか!」

 

 意識を自分の内側に向ける。自分を構成するミールの因子を伝って、島のミールを感じ取る。

 

『総士!!』

 

「……織姫」

 

 岩戸の中で眠っている織姫の存在を感じた。

 

 手を伸ばす織姫に向かって、僕も自分の手を伸ばした。

 

『フェンリル、解放――』

 

 視界が真っ白に染まっていく。だが恐怖はない。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「総士!!」

 

 総士の存在が消えた。

 

「なんで…っ」

 

 真っ白になった世界でマークニヒトが揺れる。

 

 総士がいなくなった……?

 

「な、なに?」

 

 空間が歪んで。ワームの中からファフナーが現れた。

 

 金色のファフナー。その内側には果てしない憎しみを感じる。普通のファフナーじゃない。そして何故か総士の存在も感じた。

 

 マークザインやマークニヒトに似た姿の、金色のファフナー。

 

 その禍々しい力に来主は気圧されそうになる。

 

「なんて憎しみ。こんなのが動き出したら…」

 

 マークニヒトから稲妻が放たれ、金色のファフナーを捉える。しかし、金色のファフナーは腕を振るってその稲妻の檻を打ち払った。

 

 そして金色のファフナーの周りに現れたワームの中からシーモータル型が現れる。

 

「くっ」

 

 ホーミングレーザーを放ってシーモータル型を撃ち落とすものの。金色のファフナーには効果が見られなかった。

 

 未だ動きが鈍い金色のファフナーを連れて、マークニヒトは空へ昇っていく。

 

「でえええやああああ!!!!」

 

 それを一騎のマークザインが、行く手のフェストゥムを蹴散らしながら追っていく。

 

「マカベ!」

 

 それを追おうとミツヒロも飛び立とうとするが。巨大な手がマークレゾンを阻んだ。

 

「っ、…ウォーカーか!!」

 

「はああああああ!!!!」

 

「やああああああ!!!!」

 

 だがウォーカーに斬りかかる2機のファフナーの姿があった。

 

「ここは私たちが抑えるから」

 

「総士先輩を助けにいって!」

 

「…わかった」

 

 マークゼクス、マークレルネーア。

 

 ショウコとセリのふたりから任されたとならやらなければならない。

 

 ミツヒロは直ぐ様マークニヒトとマークザインを追って上空へ飛び立った。

 

「っ、何がおかしいの!」

 

 その様子を見て、ウォーカーが不気味に笑った事を芹は目撃する。なにか企んでいるのかもしれない。

 

「っ、ああああああ!!!!」

 

「羽佐間先輩!!」

 

 ウォーカーがその手にマークゼクスを握り締め、同化しようというのか、白い機体に翠色の結晶が生えていく。

 

「させるかあああ!!!!」

 

 バスターソード・ライフルからエネルギー刃を形成し。ウォーカーの防壁を力尽くで打ち破り、そのままマークゼクスを拘束しているウォーカーの手を切り落とす。

 

「っぐ。えやあああああ!!!!」

 

 マインブレードを抜き、オーラの様な光を身に纏ってマークゼクスはウォーカーの額にマインブレードを突き立てた。

 

 そして刀身をへし折った瞬間に、ウォーカーの頭部が半分程吹き飛ぶ大爆発を生み出した。

 

「芹ちゃん!!」

 

「はあああああ!!!!」

 

 そしてマークレルネーアがウォーカーの胸にバスターソード・ライフルの刃を突き刺し、根本まで沈む様に抉り込む。

 

「食べさせて。あなたの生命を!!」

 

 バスターソード・ライフルから広がるようにウォーカーの身体が結晶に包まれていく。それどころかウォーカーの脚を伝って結晶は海にまで及んでいく。

 

「ぐっ、あがっ。くぅぅぅっ」

 

「芹ちゃん!」

 

 芹の様子がおかしい事に気づいた翔子は直ぐ様マークゼクスをマークレルネーアに取りつかせる。

 

 アザゼル型ともなると存在が大きすぎて芹であっても食べきる事が出来なかった。

 

 それを察した翔子も自らの力で芹の手助けをする。

 

 だが新型のアルゴノート・モデルであっても処理しきれない強大な負荷が、マークゼクスに襲い掛かる。

 

「ぐっぅぅ。ぁあああっ」

 

「は、羽佐間…せんばい…!」

 

 マークゼクスのあちこちから火花が散り、機体に亀裂が走っていく。

 

「機体が…!」

 

「私が、守る…! 一騎くんの、島をっ」

 

 翔子の言葉にシンパシーを感じる芹だったが。しかし実際問題としてこのままでは機体がもたない。

 

「やれやれ。あんまムリすんなよ羽佐間」

 

「ま、将陵先輩…」

 

「よ! 後輩のピンチに颯爽登場ってな」

 

 ティターン・モデルがバスターソード・ライフルの柄に触れた瞬間。一気に負荷がなくなるのを芹と翔子は感じた。

 

「これなら!!」

 

「お願い芹ちゃん!!」

 

「そのまま喰っちまえ!」

 

「おおおおおああっ」

 

 結晶が弾け、バスターソード・ライフルの切っ先に刺さった巨大なコアが露になった。

 

 空かさず芹はそのコアを逃がすまいと直接両手で掴み、コア自体を同化して平らげる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ……っ。ご、ごちそうさま」

 

 いつもより苦しさを感じながら、アザゼル型を同化する事の大変さを芹はその身で深く味わったのだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 竜宮島上空。雲よりも高い場所でマークニヒトは金色のファフナーと戦っていた。シーモータル型を産み出し、ホーミングレーザーを放ってくる中距離戦闘。そして近づこうとすればワームスフィアを放ってくる。

 

 それらの攻撃をすべて避け、金色のファフナーにマークザインが向かっていく。

 

「返せ! 総士を返せええええ!!!!」

 

 ルガーランスを突き立てるマークザイン。

 

 だが金色のファフナーはその一撃を防壁で防ぎ、刃は届かない。

 

「返せえええええ!!!!」

 

 だが、マークザインが刃を押し込む事で防壁に亀裂が走る。僅かだが沈んだ刃で無理矢理防壁を抉じ開ける様に、さらに刃を押し込む。

 

 迫るルガーランスの刃に腕を伸ばす金色のファフナー。しかしそれすらも貫き、切っ先は金色のファフナーの胸に突き刺さった。

 

 刃を展開しプラズマ弾を放つ瞬間にルガーランスの刀身が折れる。

 

 狙いのずれたプラズマはあらぬ方向に飛んでいく。

 

 体勢の崩れたマークザインに向かって金色のファフナーが拳を振り被る。それに対してマークザインも拳を突き出すものの、かち合ったマークザインの拳が砕けてしまう。

 

「マカベ!!」

 

 背中からバスターソード・ライフルを抜いたマークレゾンがその切っ先を金色のファフナーに突き立てる。

 

「くたばれええええっ」

 

 金色のファフナーの腹部に突き刺さったバスターソード・ライフルのトリガーをミツヒロは引く。

 

 刀身が展開し、プラズマ弾が撃ち込まれる。

 

 だが金色のファフナーはその攻撃を受け身体を黒く発色させ、ワームで周りを呑み込まんとする。

 

「マズい!」

 

 反射的にミツヒロはマークレゾンを下げる。敵の消滅時のワームに呑まれないように動くそれは、もはやファフナーパイロットとしての癖の様なものだ。

 

 だがそれでも構わずに金色のファフナーに向かっていくマークザインの姿があった。

 

「マカベ!?」

 

「一騎!!」

 

 ミツヒロと来主がそれに気付くものの、マークザインは金色のファフナーの広げたワームに呑まれ、姿を消してしまった。 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「ここは……」

 

 目覚めた場所は、キールブロックだった。

 

「総士!!」

 

 名を呼ばれ、振り向けばそこには一騎が居た。

 

「一騎?」

 

「総士! 良かった…。いるんだな、ここに」

 

「あ、あぁ…」

 

 此方の手を握って涙を浮かべる一騎に困惑しながら、自分の最後の記憶を辿ると確かに心配されても仕方がない。

 

「ここ。アルヴィスの中だよな」

 

「ああ」

 

 自分達がキールブロックに居る理由。

 

 自分ならまだわかる。だが一騎が居る理由がわからなかった。

 

「待ってたよ。総士」

 

「織姫」

 

「乙姫……。じゃ、ないのか」

 

 そこには織姫が居た。

 

「あなたとははじめてね、一騎」

 

「あ、あぁ…。君は」

 

「皆城 織姫。皆城 乙姫の次を担うために生まれたコアよ」

 

「そ、そうか…」

 

 織姫の自己紹介を聞いて返事を返した一騎だったが、半分は理解出来ていないのだろう。それでも乙姫とは別の存在であると理解出来れば良い。

 

「アトランティスのコアが器を得た」

 

「知ってる。だからあなたを呼んだ」

 

「ああ。だが……」

 

 何故一騎がここに居るのかという視線を織姫に向けた。

 

「選ぶか選ばないかは、個人の選択。それはあなたもよ。総士」

 

「僕の答えは決まっている。だが…」

 

 すべてを知っていて覚悟を決められる自分と異なり、一騎はまだなにも知らない。

 

「……総士」

 

「一騎…」

 

 一騎に呼ばれ。僕は一騎に振り向く。その瞳は真っ直ぐ僕を向いている。

 

 そして一騎はそっと僕の手を取って握り締めた。

 

「一騎?」

 

「俺も、お前と戦う。はじめてフェストゥムと戦った日から、それは変わらない。お前がやるなら、俺もやる」

 

「だが…」

 

 こればかりは本人の意志で決めて欲しい。後悔のないように。この選択は、そういうものだ。

 

「ひとりで背負うな。俺じゃ、お前の背負っているものを背負えないのか」

 

「一騎、これは…」

 

「俺とお前ならなんだって出来ると俺は信じてる。ひとりずつじゃ難しくても、俺たちなら。俺たちはいつも一緒だろ?」

 

「一騎……」

 

 真っ直ぐ見詰められながら紡がれる一騎の言葉に心が揺らぐ。

 

「たとえ人でなくなるとしても、そう言えるのか?」

 

「言える」

 

「何故だ」

 

「総士と一緒だからだ」

 

 なんの疑いもなく言い切る一騎に、織姫が僕たちに近寄ってきた。

 

「あなたの負けよ。総士」

 

「織姫。しかし…」

 

「一騎はもう選んでる。あなたが拒んでも止められない」

 

「僕は良い。だが一騎は」

 

 永遠の存在になる事は、僕自信望むことでもあった。

 

 一騎に、その様なものを背負わせるくらいならば構わない。

 

 一騎に握り締められた手が、さらに握る力を増した。

 

「俺は、お前だ。お前は、俺だ」

 

「一騎…」

 

 乙姫から一騎が継いだ存在を受け入れる言葉。

 

「俺なら平気だ。俺じゃダメなのか、総士!」

 

 一騎以外にその役目を果たせる人間は居ないだろう。存在を受け入れる事は、一騎と乙姫の力だ。

 

 僕に出来るのは、奪う事だ。

 

「人と違う時間を歩む事になるぞ」

 

「ああ。でも、総士も一緒だろ?」

 

「ああ」

 

「なら、大丈夫だ。俺とお前なら」

 

 何が大丈夫なのかの基準がわからないが。一騎と共にならば、確かにどうにかなりそうだ。

 

「すまない。一騎」

 

「謝ることじゃないだろ」

 

 だが謝らずにはいられなかった。この様に巻き込む形で選ばせたくなかった。

 

「島のミールが、あなたたちを守るわ」

 

「ありがとう、織姫」

 

「迷わず進みなさい、一騎。未来はあなたが作るしかないの」

 

「ああ」

 

 一騎と織姫の会話を聞きながら、僕はふたりを見守っていた。

 

 そして織姫が僕の所にやって来た。

 

「織姫」

 

「心配性ね。でも、総士が思っているほど、一騎は弱くない」

 

「ああ…」

 

 弱いのは僕だ。臆病で、卑怯なのも。

 

 だから僕は最善の方法を選び続けた。

 

 苦しくても、辛くても。それが未来を作る道であると信じていた。

 

 たが、その選択が正しかったかどうかを決めるのは自分ではない。

 

 そうして僕は、最も大切にしなければならなかったものを、見落としていた。

 

 

 

 

to be continued…

 

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