EXOやBEYOND見てると天地が希望に満ちてる次に繋がる物語だとつくづく思わされる。
EXOは毎週胃がキリキリしてたけど、BEYONDは胃が限界を迎えて痛かったよ。ホント痛かったよ。
そして年内にBEYONDのクライマックスが先行上映決まったらしい。頼むからもう誰もいなくならないでくれよ……。
そこは不思議な場所だった。
暗闇に思えて、でも光がある場所。
俺はこの場所を知っている。
北極でマークニヒトを同化した時にも俺はここに来た事がある。
「存在と無の地平線──ここはその狭間だ」
「総士…!」
総士がいた。暗闇へと落ちていく総士が。
「待ってくれ総士! 俺も…!」
総士ひとりにいかせはしない。総士を追い掛けようとした俺の肩に誰かが触れた。
「お前はまだここにいろ」
「まだいなくなるには早いよ、一騎」
「総士…、それに、甲洋…?」
俺に触れたのはもうひとりの総士と、甲洋だった。
「皆城総士の還る場所をお前が守れ。お前がいる限り、皆城総士は還る。存在と無の循環を繰り返して」
「だから一騎はいなくなったらダメだ」
暗闇に落ちていく総士は笑っていた。胸が苦しい。でももうひとりの総士が言うように、俺が存在することが総士の為になるのなら。
身体が光へと浮いていく。存在へと、俺は昇っていく。
◇◇◇◇◇
「すまないな。還って来たばかりで」
「良いんだ。それで一騎を助けられるのなら」
僕は今、この世界の甲洋と話していた。
この世界でも蓬莱島の一件で同化され、そしてフェストゥムの側へ行った甲洋。
意識が存在と無の地平線へと落ちようとしていた一騎を存在の側へ連れ戻す為に協力して貰った。
そして僕が祝福を与え、甲洋は存在を得るに至った。
「それに、俺の方こそ総士に感謝してる。お陰でこの島を守ることが出来る」
「僕の祝福は存在を選ぶ者に与えられる切っ掛けに過ぎない。選んだのは君だ甲洋。君の意志を貫けば良い」
「…世界は違っても総士は総士、かな?」
「皆城総士であることを選んだ時から僕は僕だ。それ以外の何者でもないさ」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ…」
甲洋の言葉に適切な返答をしているはずなのだが、甲洋は腑に落ちない様子だ。間違った事を言った覚えはないのだが。
◇◇◇◇◇
「う…っ、ここ、は…」
「目が覚めたか」
「そう、し…、こう、よう……」
眩しさに目を細めながら総士と甲洋の姿を見ることが出来る。
「目が……」
明るいからじゃない。ハッキリと総士と甲洋の姿が視える。
その後検査を受けた結果、俺の目は視力を取り戻したばかりか、同化現象すら快調していた。
「大丈夫なのか、お前は」
「僕が僕で在る限り僕の存在は無くならない。心配するな。それよりもお前は皆城総士の還る場所を守ることを考えろ」
もうひとりの総士はそうは言ってもやっぱり心配になる。俺たちの為に痛みを背負う必要なんてないのに、やっぱり総士は総士なんだろう。
「この島の空を取り戻せ。彼らに存在することの意味を伝えろ。お前ならそれが出来る」
「ああ」
違う世界でも総士は総士だから、その言葉を俺は信じる。
この身体のお礼だってしたい。
その為にも来主のミールとの『対話』を実現してみせる。
そして、もうひとりの総士たちが島に帰る為の方法も見つけてみせる。それが俺に出来る恩返しだ。
◇◇◇◇◇
あたしは岩戸に来ていた。
総士先輩がミールへの負担を肩代わりしているからこの島の乙姫ちゃんや織姫ちゃん、もうひとりのあたしも負担は軽いものだけど決して負担が掛かっていないわけじゃない。
だからあたしがその痛みを同化する。これはあたしが勝手にやっている事だから乙姫ちゃんは悲しい顔をする必要なんてないのに。
「あたしの存在は、この程度じゃ無くなったりしないよ」
『そうじゃないよ。そうじゃないんだよ芹ちゃん。総士にも芹ちゃんにも、こんなことまで背負って欲しいわけじゃなかったのに』
たとえあたしがやらなくても総士先輩がやっていただろうし、あたしはやりたくてやっているだけだから乙姫ちゃんが悲しむ事なんてないのに。
「悲しまないで乙姫ちゃん。あたしは乙姫ちゃんの笑顔が見たいな」
『芹ちゃん…』
だからあたしは笑みを浮かべて乙姫ちゃんを抱き締める。
「あたしは、あたしに出来ることをしているだけだよ」
誰かの為に誰かが立ち上がる。それがあたしたちの戦い。だからこの島の乙姫ちゃんと織姫ちゃんを守りたいのもあたしの意志だ。
「乙姫ちゃんたちをお願い」
『うん。あたしが乙姫ちゃんたちを守るから』
もうひとりのあたしと言葉を交わす言葉は一言で充分だ。何故ならあたしももうひとりのあたしも想いは同じだから。
◇◇◇◇◇
「総士も芹ちゃんも甘やかし過ぎだよ」
2人はなんともないと言うけれど、その分自分の存在を削っている。
「これ以上、総士と芹ちゃんの存在は奪わせない」
あの2人が皆城乙姫の為なら自分の存在を擲つのは解るけれど、それはせめてわたしの島の皆城乙姫になら我慢出来る。
でも別の世界ともなると話しは変わる。
確かにその選択が総士が新しい可能性へと進む道標になるとしても、総士には必要以上に痛みを抱えて欲しくない。
芹ちゃんの生命を削って欲しくない。
だからわたしは来た。けれどそれで足りないというのならわたしにも考えがある。
「あなたが存在する理由が総士にあるのなら、わたしの声に応えてみせなさい」
だからわたしは呼び掛ける。もうひとつの“存在”へ。
◇◇◇◇◇
ボレアリオスとの決戦が始まった。
数えるのがバカらしい数のフェストゥムが居るが、大半がスフィンクス型である為か策謀を捏ねくり回すウォーカーやアビエイター等のアザゼル型と比べたら数頼みで来る今のボレアリオスは対応し易いと思う僕の感覚が少し麻痺しているのだろうか。
「やれるか? 立上」
「はい。やります」
クロッシングで僕の思考を受け取った立上は、機体をフェストゥムの群れのど真ん中に転移させる。
「ちょうだい、みんなの生命を!!」
マークベルクロスがバスターソード・ライフルを掲げて、展開した刀身に光が宿る。
その光が戦場全体へと広がり、フェストゥムたちを根こそぎ同化していく。
「はぁ……。ごちそうさま…」
残るのは同化耐性の高いエウロス型などだが、敵の第一波は壊滅したも同然だ。
「ボレアリオスへの進路は確保した! ゼロファフナーはポイント更新! シールドを破れっ」
『『了解!』』
立上のお陰で切り開いたボレアリオスへの進路。残っているエウロス型を迎撃しながら西尾姉弟が駆るゼロファフナーへ指示を出す。
だが彼らもエウロス型を新たに戦場に展開する事でこちらの行く手を阻む。1体1体がザルヴァートル・モデルにも引けを取らない個体だ。それが群れとなっているのだから簡単にはいかない。
そして、マークニヒトまでも現れたとなればいよいよ本腰を入れなければならなくなった。
「マークニヒト、憎しみと虚無の器が存在を否定しに来たか」
「ミールは君たちを恐れているんだ。どうして傷ついても存在を選べるの!?」
「それが僕が僕であることの証だからだ。痛みを伴おうとも存在を選び続ける事が僕の祝福だ!」
「わからないよ。痛みを背負っても存在を選ぶなんて、苦しくて辛いだけなのに」
「それだけじゃないよ。楽しいことも、嬉しいこともちゃんとあるの。だからあたしたちはそこにいることを選び続ける事が出来るんだよ」
「自分の存在に耳を傾けなさい。あなたはもう答えを持っているのだから」
「俺の存在の答え……。そんなの、どこにあるっていうんだ!」
マークニヒトの放つワームをアンカービットのシールドで防御する。
その隙を突いて立上のマークベルクロスがバスターソード・ライフルを振り下ろすが、その刃をマークニヒトは掴んで受け止める。
だがそれも囮だ。
織姫のマークアインがショットガン・ホーンをマークニヒトの背中に突き立て、砲撃を撃ち込む。
「うぐっ、やめて…、そんな憎しみ背負わせないで!」
だがマークニヒトはその程度では止まらない。
「うわぁぁぁああああ!!!!」
広範囲に無差別にワームを放つマークニヒト。
エルシャンクを守るためにアンカービットを使う為に自分自身の防御は疎かになる。
「くっ、避けきれるか?」
空間位相を計測して攻撃座標を割り出して回避するが、ボレアリオスか、あるいはマークニヒトが、よほどこの機体か或いは僕を気に入らないのか。攻撃の密度が他よりも桁違いで回避する余裕すらほぼ無い。しかしそれでアンカービットを呼び戻せばエルシャンクに被害が及ぶ。
一発や二発受けた程度でどうにかなるわけではないが。
被弾を覚悟して防御体勢を取るが、機体には全くダメージが無い。
システムに新たに機体情報が表示される。
「間に合った…」
イージスを展開する機体が僕を庇った。そしてクロッシングから伝わる意識に、口縁が自然に上がるのを自覚する。
「手間を掛けたな、ミツヒロ」
「あなたを守るためならばこの程度」
表示された機体コードはマークレゾン。存在する理由を見出だしたミツヒロの器だ。
「いきなりですまないが、マークニヒトを抑え込む。守りを任せられるか?」
「了解! ミワが居るのなら、守ってみせます!」
『壁』の力を解放し、強固なシールドで完全にマークニヒトの攻撃をマークレゾンは防ぎきっている。頼もしい限りだ。
『総士先輩、アレ!』
立上が示す先。ボレアリオスが結晶の柱を上空へと伸ばしていた。
『あたしが行きます!』
「わかった。頼む」
立上のマークベルクロスがボレアリオスへと向かっていく。
「俺たちのミールを、やらせない…!」
「それはこっちのセリフ。芹ちゃんはやらせないっ」
立上のマークベルクロスを追おうとするマークニヒトに、織姫のマークアインが割って入る。
「目覚めなさい、島の守り人たち!」
いつの間にか従えていた複数のノルンが結晶に包まれて、弾けた中からトルーパーが現れた。
しかも『増殖』のSDPまで発現させているのか、その数は次々に増えていく。
「な、なに、この力は…?」
「これがわたしの島の力。総士が求めた希望を紡ぐ為の力よ!」
イージスを展開しながらトルーパーたちがマークニヒトに群がり、その行く手を阻む。
「っ、ぐぅっ、うわぁぁぁああ!!」
だがパワーが違うマークニヒトは手足を振り払うだけでトルーパーの拘束から抜け出してしまう。
「逃がさないっ」
マークアインの持つルガーランスの刀身が展開し、ワームを刃として纏う。甲洋の『毒』の力か。
「はぁぁあああっ」
「ぐああああああ!!!!」
トルーパーを振り払ってボレアリオスへと向かおうとするマークニヒトの背中へマークアインは容赦なくワームを纏ったルガーランスを突き立てた。
「痛いっ、なんで、なにこれ…。どうして痛みばかり増やせるの!?」
「痛みは存在することの証よ。痛みから逃げるあなたに教えてあげる。生命の痛みを」
「い、嫌だ。来ないでよ! うわあああああ!!!!」
織姫を拒絶する為に再びマークニヒトは広範囲にワームを放つ。
「当たらないわよ」
だがマークアインには掠りもせずに回避する。それはまるで未来が見えているのではないかという最適な動きだった。
立上のマークベルクロスがボレアリオスから伸びる結晶の柱に取り付いた。
「うぉぉぉおおあああ!!!!」
バスターソード・ライフルを柱に突き立て、結晶が柱を覆っていく。
「あたしが守る、乙姫ちゃんの島を!!!!」
しかし相手はミール。立上が同化した結晶が翠から赤に転じて逆にマークベルクロスを侵食する。
「立上!」
「させるかあああっ」
マークレゾンが背中のバスターソード・ライフルを展開し、放たれた高出力ビームが結晶の柱の上部を消し飛ばした。
『『うぉぉぉおおおお!!!!』』
そしてゼロファフナーが結晶の柱に取り付き、その両腕を突き入れ、振動共鳴波で柱を完全に破壊した。
「そう、生命は痛くて苦しいけど、それだけじゃないよ」
ミールの結晶から解き放たれたマークベルクロスがバスターソード・ライフルをボレアリオスの上で掲げ、光がボレアリオスを包んでいく。
『うれしいことも、たのしいことも、いっぱいあるよ』
クロッシングで日野美羽の意思が伝わってくる。
マークニヒトに取り付いて一気に上空へと飛び立つ。
『総士!』
「上空へ行く! このままでは『対話』の妨げになるっ」
一騎のマークザインが僕の後を追ってくる。
分厚い雲──ボレアリオスが支配するフィールドの先。空の上へ。
「くっ」
マークニヒトが離れ、ルガーランスからビームを放って来るのを回避する。
「なんで何も止めない、なんで諦める! 嫌いなものは全部消すだけかっ」
一騎のマークザインがその攻撃を掻い潜ってマークニヒトへと向かっていく。
「俺たちのミールは新しく生まれるハズだった! 君たち人類の火が何もかも変えたんだっ」
マークザインがルガーランスを突き立てるが、マークニヒトの障壁に阻まれる。
ザインにはリミッターが施されているが、ニヒトも来主が戦いたくはないという意思でその力を抑えられ、結果拮抗している。
その均衡を崩すには──。
マークニヒトの障壁にアンカービットとアームソードを突き立てる。
「総士!」
「互いに異なる波長でやれ! 殻を突き破るぞ」
「ああ!」
アザゼル型並みの個体防壁でも、マークザインとマークエクジスト、存在を肯定するふたつの器なら突破出来る。
「なに? どうしてっ」
防壁を破った、しかし武器で攻撃するのではなく、ニヒトに直接接触する。
「お前がもう一度変えれば良い。ミールは声を聞き逃したりはしない」
そう、願うことで変えることが出来る。僕の島のミールや、この世界の島のミールが変わった様に、彼らのミールも願いによって変わることが出来るのだから。
「そうだ。お前がもう一度変えろ。その為に総士はお前と俺たちを出会わせた。お前たちを変えるためにっ」
ニヒトに触れた箇所から結晶が生えていく。だがニヒトがそれに拮抗して結晶が赤くなり、こちらへと逆侵食を始める。
「俺はもう選ばされたんだ! 君たちを傷つけて、今さらどう変われるんだ!!」
「ぐっ。これが、憎しみか…っ」
「うぐっ」
憎しみと虚無が僕たちを否定しようとするが、この程度で僕や一騎が折れる事はない。
「…俺も、総士に傷を負わせた。でもあいつは、俺を信じてくれた」
「たとえ苦しみに満ちた生であっても存在を選べ。痛みの向こう側に在る、生まれてきた事への喜びを知るからこそ、苦しいからと諦めるな。そこにいることを選び続けろ」
「思ったんだろ? 空が綺麗だって。お前はもう知っているんだ、生命の儚さを、尊さを。それをお前の神様に教えてやれっ」
「俺は…、俺はっ、うっ、うぅぅ、うわあああああ!!!!」
マークニヒトから電撃が放たれ、僕たちはマークニヒトから放れざる得なかった。
「存在を否定する怪物がっ。邪魔をするなあああ!!」
「待ってろ来主! 今そこから出してやるっ」
もう一度、マークニヒトへと向かっていく。だがマークニヒトは今までよりも激しく攻撃を加えてくる。ワームは勿論、電撃やホーミングレーザー、ルガーランスによる射撃も加えて僕たちを寄せ付けようとはしない。
「もう来ないで! ミールは戦いをやめようとしない! このままじゃ、君たちを消してしまう!」
「戦いたがっているのはお前たちのミールだけだ! お前なら止められるはずだ、来主!」
「俺には何も背負えない! 選ぶ事は出来ないんだよ!」
「自分の強さを信じろ! 総士が賭けたお前は無力じゃない!」
「諦める前に選んでみせろ。何度でも、そこにいるのならば変えられるはずだ!」
ザインとエクジストの射撃は障壁で防御されてしまう。もう一度接近戦に持ち込むしかない。
「自分を信じられないというのなら、マカベやミナシロが信じるお前を信じてみろ!」
マークレゾンがフィールドの中から現れ、バスターソード・ライフルから高出力ビームを放つ。
「もうひとつの“存在”の器、君はなんなんだっ」
マークニヒトがワームを放つが、マークレゾンの前には通用しない。『壁』の力を突破するのは容易な事ではないのだ。
「おれもミナシロたちに傷を負わせた。それでもおれを信じてくれた。おれが存在する“理由”を与えてくれた。お前がそこにいる理由を見つければミールは応えてくれるはずだ!」
マークザイン、マークレゾン、そしてマークエクジスト。
それぞれが“存在”を意味するファフナーが揃ってマークニヒトと対峙する。
「うぉぉぉおおおお!!!!」
イージスを展開し、マークレゾンがマークニヒトへと体当たりする。しかしマークニヒトの障壁に阻まれてしまうが、それがミツヒロの狙いだ。
「殻を打ち破れ、ミツヒロ!」
「了解! やってみせます!!」
マークレゾンの機体に触れ、同化して出力を高める。そしてアンカービットも放ち、マークニヒトの障壁へと干渉して波長を狂わせれば、障壁を打ち消した。
「行け、一騎!」
「うぉぉぉおおおお!!」
マークニヒトへとマークザインが向かっていく。
手を伸ばすマークザインへ、マークニヒトは拳で迎え打つ。
「ぐぅっ」
「やめて一騎! これ以上君を傷つけさせないでっ」
マークニヒトの拳に、マークザインの伸ばした手が砕かれる。
「その感情を伝えろ! お前の痛みを、ミールへと叫べっ」
「うぅ、うわああああっ」
「マカベ!」
再び拳を振るおうとするマークニヒトの前にマークレゾンが割って入ってイージスで受け止める。
『やめてぇっ』
クロッシングで日野美羽の意思が伝わってくる。彼女は泣いていた。
『もうやめて、おにいちゃん。みわと“おはなし”しようよ! いっぱいいっぱい、“おはなし”しよう!』
「……お、俺は…君たちのようには…」
「総士が言っただろ。諦めないで、何度でも選んで、変われば良い。そこにいるんだ、お前は。なら、そこにいることを選び続けられるはずだ」
「お前もおれたちと同じだ。そこにいることを悩み、迷い、苦しんでいる。だから見つけられるはずだ、そこにいることの理由を」
「俺が、君たちと、同じ…?」
動きの止まったマークニヒトへと、マークザイン、マークレゾン、マークエクジストの三つの存在の器が触れる。
「俺は、お前だ…」
「お前の心は、そこにいる」
「お前は、僕だ…」
三つの“存在”による干渉がニヒトの憎しみを鎮め、来主を縛るミールの楔を解き放つ。
「俺は……、ミール…俺はもう、戦いたくない…!」
来主の“声”が、ミールへと届いた。
ミールから、敵意が無くなっていく。
『わかるよ、おにいちゃん。やっと、かみさまと“おはなし”できたんだね』
そしてそれをクロッシングで日野美羽も感じていた。
彼らとの『対話』。それを成し遂げる事が出来た。
空が晴れていく。
だが一息吐くのはまたあとだ。
レーダーに複数の機影が映る。
データ照合。奇械島の敵機体と判明。だがその様子が奇妙だ。生体反応はあっても人の意思で動いている様には思えない。
パイロットが機体が勝手に動くと叫んでエルシャンクへと体当たりして爆発した。
『気に入ってくれたかね、UXの諸君!』
通信回線が開かれ、初めて見る男が姿を現す。
ハザード・パシャ──人類軍の総司令となっているが、皆城総士の記憶にはない人物だ。
『そいつらは、アルカトラズを脱獄した囚人どもでな。生きていても仕方のない、生かしておいては、世のため人のためにならないクズどもだ』
マークニヒトから憎しみが再び溢れ出そうとしている。
「そうだ。この人間が俺たちの島を焼いたんだ。この人間の所為で、俺たちのミールは変えられてしまったんだ」
「命をなんだと思っているんだ。こんなこと、人間のすることじゃないだろう!」
一騎が珍しく怒りを発露している。たとえ敵でも命である事には変わりない。敵でも、命に対する敬意を忘れてはならない。
人間を爆弾にするような行いは、命に対する冒涜であり、人の尊厳を冒す下道だ。
『これは新天地を目指すワシらからの、ささやかな祝福だ』
その言葉に僕も我慢の限界へと到達しそうだった。こんなものが『祝福』であって良いわけがあるものか!
『ありがたく受け取ってくれたまえ! ぐわーっはっはっはっ!』
そうして通信は切られた。
特攻させられる機体が外部からの遠隔操作によるものならば直接制御を乗っ取れば事は済む。
「いけ、アンカービット!」
アンカービットを射出し、『増殖』の力でその数を次々と増やして特攻して来る機体に取り付かせて片っ端から制御系を同化して機能を停止させる。
だがそうして特攻を止めても本命があることを忘れてはいない。
核ミサイルがボレアリオスへと迫っていた。爆発すれば島にも被害が及ぶ。
『こわいよママぁー!!』
「彼女を消すな、ミーーールッ」
「やめろぉぉぉおおおお!!!!」
「ミツヒロ!」
「了解!!」
ミツヒロのマークレゾンに『壁』を作らせ、核ミサイルへ向かうマークニヒトとマークザインを追う。
マークニヒトの中からスフィンクス型へと姿を変えた来主が現れ、核ミサイルを受け止める。
エウロス型も集まってきて彼と共に核の炎を抑え込んでいる。
脳裡に、来主の記憶が流れ込む。
ぼろぼろの身体で、痛みを感じながらも輝く海と空を見た来主の、空が綺麗だと想う心が伝わってくる。
彼らが抑えても核の炎はそれを超えてくる。
マークニヒトがマークザインを核の炎から庇う。それをさらにマークエクジストで庇う。障壁を展開して核の炎を防ぐ。それは僕も皆城総士であるから、一騎を守りたいと願う心は同じだからだ。
『生まれよう、一緒に…』
来主の存在が、ミールとひとつになった。
彼らのミールが大気となり、核の炎と、その汚染を防いだ。
『総士!!』
織姫の声が響く。フェンリルのパワーはファフナーでは防げないと言った手前、核ミサイルも中々防ぐのは厳しいものだった。
機体を包んでいた結晶が弾けて無傷のマークエクジストが姿を現す。
機体の中にあった彼らの“存在”が僕を守ってくれた。
その生命に感謝して、雲の晴れた空を見上げた。
いつ見ても空は綺麗だと僕も思った。
to be continued…