皆城総士になってしまった…   作:星乃 望夢

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随分とお待たせした上に陳腐なご都合主義を多分に含ませて頂きまして、怒る方もいらっしゃるかと思いますが、温かい目で見てくれると嬉しいです。


皆城総士になってしまった…51

 

「相性悪いぜ、全く」

 

 僚は悪態を吐きながらコアギュラ型と戦っていた。敵の高い同化能力から接近戦は厳禁だと言われると、近接戦闘型のティターン・モデルでは戦い辛い相手になってしまう。それでも固定火器に機関砲とミサイルはあるし、ガンドレイクも射撃に対応する武器だ。射撃戦は出来なくはない。

 

『応援に来ました!』

 

「お、有り難いぜ」

 

 芹のマークレルネーアが乙姫のマークツヴァイを引き連れて現れた。

 

『あたしが突っ込みますから、援護お願いします!』

 

「おいおい、総士から接近戦は厳禁だって言われたろ?」

 

『はい。でもあたしなら大丈夫ですから、何かあった時はお願いします』

 

「頼もしいけど、危なっかしいな、立上は」

 

『それがあたしですから。今さら変えようはありませんよ』

 

 ショットガン・ホーンとイージスを展開してもう既に突進する気満々なのを止める術は僚には無かった。

 

「仕方ない。ヤバいと思ったら退けよ?」

 

『判りました。行きます!』

 

 芹の突進を援護する為に僚は弾幕を張って少しでもコアギュラ型の注意を引こうとする。

 

 マークレルネーアが頭からコアギュラ型に突っ込んでそのまま浜辺に押し倒す。ショットガン・ホーンは砂の人型に突き刺さってはいるが、本体には届いていない。

 

 ショットガン・ホーンから砲撃を放ち、砂の人型を吹き飛ばすと、そのまま切っ先をコアギュラ型に突き刺して、コアギュラ型は結晶に包まれて砕け散った。

 

『ご馳走さまでした…』

 

「すげーな、立上は」

 

 苦戦していたコアギュラ型を一瞬で片付けてしまった後輩の働きぶりに僚は素直に感心した。

 

『次は剣司先輩たちの所に向かいますけど、将陵先輩はどうしますか?』

 

「皆でわらわら行っても仕方ないからな。俺はこの場で待機するよ」

 

『判りました。あとはお願いします』

 

 そう言って芹はマークレルネーアを駆って行ってしまう。その様子を見るマークツヴァイの背は何処か悲しげに僚には見えた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 5体のコアギュラ型の内、2体を芹が倒した。しかしまだ弱点が把握されていないために道夫とカノン、衛、剣司、咲良が受け持つ2体に対しては苦戦をしていた。

 

 残る1体は上空に待避していた。

 

 戦況を確認すれば道夫とカノンがコアギュラ型の至るところを攻撃した結果、砂の人型の頭部にある眼が弱点だと割れた。

 

 その情報を総士は3人に共有するが、マークアハトとマークドライは弾切れを起こしていた。あとはマークフュンフがイージスのレールガンがあるが、マークアハトとマークドライのイージスで敵を挟み込んで、正面をマークフュンフに押さえさせて撃破するか、リスクを犯さず現場に急行している芹のマークレルネーアか、道夫のメガセリオンとカノンのベイバロンに任せるという三つの選択肢が総士の中で瞬時に現れる。大事を取るなら3人を後退させるか、その場に留まらせて今出来る足止めをさせるか。そう考えているとマークドライが動き出していた。

 

 ピラムを突き出して頭部を狙うマークドライだったが、その狙いは外れてしまう。そして突き刺さったピラムを伝ってマークドライがコアギュラ型に接触されてしまう。

 

『いや、いやあああっ、助けてお母さん! お母さんっ!!』

 

『早くパイロットを脱出させろ!』

 

「やってます! しかし反応しません!」

 

 史彦に言われる前に既に行動している総士だったが、機体側に問題があるのか、コックピット・ブロックが射出出来なかった。事実コアギュラ型と接触した事で着いてしまった粘着性の砂がマークドライのコックピット・ブロックのハッチを覆ってしまっていたのだ。

 

 コアギュラ型と取っ組み合いになってしまったから接触部位を強制排除で両腕を無くしたマークドライをマークアハトかマークフュンフに回収させるのが確実か。激しい激痛は伴うが命よりも大事な物はない。

 

『現場に到着した。俺たちがやる』

 

 通信で道夫の声が総士の耳に届く。

 

「待って下さい。今救助する方法を」

 

『お前ら、咲良を殺す気か!!』

 

 救助する方法を説明しようとした総士だったが、その前に剣司のマークアハトが道夫のメガセリオンとカノンのベイバロンへ向けてガルム44に残っている銃身下部のミサイルを放って妨害する。

 

「マークアハトの装備を凍結」

 

『咲良、咲良ぁぁぁ!!』

 

『やめろぉぉぉ!!』

 

『全員同化されても良いのか!?』

 

『構うなカノン! タイミングを逃すなっ』

 

 現場はパニック状態だ。暴れるマークアハトをメガセリオンがのしかかって抑えるが、マークドライを狙うベイバロンの前にマークフュンフが立ち塞がる。

 

 総士は瞬時に判断を下した。

 

「遠見、君に任せる。マークドライから敵を引き剥がせ」

 

『了解』

 

「羽佐間、ミツヒロ、遠見を頼む」

 

『了解!』

 

『あとは任せて』

 

 仲間が多いから取れる手段だった。この状況で狙撃をしても、スナイパーの真矢の側には翔子とミツヒロが居るからこそ、総士にはなんの不安も無かった。

 

 竜宮山頂からマークジーベンの狙撃がマークドライの右腕を吹き飛ばしたが、それによってマークドライと取っ組みあっていたコアギュラ型が離れて、マークジーベンへと向かっていくが、背中からバスタソード・ライフルの砲撃でマークレゾンが向かってきたコアギュラ型を消滅させる。

 

 残る最後の1体が上空からマークジーベンに向かうが、それを阻むのはマークゼクス。引き抜いた2本のマインブレードから発する光を束ねて降り下ろした巨大な光の剣でコアギュラ型を真っ二つにして、戦闘は終わった。

 

 たった5体のフェストゥムに遅れを取る様な戦力ではないが、マークドライが接触された時は肝が冷えた。

 

 ファフナー部隊は向島に撤収した。

 

 機体から降りて総士は一息吐く。初出撃の真矢を翔子が支えているのを見て大丈夫だと判断する。

 

「お疲れ様です。総士先輩」

 

「今回、僕はなにもしていないから気は楽な方さ。君の方こそ、疲れただろう、立上」

 

「いいえ、あたしは全然。総士先輩のくれた力があればどんな敵が相手でも大丈夫ですから」

 

「頼もしいが、あまり無茶はするな。君に何かがあれば、乙姫も織姫も悲しむ」

 

「はい。でも、本当に大丈夫ですから」

 

 SDPのお陰で彼女は死ぬことはないとはいえ、それでもそれを前提とした戦い方を推奨はしない。今回の様に敵が緩いからこそ心配はないが、そうも言っていられない敵が出てきた時は彼女の力も宛にしなければならないのは事実だった。

 

 コアギュラ型がやって来たということは、甲洋の事も考えなければならない。当然封印処置をされるだろうが、それを乙姫が解き放つだろう。そうして甲洋に人の心を取り戻させる事が出来るかどうかは1つの賭けだ。

 

 これから起こることを考えると気が気で無いが、それでも今はパイロット全員が無事であったことを先ずは喜ぼうと、総士は思うのだった。

 

「お腹空いたね、総士。お昼にしよ?」

 

「そうだな。立上も構わないか?」

 

「はい。あたしも大丈夫です」

 

「総士!」

 

 総士を出迎えにやって来ていた織姫が総士の腕に抱き着くのを総士は受け入れる。

 

「これから昼にするが、織姫も構わないな?」

 

「うん。わたしはオムライス食べたい」

 

「わたしもオムライスで良いかな」

 

「あ、あたしもそれでお願いします」

 

「わかった。来主も構わないか?」

 

「おれは美味しければ何でも良いよ」

 

 賛成派多数でこの日の皆城家の昼はオムライスという事になった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「我々とは異なる可能性を行く並行世界か。にわかには信じられんが。その証拠となるものが共に在ってはな」

 

 並行世界の竜宮島から持ち帰ったマークエクジストとマークベルクロスが可能性の集う世界での出来事を語ってくれる。

 

 僕らがアルヴィスから姿を消したのは数時間程度だった。その程度の時差で戻れた事に胸を撫で下ろす。

 

 行方不明の間、何があったのかを真壁司令と話した。

 

 たったの数時間では島で何か変化が起きることも無かった。それは良かった。あちらから持ち帰ったマークエクジストとマークベルクロスもあるため単純に労せず島の戦力が増えたことは朗報とも言える事だ。

 

 あちらでの経験から羽佐間のアルゴノート・モデルの調整にも目処が着きそうだ。

 

 立上がマークベルクロスに乗るため、マークレルネーアが空席になるが、そちらは来主に譲っても良いだろう。

 

 僕がマークエクジストに乗るとマークニヒトが空席になるが、僕がマークニヒトに乗って乙姫か織姫にマークエクジストに乗って貰うのもありか。

 

 そんな事を考えながら真壁司令のもとを辞する。

 

 会議室の外では立上、織姫、ミツヒロが待っていた。皆、並行世界へと訪れた当事者だから集められたが、事実確認なら僕だけで充分だから部屋に戻っても良かったと告げていたのだがな。

 

「どうでしたか? 総士先輩」

 

「何も心配はないさ。マークエクジストとマークベルクロス、あちらでの出来事の詳細を後日レポートで提出する事くらいだ」

 

「そうですか。良かった」

 

 立上が胸を撫で下ろす。まぁ、僕は島に変化が無いというだけであとは然したる心配はしていなかったが。

 

 だがマークエクジストが増えた事で島に何らかの変化が起こるのではないかという可能性は頭の隅で考えておく。単純にミールそのものとも言っても過言ではないザルヴァートル・モデルが増えたのだから、何も起こらない筈も無いだろう。

 

 そんな懸念は杞憂だとでも言うように数日が過ぎる。そして盆祭りの日がやって来た。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 島に生命が満ちて行く。総士の器が島に影響を及ぼしている。

 

 生命を再び生まれさせている。それは総士が選んで辿り着いた1つの未來。

 

 総士の器が生命の選択を1つ1つの生命に再び与えている。

 

「なんだと!? それは本当か!」

 

 史彦が慌てている。出店を放ったらかして駆け出した。

 

 島で起こっている事が知られ始めた。これは今年のお祭りは中止かな?

 

「苦しい?」

 

 島では別の事も起きている。だからわたしは問い掛ける。

 

「生きること、やめたい?」

 

 返事は無いけれど、でも存在と無の狭間で、彼は抗っている。

 

「でもお願い…」

 

 願うなら、彼には存在の側へと戻ってきて欲しい。だから──。

 

「解き放つのね、彼を」

 

 もうひとりのわたしであって、わたしではないわたし。総士が願って生まれた、別のわたし。

 

 織姫の言葉に耳を傾ける。

 

「今、この島は総士の器によって再び生命を選択させている。まだもう少し、寝させていても良かったんじゃない?」

 

「うん。でも、彼が外に出たがっていたから。この島の人が望むことを与えるのが、わたしの役目だから」

 

「その未来が総士の為になることを祈るわ」

 

「そうだね。きっと、良い未來に続いていると思うよ」

 

 島が騒がしくなった。楽しみだったけれど、今日はお祭りをしている暇はなさそうだ。

 

「総士の所に行くわ。挨拶もしないとならないし。あなたはどうするの?」

 

「わたしも行くよ。ちゃんと挨拶したいから」

 

 織姫と一緒に総士の所へと向かう。隣には芹ちゃんと操が居る。島のミールとクロッシングしているから総士も違和感を感じているらしい。わたしたちを見つけたら総士が歩み寄って口を開いた。

 

「何かしたのか?」

 

「ううん。わたしたちはなにも。ただ、もう一度選んで貰っているだけ」

 

「あなたの器が、もう一度生命の選択を与えている。消えてしまった生命にね」

 

「消えてしまった生命……。もう一度の選択…。そんなことが可能なのか?」

 

「生命は廻り廻ってもう一度生まれる事が出来る。そして島は居なくなった人の事を忘れたりはしない。だからもう一度生まれ変わっているだけ」

 

「……今夜は大変な事になりそうだな」

 

 わたしたちの言葉から何が起こっているのか察した総士は苦笑いを浮かべていた。

 

 そうだとしても、ここに居ることを選ぶ事は間違いじゃないと思うよ、総士。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 暗い闇と明るい光の狭間で、俺は漂っていた。

 

 存在と無の地平線。ここはそういう場所だと教えられた。

 

「総士はずっと、こんな重い物を背負っていたんだな」

 

「あいつは昔からそうだった。俺たちが何も知らない頃から、色んな事を背負ってた。翔子の時も、甲洋の時も。もっと前は将陵先輩たちの事も、蔵前の事も。あいつの親父さんの事も。あいつは苦しんで、一人で背負ってた」

 

 俺はこの場所で、もうひとりの俺と話していた。そして色々と知る事が出来た。総士が抱えていることを、やっと知る事が出来た。

 

「今もそうだ。誰もいなくならないならないように色んな事を背負ってる。解った気でいたんだ。戦いばかりの外の世界の事を知って、少しでも総士の事が解ったと思った。でもそうじゃなかった」

 

 総士は全てを知っていた。知っていたから自分を犠牲にして、全てを守ろうとした。

 

 でも今度は、本当の意味で総士を独りにはしない。

 

 その為に俺は、俺でなくなることも怖くない。

 

「お前にも島の祝福が与えられた。存在と無、生と死の循環を超える永遠の存在。世界の傷を塞ぎ、存在と痛みを調和させる者に。その力は強大だ。代わりに人としての心を失くしていく」

 

「ああ。でも総士と一緒なら平気だ。たとえ俺の心が失くなったとしても、皆が俺の事を憶えていてくれるのなら大丈夫だ。何も、誰にも、喪わせない為なら俺は、俺の生命を使う。それが俺の祝福だ」

 

 もうひとりの俺に、俺は俺の覚悟を言葉にした。

 

「その想いが世界を祝福する事を願っている。……そろそろ起きたらどうだ? 総士が心配している筈だ」

 

「そうだな。そうするよ。それと、ありがとう。色々と教えてくれて。お陰で俺は、本当の意味で総士の為に戦うことが出来る」

 

「ああ。気を付けてな」

 

 俺はもうひとりの俺に礼を言って、俺の存在は明るい光の方へと昇っていく。

 

 目が覚めると、自分が居るのがキールブロックである事が判る。俺の他にも、キールブロックには多くの人が居た。皆、一度いなくなった人達だ。

 

 キールブロックにはゴルディアス結晶が生えていた。

 

 翠色の結晶の木の下で、皆がそこに居た。

 

「一騎!」

 

 父さんがキールブロックに入ってきた。

 

 俺は父さんに歩み寄った。

 

「今、戻った。心配かけてごめん」

 

「あぁ。よく帰ってきた」

 

 俺の言葉を聞いて、父さんは安心した様だ。

 

「健勝の様でなによりだ。真壁」

 

「皆城……」

 

 俺と父さんの話しが一区切り着いたから、総士の親父さんが父さんに言葉を掛けた。

 

 この中で代表となると総士の親父さんの方が適任だろう。

 

「いったいどうして」

 

「島と、総士のファフナーの祝福だ。我々1人1人に選択を与えられた。もう一度生まれ直すか否か、とても選択とは呼べぬ物だがな」

 

「確かに、そうだな」

 

 二択に見えて実際は一択の選択肢なら選ばない人は居ないだろう。だからいなくなった人達は帰ってきた。

 

 父さんと総士の親父さんが先頭に立って皆でキールブロックを出る。ちょっとした問題はあったけれど、それも父さんと総士の親父さんの手で落ち着いた。

 

 具体的には甲洋の両親とか、新国連のスパイをしていて島に存在を消された人達だ。前科があるから査問委員会を開いて然るべき措置をすると父さんは言っていた。再発防止という面で見ても島から追放という形に落ち着くだろう。

 

 そんな事を考えながら、俺はメディカルルームに連れられた。というか戻ってきた人達皆が1度メディカルチェックを受ける事になったが、数が多いから数日に分けてやる事になるそうだ。それでも一番最初は俺だったのは、父さんと総士の親父さんがそう言ってくれたからだ。島の代表者2人の言葉とあっては反対する人は居なかった。少し申し訳なかったけど、早く総士に会いたかったから遠慮はしなかった。

 

 検査結果を待っていると病室に総士が入ってきた。

 

「総士…」

 

「……よく、戻ってきた。一騎」

 

「あぁ。ただいま、総士」

 

 総士の顔を見れて、とても安心した。

 

「おかえり! 一騎」

 

「あぁ。ただいま、来主」

 

 来主も来ていた。浴衣姿で、総士も浴衣だったから今日はお盆祭りの日だったらしい。

 

「おかえりなさい、一騎くん」

 

「おかえりなさい、一騎くん」

 

 遠見と翔子も来てくれたのか。

 

「やっと目ぇ覚ましたか、一騎!」

 

「おかえり、一騎!」

 

「ま、ちょっと寝ぼすけだったんじゃない?」

 

 剣司に衛、咲良も来てくれていた。

 

「おかえりなさい、マカベ」

 

「わ、私が言うのもなんだが。よく戻ってきた、一騎」

 

 ミツヒロとカノンまで来てくれた。

 

 あぁ、そうか。俺にはこんなにも俺の事を待っていてくれる人が居るのか。俺が守りたいもの、それが目の前にある。

 

 必ず守ってみせる。誰ひとり欠けさせやしない。

 

 

 

 

to be continued…

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