Fate/Everlasting Shine   作:かってぃー

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第4話 希望は見えず、前途は暗く

 沖田総司。幕末の京都において活躍した治安維持組織である新撰組の一番隊隊長兼撃剣師範を勤めていた人物である。その剣の実力は剣客揃いであった新撰組の中にあっても際立って高く、〝沖田は猛者の剣、斎藤は無敵の剣〟と称されていた。

 後の新撰組の仲間である近藤勇や土方歳三らとは天然理心流の道場で出会ったとされ、剣術においては局長である近藤すらも本気で立ち会えば敗北していたという。中でも有名なものは一歩の踏み込みで三度の突きを放つ『三段突き』であろう。

 しかし遥は一瞬、目の前にいる女性が本当に沖田総司かと疑った。新撰組一番隊隊長沖田総司といえば恐らくは日本において最も有名な偉人のひとりたる男性であり、それが事実として伝わっていた。

 だが、遥によって召喚された英霊は紛れもなく女性であった。顔の造作に関しては遥もほとんど同じであるから何とも言えないが、それ以外の部位が女性であることを如実に物語っていた。

 脳内を支配しかけた動揺を、頭を振って払い落とす。どれだけ考えたところで、実際そのように召喚されて実物を見た以上は何を悩む必要があろうか。そもそも自分の身体を女性に改造してしまった変人もいるのだから、最初から性別が違っていたところで驚くことはない。

 召喚して自分を見た途端に動揺した様子を心配したのか、沖田が口を開く。

 

「マスター、どうかされましたか?」

「いや、なんでもないよ。えぇと……何て呼べばいい? セイバー? それとも名前か?」

「如何様にも。私はあなたのサーヴァントですから」

 

 そう言って沖田はそれまでの引き締まった真面目な表情を崩し、ふわりと柔和な微笑を浮かべた。場違いにもそれが恥ずかしくなり、遥が頬を赤くして顔を背けた。

 サーヴァントを召喚したのは良いものの、遥はどうやって沖田とコミュニケーションを取れば良いのか分からなかった。それは遥が対人経験、それも女性とコミュニケーションを取るということに慣れていないからであった。

 今ではマシュとも気兼ねなく話ができるようにはなったが、カルデアに来たばかりの時は距離感を計りかねていたところがあった。ごく普通の少女と相対してそうであるのに、歴史に名高い偉人とどう会話すればよいのか。

 しばらく考えた結果、遥が左手で頬を掻きつつ右手を差し出した。それが何を意図してのことか分からず、沖田が疑問の滲む視線を向ける。

 

「一応、握手できたらと。ホラ、信頼って大事だろ?」

 

 遥がそう言うと、沖田は予想していなかったと言うかのような表情を浮かべた。むべなるかな。帝都において沖田を呼び出したマスターとは異なり、遥は純粋な魔術師である。友好的に接してくるとは思わなかったのだろう。

 大半の魔術師にとって、使い魔とは道具である。それはいかな英霊とはいえ変わらない。英霊がサーヴァントとしてこの世に現界するのは依り代とマスターなどから供給される魔力が必要だ。故に魔術師として通常の思考ではサーヴァントとは下僕という認識になるだろう。

 だが、遥はそう考えてはいなかった。それは遥が魔術師としては異端に属する者であるということではなく、一般人に近い極めて()()()な価値観を持っているという証左だった。

 確かにサーヴァントとは魔術師からの魔力供給がなければ現界していられない存在だが、そもそも魔術師はサーヴァントに助けを求めている立場である。そうでなくとも、彼らは故人であるだけで遥たちと同じ人間、或いはそれに近いものだ。道具ではない。

 沖田は〝信頼は大事〟という遥の言葉に嘘はないと分かったのか、遥の手を握り返した。初めて触れる女性の柔らかな手の感触に遥は気恥ずかしさを覚えたが、見栄を張ってそれを悟られるまいと平静を装う。

 

「それにしても……酷い有様ですね。これからどうします?」

「この街の何処かに俺の仲間がいる筈なんだ。先ずはソイツらと合流しよう」

 

 マシュはともかく、ほとんど話したこともない立香を含めて〝仲間〟という言葉が簡単に自分の口から滑り出たことに遥自身が驚愕する。しかし、話したことはなくともマスター候補生である以上、定義上は仲間と言って間違いは無かろう。

 そもそも、瀕死のマシュをあれだけ慮ることができる人間が悪い人間である筈がない。少なくとも、それは死に達観している()()()魔術師ではあり得ない行動だ。48人目は一般枠の、それも数合わせ枠だというがかなり好感の持てる人間が来たようだった。

 立香たちと合流する、とはいうが、いくら遥にとって冬木市が勝手の知れた街だとはいえそれなりの広さがある中から手がかりもなしに探し出すのは至難の業だ。かといって、当てがある訳でもない。

 思えば、特異点を攻略するとはいっても何か手がかりがある訳でもないのだ。いくら逃れられなかった仕方のない強制レイシフトだったとはいえ、かなりの少人数での特異点攻略などどれだけ時間がかかるかも分からない。

 遥が勝手に立香とマシュだけがこちらに来ていると判断しているのは、既に他のマスター候補生とオルガマリーの生命は失われているものと達観しているからだ。コフィンに覆われていた候補生たちはコフィンを起動させれば何とかなるかも知れないが、生身で爆発の直撃を受けたオルガマリーの生存は絶望的だ。

 そう考えると、レイシフトルームで遥が発見した無惨に五体が泣き別れした焼死体はオルガマリーのものだったのかも知れない。確証はないが、あの部屋でコフィンにも覆われずに身体を晒していたのはオルガマリーだけだ。

 勝手に遥はそう結論付け、眼を伏せる。遥は瀕死の人間を見るとトラウマが蘇ってきてしまうという悪癖があるが、死体となってしまった人間を見ても何とも思わないという異様な性質があった。しかし、それでも冥福を祈るだけの常識は持ち合わせている。

 そうしていると、遥は沖田が心配そうな視線で遥を見ていることに気付き、半ば自動的に薄い笑みを浮かべ、強引に話題を変えた。

 

「そういえば、俺からは名乗ってなかったよな?」

「え? えぇ、そうですね」

 

 脈絡のない話題の変更に、沖田が動揺したように返事をする。しかし遥はそれに気づいていないかのように少し格好つけて名乗りをあげる。

 

「俺は夜桜遥。呼び方はマスターでも呼び捨てでも、なんなら渾名でもいい。仲間内には俺を『ハルさん』と呼ぶ奴もいるな」

「ハルさん、ですか……では、私もそのように呼ばせて頂きますね」

 

 微笑しながらそう答える沖田を見て、遥は『自分はハルさんというイメージなのだろうか』などと関係の無いことを考えていた。〝ハルさん〟という渾名は何処となく優しいイメージがあるが、遥の認識上では遥自身は優しいどころか非情で冷酷なきらいさえある魔術師であった。

 しかし、友好的に接してくる相手を無下にすることもできまい。今までまともに友人と言えるような関係の人間をマシュとロマニを含めても片手で数えられるほどしか持っていなかった遥だからこそ、それを強く思う。

 遥にとってマシュはほとんど妹と同じ認識であったが、沖田に対しての認識はそうではなかった。女性とほとんどコミュニケーションをした経験のない遥は今にも声が上ずって手汗が噴き出してしまいそうだった。手汗に関しては、炎のせいで気温が高まっているのが救いだろう。

 改めて低すぎる自分の対人能力に遥自身は呆れ、ため息を吐く。その時、左手首に装着していた通信装置が鳴動し、この場にはいない筈の人物の声が流れ出た。

 

『あ、やっと繋がった!! 遥君、無事かい!?』

「ロマンか! あぁ、俺は無事だ! そっちは、カルデアはどうなってる!?」

 

 通信によってロマニと相互の生存を確認して安心したのも束の間、遥が緊迫も露わにロマニに問い質す。爆発が起きたのはレイシフトルーム。丁度管制室の真下だ。候補生たちだけでなくオペレータなどにも被害が出ているだろう。

 姿は見えないが、遥はロマニの表情が友人の生存を確認して安心した人間のものから、最悪の状況を認識した責任者のそれへと変わったのを感じ取った。その緊張が遥にまで伝播する。しばらくして、ロマニが状況を説明し出した。

 ファースト・オーダー直前に起きた爆発によってカルデアスタッフの過半数以上が死亡。生存が確認できるのは20名足らず。カルデア所長〝オルガマリー・アニムスフィア〟と技師〝レフ・ライノール〟は行方不明。従って、暫定トップのロマニが所長代行を担っている。

 コフィンなしでレイシフトに巻き込まれた立香とマシュ、遥のうち存在を確認できたのは遥が最初。冬木の霊脈の上に出てきたのが幸いしたのだろうか。他のマスターはコフィンに格納されたままだったために安全装置が作動しレイシフトは免れたものの、全員が瀕死の重傷。特にAチームが酷いらしい。

 予想はしていたことだが、かなり絶望的な状況だ。まだカルデアのことを説明していない沖田には何のことやらといった内容だろうが、かなり不味い状態であることは察したらしい。一気に沈鬱になった雰囲気を和らげるべく、ロマニが話を振る。

 

『それにしても、本当に無事でよかったよ。さすがの君でも、今回ばかりは危なかったんじゃないかい?』

「む。俺を舐めるなよ、ロマン。コフィン越しならあの程度の爆発は耐えられるさ」

 

 揶揄うようなロマニに対して不機嫌そうに遥が言葉を返す。コフィン越しでも瀕死の重傷を負っている他マスターのことを考えれば彼らを莫迦にしているともとれる言葉だが、事実であるだけに遥の言葉を否定することはできなかった。

 遥が礼装として着用している黒づくめのチェスターフィールドコートには、夜桜家に伝わる封印魔術を応用した防護処理が施してある。一見するとただのコートだが、その防御力は歴史に名高い城塞にすら匹敵するだろう。過去には死徒の攻撃を受け止めたこともある。

 恐らく〝ダヴィンチ〟に頼めば総合性能的にはより高性能のものを仕上げてくれるだろうが、これでも遥に作成可能な最強の防御であった。

 それからも互いの状況説明を続ける遥の横で、放っておかれた形となっていた沖田が会話に割り込む形で声を掛けた。

 

「あの、その声だけの方は……?」

『ああ、名乗るのが遅れてしまったね。ボクはロマニ・アーキマン。遥君の上司で、友人だ』

 

 そうロマニが名乗ると、沖田は何とも複雑そうな返事を返した。その様子から見るに、沖田はあまりロマニに対して好印象を持っていないようだが、本人にもその理由は分かっていないようだ。その様子に、遥は僅かに違和感を覚える。

 ロマニ・アーキマンという男は根暗で臆病者(チキン)だが、それでも見ず知らずの誰かに嫌われるような男ではない筈だ。そんな男が、サーヴァントから本能的な警戒を抱かれているというのは異様でしかない。

 推理は遥の得意分野だが、それでも手掛かりのないものを解明することはできない。手掛かりのない状態で原因を考えても、それは推理ではなく妄想にしか成り得ない。考えても無駄なことだ。

 それよりも優先すべきは立香たちとの合流だ。レイシフト前は近くにいたにも関わらず遥だけが別地点に放り出されていたことを考えるとふたりも遠くに放り出されていることも考えられる。そう考えた時、半ば無意識に言葉を漏らしていた。

 

「足が欲しいなぁ。どんな悪路でも楽々走れて、それも滅茶苦茶速いヤツ」

『あるワケないだろう、そんなモノ。ダヴィンチちゃんなら造れるかも知れないけど』

「だよなぁ」

 

 ロマニの突っ込みで現実を認識した遥が深いため息を吐く。いっそのこと、手にした神剣で街を一面焦土化させてしまおうかとも思ったが、それでは万が一ふたりが近くいた場合、諸共に焼き払ってしまうことになる。

 遥の持つ宝具たる神剣は、第一拘束を外した状態で英霊の宝具の格に当てはめるならばランクEXの対城宝具に分類される。第二、第三の拘束を外した時にはどれほどのものになるかは遥にも分からない。

 日本の神代においてとある神霊が選定の獣を打倒し、その体内から得た神造兵装の真作。現代にもそれとされるものは伝わっているが、それが神造兵装ではあっても遥の持つ宝具に似せて作られた、神造兵装の贋作の神造兵装と知っているのは遥だけだ。

 さらに鞘も宝具、それもひとつでふたつの真名を有する宝具だ。魔術師とはいえ生身の人間で3つの宝具を持つという規格外だが、遥にそれを誇る気はなかった。

 バイクかブルドーザーでもあればいいんだが、と遥がぼやくも、何を言ったところで詮無き事。頼れる移動手段は自らの足だけである。

 

「それで、ロマン。俺はこれからどこへ向かえばいい? 当てもなく歩くのは流石に御免だぞ」

『そうだなぁ……とりあえず、近くのもっと高位な霊脈に向かって欲しい。立香君とマシュはボクから連絡がつき次第伝えておく。場所は――』

「言われなくても分かる。ここは俺の出身地だぜ?」

 

 そう。冬木市は遥の生まれ故郷。どれだけ荒廃していようと、遥が自分自身が生まれ育った街の構造を忘れる筈もない。2004年という、()()()()()()()()()()()()()()()()。良くも悪くも明確に覚えている。

 冬木市の代表的な霊脈と言えば、やはり第一に挙げられるのは円蔵山の大空洞〝竜洞〟だろう。他には『遠坂』や『間桐』の屋敷、冬木教会などが高位の霊脈に当たる。

 教会、というと遥の脳裏にはひとりのシスターの姿がよぎる。高校卒業後に世界を回っていた時に出会った、〝被虐霊媒体質〟なる体質を持って生まれたドSなシスターだ。彼女が祓おうとしていた悪魔モドキを遥が物理的に排除してしまった後に何故か付き纏われたが、今はどうしているのだろうか。

 故郷にいるためか気を抜けば過去の方面に向かってしまいそうな思考を頭を振って振り落とす。過去を悼むのは個人の勝手だが、未来を守るためのこの戦いで過去を悼んで時間を浪費するのは時間の無駄でしかない。

 

「俺たちがいるのは深山町。冬木大橋近く。違うか?」

『正解だ。そこから最も近い高位の霊地は……』

「遠坂の……いや、今になっては〝元〟遠坂の屋敷だな」

 

 そう言って、遥はちらと明後日の方向を見遣る。視界の先、崩壊した建物の間から見えるのは冬木大橋の鉄骨だ。この距離からならば、あの橋で大声で叫ぶ声も鮮明に聞こえるだろう。

 いっそのこと鉄骨に昇って魔術で拡声して叫べば立香たちにも聞こえるのだろうが、その暁には遥の身体は骸骨たちの矢で蜂の巣のされ、足元には敵性体が蟠るという見るも悍ましい光景が出来上がることだろう。

 そんなことになる案は即却下だ。仲間を呼ぼうとして敵に()られるなど愚の骨頂。やはり立香たちのことはロマニに任せるべきだ、と判断する。

 

「じゃあ俺たちは話した通りに動く。何か異常があれば連絡するから」

『了解。こちらからも、立香君たちとコンタクトが取れたら連絡するよ』

 

 それだけ言うと、カルデアとの通信が切れた。取り敢えず、行動の方針は決まった。ならば後はその通りに行動するだけだ。

 ひとつため息を吐いて感情のスイッチを切り替えると、遥は沖田の方に向き直った。沖田はそこで、サーヴァントとして遥の指示を待っている。その姿を見て、遥の胸中にひとつの悟りめいたものが生まれた。

 いくらアクシデントでレイシフトしてしまったとはいえ、その身は既にサーヴァントを統べるマスターなのだ。これまでのように勝手気ままに世界を回り、自分ただひとりの命だけを掛けて魑魅魍魎と戦う世界からは既に脱した。

 これからは自分だけでなく仲間の命までを掛け金として賭けつつ、その賭けに勝つしかないのだ。現時点で発見されている特異点はここだけだが、他にも特異点が存在しないという証拠はどこにもないのだから。

 もう一度ため息を吐いて、吸い込んだ空気と共にその思いを全身に浸透させる。決意も新たに目を開き、遥は沖田に指示を出した。

 

「とりあえず、さっき言った通りに高位の霊地に移動して仲間と合流する。移動中も敵性体は襲ってくるだろう。警戒を厳にして移動するぞ」

「承知しました」

 

 そう沖田に指示を出しながら、遥が鞘から長刀と抜刀し、さらにホルスターからS&Wカスタムを取り出した。敵性体に奇襲を仕掛けられた場合にすぐに対応するためである。

 目的地に向けて移動しながら、時折見かけた骸骨兵や竜牙兵、蜥蜴兵を見付け次第射殺していく。稀に遥が撃ち漏らしたものが出てくるが、それが遥に攻撃を加えることはない。遥たちの存在に気付いた敵性体は、接近してくるものから順に沖田の剣によって沈められる。『病弱』スキルの発動を警戒して何度か遥自身が出ていくが、それでも殺せない敵はいなかった。

 遥が沖田を召喚してから左程時は経っていないが、彼らの連携は非常に高度なものとなっていた。それは遥と沖田の精神性がそれなりに近いこともあろうが、マスターたる遥も刀使いであるが故に沖田の戦い方を分かっていることもあった。

 そうしてしばらく歩き、もう少しで目的地に到着する――しかし、その直前に耳を劈くような悲鳴がふたりの耳朶を打った。

 

「!? ――()()()()!」

「分かってる!」

 

 悲鳴の発生源と思われる場所はここからほど近い場所のようだった。悲鳴を聞いてしまった以上はそれを無視することもできず、サーヴァントたる沖田が先行していく。

 いくら魔術師としての常軌を逸した能力を秘める遥とはいえ、英霊の全速力に追随できる筈もない。一旦足を止めて体内に煉獄を展開し、さらに「――加速開始(イグニッション)」という呪言によって煉獄内部の時間流を外界から切り離し、2倍速に加速する。

 体内に展開した煉獄が総身を焼き焦がし、世界の修正力が遥の体内を蹂躙する激痛に耐えながら遥が全速力で駆ける。並行してS&Wに装填していた宝石弾を別な特殊弾であるルーン弾へと交換する。これは銃弾にルーン文字を刻み、敵の体内でそれを起動させるものである。

 しばらく走った後、沖田が急停止して遥を庇うようにして立った。それを何か尋常ならざる事態を目の当たりにした合図だと察し、遥が沖田の背後、少し離れた場所で停止する。

 そこからでも感じられる。沖田の視線の先。そこに立っている死鎌(デスサイス)めいた鎌を膝から崩れ落ちた女性に突き付けた黒ローブの女――それが放つ、法外な魔力の濃度。

 

「まさか、サーヴァント……? いや、それよりも……」

 

 そう呟きながら、遥は黒いローブの女からその傍らで崩れ落ちた女性に視線を移した。遥にとってはここに敵性サーヴァントがいることよりもむしろ、この特異点に〝彼女〟がいることが信じられなかった。

 遥の目の前ではいつも自信と不安の光が宿っていた瞳は完全に恐怖に支配され、しかし遥たちの来訪に気付いて僅かに希望の色が見え隠れしている。優美な白銀の髪は僅かに乱れてはいるが、暴行は受けていないようだった。

 

「なんでここにアンタがいる……」

 

 忌々し気、ともとられかねない声で遥が呟く。だが、それも致し方ないことであった。何故なら、そこにいたのは遥が死んだとばかり思っていた人物――オルガマリー・アニムスフィアだったのだから。




高校卒業後は世界を巡っていた遥。しかし定期的に日本に帰ってきては撮り溜めたアニメや特撮を一気見していた模様。
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