Fate/Everlasting Shine   作:かってぃー

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第86話 recognition/operation

 名は体を表す、という言葉がある。これは読んで字の如く名前はその物や人の内実、或いは実体を表すという単純な意味の言葉であるが、単純であるが故にただの諺だと切り捨てられない真理があると言えよう。

 そう。名とは万物にとって、最も単純明快かつ強力な定義なのだ。中には名前など記号に過ぎないと言う者もいるが、記号だからこそ重要なのである。魔術や呪術においては対象の名前が分からなければ行使できないものも存在するのがその証左と言えよう。

 分かりやすい例示をするならば、変異特異点αにおいて遥らの前に立ち塞がった〝この世全ての悪(アンリマユ)〟。あれは元は神秘には何の関わりもない青年が生贄として本来の名を剥奪され、代わりにゾロアスター教における悪神の名を押し付けられた果ての姿だ。つまり名というものには、条件さえ整えば人を神に近い領域まで至らしめる程の効力がある。

 そして、それはその逆もまた然り。であれば、クシナダの願い――人としての名が欲しいという請願を聞いた遥の反応が一拍遅れてしまったのも、無理からぬ事ではあろう。だがいつまでも黙っている訳にもいかず、遥が絞り出すかのように問いを漏らす。

 

「本気で言っているのか……?」

「はい。本気です。冗談ではありません」

 

 あくまでも真っ直ぐに遥の目を見つめ、答えを返すクシナダ。その目に宿る光にも嘘の色合いはなく、むしろそこには強い覚悟の気配があった。故にこそ遥は下手に二の句を継げず、再び言葉を詰まらせる。

 恐らくクシナダの言う〝人としての名が欲しい〟という言葉が意味するのが完全な改名ではない事は、遥にも察しが付いている。〝クシナダヒメ〟という名は彼女が両親――〝足名椎命(アシナヅチ)〟と〝手名椎命(テナヅチ)〟から与えられたものだ。彼女がそれを簡単に捨ててしまえるような親不孝行者ではない事は、神話が証明している。加えて、今の彼女には人としての名が必要な理由――書類データの偽装等――がある事も、遥は理解している。

 しかし、である。クシナダの気配にはただの偽名を必要としている以上の〝何か〟がある。ともすれば本当に今の名を改めてしまいそうな何かが。そんな在り得ない想像をしてしまったがために、遥は容易に返答ができずにいるのだ。

 情けないとは彼自身分かっている。だが、彼は剣士であると同時に魔術師でもあるのだ。だからこそ名前がどれだけ重要なものであるのかをよく理解している。躊躇いを見せるのも、致し方あるまい。

 名の重複。或いは、重ね合わせ。改変程ではなくとも、それは彼女の存在と概念に少なくない変質を与えるだろう。ただでさえ彼女は神霊という極めて変質しやすい存在を基盤としているうえ、現在は泥の呪的作用で人間に近い程度にまで零落して肉体を得ているという不安定な状態だ。そんな中で人間としての名を与えてしまえば、それは。

 

「人間の名を得る……それはつまり、()()()()()()()()()()()()()って事だ」

 

 神はどうあっても完全な人間にはなれない。それは他ならぬタマモと遥が証明している。遥はタマモのように妖怪として顕現してこそいないものの、それは誕生経緯の特殊性故であってタマモのように直接本体から分離していればそれ相応の結果になっていただろう。

 クシナダもそのようになるとは、遥は言うつもりはなかった。彼女が零落した経緯は遥のそれとも、タマモのそれとも違う。この先彼女がどうなるかは完全な未知であって、勝手に決めつける事はできない。

 ただひとつ確かな事は、人間としての名前を得てしまえば彼女は今以上に半端な存在になるという事。人間であり、神霊であり、或いはそのどちらでもない。現人神と言えば聞こえは良いが、その実態はそんなものだ。

 

「それでも……お前の望みは変わらないのか?」

「元より承知の上です」

 

 即答であった。その覚悟の声音には一切の動揺も虚飾もなく、彼女の思いを真っ直ぐに遥へと叩きつけてくる。いや、遥ももう分かってはいたのだ。彼の問いが極めて無粋で、最早問うまでもない事は。

 それなのに、何故問うたのか。保身か、或いは無粋か。そのどちらでもあるまい。簡単に言えば、彼は臆病なのだ。自分にとって大切な存在が、自分の知らないものに変わってしまう事、或いは自分の手の届かない場所に行ってしまう事に、根源的な恐怖を抱いている。彼がよく言う愛した人々を守りたいという言葉も、その恐怖が少なからず影響しているのは否定できまい。

 それを自覚し、遥が覚えたのはひどい薄ら寒さ。自分はこれほどに弱く、浅ましい人間だったかと。こんな傲慢で独善的な男だったかと。そんな彼の内心を知ってか知らずか、クシナダが口を開く。

 

「……遥様、貴方は……この戦いが終わった後、どうするおつもりですか?」

「え……?」

 

 唐突な問いであった。全く予想だにしていなかったそれに虚を衝かれるとともに、遥は思う。そんな事は、全く考えていなかった。今はただ生きることだけ、戦う事だけで精一杯で、その後の事など殆ど頭にはなかったのだ。

 或いは、無意識ながらも考える必要性自体を感じていなかったのかも知れない。遥は『不朽』である事を運命づけられた身で、殺されるか自死を選ばない限りその生は永久に続く。それこそ、人理修復を終えた後もだ。それは無限の孤独を約束されているも同然で、空虚な自由のみが広がっている時間だ。何をするにも彼自身の自由。代わりに、そこに意味や希望はありはしない。そんな時間について、考える方が無駄というものだ。

 だが今こうして改めて問われ、思う。戦いが終わり、カルデアにいる必要性がなくなった時に果たして自分はどうするのか、何がしたいのか。――まるで分からない。例えばオルタに世界を見せてあげたいという願いも永続ではなく、長期的に見た時のヴィジョンが彼にはまるでないのだ。遥のような人外の居場所がない、いや、必要とされない世界で彼はどう生きるのか。

 

「分からない。したい事はあるが、どうするかなんて考えた事もなかった。……お前はどうなんだ?」

 

 自然にその問いは遥の口から出ていて、それ故にその問いが内包する意味に気付いた時には既に遅きに失していた。彼女に未来について問うなど、それは彼女を以前の遥と同じ孤独の中に引きずり込もうとしていると同義であるというのに。けれど彼女はあくまでも微笑みを浮かべたままで、答える。

 

「私はありますよ。やりたい事も、どう生きたいかという希望も」

 

 そう言うや否やクシナダは遥の手を取り、両の掌でそれを優しく包んだ。そうして伝わってきたのは彼女の体温、そして心拍。平静に見えて、その実緊張しているのだろうか。遥に伝わってくる心拍は聊か強く、かつ速い。だがそれは同時に、彼女が確かに生きているのだという認識を遥に与えた。

 

「私は……貴方と共に生きたい。貴方と同じく人として、この世界を見たい。隣に在って、貴方の居場所になりたい。……傲慢で、独善的かも知れませんが、それが私の思いです」

「っ……!!」

 

 それは告白と言うにはあまりにも直球な愛の吐露であった。そう、愛だ。恋などではない。逃避も誤魔化しも、鈍感や喪失すらも許さない、想いの具現であった。それを前にして、遥が目を見開いて硬直する。

 遥は知らない事だが、嘗てエミヤとタマモは同じ推測をしている。遥は幼くして両親を喪い、そのために己の心を守るべく両親から愛されていという事実を記憶の奥底に押し込めていて、だからこそ彼は他人から向けられている愛に気付けないのだと。そして、そんな遥の歪みを正せる者がいるとすれば、それは長所も短所も、汚点も美点も全て愛せる者だけだろうとも。

 その推測は正しい。現に今、遥はクシナダから向けられているこの上ない愛を強く感じていて、歓喜以上に混乱していた。さもありなん。彼は唯一愛してくれていた人達との思い出を押し込めているが故に、他人からの愛に対する適切な処方を知らないのだ。

 しかしそんな混乱した頭でも、理解できた事はある。彼女は人理修復が終わった後も遥の隣にいたくて、故にこそ人としての名が必要なのだ。神霊でもなく、人間でもなく、〝遥と同質のモノ〟として彼の居場所になってくれようとしている。それはとても、言葉にできない程幸せな事なのではないのかと、遥は少しずつ平静を取り戻してきた頭で思った。

 けれど、簡単に受け入れられるものではない。遥個人が受け入れたくないというのではない。ただ、遥は己の手でそう在れたかも知れない人々の命を奪っている。彼自身と半ば同じ境遇の子供を生み出している。そんな中で、彼だけが誰かと共に在る事を享受するなど許されない。許される筈がない。それはある意味で自縄自縛とも言えよう。

 けれど、彼女が今のように在る事も遥は否定したくはなかった。元はと言えば彼女が受肉してしまったのは遥の責任――遥の認識の上では――であり、その先にある彼女の選択を否とする権利など、彼にはないというのもある。尤も、仮にあったとしても彼に取り得る選択など、その彼女の選択を尊重する他にないのだ。たとえそれで今以上に責任を背負う事になろうとも、その時の事はその時に考えれば良い。

 

「あぁ、分かったよ。人としての名前……俺で良ければ、考えよう」

「……!! ありがとうございます!!」

 

 遥の言葉に花が咲くような笑顔を見せるクシナダ。そんな彼女につられるようにして遥も僅かに笑みを覗かせる。その表情は満面の笑みではないけれど、少なくとも先のように仄暗い色合いは何処にもありはしない。

 責任について言うならば、これもまた遥の責任という事になるのだろう。クシナダの存在と、受肉したことで得た人生を歪める責任だ。だが、それについて考えるのはもう止めたのだ。放棄したのではない。その責も、他の責も、これからひとつずつ果たしていけば良い。

 考える。当然かもしれないが遥は人の名前を考えるなど初めてのことで、参考資料もないからこれが正しいのかなど分からない。それでもそれを言い訳にしておざなりに答えを出せる筈もなくて、それ故にその声には何処か自信無さげな気配があった。

 

「……〝ミコト〟。命と書いて、ミコトってのはどうだろう」

 

 (ミコト)。それは何も苦し紛れで捻り出したものではなく、遥なりの考えがあってのものだ。第一に諸説あるものの命とは神霊に対する尊称である事。第二に彼女が本物の命を得た存在である事。以上二点から、遥はその名を考えたのだ。

 安直と言われても仕方がないと遥自身自覚しているのか、彼の視線はまるで様子を伺うかのような気配を帯びている。その先でクシナダは何度か遥が提案した名を呟くと、満面の笑みを浮かべた。

 

「はい!! ミコト……今より私は〝櫛名田比売〟であり、〝夜桜(ミコト)〟です!!」

「え、よざ――」

 

 夜桜!? と驚愕の声をあげようとした遥はしかし、すぐにそれが野暮だと気づいて口を噤んだ。別に男女の苗字が同じだからとて必ずしも()()()()()()になる訳ではないし、苗字がなければ不便ということもある。

 だがそれ以上に――その名を受け入れると同時に明らかに霊格が低下しているのが分かって、それでも尚幸せそうな彼女の姿に、何も言えなくなってしまったのだ。

 


 

 ――人理焼却の黒幕の手によるものと思われる次なる特異点の座標が特定された。遥の許にその連絡が届いたのは病室でのクシナダとの一件から数日後、経過観察の為の入院が終わり、自室に戻った翌日の事であった。

 新たな特異点の発見。それは即ち、再び人理を焼却せんとする敵手らとの戦いが始まるという事である。だが長い療養のために遥の身体は未だ鈍ったままで、彼としてはもう少し時間が欲しい所ではあったが、そんな事は敵には関係のない話だ。我儘を言ってはいられない。

 戦闘時の基本装備である礼装の黒いシャツとロングコートに袖を通すと、僅かな違和感があった。以前の特異点ではオルテナウスとそれ専用のアンダースーツを着ていたからか、或いは神核の影響で体格が変わったのか。どちらにせよ頓着しているような暇もなく、早々に自室を出て行く。すると丁度すぐ近くの部屋から出てきた立香と目が合った。

 

「よう、立香。お前もこれから管制室行くんだよな?」

「うん。新しい特異点が発見されて、マスターのオレが動かない訳にはいかないからね。

 ……あれっ、遥、左耳のソレ、何?」

「左耳? ……あぁ、コレか」

 

 立香に問われ、遥が自らの左耳、正確にはそこにある耳飾りに触れた。白い曼殊沙華――リコリス・アルビフローラを模したそれは以前の遥にはなかったもので、しかし遥ははぐらかすように『ちょっとな』と言葉を濁した。

 何か含みのありそうな遥の答えに立香は首を傾げるも、別にそれは緊急性のある話ではないとすぐに切り捨てて管制室へと向かう。サーヴァントらまで収容するスペースはないため、彼らは自室待機だ。

 そして、管制室。シバとカルデアスを用いてより詳細な観測を試みているのだろうか、職員らが忙しなくキーボードを叩いている光景も最早見慣れたものだ。そうしてふたりの姿を認め、ロマニが口を開く。

 

「来たね。それじゃあ、ブリーフィングを始めようか」

 

 そう言うやロマニは手元の端末を操作し、彼の背後にあるコンソールから立体映像の地球儀が浮かび上がる。通例、特異点の発生位置は赤く発光していて、マスターらの視線は自然とそちらに向いていた。そうして、明らかに奇妙な様子にふたりが眉を顰める。

 明らかに特異点の該当域が大きい。今までの特異点もフランス全域であったり古代ローマ全域であったりと相当な大きさであったが、それはその国の歴史そのものに大きな狂いが生じていたからだ。

 だが、今回のそれは聊か様子が異なる。特異点の発生座標を示す発光の位置が特定の国や地域ではなく、おおよそ人理定礎への関連が薄そうな場所、北半球の大西洋ほぼ全域であったのだ。その時代を見て、遥が納得半分疑念半分の呟きを漏らす。

 

「1573年……大航海時代か? だが、この年にヨーロッパで目立った出来事なんてあったかな……」

「まぁ、大航海時代はそれ自体が人類史にとって重要な時代だからね。別に特異点化しても不思議はないさ。この特異点の異常性はそこじゃなくて……」

 

 そこで言葉を区切り、再び端末を操作するロマニ。するとその背後のホログラムが動き、表示が切り替わった。シバにより観測された、特異点内部の平面地図。しかしそれは大半がノイズに覆われ、辛うじていくつかの小さい島の存在から広域が海に覆われているのが分かるのが精々であった。

 この特異点――第三特異点の異常性とは即ち、外部から中の様子が全くと言って良い程分からない事にある。今までの特異点もその全域が詳細に分かっていた訳ではないとはいえ、今回のそれは確かに異常と言えるものだ。職員らが忙しく動いているのも、どうにかこの不明領域を観測するためなのだろう。

 そこまで現状を把握し、立香がふむと唸る。内部の地理も分からず、特異点の発生要因と成り得る具体的な出来事も特になし。判明しているのは大航海時代の只中であるというその一点。これでは事前にある程度攻略のプランを立てておくというのも難しいと言わざるを得ない。立香の魔眼も、そもそも時間軸が異なる場所まで視れる程の性能はなく、現状、全く手詰まりと言わざるを得ない。

 

「今までも大変だったけど、今回も一筋縄ではいかなそうだね。初動から何も分からない」

「そうだね。ボクたちも全力を尽くして観測を続けるけど、最悪……いや、高確率でこのままレイシフトしてもらうコトになると思う。それは承知しておいてほしい」

 

 ロマニの言葉に頷きを返すマスターたち。事前情報がないままの作戦行動がどれだけ危険なのかは彼らも十分に承知しているが、だからとて攻略を先延ばしにできる訳もない。そもそもとして情報がないというのはスタッフの怠慢などではなく努力した結果なのであり、それに文句をつけるのはお門違いというものだ。

 しかし、理由はどうあれ情報がない状態というのが危険である事に違いはない。実働隊である立香らはそれ相応に準備をしてから臨む必要性があるだろう。携帯する物資の選別から霊基強化に至るまで、全てにおいて万全を整えなくてはならない。

 そんな状況の中で、最も大きな不安要素は遥の体調だろう。いくら経過観察入院中は何事もなく、身体機能の殆ど元通りに回復したとはいえ、彼が一度死の淵まで追い詰められたのは事実なのだ。加えて長時間寝たきりだったのだから、調子が万全である筈もない。そんな立香とロマニの視線をどう受け止めたのか、遥が少々おどけた声音で言う。

 

「1日……いや、2日くれ。万全に仕上げてみせる」

「医者としてはもっとゆっくり仕上げて欲しいんだけど……でも、悠長な事を言ってもいられない。レイシフト決行日は、遥くんの調整やその他の準備にかかる時間も考慮して4日後。それで構わないかい?」

「オレは大丈夫。遥は?」

「問題ない」

 

 即断である。先に示した期限までに万全を取り戻せる自信があるのかとも思った立香だが、すぐにそれを否定する。遥の事だ、恐らく自らを限界まで追い込むかのような勢いでリハビリとしてのトレーニングに励むつもりだろうと、立香は確信する。

 彼個人の思いとしては、遥は病み上がりの身体なのだからもっと安静にして欲しくはある。しかしこうしている間にも人理の終焉は刻一刻と迫っているのだ。それ故にあまり余裕をもって行動しようがないというのも理解している。少々複雑な思いはあるが。

 とはいえ、遥は優れた剣士だ。いくらリハビリにしては幾らか過激なトレーニングをするつもりではあっても特異点攻略に支障を来すような真似はしないだろう。ならば問題はあるまいと、立香は己を納得させた。

 

「それで……これは遥くんだけだけど……一緒にレイシフトするサーヴァントは、どうするんだい?」 

 

 半ば躊躇うかのような声音であった。だが、それも致し方ない事でもあろう。変異特異点γに纏わる遥の環境変化について、ロマニはよく知っている。しかし遥は既に問われることが分かっていたかのように、至って平静な様子で答える。

 

「俺の班は沖田、エミヤ、姉さん(タマモ)、オルタ、切嗣(アサシン)と俺の6人でいく」

「良いのかい? それは……」

 

 そこから先の言葉はない。しかし、ロマニが遥に対して問いたい事が何であるかは最早考えるまでもないだろう。それが分からない遥ではなく、そもそもそこを考慮していない彼ではない。『もう決めていた事だ』と、それが彼の答えであった。

 イリヤ達3人を外す選択については、ロマニや立香も異論はない。彼女らはまだ子供だ。変異特異点γでは共に戦ったとはいえ、本来なら鮮血の生臭さも悪意の鋭さも知らず平和の内に生きるべき彼女らを再び戦場に立たせるというのは、彼らはしたくはなかった。

 しかし、クシナダは別だ。彼女が遥の召喚に応じたのはガイアの後押しがあったといえど最大の要因が〝遥の力になりたい〟という思いだ。そんな彼女をチームから外すというのは、そも思いを無下にしているとも取れる。

 遥とて、それは分かっている。だからこそ、今回のメンバーから彼女を外したのだ。零落した身体に未だ適応しきっておらず、その肉体での戦闘理論を確立できていない彼女が戦場に立てば死は必定であり、故に今は退いてもらったのである。大切な仲間に無理をさせてまで死地に赴かせる程、遥は非情ではない。

 その遥の判断に対し、ロマニと立香は思う所がないと言えば嘘になろう。だが、仲間と大切に思っているのは彼らも同じだ。故に、何も言わない。クシナダの思いは別にして、彼らの心情だけで言えば遥と同じ思いであるから。

 

「……分かった。ボクはキミの判断を尊重するよ。

 では、レイシフトの決行は4日後、α班6名とβ班6名の計12人で開始する。決行時間はカルデアスやシバの調整が済み次第連絡するから、10分前には全ての準備を整えてコフィン前に集合すること。いいね?」

「了解!!」

 

 ロマニの言葉に対し、同時に返事をするマスターたち。ここに、第三特異点攻略作戦は開始された。




 次回からオリ鯖兼オリキャラちゃんを地の文で『クシナダ』表記にするか『ミコト』表記にするかはまだ決めてません(爆)
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