あれを全員配布とは、運営太っ腹ですね~。
「それ以上の狼藉は見過ごせないわ。――そこまでよ」
少女は青年をそう咎める。
(あぁ、面倒事になった)
青年はこちらを睨み付ける少女を見て、そう思わずにはいられなかった。
(さて、どうするか。逃げるか、それとも戦うか)
青年はどう対応するかを、2つ考える。
(いや、ダメだな。逃げたら追いかけて来そうだし、戦おうにも後ろのやつが邪魔すぎる)
青年はどちらも否定する。
青年が逃げたら、きっと諦めることなく追いかけて来るだろう。青年はいまだにこちらを睨み付ける少女の目を見てそう決め付ける。
戦うにしても、少女だけならともかく、後ろにいる得意気な顔をしている灰色の猫が邪魔になる。あの猫は強いと青年の勘が告げている。
「何の事だ?」
取り敢えず、青年はしらをきる。
「ふざけないで。今ならまだ取り返しがつくから、私から盗ったものを返して」
どうやら、青年があそこに倒れている物取り達から金を盗んだ事を咎めているわけではないらしい。
「あれ以外のものなら諦めもつくけど、あれだけは絶対にダメ。――今なら、命まで取ろうとは思わないわ」
何も言わない青年が勘に触ったのか、きつかった目をさらにきつくさせこちらを睨む。
それを青年は呆れた顔で、
「そいつならとっくにこの先に行ったぞ」
と言い、路地の奥を指差す。すると、少女は
「えー!?」
目を白黒させながら、大声で叫ぶ。
少女は動揺を隠せない目でまた、こちらを睨む。
「じ、じゃあ!後ろに倒れている人達は!」
と言って、後ろに倒れている人達を指差す。少女の質問に青年は答える。
「物取りを撃退した」
「ふ~ん」
青年の答えに少女はあわてふためく。その少女をよそに猫は、その大きな目を細め意味ありげにうなる。
「どどどうしようパック!?わ、私知らない人に迷惑をかけちゃった!」
少女はどもりながら後ろにいる猫に問い掛ける。
「取り敢えず落ち着こうよリア。ほら、深呼吸して。ヒッヒッフー」
少女の質問の答えがまさかのラマーズ呼吸法。
「そうね!パック。ヒッヒッフー」
それに素直に従う少女。
(いや、やるなよ)
青年はそう思ったが、けして口には出さない。少女の勘違いは正したのに、まだ嫌な予感が消えないままだからだ。だから青年はその場から、すぐに立ち去ろうとする。
「別にいい。俺まだ用事あるからそれじゃ」
青年はそう言って少女の脇を通る。だが、物事は、そう上手くはいかなかった。
「ちょっと、待ってよ~時間は取らせないからさ~」
そう言って、猫が青年を呼び止める。猫はふわふわ浮かび青年の耳下に近づく。そしてこう呟く。
「うちの娘の探し物を手伝っ上げてよ。ほら、君もそのポケットの事、黙っててほしいだろ」
そのセリフに青年は、猫の方を見る。とうの本人は素知らぬ顔をしている。猫は間髪開けずに話しを続ける。
「君もこうゆうことしてるってことは困ってるんだろ。もし、手伝ってくれるなら今は持って無いけどコレ弾むからさ~」
そう言って猫は小さな手で器用にまるを作る。案に金を出すと言っている。心なしかかわいいはずの猫の顔が悪い顔に見えてくる。
青年にとって正直ありがたい話しだった。金もてに入り、人のつながりもできる。だが、青年はこの提案を飲むのをためらう。金を出すと言っているということは、何処かの貴族なのだろう。その貴族が金を出すまでの物を探せと言っているからだ。
(金も手に入れられて、貴族の人間に恩を売れる。だがリスクが高いな)
戦えば、一騎当千のできる青年でも騙されて、犯罪者としてこの国を追われるのは、避けたかった。
「はぁー、わかった」
長いため息を吐き、青年はしぶしぶ猫の提案を飲む。それを見て猫が嬉しそうに少女に向かって言う。
「リア。この人あれ探すの手伝ってくれるって」
「えぇっ!?」
と少女はまた驚き、大声を出す。
「ほ、本当に?」
少女は、おずおずと青年に問う。その疑問に青年は、
「あぁ。本当に手伝うよ」
と言って少女の頭をポンポンと撫でる。すると少女は恥ずかしそうに顔を赤らめる。だがすぐに少女は、
「ありがとう」
満面の笑みを浮かべながらそう言った。その表情に青年は見惚れ少し呆然としていた。そして何事もなかったように、少女に問う。
「所で、手伝うにあたって名前を知らないままは、不便だからお前らの名前を教えて欲しい」
青年に問われ少女と猫はすぐに答える。
「ぼくの名前は、パックよろしくね!」
「私の名前は、エミリア。――ただのエミリアよ。あなたは?」
「俺の名前はクロ。よろしくな。エミリア。パック」
青年クロと少女エミリアが握手を交わす。
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