2022年おれを含める1万人のSAOプレイヤーは茅場晶彦の手により、ログアウト不可・ゲームオーバーで現実での死のデスゲームへと変えられた。
プレイヤーのたった1つの世界となったアインクラッドは絶望の世界へと一瞬で染まってしまった。
それから1年と少し経ち、攻略だクリアだと血眼になる人が減っていた。
それは純粋ゲームとして楽しめるようになってきたのか、それとも死ぬことの恐怖がなくなっていったのかは分からない。それがいい事なのかすらも分からない。
だけど、その中でも攻略は順調に進んでいた。
Lv58片手剣使い«ソードマン»Shuriもその中の1人。自分のペースで着々と攻略を進めていた。
「この森を抜けたら次の街だ」
おれは目の前の森を見上げる。全ての木が千年樹のような巨木だが、森自体の面積は少ないというなんとも不思議な森だ。
おれは左手を振り下ろし、メニューウィンドウを開いてから、アルゴから貰ったマップを見る。
アルゴとはベータテストの時から知り合いで、正式サービスではおれも攻略組としてボスレイドにも参加していたため、かなりの長い付き合いである。
そんなアルゴからの地図を見ると、やっぱりこの森は狭いなっていうのが1番の印象だ。
この森なら疾走スキルで走れば5分とかからず抜けることが出来るだろう。
おれは敏捷力にものを言わせて走り出した。
「あれ?」
おれは1度立ち止まった。地面は巨木に見合うくらいの大きすぎる根が所狭しと生えている。結論からすると10分たっても森を抜け出せずにいた。それは巨大な根が足を阻み走りづらかっただけではない。
ふとデジャヴを覚えマップを開いた。
「やっぱり…前の街に向かってる」
これは以前の『迷いの森』の同じようなシステムだろう。森がいくつかのブロックに分けられていて、そのブロックをまたぐ度にランダムでブロックが入れ替わるという仕組みだ。
以前キリトと雑談した時に聞いた、«ビーストテイマー»竜使いシリカという女の子をキリトが助けたという話を思い出した。
シリカも死にかけたという話だし、他のプレイヤーも3日は抜けられない人もいたらしい。
そうなれば走り続けるだけだ!
俺が足を踏み入れようとした時、
「え?」
おれは視線を固定したまま視界の左上を見た。HPを見る動作だ。その瞬間HPゲージが半分になり黄色に染まった。
俺は急いでポーションを飲んだ。
おれは、街を出てから1度もモンスターに攻撃は食らっていない。ましてや俺のHPの半分も削る攻撃などはこんなフィールドではそうそうないだろう。そしてもう一つの可能性、なんらかの条件で毒になってしまっているかもしれない。と思い、おれは毒のデバフがかかっているか見た。毒はかかっていなかったがひとつのデバフを発見した。たぶんこれのせいだろう。しかし発動条件は分からない。とりあえず解毒ポーションを飲んでみる。しかし思った通りHPは減り続けた。
「分からないんだったら街に入るだけだ!」
街に入ればデバフ解除、HP全回復をすることが出来る。タイムリミットは手持ちのポーションを飲みきるまで……
「勝負だ!」
おれは走り続けた。こんな死んでしまうかもしれない状況でも心から楽しんでいる自分に気づいた。
「クッソ……まだかよ」
おれは走りながら毒づいた。おれは未だに抜け出せないでいた。残りポーションは1本……
時間にしてあと20分といったところだろう。
かなり厳しい展開だ。ずっとフルスピードで飛ばしてきているがあと少しがなかなか超えられない。ような気がする。
「ウソだろ?もうポーションねぇぞ?」
おれは最後のポーションを飲み干した。
このHPがMAXからは約10分で抜けなければならない。時間は着々と過ぎていきそれに伴いHPも減っていく。
死にたくない死にたくない死にたくない。おれは何度も反芻した。まだ死ねない。ゲームへとのめり込んでいき、迷惑をかけた家族にはしっかりと謝りたい。一緒にクリアしようと誓い合ったキリト、アスナもまだ戦っているんだ。おれだけが死ぬわけにはいかない。
HPゲージが黄色になった。おれは絶望していた。涙を流しながら走っていく。自分から離れていった涙がポリゴンとなって消えていくのが妙に頭に残った。
自分もああいう風にポリゴン片となって消えていくのだろう。
おれは情報収集を怠った。ここのマップを買った時この情報も買っていたら必ず迂回したはずだ。おれの傲慢さと怠けが自分を殺したんだ。
このSAOでは肉体的疲労はない。しかし精神がやられ、絶望してしまい、遂には立ち止まり、膝を折ってしまった。
「あはははは……おれはクリアに貢献出来たかな?キリト…アスナ…エギル…プレイヤーのみんな……あとは頑張って……SAO…茅場……おれにこんな素晴らしいゲームをくれてありがとう……楽しかった……」
壊れたように無意識に笑っていた。
HPゲージが空になる瞬間を見届けよう。
「キリト君!向こう!」
「あぁ!いくぞ!」
誰かの声が聞こえる。
お前らは生きてくれ……
「ヒール!」
瞬間、パリィンと何かが割れた音がした。やっと終われる。この世界から抜け出せる。
しかし、割れたのは自分の体ではなかった。
少し顔を上げるとポリゴン片が漂っていた。
そして、顔の高さを同じにして膝を折る形で、顔をクシャクシャにしている。ちょっと見るのは久しぶりな顔。
「え……?アスナ……?」
「そうよ……生きててよかった!シュリ!」
アスナがおれに泣きながら抱きついて来る。
「アスナ……ありがとう、死ぬかと思ったよ」
俺の方の上で泣いているアスナを見やる。ほんとにありがとう。
「遅くなって悪かったな」
「キリトまで……ありがとう。でもどうしてここに?」
「アルゴが血相を変えて俺らのとこ来てさ。『シュリがこの森に入ったかもしれない!』って来てさ」
「アルゴ……でもなんでアルゴはマップ買った時教えてくれなかったんだろう」
「5層先のボスが倒されると発動する仕組みらしい。元々はただHPが減っていくだけの森だったんだ」
「そゆことか…ってまたHP無くなっちゃうよ。ポーションある?」
「はいよ」
キリトはおれにポーションを投げ渡した。受け取ってそれを飲み干すとやっと落ち着きを取り戻せた気がした。
「ねぇ、シュリ。この森ってかなり理不尽だと思わない?」
俺から体を離し、涙を拭いたアスナはおれに問いかけた。
「確かに……前言ってたよな?キリト。茅場はゲームにおいてこんなに理不尽な事はしないって」
「ああ、つまりは解決策となるもの、そして大きなメリットがあるってことだ。」
「でもそれらしきものはなにも……」
「アルゴさんからその情報も貰ってるの。出現条件はエリアシャッフルを一定数超えること。あなたなら既に超えているはずよ」
「場所はシャッフルされているが俺の索敵スキルなら多少離れていても見つかるはずだ。HPが減ってきたら俺かアスナに言ってくれ」
キリトがそう言って歩き出した。
それからはすぐだった。NPCはすぐに見つかった。クエスト内容は弱ったNPCを森の中の民家に運ぶこと。 10分とかからずその民家は見つけることができた。
「つきましたよ。」
俺がそう言うとNPCの男性は椅子に座り、これでクエストクリアという表示がでた。男性からなにか書いてある紙を受け取ると男性はその椅子で寝てしまった。
「どういうことなんでしょ?」
アスナがそう全員の疑問をつぶやくと同時にその紙はポリゴン片となって消えていった。
すると今まで黄色だった俺のHPが緑へと変わった。
「HPが回復してる!?」
これは!?とキリトを見やると、1人納得したようで笑っていた。
「確かにこれは森の鬼畜さに合った大きなメリットでこの森の攻略にもなるな。シュリ、自分のスキルを洗いざらい見てくれ」
キリトがそういうので分からずままメニューウィンドウからスキルを見ていくと、
「バトルヒーリング!?」
「なるほどね」
アスナも納得したようにうなづいていた。
どっと心の疲れが取れていくのを感じた。そして民家の安心感からか、急激な睡魔に襲われた。
その事を察したらしいアスナが
「この民家はインスタンスマップだから安心して寝ていいわよ」
「そうするよ」
空いていたベットに横たわるといつの間にか眠りに落ちていた。
「んあ?」
おれが目を覚ました時はキリトとアスナはもう民家にはいなかった。あの2人は攻略組の中でトップを走って行くような奴らだ。また攻略に向けて上層へ向かったのだろう。
しかし、2人からは置き手紙の代わりにメッセージが1通ずつ届いていた。
アスナ
「生きていて良かった……でも無茶はしないで圏外に出る時はちゃんと情報を集めてからにしてね」
全くその通りだ。今回は結果的には得るものは多かったが死にかけてしまったのも事実だ。おれはアスナに向けてメッセージを返した。
「ほんとに助かったわ。ありがとね。すぐにアスナたちに伝えてくれたアルゴにもお礼しとかないとね」
そしてキリトからは
「今回は災難だったな。後でレベル上げとかは手伝うから今は休んどけ。嫌なことがある時はとことんハズレを引くもんだ」
予想外だったな。こんなメッセージだとは思わなかった。
「ありがとう。そうするわ。また後でよろしく頼む」
そう送ると2人の優しさが疲弊した心に響いた。いつの間にかおれは涙していた。
再up申し訳ありません。
初めての同人小説でしたが自分の中では結構いいものができたと思います。プロットはテスト勉強中に思い浮かんだもので、そのテストは散々でしたが同人小説を書く機会を与えてくれたので許しますw
これからも月1くらいで更新しようと思うのでよろしくお願いします
ここまでま読んでいただきありがとうございましたm(*_ _)m