「んん……」
カーテンから漏れる光が、俺の意識を呼び覚ます。
時刻はまだ7時を過ぎたくらい。
この時期、7時起きは寒すぎる。
俺はゆっくりと起き上がり、右下に目を向ける。
「……すぅ」
隣では、愛しの彼女が可愛く寝息を漏らして寝ている。
そんな彼女の寝顔を堪能した俺は、きっと頬が緩んでいることだろう。
小さな頭を優しく撫でてやる。
「んぅ……れい……くん?」
「おはよ、お姫様」
「おはよ……」
眠たそうに目をこすり、彼女も起き上がる。
「眠そうにしてるお前も可愛いな」
「えへへ……ん!」
「お!?」
愛菜が俺に抱き付いた勢いで、俺達は再びベッドに横になる。
「まったく、困ったお姫様だ」
そう言い俺も抱いた。
しばらく抱き合ってから、俺達は顔を洗い、着替え、下の階へと降りた。
「あれ?」
「どうした?」
「お父さんとお母さんがいない」
「まだ寝てるんじゃないのか?」
「ううん、いつも早起きだからもうとっくに起きてるはずなんだけど」
そう言って辺りをキョロキョロ。しかし、俺達以外の人影は無い。
「ん?」
俺はふと、机に目を向ける。
(これは……)
机の上には、折り畳まれた一通の紙。
「どうしたの?」
俺が紙を開けようとすると、愛菜が後ろからひょこりと顔を出す。
「紙が置いてあった」
「開いてみて」
「ああ」
俺は紙が破れないように、ゆっくりと開けていく。
紙の内容はーーーー
『零君と愛菜へ
私達は1週間程旅行をしてきます。家のことは頼みますね? 二人きりのスイートタイムを是非楽しんでね☆
御影 千秋 』
二人きりにして新婚感を出そうって訳か。
「うう……うう」
え?
後ろを向くと、俺と同じことを悟ったのか、顔を赤くしている愛菜さん。
「……とりあえずご飯だな」
「うん………」
俺と愛菜で朝ご飯を作る。
朝だし軽いものでいいだろう。
「……………」
「……………」
沈黙が続き、俺達は最も新婚らしくない朝を迎えている。新婚ではないが。
「零……君…」
無言を貫き通すのに我慢の限界を迎えたのか、彼女から口が開いた。
「何だ?」
短く返事をする。
「あのね……将来さ、その……私と結婚したい?」
やはりこの質問。ある程度予想はしていた。
高1で結婚のこと言ってるの俺達くらいだろう。
「したいとは思ってる。愛菜さえ良ければだけどな」
本心のまま語る
「私のことは好き?」
「嫌いならもうとっくに別れてるよ」
「そう、だよね」
「お前は俺が嫌いか?」
「好き……ただ……」
「ただ?」
「私は一度君と別れようとしたのに、何でこんな私を好きなままなのかなって」
それは恐らくあの時のことーーー竜咲帝の一件だ。
「あれは仕方なかった。俺がもう少し早くあの手紙のことを怪しんでいたら、あんなことにはなっていなかった。あれは俺のせいでもある。だから気にするな」
「でも……」
どうやらこの子はまだ納得いかないらしい。
「だったら聞くが、お前は俺と別れたいのか? 竜咲と付き合いたいのか? 何で俺の家に来ることにした? 何で自分の家に誘おうとした?」
「そ、それは……」
俺は、彼女の心を傷つける覚悟で言った。
「お前はあの時、竜咲と付き合うことで龍也達が安全になると本気で思ったのか? 俺の知る限り、竜咲は相当冷酷で邪道な男だ。あのまま付き合っていても、竜咲は調子に乗り続け今度はクラスを超え学年を支配しようとしていたかもしれないんだぞ?」
ここまで言えば嫌々でも気付くだろう。愛菜と竜咲が付き合うことで竜咲が更に独裁者として頭角を現すことを。
「お前が竜咲とどうしても付き合いたいなら俺はお前を諦める。けどそうじゃないんだろ?」
「……うん」
「あれは俺のせいでもある。竜咲にしてやられただけだ。だから気にするな。お前はいつも通り俺の前で元気に振る舞えばいい。お前のことは必ず守る。だから、俺を信用しろ」
今柊愛菜に必要なことは再生、そして寄生。
「……うん。そうだよね! ごめんね、何か重たい空気にしちゃって」
「いや、俺の方こそすまないな」
「ううん、私のせい」
「俺のせいでもあるよ」
「私だよ」
「俺だって」
「ぷっ、あははは!」
「ふっ、ははは!」
俺達は同時に笑った。
大切なものほど壊れやすい。
だからしっかりと守ってやるのだ。
これが俺に今できる最大限のことなのだから。
次はデートにします!