今回は竜咲の過去が主な話の内容となっております。
『独裁』
俺はその言葉がとても嫌いだった。
あの日までは―――
「帝! 今日俺の家でゲームしようぜ!」
「またかよ。お前ほんとゲーム好きだな」
当時中学生だった俺――竜咲帝には、一人の親友がいた。
そいつは、俺とよく遊んでいた男だ。
アニメ、漫画、ゲーム、小説が大好きのオタク野郎でもあった。
「帝は何をしたら楽しいんだ?」
「なんだよ急に」
「いや、お前中々笑わないしさ」
「俺にもよく分かんねえよ。」
大笑いなんて昔以来したことがない。
する機会もない。
「そんな感じに生きてて楽しいのかよ?」
「楽しくなんかねえよ。毎日つまんねえからな」
「じゃあ俺が帝が楽しく生きられるようにゲーム誘って誘って誘いまくるぜ!」
はいはいと答え、二人並んで下校する。
俺はいつまでもこのゆったりとした時間が続いて欲しいと、そう願った。
しかし、神はそれを許してはくれなかった。
授業が終わった休み時間、俺はトイレに行った。すると、声がしたので、入り口で隠れて中を見てみた。
そして、ある光景を見てしまったのだ。
「お前キモいんだよ! アニメとかゲームばっかりしててよお!」
「ぐはっ....!!」
俺の親友が、男たちに囲まれて、蹴られていたのだ。
何度も何度も、色んな方向から蹴られ続けていた。
蹴っていた男たちは、この中学のいじめグループだ。
(どうする、助けるか...いや、俺が行ってもやられるだけか...)
俺は内心苦しみながらも、見てみぬふりをしてトイレを我慢した。
それから何日も、親友へのいじめは続いた。
その都度俺は見てみぬふりをした。
その親友は、俺といる間は元気に振る舞っていた。
いじめが1ヶ月続いた。
そして親友は、俺に手紙を残し―――自殺した。
『帝、お前に楽しい生活をおくってやれなくてごめん。俺は一足先に向こうに行くよ。じゃあな。』
俺は泣いた。泣いて泣いて泣き喚いた。
後悔し、絶望した。
たった一人の友を俺は見捨てた。
スクールカーストでは俺は所詮下の下だ。俺に助ける力はなかった。
「くそ、くそぉ...」
俺はこれからあいつなしでどうやって生きて行けばいいのか分からなかった。
しかし、何日か経ったある日、俺は思いついた。
『自分がスクールカーストの最上位に君臨すれば、二度とこんなことは起こらない』
俺は自分を変えようとした。
髪を伸ばし、ワックスでセット。
制服も真面目に着ず、学校に行く時間も自分の気まぐれだった。
喧嘩もした。最初は負けて負けての敗戦ばかりだったが、次第に作戦を考えるようになり、最後はみんな俺の前にひれ伏せた。
「りゅ、竜咲さん。これどうぞ...」
そう言いパンを渡す男は、俺の親友をいじめていたグループのリーダーだ。
「何やってるんだ。俺はこんなもの頼んだ覚えはないぞ?」
「え? で、ですが先程はこれと...」
「あ?」
「すいません! 買い直してきます!」
スクールカースト最上位は本当に気分が良かった。
俺は学校に行くのが楽しくなった。
(二度とあんな真似はさせない。絶対に)
スクールカーストに囚われ、高校でも一向にスクールカースト最上位になった俺は、学校一の美少女に手を出した。
しかし、その彼氏に負けた。
―――桐生零
俺は幾度も同じ相手に挑み、勝ってきたが、こいつにはまるで勝てる気がしなかった。
(そうか、俺が甘かったのか。こんなこと、お前は望んでいなかったよな、
今は亡き親友に聞いても、返事はない。
(すまねえな、こんな俺になっちまって)
「俺は独裁政権を放棄する」
言ってやった。今まで積み重ねたものが吹っ飛んだ感じだ。
だが、もういい。
「俺の戦いは、終わったんだ」
(なあ、大樹。俺、これからはもうちょっと頑張って生きてみるわ)
(そんでいつかは皆から信用を得てみるのも悪くねえかもな)
(だからもう、心配するなよ。安心して休んでろ)
「ふぅ...」
久しぶりに過去を思い出していた。
(試験が始まっちまう。集中するんだ)
特別試験 鬼ごっこ。
最下位のクラスは平常点が減る。
勝てば金が貰える。
「それにしても、俺を今更頼るなんて、あいつらもどうかしてるぜ」
けど、頼られるのは案外悪くはない。
「この試験、勝たせてもらうぜ。柳」
俺は、リーダーの名を教員に伝え、勝つための作戦を実行するべく森の方へと歩いていった。
「では、逃げる側が逃げてから10分経過したので、試験を開始します。鬼は全力で探しに行ってください。制限時間は48時間です」
教員がそう言ったのを聞き、1組の生徒たちはぞろぞろと動き出す。
「さあ、ゲームの始まりです」
私――柳は、4組を仕留めに森へと向かった。
次回からはいよいよ二日間の鬼ごっこが始まります。
竜咲の作戦とは!?
次回をお楽しみに!!