このすば! ─カズマがいた異世界最初の街は王都にある王城です─   作:Sakiru
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独りぼっちの魔法使い

 

「「ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラーン♪ ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラーン♪♪」」

 

 俺はここ最近思う。

 人生とは中々思い通りに上手くいかないものだ、と。

 人がせっかく人類の為に貢献したというのに、謂れのない罪で国家転覆罪に掛けられるわ、しかも強制任務(ミッション)が課されて上から目線の「助けてやるぞ」発言。

 これはアレだな。

 SNSに載せたら大炎上間違いない一件である。まぁ幸か不幸か、この世界にはそんなものはないのだが。

 

「「ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラーン♪ ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラーン♪♪」」

 

 晴れ渡った青空の下、見渡す限りの平原。

 此処は、アクセルすぐ近くの平原フィールドだ。

 そこに俺とめぐみんのパーティは爆裂魔法の歌を口ずさみながら仲良く踊る。

 そうこれは。

 国から出された強制任務を少しでも忘れたくて現実逃避している訳では断じてない。

 俺は二週間ばかりほど匿われていた屋敷から外出が許されず、更には仲間とも離れ離れになっていたのだ。

 故にこれは、仲間に対するせめてもの罪滅ぼしなのだ。

 爆裂娘の爆裂日課に付き合う、という。

 何度も述べるが現実逃避している訳では断じてない。

 ないったらない。

 冬用のロングコートを着込んだ俺達が向かう先は決まっておらず。

 標的になりそうな的をのんびりと探していた。

 固すぎず、柔らかすぎず、大き過ぎず、小さすぎず。

 爆裂ソムリエの称号を得ている俺は、そんな理想の的を判別することが可能になっているのだ。

 しばらくスキップしていると、やがて程よい大きさの岩石が目に留まる。

 ペちペちと何度も叩き、要求する強度に達しているのかを確認し、俺は爆裂娘にサムズアップ。

 彼女はそれに返してから、杖を高く掲げて……

 

『嗚呼、この世界に破滅を。嗚呼、この世界に救済を。汝、我が敵とならん、汝、我が盟友とならん。故に、我は告げる』……行きますよ、カズマ!」

 

「よしきた、行けめぐみん! 思いっきり頼む!」

 

「もちろんですとも! 久しぶりに見せる爆裂魔法、とくとご覧あれ!」

 

 黒、赤、青、緑。

 それらの色が混じり合い、溶けていく。

 やがて凝縮されたエネルギーは宙に浮かび。

 めぐみんは声高くその言葉を放った……!

 

「『エクスプロージョン』──!」

 

 

 §

 

 

 朝の爆裂日課を終え、俺達は帰路に着くことに。

 二週間振りにこの目で間近に見る爆裂魔法はとても威力があり、それに比例して素晴らしかった。

 ナイス爆裂!

 流石は人類最大の攻撃魔法。

 デストロイヤー戦で撃ったウィズの爆裂魔法も凄かったが、やはり爆裂魔法といったらめぐみん。

 めぐみんといったら爆裂魔法。

 その方程式が俺の頭の中に構築されている。

 まぁ撃ったその反動で魔力は空になってしまうけれども。

 ネタ魔法扱いされている魔法にだって、必ず使い道はあるのだ。

 相手を理解することによって、仲間は本当の意味で仲間になると俺は思う。

 一歩も動けなくなっためぐみんを背中におぶると、

 

「ふふふっ」

 

「……? どうした急に笑い出して? 耳元でそんな風に笑われると中々怖いんだが」

 

「人をそんな、疫病神みたいに言わないでくださいよ!」

 

「悪い悪い。だから足で俺のアキレス腱を蹴らないでくれるかなとても痛いから」

 

「まったく、あなたという人は……」

 

 ぶつぶつと文句を呟くめぐみんの声を聞きながら、俺はのんびりと歩く。

 季節は真冬だけれども、背中越しに伝わってくる人の温もりと、昨日購入したロングコートが身体をあたためてくれる為、寒さはそれほど感じられない。さらには快晴だから、太陽の光も優しい。

 ちなみにコートは、俺がめぐみんに誕生日プレゼントとして贈ることにした。まぁ彼女の場合はコートではなくローブなのだが。

 貧乏商人を親に持つ子供は首無し騎士(魔王軍幹部)殺戮の機動要塞(機動要塞デストロイヤー)で手に入れた報酬金そのほとんど全てを仕送りに送っている為に、年中財布の中はポイントカードや割引券でぱんぱんだ。

 めぐみんはこれで十四歳になったのだが、そんな幼い子供にお金をせびるとはなんともあんまりな親である。

 まぁ家庭の事情なので仕方がないといえばそうなのだが。

 この季節にあの軽装装備は身体の調子を悪くする。仲間である俺がそんなめぐみんを心配するのは当然の帰結といえるだろう。

 ちなみにめぐみんが薄い赤で、俺が薄い緑である。つまりは学校の衣替えのようなものだ。

 流石に純粋な色は目立ちすぎるということで、色彩を薄くしている。

 もっとも、紅魔族の娘は嫌だ嫌だと駄々を捏ねたが。余程純粋な赤が好きなようだ……。

 昨日の出来事を振り返っていると、またもやくすくすと笑う気配が漏れでる。

 

「やっぱり今日のめぐみんおかしいぞ? いや何時もおかしいけれども、今日はそれ以上だ。なんだ、風邪でも引いたのか?」

 

「違いますよ!」

 

 と暴走娘の攻撃を甚だ不本意だが受けつつ、俺は目だけ後ろに向けて……

 

「……!?」

 

 思いの外めぐみんの整った美貌が近くにあって慌てて前に向ける。

 少女の顔が出会ってからの月日の間に、確かに大人びたものに変化していたことに否が応でも気付かされたからだ。

 くそっ、まさかこんなにも印象が変わるなんて!

 いや確かに見てくれは美少女だけれども!

 そんな俺の動揺を知ってか知らずか、めぐみんはくすくす笑いを止めることを決してしない。

 女子のくすくす笑いは総じて邪なものが多いと聞くが、今回に限ってはそんな事はないだろう。

 

「ふふふっ。いえ、ただ平和だなぁと思いまして。その……ありがとうございます、誕生日プレゼント。大事に使いますね」

 

「おう、大事に使えよ? なんだってこれは、中級魔法までならその威力を半減、初級魔法にいたっては無効化できるし、自動的に洗浄効果も付いている優れものなんだからな」

 

「……!? そ、そうだったのですか……確かに王都のそれっぽい高級店で買いましたが……。あの、いくらくらいしたんです?」

 

「一着五千万エリス」

 

「ぶぶっ! ごごごごごご、五千万!? つつつつつ、つまり合計……──」

 

「一億エリスだな」

 

 提示された大金に、めぐみんはあわわわと狼狽えるばかりだ。

 ここ最近分かったのだが、彼女は予想外の事態にめっぽう弱い。

 天才だから、自分の考えが正しいと無意識下で行動してしまっているのだろう。

 白い絨毯をなるべく音を立てないように歩いていると、

 

「あの、貰っておいてなんですが本当に良かったんですか? ……確かカズマには、デストロイヤーの討伐報酬金が与えられていませんよね?」

 

「そうなんだよなぁ……」

 

 そう、実は俺だけ機動要塞デストロイヤーの討伐報酬金を授与されていない。

 その理由は簡単で、未だ俺に国家転覆罪が掛けられているからだ。

 本当ケチな国である。

 王女は何度も俺に頭を下げてきたが、悪いのは彼女ではなく腐った貴族達だ。

 もし俺の罪が潔白なものになったあかつきには、復讐を存分に行うとしよう。

 なんでもマルクス家とシーア家の両当主は女性……更には美人だと言われているので、『スティール』の刑をやるとしよう。

 何、それくらいの権利は俺にだってある筈だ。

 それにめぐみんは何か勘違いしているようだが、俺が大金を叩いてまで高額な誕生日プレゼントを贈ったのにはもちろん打算もある。

 本当なら純粋な気持ちで渡したかったんだけどなぁ。

 というのも、全ては強制任務の所為なのだが。

 俺が課された強制任務は計三つ。

 

『一人以上の魔王軍幹部の討伐』

 

『洞窟に住み着くドラゴンの討伐』

 

『キールのダンジョンの異変調査』

 

 ハッキリ言って、無理ゲーだ。

 どれもかしこが超危険なものばかりだ。

 

『一人以上の魔王軍幹部の討伐』

 一番至難なのがこれだろう。

 幹部は合計八人。

 そのうちの一人、首無し騎士(デュラハン)のベルディアは俺の自爆に巻き込まれて屠られているが、それでもあと七人もいる。

 もう一人、アクセルの街にて魔道具店を営んでいる不死王(リッチー)のウィズが幹部だが、流石に友人を殺すほど俺は落ちぶれてはいない。

 それに彼女は「氷の魔女」と呼ばれた冒険者としてとても有名だ。彼女が不死王であるのを知っている人は限られており、それ故に懸賞金は掛かっていない。

 そんなウィズを魔王軍幹部として扱うのは無理な話だろう。

 ……取り敢えず保留としよう。

 

『洞窟に住み着くドラゴンの討伐』

 次に至難なのがこれだ。

 流石に幹部連中よりは強くはない……筈だ。

 まぁそれを抜きにしても敵は強大である。

 なんていったって、ドラゴンだ。

 あらゆるゲームにジャンルを問わず登場する、最強の種族。

 人間が文明を築く種族だとするのなら、ドラゴンは殺戮と破壊を繰り返す種族だ。

 そういう意味では災害扱いされたデストロイヤーもそうだが、ドラゴンには知性がある為馬鹿じゃないだろう。

 そしてそれはこの異世界でもそうである。

 寧ろ、こちらの方がタチが悪いかもしれない。

 なんせ、キャベツが自我を持つくらいだしなぁ……。この世界の生物はとても強靭でタフなのだ。

 ……これも保留だな。

 

『キールのダンジョンの異変調査』

 一番現実的なのがこれなのだが……それでもやはり不安は絶えない。

 昨日ギルドのお姉さんに確認したのだが、最後にその地に訪れたのはアクアとウィズの即席パーティーだそうな。

 異変、異変かぁ……。

 そんなものは特になかったけどなぁ。いやでも、あの時はアンデッド相手に無双するクリスの援護で忙しかったし、一概にそうとも言えないのか?

 たった数ヶ月ちょっとで迷宮(ダンジョン)がどうこう変わるものなのだろうか。

 実態が掴めないだけに、案外これが恐ろしいかもしれない……

 

「あっ、見えてきましたよ!」

 

 思考の海に沈んで自動操縦で歩いていると、耳元でそんな声が出された。

 顔を上げると、確かにめぐみんの言う通りアクセルの正門だ。

 全身鎧を着込んでいる門番さんが俺達に気づき、手を振りながら近づいてくる。

 

「お帰りなさい。二人とも、今日は何処まで行ってきたんですか?」

 

「すぐそこの平原までだけど」

 

 そう答えると、門番さんはヘルメットの奥から安堵の息を吐いた。

 どうかしたのだろうか?

 

「あぁいや、特にはないんですが……やっぱりこの季節は大変危険ですからね。大型モンスターには気をつけてください」

 

「分かった、わざわざありがとう」

 

「いえいえ、それが私の仕事ですから。……その、私を含めたこの街の住民はあなたの無実を信じていますので、何かあったら頼ってくださいね?」

 

 ……それはとてもありがたい。

 実際に頼るのはないだろうが、そのような人がいると分かっただけでも嬉しいものだ。

 感謝の言葉を告げ、俺達は街中に足を踏み入れる。

 ふむ……昨日戻っていたとはいえやはり感慨深いものだ。

 もはやこの街は、第二の故郷といっても差し支えないだろう。

 メインストリートを通り冒険者ギルドに向かっていると、その道中で沢山の人に声を掛けられた。

 それは八百屋のおばちゃん、魚屋のおやっさん、肉屋のお姉さんなど数え上げたらキリがない。

 お裾分けという形でおばちゃんからは瑞々しい野菜を、おやっさんからは新鮮な魚を、お姉さんさんからは牛肉を貰い、気づけば俺の両手にはそれらのものがいっぱいになっていた。

 めぐみんをおぶるのは不可能なので、『ドレインタッチ』で俺の魔力を彼女に受け渡す。

 彼女は地面に降り立ち、

 

「片方ください。持ちますよ」

 

「いや大丈夫だよ。流石に女の子に荷物を持たせるほどクズじゃないからな」

 

 俺の返答にめぐみんは楽しそうに笑いながら、

 

「そうですか。カズマって妙なところで人がいいですよね」

 

「おっ、なんだ惚れたか? けどごめんな、俺は今恋愛に時間を使う時間は……」

 

 心苦しいが仕方ない。

 俺みたいな未来に先が見えない男と付き合うよりも、めぐみんには相応しい男性ができるだろう。

 ううっとコートの袖で溢れた涙を拭うと、たちまち彼女は真顔になり……一つため息を吐く。

 あれっ?

 ……あれぇー?

 

「まったくこの男は……。いいですかカズマ? あなたはもうちょっと落ち着いた方がいいと思いますよ」

 

「いやごめん。お前に言われても説得力が全然、これっぽっちもないんだが」

 

「な、なにおぅ!?」

 

「いやだってなぁ……。昨日だって王城に乗り込もうとしたし」

 

「そ、それは私だけじゃなくてアクアやアイリスだってそうではありませんか! 私だけお咎めを受けるのは納得がいきません!」

 

 と不満顔のめぐみんを俺は敢えて放置し、ウィズの店に行くことに決めた。

 彼女の店が儲かっているとはとても思えないので、お裾分けをさらにお裾分けしよう。

 余らせるのも悪いし。

 それでも残ったら、俺達がお世話になっている宿屋のご主人と女将さんに渡せばいい。

 ウィズ魔道具店への道を進んでいくと、小道から出現した黒猫が近づき、助走をつけてめぐみんの肩によじ登る。

 彼女のペットのちょむすけだ。

 名前は可哀想だが、そこは俺以上に付き合いが長い相棒。肩に到着するまでのちょむすけの行動には無駄が一切なく素晴らしかった。

 そんな友を、めぐみんは微笑を浮かべながら喉をころころと撫でる。それにちょむすけは気持ちよそうさそうにしてもう一度鳴いた。

 とても微笑ましい光景です。

 

「そういえばカズマ、アイリス達はどうしたんですか?」

 

「あぁ、王城に戻るってさ。一応俺が自由の身になったからな、あの屋敷にいる理由がないんだろうさ」

 

「なるほど。あっ、すみません。それじゃあ行きましょうか」

 

 と歩こうとした時だ。

 

「あっ、めぐみん! めぐみんだよね!?」

 

 後ろから、そんな高いソプラノの声が出されたのは。

 俺とめぐみんは同じタイミングでそちらに振り返り、発生源の主を見定めた。

 そこに立っていたのは、一人の女の子。黒髪のセミロングをリボンを纏めている。黒色のローブを着て、両手にはワンドが握り、いかにも魔法使いという恰好だ。

 背は遠目からだから正確には分からないが、俺よりは低く、めぐみんよりは少し高いだろう。

 スラりと整った容姿でかなりの美少女。

 そして何より……服の上からでも分かるその豊満な胸。幼い童顔と相まって、なんだろう……もの凄くエロいです。

 バレない程度に二つの山を拝んでいると、めぐみんが目敏く気づきガシッと俺の右足を踏みつけながら、

 

「それじゃあ早く行きましょうか。野菜は兎も角、魚や肉は鮮度が命ですからね。それに、ウィズがお腹をぺこぺこにして飢え掛けているでしょうし……早く行きましょう!」

 

「ええっ!?」

 

 と、完全スルーを決め込む。

 その態度に女の子は涙目になりながらこちらに近づき、めぐみんの肩を掴んで激しく揺らした。

 その所為でちょむすけが吹き飛ばされ悲鳴を上げるが、興奮しているのか憐れな猫は気づかれていない。

 俺は抱えていた食材を一旦地面に置いてから黒猫を抱え、自分の頭の上に置く。

 普通だったら嫌がるのだろうが、不思議な事にこの位置に落ち着いてくれた。

 その横では……

 

「ねぇちょっと待って! わ、私よ!」

 

「私の知り合いには私私詐欺をする人はいませんので、きっと他人の空似でしょう」

 

「えぇっ!? そ、そんな……そうなの? いやでも、顔はめぐみんだし……あれっ? 何時も着ているローブじゃない? わぁ、凄い高級そうなローブ……。お金に年がら年中困っているめぐみんが? うぅーん……」

 

 めぐみんは女の子の呟きにイラッとしたのかこめかみを引くつかせた。だが先程のやり取りが効いているのか必死に理性を抑えているらしい。

 そんな葛藤に気づかず、女の子は申し訳なさそうな顔になりながら何度も頭を下げ、

 

「す、すみません! 私の勘違いでした! それじゃあ私はここで……本当にすみません……」

 

 びくびくと怯えながらも気丈に謝罪し通し、俺達が何か反応するより前に立ち去ろうとする。

 だがそれは、ぬっと伸ばされた妨害によって遮断された。

 うんそうだよね。

 明らかに知り合いだよね。

 内心安堵していると、けれどめぐみんはわざとらしくこう言う。

 

「あっ、今思い出しました! あなたはぼっちのゆんゆんではありませんか!」

 

「……!? や、やっぱりめぐみんじゃない! っていうか、誰がぼっちよ! 」

 

「えっ?」

 

「……えっ……?」

 

「ぼっちじゃ……ないんですか?」

 

「……。……ぼっちです……!」

 

 語尾が小さくなり項垂れる女の子に、めぐみんは畳み掛けるように純粋極まりない笑顔を浮かべて。

 

「ですよね! 良かった、あなたはやっぱり私の記憶通りのゆんゆんです! 久し振りじゃないですか!」

 

「な、なんだろう! 字面だけだと感動の再会に聞こえるのに、全然そうには感じられない!」

 

「あははっ、気の所為ですよぼっ……──失礼ゆんゆん」

 

「何よ、そういうめぐみんだってぼっちのクセに! どうせ一人で悲しく暮らして……暮らして……?」

 

 そこでゆんゆんと呼ばれた美少女は初めて俺の存在に気がついたのか。

 ぎぎぎと音を立てながら何度も俺とめぐみんに視線を彷徨わせ……震える声で俺に訊ねた。

 

「あの、すみません。私の名前はゆんゆんと言うんですが……」

 

 ここまで恥ずかしがり屋な人は初めてだなぁ。

 アイリス以上に、このゆんゆんという女の子は内気な性格らしい。もうちょっと自分に自信を持てばいいのにと思うのは、上から目線だろうか。

 変なところで感心していると、めぐみんが声を荒らげながら、

 

「あなたは何をしているんですか! それでも紅魔族ですか!? さぁ、今こそ名乗りを上げるのです!」

 

「えええええ!? む、無理だよ! 無理無理無理!」

 

「なら私達はここで。カズマ、行きましょうか」

 

「……えっ、いいのか?」

 

「いいのです」

 

 とぐいぐいと俺の背中を押してくるめぐみん。

 いや、せめて荷物を持たせてください。

 そんな俺達を見て観念したのか、ゆんゆんはプルプルと震えながら、けれども勢いよくガバッと顔を上げて。

 

「わ、我が名はゆんゆん! 〈アークウィザード〉にして上級魔法を操る者! やがて紅魔族の長となる者……!」

 

 刹那、一陣の風が吹いた。

 冷たい風が俺達を襲い、それはこの空気を端的に表しているよう……。

 めぐみんは満足そうな表情を浮かべてうんうんと頷いているが、ゆんゆんの顔は今にも泣きそうなほどに歪められて小刻みに身体を震わせている。

 ……。

 ……あぁそっか。

 

 この()、紅魔族で唯一の常識人だ!

 








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