初恋ジュースはお湯割りで   作:ポラーシュターン

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先ずは道理が其処にあり

『うんうん、ちょっとメンタルが不安定でもあの動き。

成長したねエリナ。感動だよ~』

 

「・・・リッカさん、それ込みであんなこと言ったんですか」

 

恨めしげにスピーカーを睨みつけるエリナに苦笑し、リッカを窘める。

 

『あはは、懐かしかったのは本当だよ。

君とその神機はいわば、極東の期待の星だったからね』

 

エリナとエミールは共に、極東支部におけるポール型神機の第一号使用者だった。

 

配属、配備されたのが同時期ともなれば、愛着が湧くのも当然だろうと思えた。

 

『というか、あの時エリナに苦労させちゃったのは初期の調整不足もあるからさ。

私にとっても恥ずかしい話でね』

 

「どっちにしろ壁に突っ込んだのはわたしなんですけど・・・」

げんなりと言うエリナに、リッカの笑い声。

 

『なんにしても、見違えたね。ギルもそう思うでしょ?』

「へ」

と、エリナが間抜けな声を上げた。

 

直後、スピーカーからは別の声が聞こえてきた。

 

それは、至極真面目な調子でエリナを評価する、ギルの声だった。

 

『ああ・・・あの動作は俺にはできないな・・・普通は無理やり足で止める。

自分の体型としなやかさを、上手く活かした力の逃がし方だ』

 

『あ、その発言は査問委員会ものだよ~?』

 

『なっ・・・ハ、ハルさんと一緒にしないでくれ』

 

と、途中から何やら言い合いに発展しているのが聞こえてくる。

 

そんなやりとりを聞きながら、ふとエリナを見ると、

何やら肩をぷるぷると震わせていた。

 

次いで、うう、という唸り声が漏れ聞こえたかと思うと。

 

「わたしの過去知ってる人をムダに増やすなぁー!!」

 

広い訓練場に、そんな絶叫が反響したのだった。

 

 

 

『・・・で、まあ、これからが本題なんだけどね。

二人に来てもらったのは、チャージスピアの可能性について意見を聞きたくてなんだ』

 

「はあ。打撃がどうとかって聞きましたけど」

と、エリナがいまいち想像できていないという顔で応じる。

 

テストにあたり技量は申し分なしということで、

そのままエリナは訓練場、ギルはモニタールームの方で

意見を述べるという形となった。

 

『うん、さっきのを見せてもらって分かったけど、

やっぱりチャージスピアは物を貫くことに特化しているよね』

 

「そりゃあ・・・それは、リッカさんが一番よく知ってるんじゃないですか」

 

『はは、買い被り過ぎだよ。私は神機を振ったことないからね、

戦う感覚は持ち主だけのものさ』

 

そんな飄々とした返事。

 

それは、確かにそうかもしれない、

とエリナはオスカーの穂先を見上げ、何か感じ入るものがあったようだった。

 

リッカの説明は続く。

『それでね、私たちが今のところ実現したいと思っているのは、

刺突じゃなく、打突・・・衝撃を与えることができるチャージスピアの開発なんだ』

 

「へえ・・・そんなことができるんですか」

 

『できると思う?』

「えっ」

 

てっきり、どうすればそんな仕組みが出来るのか、

という解説がそのまま続くと思っていたのだろう。

 

まさか自分に振られると思っていなかったエリナは、あからさまに慌てていた。

 

正直に、と横で言ってやると、

エリナはちらちらと此方とスピーカーを交互に見ながらも、おずおずと、

「えっと、その・・・無理だと思うんですけど」

と言った。

 

『あはは』

対して、リッカは笑うだけ。

 

探求する者は、周りから不可能だ、と言われることに慣れているのだ。

 

むしろ最初は、本人が不可能だと思っている節がある。

 

『そうだよね。貫く時、相手に衝撃はほとんど伝わってないからね』

 

と、それをすんなり肯定もしてしまうリッカの言に、エリナは目を白黒させていた。

 

「あの・・・それで、どうするんですか?」

 

『うん、そこで君にお願いがあるんだ』

 

その言葉と同時に、訓練場の中央の床が、がこんという音と共に開く。

 

え、あんな仕組みあったの、とエリナが驚いた顔をしているうちに、

その下から何かがせり上がってきた。

 

・・・それは複雑な造形を描いた、丸みを帯びた金属質の板状のもの。

 

そして全体が見えてくるにつれて、そのデザインが何を模しているのかが分かる。

 

般若か、鬼のような顔に見えるそれは、

できればあまり対面したくないアラガミのものだった。

 

「ぼっ・・・ボルグ・カムラン!?」

 

『・・・の、盾の部分だよ』

と、リッカの注釈が入る。

 

がしょん、という小気味よい音がして、盾の全体像が訓練場の真ん中に登場する。

 

中型種ダミーまでしか想定されていないこの訓練場で、

その硬そうな強面はかなりの威圧感を放っていた。

 

サンプルとして、アラガミの素材を出来るだけ完全な形で持ち帰る。

 

そういう試みが比較的安全なエリアで行われる事はこれまで何度かあったが、

こんな巨大な部位を分解させずにそのまま保管していたことには驚きだった。

 

しかもそれを訓練場で目にすることになるとは、

と自分もエリナも思わず呆けてそれを見上げてしまう。

 

そして圧倒されているエリナに、スピーカーから届けられたリッカの注文は、

さらに彼女をぞっとさせるのに十分なものだった。

 

『さて・・・この貫通するのが極めて難しい装甲を、何とか破壊してみて!』

「え・・・ええええっ?!」

 

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