偶然とはいえ成功例が生まれたことで、その後の話はとてもスムーズだった。
「先輩なんでも出来ちゃうね・・・」
と、色々通り越して呆れ気味のエリナが、
椅子にもたれかかりつつそんなことを呟いていた。
無計画に無茶なことをするより、
エリナのように、基本から成長し、洗練されていく方が素晴らしいと思う。
そう告げると、エリナは何やら口をもごもごさせつつ、
顔を背けて「別に嬉しくないし」とかなんとか言っていた。
苦笑してから、リッカとギルの談義に意識を戻す。
「つまり、事前動作に関わらず、
オラクルの噴出によって瞬間的に神機を叩きつけるのは有効で、
それも充分実現可能な範囲だと分かった。
あの試作品をよりスリムアップさせるだけでも、かなりの成果が見込めるはずだよ」
「ああ・・・ただ正直言って、
あれはチャージスピアのコンセプトからだいぶ外れている。
隊長がやってみせたような動きをする機構を、新しく作る必要があるんじゃないか」
そんな調子で、だいぶ議論は盛り上がっていた。
ギルの提案に、リッカは楽しくてたまらないという様子で頷いている。
「そうだね・・・イメージは出来てるんだけど、
うん、これをどう言ったらいいかな?」
「至近距離から相手を穿つ、打突用の神機か・・・」
検証より先に想像が膨らんでしまっているらしく、
気の早い二人はもうそのネーミングに入っていた。
開発者らしい拘りを見せて唸りだす二人。
そこへぽつりと投げられた言葉が一つ。
「・・・なんか、アレみたいだったな」
というエリナのつぶやきに、リッカもギルもそちらを向いていた。
「え、あ、なんでもない・・・」
「いや、いいよ、詳しく言って?」
前のめりにリッカが問うので、エリナはちょっと気圧されながら答える。
「えーっと・・・避難民のキャンプで、見た事があるんですけど・・・
こう、地面にどすっ、って刺す、金属の棒・・・テントの足になってるやつ?」
そこで、リッカの目が輝いた。
「・・・杭だね」
棒状のもので、板に打ち付け、
あるいは地面に打ち込み、ある時は岩を穿ち、割り砕く。
と言えば、それは杭だ。
「確かにあの時、盾に打ち込まれた神機全体が、一本の杭みたいだった」
うんうん、と頷きながらリッカは言う。
そんな彼女の表情は、
頭の中で次々と閃きが浮かんでいるかのように、華やいだ笑顔へと変わっていく。
「それでいこう。もしかしたら、
まったく新しい神機ができちゃうかもしれない・・・!」
そして、彼女の目にはもう、そのイメージしか映っていないようだった。
リッカは我慢できないとばかりに、
部屋を飛び出す勢いで駆け出し、その足は整備区画へと向いている。
そして振り向きざま、彼女は手を振ってお礼を告げる。
「二人とも協力ありがとう!お礼は期待してて!ギルもね!」
俺はおまけか、と帽子の下でギルが苦笑しているのが見えた。
そんなリッカの勢いに翻弄され気味で、
いまいち何が役に立ったのか分からないという表情のエリナ。
もちろん、チャージスピアの可能性を切り拓くのに、
エリナのお手本が参考になったことは言うまでもない。
そう微笑みかけると、なんとなく誇っていいことは察したようで、
照れくさそうに頬を掻いていた。
意気揚々と駆けていくリッカの背中に、
自分とギルはお互い似たような笑みを浮かべつつ、ひらひらと手を振る。
そうして、第一回の神機研究会は、
予想外に目覚ましい成果を上げて幕を下ろしたのだった。
リッカとギルはその後いろいろと試行錯誤していたが、
神機全体を動かすと持っている腕が危ないということで、
対象を穿つための打突部分だけを、
オラクル機構によって飛び出させる仕組みにしようという結論に至ったらしい。
杭打ち神機と呼ばれたそれは、
完成さえすれば、デミウルゴスの弱点を打ち貫くどころか、
当初はそこに当てないようにと画策していたはずの、
その硬い外装ごとぶち抜いてしまうほどの威力を発揮できるらしかった。
諸々の認可が下りるまではかなりの期間待たねばならず、
形にするにもまだまだとのことだった。
しかし、その程度で二人の熱意は冷めないようだった。
エリナにその話をすると、
「試験運用するときはエミールでお願い」
とどこか怯えるような顔で言ったのが印象的だった。
・・・何故かと問うと、答えは単純で。
「・・・あれ、怖いから!」
あんなものを持ってあんなことをさせられるのは御免だ、
と首をぷるぷる振りながら言うのが、
普段オスカーを握っている時の安心したような表情と対照的で、
なんとなく微笑ましかったのだった。
あとがき:
考えるだけで楽しい、ということはままあるもので、
リッカさんたちもそういう楽しみ方はするタイプかな、と思いました。
GE3では二刀型神機とか出るそうですが、
適合するのは二機一対のハイブリッド?とか、色々考えられて楽しいですね。