「え?最近ギルがどうしてるかって?」
ふと思い立って訊いたのは、ギルバートのことだった。
「それはブラッドの隊長さんの方がよく知ってるんじゃ・・・
って、彼がここによく来るから?ああ、そうだね」
リッカは、傍のスタンドに立てかけられている神機・・・
彼女に調整してもらった自分の相棒―――を指差して言う。
「ここに来るのは専ら、神機のメンテのためだよ。
自分の神機は自分で面倒を見るって言ってね」
以前ならば、彼はまたそういう棘のある言い方を、と一瞬思ったかもしれない。
だが、彼の人となりと最近の変化を知る人物には、
それが微笑ましい意味合いであることを察することができる。
「うん、私たちにとってはむしろ嬉しいことなんだ。
自分で面倒を見るためには、神機を理解しなくちゃならない。
でもそれが出来れば、戦いにおいて神機とそれを扱う者の繋がりは、
ずっと強いものになるからね」
なんだかんだ神機の仕組みを分かってない人って多いし、
と苦笑しながらリッカは言う。
私もあんまり分かってない、と言うと、それはない、と一蹴されてしまった。
ブラッドレイジを使いこなせるのがその証拠、とリッカは主張するが、
じゃあギルは?という問いには、曖昧な表情で唸りだす。
「うーん・・・でもまあ、直感で本質を把握するのと、
知識として構造を理解するのは違うってのはあるかな。
・・・その点、キミは断然前者だね」
遠回しに・・・否、かなり直截的に馬鹿にされたような気がするが、
まったくもってその通りなので何も言わない。
しかし顔はしっかりとむくれっ面だったようで、
それを見ていたリッカはこらえきれなかったように笑い出した。
当然わざと言っていたわけだが、ひとしきり笑ってから、謝罪を一つ挟むリッカ。
ただ、実際はちゃんと褒めているつもりもある、と改めて彼女は言う。
「ぶっちゃけ、キミが神機やアラガミについて把握していること、
そのほとんどを、私たちは理解してないんだ。
ブラッドレイジがその筆頭だけどね・・・」
感応波によるオラクルの活性化や、逆に突然の神機の機能不全といった現象。
それは神機にもともと備わっている機能ではなく、
感応種のアラガミや、血の力を発現したブラッドに
神機が呼応しているという所の方が大きい。
ブラッドレイジはその極致とも言える、
血の力を介した神機とゴッドイーターとの一体化だ。
もちろんその制御システムはリッカが開発したものだが、
それはあくまで、無理が通らないように道理を通させているだけ、という形に近い。
ブラッドレイジ発動中の神機は限界までリミッターを外した暴れ馬に等しく、
用意したのは言わば、その手綱だ。
そして自分がその手綱をどうやって握っているのかというのは実際のところ、不明のままというのが現状なのだ。
と、リッカは急に遠い目になる。
「キミが起こした現象を後から私たちが分析して、
なんとか出した結論も、ほとんどが推測と後付け・・・
もう、メカニックの面目が立たないったらない。
うん、まったくもって不本意だよ」
ふてくされたようにぶつぶつとそんなことを言うリッカ。
「・・・作り手側が把握してない能力を次々に発揮しちゃうんだから、
ほんとに忙しいんだよ?」
・・・その八つ当たり気味で不満げな顔は、ちょっとわざとらしい。
そんなことを言われても、と困った顔をするのは彼女の思うつぼ。
ここはあえて、楽しいでしょ?と笑顔で問い返すのが一番だ。
「もう!」
悔しがるような声を上げたリッカは、なんとか怒った顔をつくろうとしていた。
しかし、その意に反して口元だけが笑っていて。
最高に楽しい、と彼女が口にしたままの表情を形作っていたのだった。