この世界がループしていることを俺は知っている   作:超高校級の切望

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恐竜編2

 そういえば、魔法を教えてくれた師匠によると先祖は青い狸にしてやられたそうだな。

 神秘が今より深かった古の時代で、だ。ふむ………

 

「逃げるか」

「あ!」

 

 俺はあくまで魔法使いの弟子。本場の魔法使いを倒すような相手と正面切って戦うつもりはない。

 幸いにも恐竜が居るんだ。使わせてもらう。

 

「─────」

 

 指を咥え笛の音を響かせる師匠の先祖に使えていたという先祖代々の配下の家系の一人から教わった操獣術。

 

「ッ!?ぴゅい………ぴゅういぃぃ!」

「ピー助!?」

 

 逆らった?くそ、思ったより絆が深いな。が、隙は出来た。俺は地下世界に迷い込んだ時、河童みたいな奴らを狩って食ってたんだ。幸い小さな森がある。逃げさせてもらうぞ。

 

「ま、待て!何かないか何かないか………こけおどし爆弾!」

 

 正直に虚仮威しと教えてくれてありがとう。お礼に落とし物を返してやろう。飛んできたニヤリと笑った顔が描かれた玉を蹴り返す。「え?」と間抜け面を晒した瞬間光と爆音が響きわたる。何だ、ただのスタングレネードか。まあこの音と光だ。テレビ局もよってくるだろうし、追ってはこれないだろう。

 

 

 

 

 

「のび太君大丈夫?」

「う、うん……」

 

 ドラえもんの言葉に部屋で腰を落とし息を大きく吐く。外では消防車やパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

「さっきの、黒マスクの仲間なのかなあ?」

「わかんない。声は、子供の声だったと思う」

「うん。のび太君ぐらいだったかなぁ……」

 

 僕と同じぐらい……まだ子供なのか。ひょっとしたら黒マスクの仲間ではないのかもしれない。でも、ナイフを持って脅してくるような奴だ。油断は出来ない……

 

 

 さて、どうするか。

 あれから数日、向こうから接触はない。バレてなかったのか………?

 だとしても、漸く掴んだ足掛かりをミスミス逃す手もない。今まで異常に思えなかったように、何時この記憶を普通じゃないと思えなくなるか………。

 

「本当だって!僕は、恐竜を飼ってたんだ!」

「………ん?」

 

 その声に空き地を見てみるとこの前のメガネが剛田と骨川に押さえられてスパゲティに顔を近づけていた。

 

「………何してんだ?」

「え?」

「お前は、同じクラスの………誰だっけ?」

「ジャイアン、ほら……明沢マワリだよ」

 

 ヒソヒソと剛田に話す骨川。まる聞こえだ。しかしこのスパゲティ、そこらのレストランじゃまず食えねー高級品だな。

 

「た、助けて明沢くん!」

「なあ野比、お前恐竜飼ってるんだって?」

「嘘に決まってんだろ。な、のび太?」

「嘘付いたバツで鼻からスパゲティ食わせてるんだよ」

 

 また変なことするな。

 

「う、嘘じゃないよ!」

「嘘付けぇ!」

 

 さて、これはひょっとして分かれ目なのだろうか?此奴は間違いなくループに関わっているはずだ。未来から来たロボットを持っているのだから間違いない。未来から来たロボットなんつー妙なもんと関わってんだ、間違いない。

 

「なら、その恐竜に合わせて見ろよ。それからでも遅くないだろ?」

「えー、どうせ嘘に決まってるじゃん」

「じゃあもし本当に恐竜がいたのにスパゲティ食わせたらお前等が鼻からタバスコ飲むか?」

「「…………」」

 

 俺の言葉に鼻を押さえる二人。

 

「ジャ、ジャイアン。証明して貰ってからでも良いんじゃない」

「だな……よし、早速見せろ!」

「あ、うん!明沢くんありがとう!あ、そうだ!しずかちゃんも呼んでくる!」

 

 

 

「のび太君は見ないの?」

「見ない!」

 

 謎の青い狸、ドラえもんの出した桃色のテレビの画面を眺める。タイムテレビと言って過去未来現在様々な場所を覗き見る道具らしい。

 恐ろしいな、これ一つ過去に持ってけば歴史が変わるぞ……。

 

「よし、時代合わせが終わったよ」

「おー!本物の恐竜だ!」

 

 映ったのは太古の海。生きて動いている首長竜……その中でこの前の恐竜を見つけた。一匹だけ種類が違うからわかりやすい。

 

「で、どれがのび太の恐竜何だ?」

「この虐められてる奴じゃない?」

「!?」

 

 剛田と骨川の言葉に野比がバッ!と振り返りタイムテレビを除く。

 

「ピ、ピー助!?何で……!」

「そりゃ、見るからに種類が違うからな。此奴は多分エルスモサウルスだな……何でアメリカに日本の首長竜送ってんだ?」

 

 これは別に俺が恐竜博士ってわけじゃない。昔、地底世界に迷い込んだ時に本物を見たんだ。

 

「ああー!本当だ、座標を間違えてる!」

 

 ドラえもんの叫び声に野比が顔色を変える。

 

「た、助けに行かなきゃ!タイムマシンだして!」

「う、うん!」

「俺等も行こうぜ!」

 

 野比の言葉にドラえもんが頷き引き出しの中に飛び込むと……え、何してんの此奴等……?と、困惑してると剛田が俺の腕をつかみ引っ張ってくる。

 これが、俺が最初に関わった野比に課せられた最初の試練だった。昔の俺に言いたいね、ほっとけば終わる。関わったばかりに、お前は面倒なことに巻き込まれ続けることになってしまったんだ、ってな……。


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