この世界がループしていることを俺は知っている   作:超高校級の切望

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恐竜編3

「ブハ!」

 

 上に乗った砂を押しのけ顔を上げる。何処だここは、何かやたらと霧が濃い。この潮のに臭い、海か?

 事前の記憶を探る。確か自分がループしている原因の可能性があるドラえもんという狸のようなロボットとその所有者である野比、その友人剛田、骨川、源と共に引き出しに飛び込み、時計だらけの謎の空間を進み、ここにいた。

 

「………ふむ?」

 

 そういえば過去をみるテレビを見た後、助けに行くと言い出してたな。その後引き出し………時計……時間を移動する装置、タイムマシンか?ならここは、恐竜時代?

 周りからザフザフと砂の中から野比、源、骨川、剛田が出てきて最後にドラえもんがタイムマシンと共に姿を現す。そして、そのタイミングで霧が晴れてきた。

 青い空に、それを反射する青い海。背後には眩しいばかりの日射しに曝され輝く緑の森。空を大きな影が横切った。

 

「プププ、プテラノドン!」

「本物か!?」

「ドラちゃん、ここって………」

「そう。白亜紀の世界だよ」

「………………マジか」

 

 潮の臭いも、緑の臭いも、生物の気配と全て本物だと訴えかけてくる。時間の移動、そんな事が本当に可能なのか……。なら、当然時間を巻き戻すことだって出来るはず……。

 

「彼処、ピー助と別れたとこ!」

 

 と、野比が二つの足跡と大きな何かを引きずった跡がある場所を指さす。あのフタバスズキリュウが通った跡なのだろう。野比が走っていき、剛田達もそれに続く。俺もそれを追う。

 

「………ん?」

 

 明らかにピー助とかいう恐竜ではない恐竜の足跡があった。鋭い爪……肉食恐竜か?と考え込んでいると野比がペットの恐竜の名を叫ぶ。暫くして海の向こうからピー助らしいオレンジ色の恐竜か現れた。骨川が握手を求めるように手を伸ばすとピー助も前足を伸ばす。知能が高いな、脳が大きいんだから当たり前か。

 

 

 

 

 折角の白亜紀だから遊ぼうというドラえもんの提案の下ドラえもんの不思議道具で水着に着替えた俺達。深海クリームとエラチューブという道具を使い海に潜る。

 凄いな、水圧を感じないし、鼻から息ができる。

 にしても、やけに透明度が高い。人が生まれる前の海はここまで綺麗だったのか。しかしドラえもん、明らかに何かを隠してたな。チラリと見れば何やらタイムマシン弄っている。

 

「…………これはまさか、帰れない?」

 

 このまま四月になったどうなるんだろう?何時もならループして終わりだが、ここは遥か過去の世界。

 実験してみるのも一興か。取り敢えずは飯だな。海の幸だらけだし……俺は一度陸に上がり、適当な木の枝をへし折り先を尖らせると海に再び潜った。

 

 

「うんめぇぇぇ!」

「古代の魚も、案外味は変わんないんだね」

 

 焚き火を囲み俺の捕った魚を焼き食べる一同。木の実なんかも放り込んでおく。取り敢えず熱しておけば寄生虫がいても大丈夫だろう。毒がないことは皮膚に当てたり舌で舐めたりして確かめてある。

 この時代の魚もなかなかだな。しかしドラえもん、何でも入るポケットの中には調味料まであったのか。

 

「………ん?」

 

 何か音が聞こえる。地面が規則的に揺れ出す。

 

「何だ?」

「地震……?」

「違うと思う……」

 

 困惑する野比達。確かに、これは明らかに地震ではない。もっとヤバい。

 ズシンズシンと言う音に加え、バキバキと枝をへし折る音が聞こえる。現れたのは巨大な影。13メートルはあるな。

 

「ティ、ティラティラティラ!ティラノザウルスゥゥゥ!?」

「グウウウウ」

 

 哺乳類の獣達とは全く異なる鳴き声。野比達がドラえもんと共に焚き火の後ろに隠れるが火は涎で消えかける。

 

「───────」

「グウウウ!?」

「ちょちょちょ!明沢くん!?」

 

 野比達から距離を取り指を咥え音を鳴らす。ティラノは音に反応して俺を睨んでくる。違うな、音程を変えて、リズムを………

 

「………………」

 

 やがてティラノから殺意が消えていく。いや、元々飯を食った後なのか、そこまで殺気を感じなかった。しかし完全におとなしくなった。

 そのまま森を指さすと森の奥へと消えていった。

 

「か、帰ろう!」

 

 ティラノが居なくなった瞬間野比が叫び走り足す。ドラえもんが慌てて止めるが剛田達も走り出す。よほど怖かったのだろう。ていうか彼奴等未来の道具操作できるのか?と、野比が座席に座った瞬間吹っ飛んだ。

 

 

 

 

「「「故障!?」」」

「あの黒マスクに襲われた時に壊れたみたい」

「あの時に……」

「そそそ、それってつまり……」

「私たち、帰れないって事……」

 

 ドラえもんの告白に顔を青くする一同。まず最初に剛田がドラえもんに掴みかかり、骨川がそれに続く。野比と源が止めようとしてピー助が遊びだと思ったのかドラえもんの首輪を咥えて持ち上げる。

 

 

 

 壊れたのは空間移動装置のみなので時間移動には問題ないらしい。しかし再び時間移動を行うには出発した地点、つまり野比の家の、野比の部屋の引き出しの座標に向かう必要があるらしい。かなりの無茶ぶりだな。この時代、日本はまだ海の底だろうに……。

 そんな事出来るわけがないと泣き出す一同。野比がタケコプターがあると言う。

 話の流れと名前的に物を小さくする道具でタイムマシンを縮めて、そのタケコプターとかいう空飛ぶ道具を使い移動するか、説明的にテレポート装置を使えばどうかと提案したが電池が持たないのと地図がインプットされていないと否定。

 骨川が電池を休ませながら使えばどうかと提案。当初は海があると否定した源、しかし今はまだ大陸が繋がっており歩いてある程度まで進める、それでいこうとなった。

 

「ところで、明沢君……さっきのティラノの事なんだけど」

「ああ。俺が操った」

「やっぱり。でも、どうやって?」

 

 まあ当然疑問に思うわな。別に、俺にとって隠し立てするようなことでもない。

 

「昔、獣使いの術を知る者に習ったんだよ。それの応用。恐竜は初だったけど、この分なら問題なさそうだな」

「秘密道具も使わずそんな技術が………でも凄いよ!それなら恐竜に襲われる可能性がぐっと減る!」

「………あまり期待されてもな。まあ、俺は俺に出来ることをやるさ……時にドラえもん、野比」

「のび太で良いよ」

「俺、ジャイアンな」

「ボクちゃんスネ夫」

「しずかで良いわよ」

「………ドラえもん、のび太。一年を繰り返す道具って、あったりするのか?いや、正確には時間は進んでるが年を取らず、発展してるが違和感を持たないなんて事………」

「んー、なくはないけどかなり大がかりかなぁ。時空警察が動くし……どうして?」

「いや、少し気になってな。ほら、お前って何でも出来そうだし……」

 

 まあこの反応からして、ループ(時間は進んではいるから違うか?)は此奴の仕業ではない。時空警察……名前からして時間移動を利用した犯罪者を取り締まる警察組織の目を欺ける程の組織か、あるいは時間警察そのものがループに関わっていると見るべきか。面倒なことになった……


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