この世界がループしていることを俺は知っている   作:超高校級の切望

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魔界大冒険編1

 小学5年生の春休みが終わり、小学5年生の一学期を迎えた。

 

 今年も変わらず世界は進まない。厳密には新しい建物は出来るし、ゲームも発売している。西暦も1年進み、しかし人間達の年齢は変わらない。

 

「大統領や総理大臣は変わるのになあ………」

 

 新聞を放り投げる。空中で折りたたまれ、千切られ、ごみ箱に落ちる。

 この1年、マワリにとっては3年の修行の成果だ。

 

 その間にも色々あった。のび太がドラえもんに泣きついたり、のび太が金儲けしようとしたり、ジャイアンの歌が何故かテレビで全国放送され救急車のサイレンが日本中に響いたり……。

 

 

 

 

 

「…………魔法?」

 

 5月、出木杉と勉強会をしていると、何を思ったのかのび太が訪ねてきて魔法について確かめてきた。

 

「頭の良い君達は笑うだろうけど」

「笑うなんてとんでもない。魔法は一昔前には信じられ、研究されていたんだよ」

「じゃあどうして今は科学だけが信じられてるの? 魔法が発展すればよかったのに」

「無意味だからな。箒で空を飛べると言われても飛べない。炎を出せると言われても出せない………出来ると言われているだけで出来ないことに何の意味もない」

 

 最も、E•S•P訓練ボックスがあくまで訓練用の道具であるように、過去には本当に超自然的な力を使える人間が居た可能性も0ではないが。

 

 ドラえもん曰く毎年の冒険に、それが関わらないとは言い切れない。

 

「どうしてそんな話を?」

「魔法があったら便利なはずだったのになあ。片付けも、呪文一つで」

「呪文唱えただけで効果が出るなんて、それこそ面倒だらけの世界になりそうだがな」

 

 というか以前、書いた魔法を本物に出来る『魔法辞典』でそんな騒ぎを起こしていなかっただろうか?

 

 

 

 

 のび太の石像が落ちていた。頭をよく見れば、髪の毛一本一本彫られている。彫られている、のか?

 

 精巧すぎる石像。ドラえもん曰く、人を石に変えるのは『ゴルゴンの首』という家庭用ロボットが持っている意味も、そもそも自立するAIを搭載した意味もわからないロボットがあるらしいが、それとは違う。

 

 とりあえずのび太の家に運んでやった。

 

「今度は僕の石像まで!?」

「…………まだあるのか?」

 

 ドラえもんの石像もあった。信楽焼………いや、何も言うまい。

 

「何か怖いものを見て、そのまま凍りついたような………」

 

 確かにどちらも揃って恐ろしいものを見たような表情を浮かべている。

 

「ひょっとして、これ、魔法で石にされた僕達なんじゃ………」

「そんなバカな。だったらここにいる僕達は何なのさ」

 

 タイムマシンで未来から来たのび太達が石にされた、とか? 石にするナニカの脅威を伝えるために過去に来て、しかし石にされた、とか?

 

 過去に戻り忠告すればどうとでもなる類なのだろうか? その可能性もあるし、のび太達が事態を軽く見た可能性もあるか。

 

「……………うわぁ!」

 

 マワリが考え込んでいるとのび太が叫ぶ。

 

「こ、こ、この石像! 汗をかいた!」

「汗?」

 

 ポタリと頬に雫が当たる。空を見上げれば、雨が降ってきた。

 そういえば台風が近づいているのだったか。

 

 ポツポツ降っていた雨は、しかし直ぐに本降りに変わる。おかげで濡れてしまった。

 

 

 

「マワリさんもお風呂入って。ご両親に連絡するけど、迎えにこれそう?」

「電話は良いですよ。俺の家、誰も居ないんで」

 

 父子家庭で、父は海外に飛ぶ。なので家では1人。最初は悲しかった気もするが、今や精神年齢はとっくに成人を迎えた。

 

 マワリが繰り返す1年の中、様々な分野に没頭できたのもそれが理由。傘借りて帰ってシャワー浴びればいい。と………

 

「なら、泊まっていこうよ!」

「…………なに?」

「いいでしょ、ママ?」

「そうねえ…………マワリさんが良いなら、雨も強くなってきたし」

「……………………」

 

 優しい家族だ。せっかくなのでお言葉に甘えることにした。

 

 

 

 

「マ、マ、マワリ! ドラえもん!」

 

 その夜、トイレへ行こうとしたのび太が変な声が聞こえたと2人を起こす。

 ドラえもんはマワリに寝ていていいよ、と声をかけのび太と2人で降りていった。暫くすると悲鳴が聞こえてきた。

 

「どうした!?」

 

 降りてみれば、玄関にのび太とドラえもんの石像があった。庭においていたはずの石像だ。

 のび太のママとパパはイタズラだと思ったのか片付けるようにしかり寝室に戻る。

 

「………石像の形、変わってない?」

「変わってるな」

 

 まじまじ見つめようとしたが、その前にママに早く寝ろと急かされ慌ててポケットに仕舞う。

 

 のび太は眠れないのかドラえもんとマワリに話しかける。石像について話すと、ドラえもんは明日調べると話を切り上げようとする。眠いそうだ。

 

 のび太はしつこく魔法が使えたらと呟き続け、文句を言いに顔を出したドラえもんが二度と起こすなと襖を締め、直ぐに飛び出してきた。

 

「!?」

「どうした、ドラえもん」

「お、お、お腹が急に…………緊急事態発生!!」

 

 一度22世紀にも戻るとタイムマシンに飛び込むドラえもん。工場に行くのかな? それとも病院だのだろうか。

 

 ドラえもんが心配なのび太は眠らずゴロゴロ転がる。枕よ浮かべ、なんて指を振ってみる。

 

「はぁ………もしも魔法が使えたら………もしも……ん? もし」

「………?」

「もしも………ああ!」

 

 何かを思いついたらしいのび太。ちょうど良くドラえもんが戻ってきた。お腹はもう痛くないらしい。食べ過ぎだと言うが、あの慌てた態度………さては痛くなくなったから病院行かなかったな。

 

「そうだ! 今ね、思いついたんだ!」

「え、何?」

「もしもボックスだよ! 電話をかければ、空想の世界が本物になるって奴!」

 

 あったな、そんな道具。カタログでしか見たことがないが………。

 

「ああ、その手があったか」

「ねえ、少しだけ魔法の世界に変えてみようよ!」

「ん〜、面白そうだなあ」

 

 魔法が実現した場合、生態系にどんな影響が出るのだろうか?

 

 いや、魔法があった前提で今の生態系になったと世界が作られるのか?

 

「もしもボックス!」

 

 取り出されたのは赤い電話ボックス。

 ダイヤル式電話のようで、数字はない。ところで何で電話ボックス? 開発者はダジャレ好きなのだろうか。

 

「もしも、魔法の世界に──」

 

 電話ボックス上部のなったら青い扇がカタカタ揺れ閉じていく。

 

「──なったら」

 

 ガチン、と反転して扇が赤になった。

 ジリリリリン、ジリリリンと響く電話のベル。作った人は相当な凝り性のようだ。

 

「さあて、これで魔法が使えるはずだ! 座布団よ浮き上がれ、マミマミ ルルンパ クルリンパ!」

「どら焼きよ いでよ クルリンパ!」

 

 魔法少女マミの呪文だ。何も起こらない。

 

「………呪文が違うのかな?」

「のびのびルルンパ クルリンパ!」

「アブラカタブラ いでよ どら焼き!」

 

 何も起きない。

 

「魔法が科学の代わりにあるなら、どら焼きを作る魔法はお菓子屋で修行してからだろ。空飛ぶ道具は………自転車や自動車代わりか?」

 

 窓の外を眺める。道の整備はされている。

 魔法の箒や絨毯があるとしても、少なくとも道を整備しなくてはならないらしい。

 

「明日、おじさんに魔法の絨毯あるか聞けばいいだろ。学校でも魔法を教えてるはずだ、そこでやり方を学べ」

 

 ファ、とあくびをして布団に潜るマワリ。それを見た2人も眠りについた。

 

 

 

 さて、翌日。

 最初に起きたのはドラえもん。雨もやみ、朝の空気を吸おうと窓を開ける。影が横切る。

 

「のの、のび、のび太くん! 起きて、早く早く!」

 

 寝ぼけながら窓の外を眺めるのび太。マワリも外に目を向ける。

 

「うわあ!」

 

 渡り鳥のように幾つも飛ぶ魔法の絨毯。鞄を持った空飛ぶ箒に乗った男が塀の近くを通ると触れることなく浮かんだ手紙がポストに入る。

 

 太った男性が慌てながらこちらに向かい、家スレスレで上に上がる。操縦をミスったのだろうか?

 

「「魔法の世界だ!!」」

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