世界最高峰の白桃の産地、岡山県。
西日本有数の素晴らしき果物王国。
県南の笠岡市が有するは笠岡諸島。
その瀬戸の島々の中に、六門島(ろくもんとう)と呼ばれる島がある。
笠岡の船着き場から真鍋島行きの船に乗って行けば、その真鍋島から直行便が出ている。
朝と夕方の一日二便。
出島の扇島(みしま)が公的な船着き場になっていて、私的な身内の船着き場は島の南側中央部に位置する。
六門島に住まうおのこは、井東家の中年男喜作と彼の親戚で小学生の新一。
おなごは艦娘。
ちなみに人工島の扇島には諜報員系自称オランダ人たちが商館兼住居で生活しており、最近は伊賀市甲賀市出身のくノ一たちが駄菓子屋的店舗で起居している。
さて、その六門島へ素晴らしき桃が幾つも幾つも届けられた。
マスカット・オブ・アレキサンドリアや、近年開発されたベリーAなども一緒である。
麗しき形以外を許さぬ市場から弾き出されたモノ。
少しばかり見目よろしからざるモノ。
瑕疵(かし)ありて許されなかったモノ。
そういったものモノが、艦娘たちの元へと運ばれてきた。
形あしくとも味うまかりけりな。
ならば。
愛持ちてそれを喰らうが手向け。
世の中に
敵(かたき)というは
旨きもの
どうぞ敵に
廻り合いたし
ぼっけえ数の桃や蒲萄をいただいたけえ、艦娘のみんなもでえれえ喜んどる。
うめえもんを食べるのはええことじゃ。
桃は足がはええけえ、はよう食べんとおえん。
まあ、おえんく(筆者註:駄目に)なっても干したり煮たりすれば長持ちするじゃろう。
こんふぃちゅーるとかぴゅーれとか、なんかハイカラなメリケン言葉も聞こえてくるがようわからん。
うまけりゃそれでええ思うんじゃがのう。
『瀬戸のべた凪(なぎ)』でちいと暑いんじゃが、まあ、仕方ねえのう。
北海道にでも行けば涼しいんじゃろうが、そうもうもうは行かんのじゃ。
新一は近くにおる艦娘たちに団扇(うちわ)であおがれとる。
これがホンマの左うちわじゃな。
……違うか。
パフェゆうハイカラな食いもんを、産まれて初めて食うた。
でえれえうめえがな。
これで後七五日長生き出来そうじゃ。
白桃、蒲萄、生クリーム、木の実、バニラアイスクリーム。
贅沢にも、バナナやチョコレートといった材料もつこうとる。
バナナは台湾、ソースとして使われたチョコレートは欧州経由のアフリカ産じゃと。
なんでも古きメリケンの甘味でバナナスプリットゆうのがあって、それを参考に作ってみたそうじゃ。
東京の老舗ホテルでそげなんを食べられるそうじゃけえ、そこのも一度食べてえのう。
そう漏らしたら、なんでか知らんけど鳳翔さんと間宮さんに腕をつねられてしもうた。
ふざけた吹雪ちゃんや北上さんがワシの口の中へひょいひょい匙を突っ込むけえ、他の駆逐艦の子たちが真似して大変じゃった。
バナナを見つめた後でワシを見て、にんまりする娘たち。
その夜、複数の娘から密林とか収穫とか熟成とかスプリットとか言われて、いろいろ大変じゃった。