無粋な煉瓦の壁
無骨な鋼鉄の檻
ただ帰れる場所が
欲しかった
ただ戻れる場所が
欲しかった
決めた
あなたを私たちの
提督にする
あの人のこと
知らないことばかりだ
妖精
それは魔法使いのみが
契約し能(あた)う存在
魔の者
人の手にはあまる存在
彼らの甘言に
耳を傾けてはならない
彼らの提案を
安易に受けてはならない
大きすぎる代償を
払う破目に陥るのだから
やさしい顔をして
残酷な契約を迫る
きれいな妖精の言葉に
耳を傾けてはならない
ハニームーンの
準備をしよう
中年男と共に
瀬戸の孤島へ
向かった艦娘たち
見知らぬ土地
見知らぬ人
孤独だった彼女たちに
セカイはやさしく
手を差し伸べる
『魔法』
艦娘たちの中で
止まっていた
時計の針が
動き始める
洋風要塞都市にするか。
和風要塞都市にするか。
妖精たちは賑々しく議論しながら、六門島(ろくもんとう)の改造計画に着手している。
かのドイチェラントの、頑健なるブンカーをも凌ぐ防御力が求められた。
地下街の建設にも着手する。
妖精たちが妖精郷から自由に往還出来るようにと。
そのセカイは、ヒトのセカイのすぐそばにある別世界になりつつあった。
穏やかな瀬戸の孤島はゆるやかに、しかし大胆な改革を迎えつつあった。
ちょこまかと妖精たちが島のあちこちで走っとる。
欧州風の風呂がいつの間にか出来とって、あん時はでえれえ驚いたがな。
冬休みを終えて真鍋島の小學校へ向かう新一の送り迎えは、大和さんたちが引き受けることになった。
ありがてえのう。
新一が母親や姉を欲しがっとったのは以前から知っとったから、丁度えかった。
お風呂も寝るのも一緒じゃけえ、うんと甘えたらええ。
随分沢山おるようじゃが、ま、かまやあせんじゃろう。
田畑でも妖精たちが艦娘たちと一緒に手伝ってくれるけえ、大いに助かっとる。
妖精なぞ、おとぎ話の世界の話とばあ思っとったが現実は受け入れんとおえん。
燕尾服姿で骨頭の妖精があちこちに指図して、てきぱきと妖精たちが動いとる。
なんともはあ、見事なもんじゃ。
洋風の城と和風の城とどちらが好みかと聞かれたので和風じゃと答えたら、大喜びする妖精と落胆する妖精とがおった。
ええと、ワシの見間違えでなかったら、あれは天守閣じゃなかろうか?
翌朝には建築が既に始まっとって、どんどん二の丸三の丸と作っとる。
いったい、なにと戦うつもりじゃ?
住居問題は妖精たちに任せるとして、食料問題を解決せにゃおえん。
うちに出入りしとる行商人の美濃柱さんと喪黒(もこく)さんとの双方に話を振る。
食いもんの恨みはきょうてえけえのう。
その距離を狭めたい艦娘
距離感のわからない艦娘
愛さえ知らぬ戦乙女たち
恋さえ知らぬ戦乙女たち
鈍感な提督たち
やさしき男たち
おっさんと少年
素朴な人間たち
恋愛を知らない提督と艦娘
ヒトとツクリモノの家族ごっこ
性的に幼い者たち
無知なる者が殆どのセカイ
変革期など訪れそうにない
もしも切っ掛けがあったならば
なにかしら変わるかもしれない
妖精たちから酒が欲しいと言われたんで、島で醸した芋焼酎と葡萄酒と蜜柑の混成酒と檸檬の混成酒を進呈しといた。
輪になって陽気に踊る妖精たち。
酔ってふわふわ浮かぶ妖精たち。
いつの間にやら艦娘で酒好きなもんたちも寄ってきとったけえ、その子たちにも酒を振る舞った。
間宮さんたちが酒の肴を持ってきて、段々宴会になってきょうるが。
大淀さんがワシの隣で、酒とか羊羮やらの事業展開計画を説明する。
吹雪ちゃんがやって来て、酒を呑んでみたいと言った。
女学生に見えるんじゃけど、ええんじゃろうか?
大淀さんに確認したら、実質年齢は成年を過ぎているので構わないでしょうとのことじゃった。
蜜柑の果汁水で割った檸檬の混成酒を出してみる。
おいしいおいしいとくいくい呑むので慌てて止めさせたんじゃが、暑い暑いと彼女は服を脱ぎ出した。
周りの艦娘たちも暑い暑いと脱ぎ出す。
負けてはいられませんと、大淀さんまで脱ぎ出した。
おえんがな。
結局、ワシの周りで裸ん坊の艦娘たちと妖精たちがぐるぐる踊ったのじゃった。
どんなものが
どんなことに
影響するのか
なにを助けて
なにを追い出すか
奇妙な慣(なら)わし
けったいな風習
来訪神
カムイ
旧くから
伝わること
破っては
ならないこと
守らなくては
いけないこと
薬にもなり
毒にもなるもの
いつの間にやら
ヒトの隣にいる
モノたちのこと
ヒトは
ヒトならぬモノたちと
隣り合わせに
生きている
そのことを
よく知らないままに