瀬戸の艦娘   作:輪音

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猛禽

 

 

 

可愛らしい声

やさしい声

愛らしい声

ゆるやかに

声をかけて

微笑み向ける娘たち

かつて血にまみれた手で

少年の頬をそっとなぜる

無垢な男の子は

なにも知らない

肉食系の

鋭い爪を持った娘たちが

覚醒しつつあることを

姉のように慕う娘たちの

本来の戦いの有り様を

 

『猛禽』

すっと細められた瞳は

捕捉完了のあかし

 

 

 

フクロウの赤ちゃんが六門島(ろくもんとう)にやって来ました。

どこかからか、紛れてきたようですね。

初めて見る猛禽類に、艦娘たちも興味深い視線を注ぎます。

白いカッターシャツと黒い半ズボンがよく似合う新一君が赤ちゃんを撫でると、その子は目を細めて喜びを表しました。

そこへ、すっと頭を差し出す大和。

最強戦艦は骨抜きになっています。

あらあら、とろんとした顔つきですね。

フクロウと同様、頭を撫でられる彼女。

ムフームフーという鼻息が聞こえます。

 

「後でいっぱいちゅーちゅーしてくださいね。」

 

小さな声で、新一君の耳元にやさしく囁きかける大和。

嬉しそうに嬉しそうに言いました。

 

 

日が落ちて、瀬戸の島も真っ暗です。

お風呂場には何名もの艦娘がいます。

すっぽんぽんの天龍が、木曾と一緒に浴場から出て来ました。

世界水準の大きなおっぱいが、ぷるんぷるんと震えています。

そこへ新一君が、お姉ちゃんたちと一緒に脱衣場へ入って来ました。

新一君は大和に抱っこされ、少し恥ずかしそうに見えます。

お姉ちゃんたちに服を脱がされている少年を見て、天龍は隣の木曾に小さな声で話しかけます。

 

「なあ、あれって過保護じゃないのか?」

「まあ、好きにやっているのだろうさ。」

「あんなちっちゃいガキによってたかって……。」

 

天龍は会話を続けられませんでした。

目を細めた艦娘が何名も彼女を見つめていたからです。

その視線はまさに猛禽。

捕食者。

深海棲艦の群れに何度も何度も果敢に突撃した天龍でさえ、それは金縛りにさせる程の威力でした。

彼女の妹の龍田さえ、ムーミン谷の寒い冬を思わせる視線を向けています。

それは一触即発の気配。

意識が吹き飛びそうになります。

ちょん。

阿部氏。

隣の木曾が秘孔を軽く突きます。

眼帯娘は意識を取り戻しました。

お姉ちゃんお姉ちゃんとやさしい声をかけられた艦娘たちは、あっという間にとろとろになってしまいます。

冬は過ぎ、雪解けが訪れました。

その好機を逃さず、世界水準のおっぱいを持つ軽巡洋艦は素早く言います。

 

「あ、まあ、姉なら弟を世話するのも仕方ねえな、姉ならよ。」

「まあ、そうなるな。」

 

とある航空戦艦の口調で軽く返し、木曾は艦娘たちを注視します。

喜悦を顕にしている娘らを。

まだ今のところは大丈夫か。

彼女は心の中で呟きました。

 

 

宿泊棟へ向かうべく、軽巡洋艦たちは廊下を歩いています。

 

「なあ、木曾。」

 

建設中の城塞を窓越しに眺めながら、巨乳の軽巡洋艦はマント姿の軽巡洋艦に話しかけました。

 

「なんだ?」

「お前、あのガキとおっさんとどっちがいい?」

「気になるのか?」

「んー、まあな。」

「あの坊やは龍田も気に入っているようだし、お前はあっちに付くのか?」

「あー、まだ考えちゃいない。」

「北上の姉貴が、どうやらあのおっさんを気にし出しているみたいでな。」

「へえ。」

「球磨多磨大井の姉貴たちは静観するつもりらしい。こわいのは、派閥が出来て俺たちが一枚岩で無くなることだ。」

「確かにな。だがよ、ガキとおっさんは仲がいいぜ。」

「そうだな、考え過ぎかもしれん。」

「俺たちが防波堤になるしかねえ。」

「武蔵か長門にでも相談しようか。」

「ああ、近いうちにそうしようか。」

 

そこへひょこひょこと、フクロウの赤ちゃんが近づいて来ました。

眼帯娘たちは、やさしくやさしく赤ちゃんを撫でます。

 

人懐こいケモノは目を細め、ホウ、とひと鳴きしました。

 

 

 

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