東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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気が付けば地上へ

「うぅ…ん、んん?」

 

目が覚めると、私は幻想郷に戻っていた。

何故か紅魔館の前で眠っていた。

私には何の記憶も無い…え? 何? どう言うこと?

まるで記憶が無い、分かる事は日が暮れ始めていると言う事だけ…

 

「…うぅん」

 

頭が痛い…でも、なんで頭が痛いんだろう。

まるで記憶が無い、何も覚えていない…訳が分からない。

私は確か、夢の道だったかな、そこで奇抜な格好をした女の人に会って…

あの人の記憶は微かにあるんだけど、それ以上が何も無い。

戦って負けたのかな? でも、戦った記憶は一切ない。

でも、変だなぁ、紅魔館は明かりが点いてないし

普段なら門番をしているはずの美鈴さんの姿も無い。

 

「うーん…どうして誰も…」

「はぁ……今日も見付からなかったわね」

「うん…フィル、何処に行ったんだろう…」

「確か八雲紫がフィルを連れ帰ったんでしょう?」

「うん、外の人間を驚かせて欲しいってお願いされたときに言ってたよ。

 これが終わったら、フィルが幻想郷に帰ってくるって…でも」

「何処を探しても姿は見付からなかった…明日は人里に行ってみましょうか」

「うん…」

 

そんな話し声が何処からか聞えてきた。

私はすぐに声が聞えてきた場所を向いた。

そこにはレミリアお嬢様、フランお嬢様

咲夜さんと美鈴さんと小悪魔さんに背負われて居るパチュリー様が居た。

 

「はぁはぁ、私まで出向く必要は無いと思うんだけど…」

「自分から行くって言ったんじゃ無いの」

「それは、一応は紅魔館の大事な家族でもある訳だしね」

「でも…ん? あ、あそこあそこ!」

「え? な…あ、あぁ!」

「あ、ただいまです!」

「ふぃ、フィル-! あんたぁ!」

 

お、お嬢様の表情が変った! これは怒られる気がする!

 

「フィルー!」

「へ? あぁ!」

 

だけど、お嬢様より先にフランお嬢様が私に体当たりをして抱きついてきた。

 

「良かった! やっと会えたよ! 探したんだよ!?」

「全くその通りよ! 2ヶ月以上も!」

「すみません! まさか外の世界に飛ばされるなんて思って無くてぇ~」

「言い訳は聞いてないわ! このこの!」

「あぁ~、ゆ、揺らさないでくださいよぉ-!」

「全く、本当心配したんだから、何処かでのたれ死んでるのかと」

「うん! でも、良かった、また会えて」

「私のペットなら、私の命令無く勝手に何処かに行ったら駄目よ!?」

「すみません! もうこんな事はしません~! …た、多分」

「多分じゃ駄目でしょ!?」

「い、痛いです!」

 

うぅ…でも、何だか安心した、心配してくれてたんだ。

 

「フィル、お嬢様、本当に心配してたのよ?」

「はい、すみません」

「でも、無事戻ってきて良かったですよ」

「あはは、あ、あの、心配を掛けてすみません…でも、ありがとうございます」

「え?」

「私なんかを心配してくれて」

「何言ってるの? 家族だよ? 心配するのは当たり前じゃない」

「私のペットである以上、私の指示無く姿を消すのは許せないからよ」

「素直じゃありませんね、お嬢様」

「黙りなさい」

「はぁ、なんでレミィってここまで素直になれないのかしらね」

「そこがお嬢様の魅力でもあると思いますよ?」

「弱点が長所って感じですね、私もパチュリー様の弱点は好きですし」

「私に弱点なんて無いわ」

「よく言うわよ、パチェは弱点だらけでしょうに」

「レミィ、私はあなたにだけは言われたくないわ」

「な! きゅ、吸血鬼が弱点だらけとでも言いたいの!?」

「そこまでいってないけど、自覚があるのね」

「く! きゅ、吸血鬼は誇り高き種族、ハンデがないと勝負にならないからね」

「ハンデが大きすぎると思うわ」

 

確かに吸血鬼は弱点が多いからなぁ、日の光に十字架、流水、豆

言いだしたらキリが無いくらいに弱点が多いし。

 

「さて、楽しく話をしている中悪いんだけど…臭いわよ?」

「え?」

「…言われてみればフィル、臭うわ」

「え!?」

 

そ、そう言えば…幻想郷に帰ってきて、英子さんの家に泊まったとき

お風呂に入る前に外の見張りについていったっけ。

それで、その後影狼さんに出会って、お風呂を貰う前に

てゐさんが来て、月へ向ったんだっけ…

その後、何をしたのか覚えてないけど…服に少し汗がついてるから

結構動いたのかな…あ、そう言えば月の異変ってどうなったの!?

 

「そう言えば、月の異変…」

「は? 月の異変? 何を言って」

「そこは大丈夫よ、無事解決したわ」

「うわ! ゆ、紫さん!」

「や、八雲紫、まさかまたフィルを攫おうっての!?

 流石に2ヶ月ぶりに帰ってきたこの子をすぐにお前に連れて行かれるわけにはいかないわ!」

「安心しなさいな、そんなつもりは無いわ」

「と言うか、お前が出たって事は、この子が帰ってくるのが遅かったのは

 お前がフィルを攫ったからなのかしら?」

「確かに前攫ったことはあるけど、今回は違うわよ。

 攫ったのは月の賢者、私も結構困ってたのよ」

「な! 月の賢者って事は、あの八意永琳が! あいつが動くほどの事があったの!?」

「あったのよ、あなたがフィルを探している間にね」

「じゃあ…その異変を今回解決したのは」

「えぇ、あなたのペット、フィルよ」

「で、でも、私、記憶が全くなくて!」

「何を言って……でも、嘘では無さそうね、でも安心して頂戴。

 異変は解決された、あなたの手によって」

「でも…何も覚えてないのに…」

「本気になってたから、記憶が飛んだんじゃ無いのかしら。

 流石に月を巻き込むレベルの異変、本気を出さない訳にはいかないでしょうし」

「そ、そうなのかなぁ…」

 

もしかして、あ、あの時みたいに…また暴走してたのかな?

でも、あの時は記憶があったけど…どうしてだろう。

 

「ま、その事は良いでしょう、今はお風呂に入ったらどう?

 結構な臭いよ?」

「は、はい…」

「あ、私も入って身体を洗うよ」

「え!? ふ、フランお嬢様が!?」

「な! 何言ってるのよフラン!」

「良いじゃん、お風呂くらい」

「駄目よ、例え女の子同士でもそんなはしたない」

「一緒に入るの!」

「で、でも、お嬢様達って水が苦手じゃ」

「苦手なのは流水、お風呂は問題無いわ」

「あ、なる程」

「では、湯を沸かしてきましょう」

「なら、温泉なんてどうかしら?」

「温泉ですか?」

「そう、あなたも入ったでしょう?」

「は、はい、地霊殿で」

「今回は地上の温泉、どう? 全員で入れるわよ?」

「何を馬鹿な…」

「今日は十五夜では無いけど、綺麗な月を拝めるわよ?」

「お姉様! 私、温泉に行きたい!」

「フラン…はぁ、まぁ良いわ、良いでしょう、行ってやるわ」

「ま、成分は地霊殿の温泉と差は無いのだけどね」

「地底よりも風情ある景色の方がマシでしょう」

 

地上の温泉…幻想郷に来てから2度目の温泉、楽しみだなぁ。


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