東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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温泉談義

色々と考えないといけない事は沢山あるんだけど。

今は温泉を楽しまないとね。

何だか癒やされるよ…体中が芯からぬくもってる感じがする。

 

「でも正直、ここまで集まると酒が欲しくなるぜ」

「お酒は20になってからじゃ無いと駄目って聞きました」

「何だよ、その今更、私達は当たり前の様に呑んでるぜ」

「えー…」

「外の世界の常識が幻想郷で通用するわけ無いのよ」

「確かにそうですけど…」

「て言うか、何処で知ったの?」

「外の世界でしばらく過ごしてる間に知りました。

 暇な時間が多かったので、暇を潰すために本を読んでましたし」

「どんな本よ」

「えっと、広辞苑とか、国語辞典って言う大きな本です」

「それは本では無いと思うわ、いや、確かに本なのだけど

 分類的には資料とか、そう言う物よ、どれ位読んだの?」

「全部読みました」

「1ヶ月で大した物ね、で、学びにはなったの?」

「はい、大体の事は覚えました」

「冗談には聞えないわね」

 

そこまで難しくは無かったと思うけど、でも、確かに沢山字があったし

読むのは大変だったかも知れない、でも問題は無かった。

最初は読むのに苦労したけど、すぐに法則性が分かって読めるようになったし。

まずは国語辞典から読んでたら良かったと後悔したけど。

あっちは漢字の読み書きが全部書いてあったし…うぅ順番って大事。

 

「じゃあ、この漢字は分かるかしら」

 

紫さんが文字を書いたのは「瓣」と言う漢字だった。

あまり使っているのは見たこと無いけど、国語辞典に書いてあったのを覚えてる。

 

「はなびらです!」

「へぇ、大した物ね、結構難しいと思ったのだけど」

「外の世界でお勉強してきました! 今なら英語でも分かりますとも!」

「紅魔館の一員としては、当たり前の能力ね。

 勿論、書くのも読むのも出来るのよね?」

「はい、問題ありません!」

「学習能力が凄まじいですね、1度予想だけでグリモワールを詠唱してましたし」

「あの時と同じ呪文を今でも唱えられますよ」

「記憶能力も馬鹿に出来ないわね、結構ドジな娘だと思ってたけど」

 

確かに結構失敗してたしね、そう思われても仕方ないかも。

でも何だか、私は時間が経つにつれて色々と出来るようになってる気がする。

空を飛んだのは永琳さんのお薬のお陰だけど、攻撃も出来るようになったし

何だか動くスピードも速くなってる気がする!

もしかして私、成長してるのかも!

 

「最初と比べると、大分能力も上がってますしね」

「本当よね、短期間で良くここまで成長出来る物よ」

「はい! もっと頑張ります!」

「……果たして成長なのかしらね~」

「え? 成長ですよ!」

「多分そうよね~」

 

何だか気になるけど…今は良いかも。

 

「…まぁ、そうね、あなたの成長性は侮れないしね」

「ありがとうございます!」

「とは言え、ここまで短期間で実力を付けるのは

 少々不自然な気もしますが…人間ならば、1年は間違いなく掛るでしょうに」

「人間の常識と半獣の常識は違うんでしょう、多分ね」

「妖怪の方がむしろ成長が遅いと思いますがね」

「ほら、妖怪であって妖怪じゃ無いからね、フィルは。

 半分人間で半分犬だから、丁度いいとこ取りをした形なんじゃ無いの?」

 

い、犬じゃ無くて狼ですと言いたくなったけど、お嬢様が犬というなら

犬と言うことで良いかな、そんなに重要視するところでも無いだろうし。

 

「だと良いんだけどね、まぁいいや」

「随分とフィルの事を気にするんだな、お前らしくも無い」

「まぁ、ちょっと特殊だしね」

「半獣なんて存在、結構珍しいですからね」

「そうなのか? 半妖が居るんだし半獣が居ても」

「冷静に考えてみなさい、半獣と言う事は人と獣のハーフって事よ?

 あなたは犬や狼相手に人間が欲情して子を残すと思ってるの?」

「そ、それは…まぁ、あり得ないな」

「それがあり得てる存在があの子なのよ、レアケースって奴ね。

 基本、人と獣の間には子なんて出来るはずが無いのだから。

 身体の構造上、当たり前なんだけどね」

「じゃあ、私はどうなんでしょう、人間と幽霊のハーフですけど…」

「ほら、好きな人が死んで幽霊となって出て来たらあり得るでしょ?

 幽霊は元人間、少し人間側に才があれば、子を成すことも可能でしょう」

「なる程、じゃあ、香霖はどうなんだ? 人間と妖怪のハーフだったはずだし」

「それは簡単でしょ、この場にいる妖怪を見なさいよ。

 妖怪は基本的に人に親しみやすい姿に変化するのよ?

 人間が妖怪を好くことは何ら不思議は無いわよ、親しみやすい少女の姿なのだから。

 問題は、妖怪が人間を好くと言うことだけど、一応あるにはあるのよ」

「まぁ、そこまで敵対的な妖怪があまり居ないのは間違いないのかもな。

 人食い妖怪も人間と一緒に温泉に入る始末だぜ」

「いや、あなた達が異常だから一緒に入ってるのが正しいでしょう」

 

あはは、確かに霊夢さんも魔理沙さんも咲夜さんも凄く強いからなぁ。

咲夜さんなんて時間を止めたりするもん、勝てないよ。

 

「この中で最も妖怪側に勝算がありそうな人間は魔理沙かしらね」

「酷くないか? 確かに私はあまり強くないかも知れないが

 弾幕勝負で私が負ける事は早々無いぜ!」

「いやいや、紫、ここは妖夢でしょ、剣も無いわよ」

「えぇ!?」

「剣が無い妖夢なら容易に勝てるでしょう」

「それもそうね、でも魔理沙も道具が無いし、勝算はないでしょ?」

「た、確かにミニ八卦炉が無いと結構厳しいかもな…

 だが、それを言うなら霊夢も道具は無いぜ」

「霊夢はほら、素の身体能力がフィル同様化け物だから」

「私、そんなに身体能力」

「いや、流石に笑うわよ? あなた吸血鬼である私並に動けるじゃない」

「竹林の時、凄く速かったね」

「あれは周りが竹林だったからですよ、私は空を飛べませんし」

「一時的には飛んだんでしょ?」

「飛びましたけど…空を飛ぶより地上で戦った方が楽だと思いました」

「とんでもない発言ね、弾幕を避けるときも空より地上の方が楽って」

「何か安心出来ます、地上に足が付いてると。

 足下に何も無いと何だか不安になると言いますか」

 

やっぱり地上に足が付いてる方が、気分的には楽だしね。

空を飛びたいと思ってたけど、意外と今のままの方が楽な気がするよ。

 

「はぁ、本当妙な物よね、パチェもそう思うでしょ? やっぱり空を飛んでたほうが」

「……」

「パチェ?」

「も、もう無理…」

「パチェ!? のぼせてるの!? 早すぎるって!」

「あ、あまり長湯はしないから…」

「はぁ、小悪魔」

「はい、分かりました」

 

小悪魔さんがパチュリーさんを抱えて温泉から出ていった。

 

「それじゃあ、丁度良いし、私達も上がりましょうか」

「そうね…後、向こうも大変そうだし」

「ふぅ、丁度良い!」

「うぅ…」

「……」

「凍ってる!」

「これはあの人食い妖怪死んだかしら」

「し、死んでは…居ないの…だぁ…」

「早く出れば良いのに! い、急いで温かい方へ!」

「あ、まっ」

「えりゃ!」

「熱いぃいい!!」

「あぁ! ご、ごめんなさーい!」

「あんな寒い湯に入ってて、この温度に投げ込まれたら熱いでしょうね」

「フィル、何も焦る必要は無いのよ? あいつが死んでも私達には関係ないし」

「関係ないわけありませんよぉ!」

「で、そっちの緑の妖精は?」

「あ! 急いで暖めます!」

「あ、温かい…」

「よ、良かった…」

「私もあんな風に優しく移動させて欲しかったのだ…」

「ほら、失敗して学習したわけだし」

「それは分かるけど…うぅ、でも、丁度良い気がするのだ」

「はいはい、そうでしょうね」

「もぅ、2人ともこの程度で寒いと言ってたら駄目だよ!」

「ぬるま湯で熱いと言ってたチルノが言うなぁ!」

 

あはは、な、何とか2人が無事で良かったよ。


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