東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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考え事

温泉の後、私達はすぐに紅魔館に戻った。

久し振りの紅魔館で、何だか安心するよ。

最初はこの紅魔館に来た訳なんだけど

最初以降、殆ど紅魔館で過ごした記憶は無いしね。

紫さんの修行とかで色々な所に行ったし。

それでも、何だかお家に戻ってきたような、そんな安心感があるよ。

 

「今日はもう休みなさい、色々と大変だったでしょう?」

「え? でも、私はまだ元気ですので! 今からでもお仕事を!」

「元気がいいのは良い事だけど、今は休みなさい。

 何かあなたはすぐに無茶しそうだし、帰ってきてあまり経ってないのだから

 疲れているでしょう? 疲れていなくても疲れはいつの間にか溜まる物よ。

 だから、咲夜にも今日はもう休むよう伝えてあるわ」

「お嬢様…!」

「か、勘違いはしないで、身体を壊されたら長く仕事が出来なくなるから

 そっちの方が今日1日仕事が出来ないより面倒だと思ってるだけよ。

 食事は今日1日、美鈴に頼んであるから大丈夫よ」

「はい! あ、でも、美鈴さんはいつも通りなんですね」

「あの子は妖怪だし、生半可な体力じゃ無いからね。

 でも、門番の仕事もういいと伝えているから

 休み扱いになるのかしらね」

「ですが、私も妖怪です」

「半分ね、半分は人間でしょう? 無茶は禁物よ。

 そもそも美鈴も実質休みなのだから気にしないでいいの、ほら休んでなさい」

「はい」

「それじゃ、料理が出来たら私が特別に伝えに来てあげるから感謝なさい」

「ありがとうございます!」

 

お嬢様はそう言い残し、私の部屋から出ていった。

何だか罪悪感を感じるけど、お嬢様が気を利かせてくれてるのだから

応えない方が失礼かも知れない。

だから今日はお嬢様のお気遣いを無駄にしないよう凄そう。

それにしてもこの部屋、何ヶ月も留守にして居たって言うのに

凄く綺麗だよ…塵1つ無い…きっと私がいない間

咲夜さんがお掃除しててくれたんだ…嬉しい!

布団もふわふわだし、触ってて凄く気持ちいい!

えっと、確か部屋の角にあるクローゼットに…あ、あったメイド服!

その隣のクローゼットは普段着、うぅ、何だか懐かしいなぁ。

……あ、この服を縫わないと、縫うってやったこと無いんだよね。

お裁縫道具って何処かにあるかな? えーっと…あ、あった。

ベットの隣にある化粧台に入ってた。

…そう言えば、私って化粧したこと無いんだよね。

うーん…化粧道具とかもあるけど…どうだろう、やり方分からないよ。

この化粧台も髪の毛を整えるときにしか使わないしなぁ。

化粧は女のマナーって何処かで聞いた気がするけど、やり方が分からないし。

あぁ、そうだそうだ、それよりも服を縫わないと。

折角買って貰った、思い出の服をこのまま放置って嫌だしね。

でも、何でこんなに大きな穴がお腹に開いちゃったんだろう。

まだ肩とか、そう言う、意識が行きづらい場所なら分かるんだけど

お腹なんて意識は当たり前に向くし、こんなに大きな穴が開いてたら気付くし。

とりあえず着替えて…そして、この服を縫うんだ。

 

「よいしょっと」

 

と思ったけど、ここは私の部屋だし外着を着る必要は無いかもね。

そんなに寒いわけでも無いんだし、下着でいいかな。

そう言えば、ブラジャーってあまり付けないなぁ。

いつもサラシだった気がする、あまり大きくないし

ブラジャーは必要無いだろうし…あ、でも今は

スポーツブラを付けてた、パンツも女の子らしからぬボクサーパンツとスパッツ。

化粧台で姿を見てみたけど、本当に可愛くない下着だよ。

こう、狼かワンちゃんのパンツを履けば良かったかな?

でも、履くの恥ずかしいし、そもそもそんな物は無いしね。

ドロワを履くべきなのかな? お嬢様もフランお嬢様もドロワを履いてるみたいだし。

私も履いたら似合うかな? …うーん、イメージ出来ないよ。

まぁ、見た目はいいや、どうでも良いし私には関係ないことだよ。

どう考えても、私はお洒落なタイプじゃ無いし気にすることは無いかな。

それよりも、服を縫わないと、お裁縫はやったこと無いけど頑張って見よう。

 

「えっと…あ!」

 

せ、背中の方まで穴が開いてるじゃん! うぅ、なんで…

空洞になってるよ…向こう側が見えちゃってるよ!

何でこんな事に…でも、少し妙というか、不思議…

何で前の穴と後ろの穴が同じ場所に出来てるんだろう。

これじゃあ、まるで何かに貫かれた感じじゃ…

 

「……?」

 

でも、この穴が開いてた場所には何も無い。

その場所を少しさすってみたけど、やっぱり何も変化は無い。

その場所にある、穴みたいな所はおへそしか無い。

怪我をしたのかも知れないけど、傷痕1つ無いし。

…私が妖怪だから、怪我をしてもすぐ回復するのかな?

でも、流石に傷痕くらいは残るんじゃ…?

 

「んー…ん?」

 

尻尾でお腹辺りをさすりながら、腕を組んで考えてみる。

何でこんな事になってるのかを考えてみる。

いつ、この服に穴が開いたんだろう、心当たりは何処かな?

でも、お腹だし、心当たりがあればすぐに分かる筈。

こんな場所、不意に傷付けるなんてあり得ないよ。

だってお腹だもん…じゃあ、どうして私は今まで気付けてなかったのかな?

そう、なんで気付けていないのか…可能性があるとすれば、それは

……私が、この場所を何らかの形で怪我をして、それを忘れていると言う事。

それ位しか私には想像出来ない、怪我をして忘れている。

でも、仮に怪我をしたとして、こんな大きな怪我を

私がどうして忘れるのかな? 普通に考えて忘れない。

そして…私が忘れている、記憶が欠落している部分…それは

月への異変の時、私は鈴瑚さんと戦って、夢の道って所に行った後から

記憶が殆ど無いんだ、確かナイトキャップを被った女の人と

出会ったところまでは覚えてるけど、その後は覚えて…無い。

それなのに月の異変は解決したみたいな話しになってた。

あの後、私の記憶は無くなって…何で、何処で途切れた?

確か……確か…月だ! お月様が見えて、それから記憶が薄れてる!

 

「……」

 

なら、この穴はその記憶が無い間に付いたと考えるのが妥当。

その間に、私がお腹を何かで貫かれて、大きな穴が開いた。

その穴がこの服の穴、でも、怪我は一切ない。

妖怪だから治ったと考えるのが無難なのかな?

こんなに大きな穴で、更には貫かれて、短期間で?

いくら妖怪でも、そこまでの回復速度は…あるのかな?

ちょ、ちょっと恐いけど…痛いのは嫌だけど。

 

「痛!」

 

た、試しに腕を自分の爪で裂いてみた。

自分の傷の治りを確認するために。

でも、何だか加減を失敗して深く傷付いてしまった。

血も結構流れてる…でも、短い間で治ったのを確認した。

10秒は掛ってない…こんな物なのかな?

 

「う、うーん…」

 

他の人で試すわけにもいかないし、ひとまずは傷の治りを自分で確認したけど

これ程の速さで傷が治るなら、お腹を貫かれて治ったとしても不思議無いかな。

多分、私は記憶を失ってる間にどうやってか月の異変を解決してる。

どうして記憶を失ってしまうのか…色々と考えて、出てくる可能性はいくつかあるけど

その中で最も有力な可能性は…月を見たとき、私は記憶を失ってると言う事。

でも、普段で月を見て意識を失ったり、記憶を失ったりはしてない。

だけど、少し頭が痛くなったりする事はあった…そう、満月を見たときに。

きっと私は満月を見たときに記憶を失って…勝手に動いてる?

だけど、前に英子さんと人里を回った時、私は少し頭痛はあったけど

意識は失ってない…じゃあ、近くで見たから意識を失って勝手に動いたって事かな?

うぅ、断言は出来ないけど、あり得ないと切り捨てることも出来ない。

……これから月を見ることは控えた方がよさそうかな。


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