東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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人里へ

お料理の後、私は咲夜さんにお礼を言われ

人里へのお買い物を任された…人里って何処かと

咲夜さんにお尋ねすると、美鈴さんを付けると言われた。

 

「いやぁ、人里へのお買い物は大分久し振りですよ」

「そうなんですか」

 

美鈴さんは本来門番で、基本的に紅魔館から離れないらしいのだけど

今回は咲夜さんにどうせ役に立たないのだから私の面倒を見ろと言われたらしい。

咲夜さんは何でか知らないけど美鈴さんにはかなり厳しいんだよなぁ。

 

「それにしても、久し振りにお散歩できて嬉しいですよ

 ありがとうございますね、フィルさん」

「いえ、私の方こそ、お仕事中に案内してくださり、ありがとうございます」

「いえいえ、門番って何もすること無いので大丈夫ですよ~」

 

門番ってかなり大事な仕事だと思うんだけどなぁ。

紅魔館に入ろうとする不審者を追い払う仕事でしょ?

それはかなり大事だと思う。

 

「でも、門番なんて凄いですね、門番って凄く大事なお仕事ですよね?

 不審者を追い払ったりする事を任されるなんて

 信頼されていないとそんなお仕事任されたりしませんよ」

「え? そ、そうなんですかね?」

「そうですよ! 危ない仕事ですけど、それだけ信頼されてるって言う!」

「いえ、そうでも無いと思いますけど…」

「でも、門番って、強くないと出来ませんし、絶対に」

「いえいえ、私、紅魔館ではそんなに強い部類じゃありませんよ?

 小悪魔さんには勝てるでしょうけど、パチュリ―様には

 接近戦に持ち込まないと勝ち目はありませんし

 咲夜さんには能力無しで戦わないと勝算は無いと思います

 お嬢様や妹様には接近戦闘でも勝ち目は薄いと思います」

 

……あ、あれ? 門番さんって、凄い強くないと大変なんじゃ…

だって、不審者とかを追い払わないといけないお仕事だし…

そ、そう言えば美鈴さん、私が初めて来たとき、眠ってたような。

い、いや、あれはきっと忙しかったから眠ってたんだ!

やっぱり休まないと流石に疲れるだろうし。

 

「もしかしたら、フィルさんにも負けるかもしれませんね」

「いえ! そんな事ありませんよ! 私、弱いですから!」

「そういう人ほど、いざ戦ってみたら強かったりするんですよね」

「そんな事ありませんって!」

 

美鈴さん、凄く謙虚な人だな、でも、何だか優しそうな感じがする。

 

「ねぇ、何処行くの?」

「おや? ルーミアさん」

「え?」

 

声が聞えた方を見てみると、そこには短い金髪でリボンを付けた

赤い瞳の小さな女の子が空を飛んでいた。

服装が凄く黒いなぁ、黒いえっと、ジャケット? かな

に、白いシャツ…に、赤いネクタイ…かな。

 

「そこの子は? 獲物なら食べて良い?」

「た、食べる!?」

「いえ、フィルさんは妖怪ですよ、半獣と言ってましたね」

「は、はい、私、よ、妖怪? です」

「でも、半分は人間なんでしょ? ちょっとかじらせてよ」

「ひぃ!」

「良い匂いだし、きっと美味しい」

 

うぅ、食べられちゃう! ん? んん? 何だか臭いが…

 

「駄目ですって、食べたりしたら…それにしてもルーミアさん

 何だか臭いますね、お風呂とか入ってます?」

「水浴びはやってないよ、2週間は雨降ってないから」

 

お、お風呂、入ってないんだ、だから結構キツい臭いが。

 

「湖は近くにありますし、そこで洗えば良いじゃ無いですか」

「あそこはチルノが居るから、行ったら絡まれるの」

「でも、女の子がそんなに不潔なのはよくありませんよ?」

「へぇ、そーなのかー」

「そーなのですよ」

 

……最初は怖かったけど、この子、割と普通?

で、でもなぁ、血の臭いがするんだよなぁ…

 

「でも、とにかく私はお腹がすいてるから水浴び何処ろじゃ無いの

 だから、そこの子、頂戴?」

「あわわぁ!」

「だから駄目ですって」

「じゃあ、こうしちゃうわ」

 

彼女が少し笑うと、周囲が一気に真っ暗になった。

 

「わぁ!」

「け、結構マジですね、ここまでしてフィルさんを食べたいのですか?

 そう言えば、お嬢様もフィルさんの血を気に入ってましたし

 もしかしてフィルさん、人食いの妖怪に好かれる体質ですか?」

「ひ、人食い!?」

 

美鈴さんと話していても臭いで気が付いた、今は背後。

周りが何も見えないこの状況でも場所が分かる。

 

「わぁ!」

「避けた?」

「フィルさん、暗闇でよく避けましたね」

「あ、あの! 助けてくださ! わぁ!」

 

何度も何度も暗闇で組み付こうとしてくるのだけど

臭いのお陰で位置が分かる、美鈴さんの位置だって分かる。

私はこれでも多分犬の妖怪、犬は鼻が良いって言うし臭いで分かる。

 

「結構すばしっこいね、暗闇で避けているのも凄い」

「あの! や、やめてださい! 私は食べても美味しくありませんから!」

「それは味見してから決めるわよ、さぁ、大人しく味見させて♪」

「いやいやいや! 無理です! 無理! 痛いのは嫌です!」

 

何度も組み付き攻撃を回避していると、木の根っ子を踏んだ。

危ない危ない、あと少しで転けるところだった。

 

「きゃ!」

「え!?」

 

さっきの女の子の声が聞えたと思うと、周りの暗闇が晴れた。

そして、目の前であの女の子が頭から地面に激突している。

 

「…あ、あれ? 大丈夫ですか?」

 

何で転けたのかな? この子、もしかして自分も暗闇で見えないの?

もしかしたら…そ、そうかもしれない、だとすると臭いで追ってきたのかな?

じゃあ、私と同じだったのかも、と、とにかく起さないと。

 

「よいしょ、えっと、だいじょう」

「いただきます!」

「ひゃぁあ!」

 

肩! 肩を噛まれたぁ! 痛い! 凄く痛い! お嬢様に噛まれた所と同じだぁ!

 

「痛いですってばぁ!」

「美味しい」

「うぅ、お腹がぁ」

 

咲夜さんに着せて貰ったメイド服が歯形状に破れちゃった。

あぁ、私の血でメイド服が汚れちゃう! と、止めないと!

 

「うぅ、メイド服が汚れちゃいましたよ…後痛いです」

「メイド服の心配を最初にするの?」

「私、妖怪ですから、傷はすぐ治ります、お嬢様に噛まれたときもそうでした」

 

ほんの2日の間に2回も同じ所を噛まれちゃったんだな、私。

 

「ふーん、じゃあ、食べ放題じゃない、もっと食べさせて?」

「いやいや! 痛いのは嫌なんですってばぁ!」

「ちぇー、それにしても、本当に美味しいね、フィル」

「嬉しくないですよぅ…」

「もう、ルーミアさん、止めてくださいと言いましたよね?

 もしも今度やったら、多分フィルさんが反撃しますよ?」

「それでも良いから食べたい」

「食べないでくださいよ! 痛いのは嫌ですから!」

「…でも、お腹が」

「仕方ないですね、はい、私のお昼ご飯です

 これでお腹を膨らませてください、咲夜さんお手製ですよ?」

「良いの?」

「はい、大丈夫です」

「ありがとう! いただきます! あむ…か、辛い!」

「えぇ!?」

「でも、美味しいから食べちゃえ! あむ、から! あむ、辛!」

 

ルーミアさんは何度も辛い辛いと言いながらもお弁当を食べた。

 

「か、辛いんですね」

「…し、知りませんでした、は! もしや、私が寝ないように!」

「あの、美鈴さん…もしかして、普段から眠って」

「そ、そんな訳ありませんって! ほ、ほら、速く行きましょう!」

「あ、は、はい」

 

私はそのまま美鈴さんに付いていき、人里まで進んだ。

人里ってどんな所なのかな? 少し楽しみかもしれない。

でも、人里って事は人しか居ないのかな? 良いのかなぁ

妖怪がそんな所に行って…でも、でもきっと大丈夫だよ

咲夜さんが行ってこいって言うんだから、大丈夫だって事だよ!

 

「そろそろ人間の里に着きますよ」

「は、はい!」

 

うぅ、き、緊張してきた、なんでこんなに緊張してるのか分からないけど

心臓がバクバク言ってるよ…何でかな? よく分からないけど落ち着け、私!


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