東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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収まらない攻撃

幻想郷を巡る冒険をもう一度始める事にした。

やっぱり、このままだと私は過去を知れないから。

ひとまずは何処に行こうか…でも、その前に問題はあった。

私には記憶が無いけど、私は月の異変を解決したはずだったのに

何でか知らないけど、ずっと幻想郷への攻撃が続いていた。

どうして? 異変は解決したんじゃ無かったの?

もうそれなりに時間は経って、霊夢さん達が月の兎さん達を

撃退してるけど、流石に何かありそう。

 

「はぁ、全く面倒ね…」

「あ、紫さん」

「フィル、早速で悪いんだけど依頼を聞いてくれる?」

「依頼ですか?」

「えぇ、あなたも分かってると思うけど、まだ月からの攻撃が続いてる。

 確かあなたは月の異変を解決したのよね?」

「はい、記憶にはありませんけど…」

「それなのに続いているのは不思議でね

 あの月の賢者に話を聞きに行こうと思ってたんだけど

 やっぱり当事者であるあなたも一緒に来て欲しいと思って探してたのよ」

「は、はい、行きます!」

「あっさり引き受けてくれて助かったわ、それじゃ、この隙間へ」

 

私の目の前に紫さんの隙間空間が出て来た。

今まで何度かこの空間の中に入って移動はしていたけど

いつもは落とし穴みたいに設置されて、いきなり移動してたから

自分で潜るって言うのは結構珍しい気がする。

そう言えば、外から帰ってきた時って潜ってたっけ。

ハッキリとは覚えてないけど、多分そうだったと思う。

でも、普段は不意に足下に出されて強制移動だったし

珍しいと言えば珍しいんだけどね。

とにかく私はその隙間空間の中に入った。

するとやっぱり、一瞬で視界が晴れ、目の前には永遠亭があった。

 

「それじゃ、行きましょうか」

「はい」

 

私達2人は永遠亭の中に向うが、すぐに鈴仙さんとてゐさんのお出迎え。

 

「待ってたうさ」

「意外と遅かったですね、紫さん、フィルさん」

「あら、既に準備は出来ていると言う事かしら?」

「えぇ、師匠は既にあなた達にこの状況の全てを話す準備は出来ています」

「分かったわ、それじゃ、案内して頂戴」

「はい、こちらです」

 

私達はてゐさんと鈴仙さんに案内され、永遠亭の中に入った。

そして、永遠亭の最奥、永琳さんの部屋へ上がる。

永琳さんの部屋は色々な資料が置いてあったり

色々な実験器具の様な物が置いてあった。

もしかしたらここは永琳さんの部屋と言うよりは

永琳さんの研究所と言った方が近いのかもしれない。

 

「さて、大分待ちわびたわよ、もう少し早く来ると思ったけど」

「あなたの想定通りに私が動く理由などないと思いますわ」

「それもそうね、私の期待など、あなたには関係ないか。

 まぁ良いわ、折角来たんだし歓迎するわよ?」

「歓迎は良いわ、それよりも私達がここに来た目的は

 分かっているんでしょうね? 月の賢者さん?」

「えぇ、フィルが異変を解決したはずなのに何故か続いている

 幻想郷の浄化作戦、その理由を私に聞きに来たんでしょう?

 勿論分かってるわ、だからわざわざうどんげ達を待たせていたのだから」

「そう、なら説明してくれる? この現状を」

「良いでしょう、あなたが1人だけで来た場合なら話すつもりは無かったけど

 ちゃんとフィルも連れてきたようだし、話してあげるわ」

「偉そうに、この問題はそもそもあなた達月の問題でしょう?

 私達には本来関係が全く無い」

「そう言わないで、本来なら月を捨てている筈の私にだって

 関係が無い問題なのだから、それでも解決に動こうとしてる。

 理由は幻想郷の為よ、私とあなたは本来敵対関係には無い。

 そんなピリピリとした殺気を私に向ける理由はないのよ」

 

2人の会話はまさに緊張の会話だった、お互いがお互いを牽制している会話。

このままだと話が進みそうに無いと言うことを、私は感じ取った。

なら、この中で最も中立的な立ち位置にいる私が話を切り出さないと。

 

「え、えっと、月の兎さん達がまだ攻撃している理由って何なんですか?

 私、やっぱり気になります、もう戦う理由がない筈の月の兎さん達が

 どうしてまだ幻想郷を攻撃しているのかを」

「…良いでしょう、話すわ」

 

ようやく本題に入ってくれた、やっと理由が分かるよ。

もしかして、紫さんと永琳さんって仲が悪いのかな?

でも、今の紫さんは普段の紫さんと雰囲気が違う気がする。

なんかこう、ピリピリしている感じ、焦っているのが少し分かる。

私が変な声を聞いたって時とは違う、焦りを感じる。

…何というか、あの時の方が紫さんは焦っていた風に思える。

それは勘違いなのかも知れないけど…どうなんだろう。

少し木には成るけど、それよりも今はこの攻撃の理由を知る方が先かな。

 

「本来既に解決されているはずの異変。

 それなのに何故月が地上を攻めているかというと

 まだ、異変が本当の意味で解決していないからよ」

「え!?」

「少し前にサグメが来てね、色々と話してくれたわ。

 フィルが月を攻めている復讐の権化を退治した後も

 月はずっと攻撃を受けている、正確には月では無いわね。

 正確には月の民、夢の世界に逃げたはずの月の民達が

 今でも攻撃を受けている、だから月の民は本物の

 月の都に戻れていないと言う事なの」

「まだ攻撃が終わってない…? つまり、黒幕は2人と言う事?」

「たった1人でも驚異的だった復讐の権化と手を組んだ相手。

 まだその手を組んだ相手までは分からないけど、相当危険らしいわ。

 生半可な実力者では、手も足も出ないほどの」

 

そ、そんな凄い人が…

 

「そして、サグメと私の予想では、純狐を撃破した相手が

 夢の世界で月人達を拘束している相手と遭遇できれば

 大人しく手を引いてくれる可能性があると考えてるわ

 間違っても全力は出してこないはず、そこでフィル

 あなたには今度は夢の世界へ行ってもう1人の黒幕と遭遇して欲しいの」

「…わ、わか」

「待ってフィル、その行動がどれ程危険かあなたは自覚があるの?」

「え?」

「えぇ、かなり危険な事になるわ、それでも構わない?」

「……」

「最終的選択はあなたにして貰う事になるでしょうけどね」

「…相手は月の民さえ掌の上で踊らせるような強敵。

 その相手に1人で挑む事になるわ…ただでは済まないと思うわ。

 それでも、あなたは行くの?」

「……行きます、私が行くことで幻想郷と月が救われるなら

 私は行きます!」

「……そう、それなら止めても無理ね」

「ありがとう、それならもう一度これを渡すわ、空を飛べる薬。

 効果は変わらず一時的だけどね」

「はい、ありがとうございます」

 

私はもう一度、空を飛ぶ薬を飲んだ。

 

「それじゃあ、もう一度夢の世界へ、気を付けてね」

「はい!」

 

夢の世界、私はあの時、この世界へ入って記憶が無くなってる。

今度は意識を失わないように頑張らないと。


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