東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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戯れの始まり

「さ、まずは手始めといきましょうか」異界「逢魔ガ刻」

 

向こうは幻想郷の弾幕ごっこで戦ってくれるみたいだった。

でも恐らくだけど、この弾幕には殺傷能力があるはず。

下手に当れば死んでしまう程の弾幕。

地獄の女神様からして見れば、人の命はおもちゃに近い筈。

相手が死のうと関係なく、ただ1つの道具が壊れただけでしかない。

 

「分かってると思うけど、この弾幕は相手を殺すわよん。

 ミスは許されない戦いの方が燃えるとは思わない?」

「遊びは遊びのままがいいかなーと」

「神の遊びには命の生き死にが関わる物よん。

 神と遊べるのだから、命くらいは投げ捨てちゃってね」

 

ヘカーティアさんは周囲に列を成した弾幕を飛ばしてくる。

何カ所かに隙間はあって、その間を波を避けるように避けるのかな。

い、いや、違う…一定の距離展開した後、

弾幕がヘカーティアさんの方に引寄せられた。

そのまま回転を始め、末端の弾幕が長めの鞭のように広がってくる。

 

「これは!」

 

弾速は早いけど、それでもこの弾幕には大きな道がある。

そこを通り抜け、この鞭の様な弾幕を避ければいいんだ。

 

「すぐに攻略法を見付けたのは流石ね」

「これなら…って、危ない!」

「んもぅ、惜しかったわ」

 

い、いきなり何の脈絡もなく鞭の方向が変った!

さっきまで右斜めだったのが、不意に左斜めへ変った。

弾速が早いから、初めてだとこの切り返しに気付かないで当りそう!

 

「まぁ、小手調べで失敗されても困るけどね」

 

再び何の脈絡もなく鞭の方向が変る。

これを完全に避けきるのは中々に難しいかも?

同じ流れが続くと思ってたらの不意打ちって言うのは驚異的かも。

でも、1度流れが分かってしまえば、当ることも無い!

 

「ま、最初はこんな物よね、じゃ、次ね」

 

そう言うと、ヘカーティアさんの帽子に乗っていた球体が浮いて

今度は小さな地球がヘカーティアさんの帽子の上に乗った。

すると、ヘカーティアさんの髪の色が赤から青に変る。

まるで別人に変化したように、服装も変化。

同じシャツだけど、赤髪の時とは違って血しぶきなどは消え

刺繍もwelcomeHellから、I Love earthと変っていた。

 

「じゃ、いくわよ」地球「邪穢在身」

 

左右からいくつもの粒系の弾幕が浮き上がってきた。

この弾幕達はゆっくりと浮上し、ある程度浮上した後

砕け、こっちを狙ってレーザーの弾幕を飛ばしてきた。

左右から展開してくる粒弾幕も、幅の広がりはまばらだった。

それはつまり、レーザーが飛んで来る場所がいつも違うと言う事。

破裂する場所もいまいち掴めず、破裂した後に反応することしか出来ない。

 

「うぅ!」

 

動けば動くほどにレーザーは広がり、こっちの動きを阻害してくる。

でも、上手く誘導すれば切り返すための隙間は生まれる。

何度か追い込まれそうにはなったけど、切り返しを上手く扱い

ちょっとずつヘカーティアさんにダメージを与えた。

 

「ふふん、少しは出来るわね、そう来なくちゃ面白く無いわ」

 

今度は地球が帽子から動き、今度は月の様な球体が帽子に乗った。

さっきと同じ様に髪の毛の色が変り、金髪へと変化した。

刺繍も同じく変化して、hallo Lunatic thymeとなっている。

 

「さぁさぁ! 派手に潰すわよ!」

「せ、性格も変ってる!?」

「同一個体でも少し違うって事よ!」月「アポロ反射鏡」

 

周囲に壁の様な障害物が展開された。

ヘカーティアさんは壁を展開した後、弾幕を放つ。

普通の小粒の弾幕…いや、星形の弾幕。

この弾幕はそこまでの速度では飛んでいない。

隙間も多く、これを避けるだけなら簡単すぎるとは思う。

でも、周囲に壁を展開していると言う事は。

 

「やっぱり反射してきた!」

 

スペルカードの名前通り、その壁に接触した星形の弾幕は反射。

フランお嬢様のスペルカードにも似たような物があったと思うけど

こっちは反射すると同時にレーザーへと変化して加速してくる!

ヘカーティアさんの背後に展開している壁でも反射して

そこから高速弾としてレーザーがこっちに向ってくるし

円形状に飛ばしてるから、左右の壁に接触して跳ね返ってくる。

それだけでも十分厳しいけど、更には下方向にある壁からも反射。

上部に展開されている壁からも反射して、上下左右の全方向から

高速レーザーの弾幕が跳んできていると言う事になる。

それだけでもかなり危ういけど、あまり速度がない

星形弾幕も合わさって、緩急の付いた弾幕になって避けるのが辛い!

この弾幕は上空で戦うという形になってよかったと思う。

地上で戦った場合でこの弾幕を使われたら避けきれないよ!

地面に星形弾幕が当った場合に反射とかしてくる場合だったら余計に!

上空でも避けるのは相当辛いけど!

でも、弾幕の隙間を縫って避けていけば、避けきれる!

 

「ヒュー、やるわね、それじゃもう1発!」

「待って、私にもやらせて頂戴」

「えー、何よ、まだやりたいのに」

 

も、もう1発すぐに来るのかと思ったけど純狐さんだったかな

彼女が割って入ってくれたお陰で少しだけ休めそう。

 

「すぐにまた交代するわ」

「分かったわよ」

 

ヘカーティアさんは少しぐずったけど、結構すんなりと身を引いた。

 

「それじゃあ狼さん、前回の続きを始めましょうか?」

「わ、私は前回の事を覚えて無くて」

「でしょうね、戦い方が全く違うから。

 だから少し興味と不安を抱いた、だから私が出て来た。

 あっさりと死なないでね」「袋の鼠を追い詰める為の単純な弾幕」

「ひゃ!」

 

い、いきなり! 何の躊躇いなく! 足止めの弾幕展開もなく!

純粋に単純にいくつもの素早い弾幕の群れが私の方へ飛んで来た。

最初から直接攻撃が来るとは思っていなかったから反応が遅れ

危うく弾幕に当るところだったけど、ギリギリで回避。

でもすぐに次が休む暇も無く素早く精密に飛んで来る。

弾幕ごっこは基本的に美しさと言う点も存在すると聞いた。

あくまで遊びで、そこには遊びとして美しさを楽しむ余裕がある方が良いって。

今まで戦ってきた人達の弾幕は、美しい物もあったり

すぐに相手を仕留めようとしてくる弾幕はなかった。

でも、この人の弾幕は違う、美しさは無い。

あるのは純粋過ぎる殺意! 相手を落とすことしか考えてない

何処までもシンプルな弾幕! ごっこじゃない、完全な殺し合い!

 

「さぁ、上手く避けてみなさい狼ちゃん」

「うぅ!」

 

だけど、速さだけじゃない、この弾幕は!

あの複数の弾幕の中に異常な程に遅い弾幕を潜ませている。

自分の背後に飛ばしている弾幕の動きもゆっくりで

素早く避ける事で非常に動きの遅い弾幕に道を作る

という行為を制限しているというのが分かる。

だから、あまり大きな穴もなくゆっくりと射出されている弾幕は

確実に私の行動範囲を狭めて行っている。

それなのに、弾速は加速する一方…まさしく名前通り

袋の鼠を作り出し、その鼠を追い込み、叩き潰すための単純な弾幕!

確実に追い込まれていく…時間が経てば立つほどに!

なら、追い込まれた鼠になるしか無い!

 

「そこ!」拘束「小さな鎖」

「な!」

 

私の鎖は純子さんを拘束し、私の爪は彼女を裂いた。

致命傷には至ってない。

 

「こんな隠し種があったとは驚いたわ、少し安心しました」

「はいはい、じゃあそろそろもう1回交代ね

 純狐、あなたはもう沢山遊んだ後なんでしょ?」

「えぇ、しかし彼女とは初めて遊びますがね」

「……その面白そうな話、少し後で詳しく聞かせて貰うとして

 今は彼女との戯れが先ね、ふふ、ここまでまだ半分行ってないけど

 バテてない?」

「だ、大丈夫です」

 

再び姿を見せたヘカーティアさんの髪の毛の色は赤色に戻っていた。

 

「じゃあ、後半戦を始めましょう、今までは前座だったから

 ここからは気合い入れなさいよ?」

「……いつでもどうぞ」

 

ここからは後半戦か…本当、気合いを入れ直さないと耐えられそうにない!


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