東方半獣録   作:幻想郷のオリオン座

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人間の里

人間の里、色々な人間さんが、楽しく生活している。

とても賑やかで、凄く楽しそう…だけど、何でかな?

この賑やかな中に私は居るのに、私だけすごく怖がってる。

それは、自分でも分かる、心臓が激しくドキドキ動いて。

とても怖い…何で? 何でなの? 怖い人は居ないはず

さっきのルーミアさんみたいに噛み付こうとしてくるわけでもない。

それなのに、私はここが…この場所にいることに凄く恐怖している。

 

「フィルさん、顔色が悪いようですが」

「い、いえ、何でもありません」

 

自分がこの場所に怯えてるなんて美鈴さんが分かったら

きっと、凄く心配する…我慢しないと。

それに、本当に短い間しか居ないんだから大丈夫だよ。

 

「ふぅ、今日は良い天気ね、おや? 隣は初めて見ますが

 あなたは紅魔館の居眠り門番ですね、人里に来るとは珍しい」

 

私達が買い物をしていると、隣から紫色の髪の毛で紫の瞳に花の髪飾り

真ん中は緑、袖は花が沢山書いてある黄色色をした着物を着て

スカートは赤いロングスカートの少し小さな女の子が話しかけてきた。

 

「えぇ、実は新しく紅魔館に来たこの子のお世話を任されまして」

「紅魔館に新しい子ですか、あの物好きの吸血鬼

 今度はどんな変わった子を連れ込んだのですか?」

「あ、えっと」

「この子は半獣ですよ、恐らく犬の半獣だと思われます」

「本当に犬ですか? 耳で判断したというなら早計でしょう?

 狼という可能性もあるでしょうに」

「まぁ、お嬢様が犬と言えば犬なのですよ、事実が何であれ

 少なくとも、紅魔館の中ではね」

 

狼…狼って言う可能性もあるんだ、私。

でも、どっちなんだろう…犬なのかな? それとも狼なのかな?

出来れば狼の方が良いなぁ、何だか犬より響きが格好いいし。

 

「そうですか、しかし、幻想郷に新しい妖怪

 妖怪は何体もいますが、半獣はあまり見ませんね」

「そうなんですか?」

「と言うか、本当に半獣なのですか? この幻想郷

 あなたの様な容姿で実は半獣ではない物は多い

 あなたのような容姿で山彦も居ますし

 天狗も居ます、容姿だけでの判断はやはり早計ですよ」

「いえ、そこの根拠はお嬢様から聞いています

 血を吸ったときに人の血と同じ味がしたそうなので」

「なる程、なら、ほぼ間違いありませんね、吸血鬼の味覚なら」

 

あの時、あの時確か、人間の血と同じくらい美味しいって言ってたような。

その時に、人間の血の味がしたって事…かな?

じゃあ、やっぱり私は半獣なんだ。

 

「では、その時に何の動物の血が他に混ざっていると分からなかったのですか?」

「お嬢様は吸血鬼です、流石に犬等の血は吸ってません

 お嬢様が吸う血は人間の血だけですよ」

「まぁ、当然ですね、しかし、半獣ですか…ワーハクタクの慧音さん以来ですね」

「慧音さんって、一体…」

「人里で寺子屋を開いてる人…いえ、半獣ですよ」

 

私以外にも半獣って居るんだ、慧音さんか、どんな人なんだろう。

 

「その表情、少し気になるみたいですね」

「あ、はい…少し、気になります」

「では、案内してあげましょうか? 私としても

 あなた見たいな貴重な妖怪を少し知りたいですからね

 そして、幻想郷縁起に記したいですしね」

「幻想郷縁起とは何ですか?」

「幻想郷に住まう妖怪達について記した書物です」

 

へぇ、そんな本があるんだ、どんな妖怪達が居るのか見てみたいなぁ。

 

「…稗田の娘がここまで積極的な方とは思いませんでしたね

 まさか妖怪を誘おうとするとは思いませんでしたよ」

「今の幻想郷では妖怪と人間の距離が近付いてきています

 いつまでも古いやり方にこだわっていては正確な情報は分からない

 著者は常に柔軟に変わりゆく状勢に適応しなくてはならないのです」

 

へぇ、妖怪と人間って、ここだと距離が近いんだ。

でも、1つ…ちょっと違和感を感じた事がある。

 

「1つ、良いですか?」

「何でしょうか」

「その口振り、まるでずっと前から生きてるような感じですが

 あなたは人間さん…何ですよね?」

「あの会話で違和感に気が付きますか、見た目によらず勘が鋭いですね」

「見た目によらずって…まぁ、そうかもしれませんけど」

「稗田の娘は長生きなんですよ、人間の中でもとてもね」

「そうなんですか?」

「冗談です、断続的に過去を経験し、知っている、そう言っておきますよ」

 

断続的に? どういうことかな、何処かで分からない事があるって事?

でも、長生きならそんな事は無いんじゃ…

何処かで経験が途絶える理由…長生きなら断続的にじゃなくて継続的に

断続的にと言う事は…何処かで記憶が無くなってるって事?

 

「じゃあ、えっと、もしかして、あなたも私と同じで記憶喪失なんですか?」

「いえ、私は記憶喪失から最も遠い存在だと思ってます」

「え? え? え?」

 

じゃあ、なんで断続的に何だろう、断続的に過去を知っている理由…

記憶喪失じゃないなら、何処かでこの世界から消えてるのかな?

 

「あ、じゃあ、もしかして一定間隔で長い眠りに付いてるとか!」

「あながち間違っていませんね、しかし、あれだけの会話で

 そこまで私について想像できるのですか、やはりかなり頭が良いですね」

 

結構あってるって事かな? でも、何処かが違う。

 

「まぁ、私についてはここまでで、そろそろ慧音さんの所に案内しましょう

 お時間、大丈夫ですか?」

「えっと、め、美鈴さん」

「大丈夫だと思いますよ、買い出しは私がして帰っておきますから

 フィルさんはもうしばらく人里に、帰り道は分かりますか?」

「はい、1度通った道なら、きっと大丈夫だと思います」

「分かりました、ですが、念の為に地図を持たせておきましょう」

 

美鈴さんはポケットから地図を出して渡してくれた。

 

「では、ゆっくりと」

「あ、はい」

「それでは、案内しましょう」

「あ、はい」

 

私は阿求さんに付いていき、慧音さんに会う事にした。

どんな人なのか気になるなぁ、優しい人だと良いなぁ。


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